私のマンションは築ン十年と経っているため、古いから家賃が安い。従って、ドアも簡易的、インターフォンに画面が付いているような、今風のセキュリティー抜群な場所ではない。玄関の扉越しに、来客に向かって怒鳴るように言った。
けれども返事は無い。
代わりに、ピンポーン、ピンポーン、とインターフォンが鳴り響く。
仕方なくドアスコープから来客を確認した。予想通り、Takaさんが玄関に立っている。 どうしてここにという間抜けな疑問が頭を掠めるが、恐らくあおいさんにある程度の私の情報を聞いて、後は独自に調べ上げたのだろう。粘着質な感じの人だったし、あおいさんから見せられた気持ち悪いSNSの文章や、隠し撮りした写真を許可も無く平気でアップする神経とか、総合的に考えると色々納得がいく。『眞子、すぐそこにいるんだろ。ここ、開けてよ』
ドアスコープを覗いていると解ったTakaさんは、ニタニタと笑いながら言った。名乗ってもいないのに、私の名前までちゃんと知っている。
その姿の気持ち悪いこと! 恐怖しか感じなかった。 『まーこー』 背筋が寒くなる。名前を呼ばれるだけで、背中を虫が這いずり回るようにぞわぞわと悪寒が走った。本当に気持ち悪い!「か、帰って!」声を上げ、反撃に出てみる。恐怖で声が上ずった。
『つれない事言わないでよー。僕と君の仲じゃないか』
どんな仲よ!
「か、帰って、く、くれないと、け、警察呼ぶから!」
声は上ずったままで舌がもつれる。しっかりしろ、と握りこぶしを固めた。
『それは困るなぁ。そうだ、家の中で話し合いしようか。眞子は僕のことを誤解しているだけだから、その誤解を解きたいな』
「誤解なんか、し、していないし、そのまま帰って!」
嫌なものは嫌だと訴えられるようになった私は、Takaさんに反論した。家の中だという安心がある。そうだ! この際自分で110番すれば――
下駄箱の傍の
この情景が目の前で行われている事が現実に思えなくて息を呑んだ。 なぜ、どうして、と頭が真っ白になる。 開けられた扉はきちんとかけておいたドアチェーンに阻まれ、全開になる事は無かった。そのため、ひとまず安堵できた。ほっとしたら涙が滲んでくるが問題が解決したわけではない。「あーあー、ドアチェーンなんか掛けちゃって」 Takaさんはやれやれ、という顔をほんの少し開いた扉の向こうで見せた。「あ…Takaさん、なんで……どうしてっ、わ、わたし、の家の鍵っ……!」「なああーんだ、そんなこと? 簡単だよ、合鍵を作ったんだ」 ニタぁ、と歪んだ笑みが扉の向こうに見える。気持ち悪い笑みは更に恐怖を煽った。「最近は便利だよね。カギの救急車とかサービス満点な会社がいっぱいあるからさ」「か、勝手に…そんなことしてっ、は、犯罪だからっ!」 更に声がうわずる。もう怖い。 どうしよう、どうしよう、誰か助けて――! 「犯罪じゃないよ。僕たちもう付き合っているじゃないか。それなのに複数の男と浮気したりして、眞子は酷い女だよ。僕の運命の彼女がビッチだなんてマジで赦せないな。――でもね、僕は心が広いから、赦してあげるよ。魔が差すこともあるよね。だから話し合おう。ここを開けて?」 あまりの恐怖に声が出ない。ただ激しく首を振った。スマートフォンを操作したくても、指が氷漬けになったみたいにぴくりとも動かせない。「あ、そ。知ってた? ドアチェーンなんてクソの役にも立たないんだよ、眞子」 Takaさんは大型のチェーンカッターを持参していたようで、数センチ開いたドアの隙間からカッターを器用に入れ、いとも容易くチェーンを切ってしまった。「っ…!!」 目の前で無残に切られたチェーンが、途中からだらしなく垂れ下がった。私を守ってくれる小さなチェーンはいとも簡単に壊され、惨めな姿を晒している。「念のために持ってきておいて良かったよ。優しく言っ
「もうこれで安心だよ。眞子を誘惑する悪い男たちは断ち切ったから。僕たちの仲を引き裂く悪い奴は、ぜーんぶ排除してあげるからね」「いやっ…! こ、来ないでっ……」 恐怖で引きつる。抵抗さえできず、Takaさんから逃げるように後ずさりするのが精いっぱいだ。「来ないでなんて酷いこと言うなよ! 僕以外の男とは関係を持てるくせに!」「ち、ちがっ、っ……!」 言葉にならなくて必死に左右に首を振った。「じゃあこれはなに?」 Takaさんが自分のスマートフォンを操作し、写真を見せつけてきた。 先程のキャンピングカーで交わした、玄さんとのキスシーンがそこに収められている。「な、ん、で…っ……!」 盗撮されていたんだと気づいた。Takaさんは一体、なにが目的なの?「綺麗に撮れているでしょ? もうすぐ眞子が帰って来ると思って外で待っていたんだよ。今日はやっと眞子の家に入ることに成功したから、ずっとここで過ごしていたんだけど、サプライズで外で待っていたらこんなシーンに遭遇してさ。いやぁ、怒りを抑えるのに苦労したよぉ」「ひっ…!」 嗚咽が漏れる。留守中自宅にずっと侵入されていたなんて……! 考えただけで恐怖が全身を貫く。毛穴中が開き、ぞわっと鳥肌が立っている。 あまりの気持ち悪さに眩暈がして吐きそうになった。 「眞子はどうして僕を裏切ったりするの? こんなことをしても僕の君への愛は変わらないよ? もうこんなことをするのは止めようね」 ニタニタしながら言うTakaさんが怖くて後ずさりしていると、いつの間にかリビングまで後退していて、そこに置いてある小さなソファーにぶつかってバランスを崩した。はずみでその上に置いていたハンドバックが倒れ、バラバラと中身がこぼれ出た。証拠用に持ち歩くため、中に入れっぱなしにしていた封の切った状態の白い封筒も一緒に落ちた。「あ、これ、読んでくれたんだね。良かった」猟奇的と言えるような笑みを浮かべながら、Takaさんが落ちた封筒を拾い上げた。 えっ…?
「なんで? どうして眞子は僕の言うことが聞けないの! 僕が提案しているんだからさぁ、素敵って言えよッ!!」 今まで温和だったTakaさんの態度が一変し、激昂した。「君は僕の運命の彼女なんだ! 僕と食事もして楽しい時間を共有しただろう! だからもう僕たちは結ばれる運命なんだっ! それなのに他に男を沢山作って遊び歩いて、僕がどんなに傷ついたと思う? ねえ、解るかなあっ!?」 大声で怒鳴られて身体がすくんだ。 怒鳴り散らす男の人は初めてだから、どう対応していいのか全然わからない。 逆らったらさっきのスマートフォンみたいに壁に叩きつけられちゃうの? 怖いよ、誰か助けて…。 玄さん―― 涙が止まらなくなってしくしく泣いた。「おっと、ちょっとキツく言い過ぎたね。でも泣いてもダメだよ。ちゃんと僕との愛を誓うまで、赦さないから」 Takaさんに詰め寄られていると、ピンポーン、ピンポーン、と再びインターフォンが鳴った。 もしかして、お兄ちゃんが呼んでくれた警察――? 『警察です! すごい声が聞こえていますけど、大丈夫ですか!?』 どんどんどん、と外から連続で扉を叩く音がした。 お兄ちゃん! ちゃんと警察呼んでくれたんだ…。 危うく腰からくだけそうになったけれどここで倒れるわけにはいかない。なんとかしないと!「チッ。面倒だな」 大丈夫ですか、開けて下さい、と、どんどんどん、という扉を叩く音が交差する。お願い、帰らないで――! 心から必死に祈った。「このままだと帰りそうにないな、仕方ない、一旦対応するか」 苛立ちを隠し切れず、Takaさんは頭をガリガリと掻きながらぶつぶつ呟いた。やがて心を決めたように、私の方を向いた。「眞子、絶対声を上げちゃだめだよ。大人しくしていないと、これで切るからね」 まだ手に持っていた玄関を突破する時に利用したチェーンカッターを、目の前に突き付けられた。カ
お兄ちゃんが呼んでくれた警察の到着にしては早いと思っていた。恐らくスマートフォンを壊されてしまったから、電話が繋がらなくなったことを心配して警察を呼んでくれたには違いないけれど。 玄さん…ここまで戻って来てくれたんだ!! 真っ暗な地獄に一筋の光が差した気がした。 玄さんにこのピンチを伝える方法は無い? ここで彼に帰られたら、私どうなっちゃうんだろう…。 今後を考えるとぞっと背筋が寒くなった。 なんとかしなきゃ! 周りを見渡した。せめて音を立てるなにかがあれば…。すると、先程ハンドバックが散らばった中身の中に玄さんがくれた防犯ブザーが見えた。黄色いブザーを見ただけで安堵の涙が溢れてくる。 玄さんはいつでも、私を助けてくれるんだね―― 彼に勇気をもらった私は自身に喝を入れ、ガムテープで巻かれた不自由な身体をくねくね動かし、近くに転がっていた防犯ブザーを手にした。プラスチックの感触、それにボタンの場所を確認し、そっとリビングへ続く廊下から続いている玄関を見た。顔だけを覗かせ、聞き耳を立てて待つ。今はまだ押す時じゃない。 こちらには目もくれず、Takaさんはドアスコープを必死になってのぞき込み、来客を確認中だ。良かった。私の動きには気づかれていない。 「チッ、手帳持ってやがる。本物の警察みたいだな」 ドアスコープごしに警察手帳を確認したらしく、ぶつぶつ言いながらTakaさんが扉を開けた途端、ガンっと玄関の鉄扉を蹴るような鈍い音がした。よく見ると外から長い脚が伸びており、玄関をすぐに閉められないように彼は仁王立ちしていたのだ。――玄さんが来てくれた!!「お前っ…さっきの男!」 Takaさんは先程盗撮していた相手の玄さんだということに気付いたらしく、怒った声を出した。慌てて玄関を閉めようとノブに手を伸ばしたが、それを見越して玄さんが玄関の扉を塞いでいるので、扉を閉めることは叶わなかった。「クソっ、なんで!」「眞子はどうした? それに、アンタは誰だ。こ
「眞子 いいか」 彼の吐息が私の頬をくすぐった。「ふっ…」 熱いキス。もう、これだけで溶けてしまいそう――彼の手が私の胸を包み込んだ。 あっ……思わず声が漏れる。 甘い快楽の予感に身体の芯がとろけていく。 彼の指がゆっくりと私のドレスにかけられた。 熱い……肌が触れ合うだけで感じてしまうほど、身体中が敏感になっている。 吐息、指、視線…それらすべてが私の肌に触れるたび、自分でも驚くほどの甘い声が漏れてしまう。 彼は私を抱き上げベッドに運ぶと、そのまま激しくキスをした。 なにも考えられなくなるようなキス。(どうして…こんなことに…)「眞子」 熱のこもった低い声で名前を呼ばれると、体がかっと熱くなる。 抗えない。 止められない。「君はいつも午前0時前に帰ってしまうシンデレラだ。でも、今日は帰したくない」 彼の唇が私の首筋を這い、熱い吐息が肌をくすぐる。肌にまとわりついていたドレスを丁寧に脱がせ、露わになった胸先に触れる。「んあっ…!」 情熱的な刺激に思わず悲鳴が上がる。何度か繰り返され、やがて彼は私をうつぶせに寝かせると、背中にキスの雨を降らせた。 そして……唇が背中を這う。 この人は秘密が多すぎる。 今ならまだ引き返せる。この手を払い、ひとこと「やめて」と言えば、彼は無理強いしたりしない。 ホテルの壁時計を見た。もう、針は0時を回りそう。 引き返すには遅すぎた。戻れない…。 この人とひとつになることを、私は望んでいるから――…
「結婚、おめでとう―――」 駆けつけた友人たちの掛け声と共に、私の目の前でフラワーシャワーが舞った。 純白のドレスとお揃いのふわりと広がるチュールボレロはオフショルの肩を優しく包み、ハイネックにも白い上品なレースの刺繍が散りばめられている手の込んだ一品。その白い花はまるで本物の花に見まがうほどの出来栄え。 そんな美しい純白のウェディングドレスに包まれているのは、小学校からの親友、増山百花(ますやまももか)、二十九歳。今日の彼女は、人生の中で恐らく一番輝いていて美しい。 しかし何故、彼女は私の目の前でこんなに美しく輝いているのだろうか。 というのも、彼氏ができないと、つい二か月ほど前に彼女と女子会と称した飲み会でぼやき、愚痴ったばかり。寝耳に水な話で驚きを隠せない上、微妙に裏切られた気分になっているのはなぜだろう。 こうして私は今日、仲のいい友人たちの中でいよいよ最後のおひとりさまとなってしまった。 いや、でも、彼女の幸せを祝福したい! おめでたい席で後ろ向きな発言はダメだとは思うけれど。 気を利かせてか、私を見てウィンクした彼女。ブーケを投げてくれた百花の優しさというかおせっかいというか、キャッチしてしまってから言うのも何だけれど、複雑な気分になってしまう。 もやもや。「眞子ぉ――。来てくれてありがとう!」 百花は現実主義なのであまりお金は掛けず、アットホームな結婚式に落ち着かせた。披露宴中、高砂席に座った百花に挨拶に行ったら、ぎゅーっと抱きしめてくれた。 彼女の破顔した顔を見ると、小さなことでもやもやしている自分が恥ずかしくなってしまう。親友の祝福を心からしたいのに、もやついている自分が悪に思えた。「百花が幸せになるのは嬉しいけれど、ちょっと淋しいよー!」 気を遣わない友達だからつい本音を言ってしまった。いいよね、少しくらい。幸せを祝う気持ちは十分にあるのだから!「そうだよね。私も眞子の立場だったら、同じように思う! だからさ、いいこと教えてあげようと思って!」 スマホ貸して、と百花に手を伸ばされたのでそれに従った。「実はさー、今日の相手、婚活アプリで見つけたんだぁ」「こ、婚活アプリぃ!?」 なんと! 利用が初めてだった百花は、マッチングした一人目の相手と速攻で意気投合からのゴールインだと言う。 そんな…いきなり一人目で
「眞子先ぱぁい! 朝からどうしてそんな怖い顔しているんですかぁー?」 勤務地のさくら幼稚園に到着してすぐのこと。 一向に『いいね』受信が止まらないので、スマートフォンを片手にどうしたものかと困っていたら、後輩の鮫島理世(さめじまりよ)が声を掛けてくれた。目力のあるパッチリとした顔立ちに、ショートカットが良く似合っている。現在二十五歳の彼女は、エネルギーに満ち溢れている。子供たちに人気の教員だ。「あ、理世ちゃんおはよう」「んんっ、眞子先輩がついに! 婚活アプ…もが」「しーっ。声大きいっ」 スマートフォンの画面をのぞき込み、大声を上げて現状を説明しようとする後輩の口を押さえつけた。「実は――」 昨日、独身最後の親友が私を哀れん、勝手に婚活アプリを登録してしまった経緯を説明した。「それで、メッセージがいっぱいきちゃって、どうしていいのか全然分からないの」 とりあえず写真は無し、名前を眞子だから『M』、年齢二十九歳と生年月日のみ嘘偽りなく登録している。勿論独身なので、登録する時に独身にチェックも入れて。 たったこれだけの情報なのに、私にメッセージを送ってくる人が多すぎてスゴイ。もうびっくりする。 「こんな所へ登録する男は、みーんな出会いを求めていますからねー。女性とあれば誰でもメッセージを送る人が多いみたいですよぉ」「そうなんだ…やっぱり怖いし使うの止めよう」「いやいやいやいや、勿体ないです! わかりました。日頃のお世話に感謝を込めて、私が眞子先輩にアプリのレクチャーをして差し上げましょう!」 理世ちゃんは、婚活アプリというか、出会い系アプリの達人のようで、詳しくアプリについて教えてくれた。 先ず、登録すると初回サービスである程度のポイントが貰えて、『いいね』を送れるようになるらしい。本来このポイントは、基本的にお金を払ってサイト上で買うらしい。マッチングさせる時や、『いいね』を送る時、このアプリの様々な機能を使う時に、ポイントを使うシステムになっている。 しかし、いきなり初回の相手からポイントを奪取するとなると、利用者が誰も使わないので、ある程度の無料期間やポイントサービスがあるらしい。 因みにこの婚活アプリは『Love Sea(ラブシー)』と言い、女性は登録後三日間だけ、男性に対して無制限で『いいね』を送って相手が『ありがとう
とりあえず、ゆうたさんのプロフィール、更に送ってくれたメッセージを見た。「ゆうた」二十七歳会社員、年収五百万円以下、喫煙しない、飲酒しない、暇さえあれば釣りに行くほどアウトドア大好き。 彼の容姿は、ふわっとした柔らかそうな髪を清潔にまとめていて、カジュアルルックな写真。目は細くて優しそうな印象を受けた。年下なので、どこか頼りない雰囲気があるのは否めないが、可愛らしいのがウリなのかもしれない。――こんばんは、マッチありがとうございます! 僕は都内在住の会社員で、趣味は釣りでアウトドア好きです。とりあえずお友達から始めましょう! メッセ待ってます! Mさんはキャンプ好きみたいだけれど、何処へキャンプ行くのですか?(ゆうた) ゆうたさんは、簡潔な自己紹介と趣味が合いそうだとメッセージをくれていた。メッセージアプリだから、誰からのメッセージで、どのようにやり取りをしているかがすぐに解るようになっている。 話の合いそうな事を相手から質問されていて、会話が途切れないようなメッセージ。心遣いを感じる。初対面だもんね。とりあえず返信しよう。――ありがとうございます。今回、お友達に勝手に登録されていまいました。初心者なので、失礼があったらごめんなさい。最近はキャンプ行けていないです。仕事が忙しくて。ゆうたさんは休日に釣りへ行かれるのですか?(M) 当たり障りのない返事を送ってみた。 続いて見たのは「I.N」さん。三十一歳、ヘルスケアアプリ販売・大手企業、年収八百万円以下をタップすると、ヘルスケアアプリを扱っているだけあり、細くイケメンの雰囲気がした。ツンとした髪が印象的で、堂々と自己写真を利用している事から、自信があるのだろう。プロフィールに登録できる中の写真に犬と一緒に映っている写真もあって、犬好きの模様。――こんばんは。Mさん、マッチング申請ありがとう。僕も読書好き。Mさんはどんな本が好き? 年齢同じだから、敬語なくていいよ!(I.N) はー、流石だなぁ。こっちが会話が続くようにメッセージを送ってくれている。同じ年齢というのもあって口調がくだけているから、話しやすそう。 なんか、慣れてるなぁ。私と大違いだ。――こんばんは。メッセージありがとう。敬語ナシって嬉しいよ。好きな本は恋愛系の小説かな! 犬好きなんだ? 私も好きだよ。I.Nさんの飼い犬、かわいい
お兄ちゃんが呼んでくれた警察の到着にしては早いと思っていた。恐らくスマートフォンを壊されてしまったから、電話が繋がらなくなったことを心配して警察を呼んでくれたには違いないけれど。 玄さん…ここまで戻って来てくれたんだ!! 真っ暗な地獄に一筋の光が差した気がした。 玄さんにこのピンチを伝える方法は無い? ここで彼に帰られたら、私どうなっちゃうんだろう…。 今後を考えるとぞっと背筋が寒くなった。 なんとかしなきゃ! 周りを見渡した。せめて音を立てるなにかがあれば…。すると、先程ハンドバックが散らばった中身の中に玄さんがくれた防犯ブザーが見えた。黄色いブザーを見ただけで安堵の涙が溢れてくる。 玄さんはいつでも、私を助けてくれるんだね―― 彼に勇気をもらった私は自身に喝を入れ、ガムテープで巻かれた不自由な身体をくねくね動かし、近くに転がっていた防犯ブザーを手にした。プラスチックの感触、それにボタンの場所を確認し、そっとリビングへ続く廊下から続いている玄関を見た。顔だけを覗かせ、聞き耳を立てて待つ。今はまだ押す時じゃない。 こちらには目もくれず、Takaさんはドアスコープを必死になってのぞき込み、来客を確認中だ。良かった。私の動きには気づかれていない。 「チッ、手帳持ってやがる。本物の警察みたいだな」 ドアスコープごしに警察手帳を確認したらしく、ぶつぶつ言いながらTakaさんが扉を開けた途端、ガンっと玄関の鉄扉を蹴るような鈍い音がした。よく見ると外から長い脚が伸びており、玄関をすぐに閉められないように彼は仁王立ちしていたのだ。――玄さんが来てくれた!!「お前っ…さっきの男!」 Takaさんは先程盗撮していた相手の玄さんだということに気付いたらしく、怒った声を出した。慌てて玄関を閉めようとノブに手を伸ばしたが、それを見越して玄さんが玄関の扉を塞いでいるので、扉を閉めることは叶わなかった。「クソっ、なんで!」「眞子はどうした? それに、アンタは誰だ。こ
「なんで? どうして眞子は僕の言うことが聞けないの! 僕が提案しているんだからさぁ、素敵って言えよッ!!」 今まで温和だったTakaさんの態度が一変し、激昂した。「君は僕の運命の彼女なんだ! 僕と食事もして楽しい時間を共有しただろう! だからもう僕たちは結ばれる運命なんだっ! それなのに他に男を沢山作って遊び歩いて、僕がどんなに傷ついたと思う? ねえ、解るかなあっ!?」 大声で怒鳴られて身体がすくんだ。 怒鳴り散らす男の人は初めてだから、どう対応していいのか全然わからない。 逆らったらさっきのスマートフォンみたいに壁に叩きつけられちゃうの? 怖いよ、誰か助けて…。 玄さん―― 涙が止まらなくなってしくしく泣いた。「おっと、ちょっとキツく言い過ぎたね。でも泣いてもダメだよ。ちゃんと僕との愛を誓うまで、赦さないから」 Takaさんに詰め寄られていると、ピンポーン、ピンポーン、と再びインターフォンが鳴った。 もしかして、お兄ちゃんが呼んでくれた警察――? 『警察です! すごい声が聞こえていますけど、大丈夫ですか!?』 どんどんどん、と外から連続で扉を叩く音がした。 お兄ちゃん! ちゃんと警察呼んでくれたんだ…。 危うく腰からくだけそうになったけれどここで倒れるわけにはいかない。なんとかしないと!「チッ。面倒だな」 大丈夫ですか、開けて下さい、と、どんどんどん、という扉を叩く音が交差する。お願い、帰らないで――! 心から必死に祈った。「このままだと帰りそうにないな、仕方ない、一旦対応するか」 苛立ちを隠し切れず、Takaさんは頭をガリガリと掻きながらぶつぶつ呟いた。やがて心を決めたように、私の方を向いた。「眞子、絶対声を上げちゃだめだよ。大人しくしていないと、これで切るからね」 まだ手に持っていた玄関を突破する時に利用したチェーンカッターを、目の前に突き付けられた。カ
「もうこれで安心だよ。眞子を誘惑する悪い男たちは断ち切ったから。僕たちの仲を引き裂く悪い奴は、ぜーんぶ排除してあげるからね」「いやっ…! こ、来ないでっ……」 恐怖で引きつる。抵抗さえできず、Takaさんから逃げるように後ずさりするのが精いっぱいだ。「来ないでなんて酷いこと言うなよ! 僕以外の男とは関係を持てるくせに!」「ち、ちがっ、っ……!」 言葉にならなくて必死に左右に首を振った。「じゃあこれはなに?」 Takaさんが自分のスマートフォンを操作し、写真を見せつけてきた。 先程のキャンピングカーで交わした、玄さんとのキスシーンがそこに収められている。「な、ん、で…っ……!」 盗撮されていたんだと気づいた。Takaさんは一体、なにが目的なの?「綺麗に撮れているでしょ? もうすぐ眞子が帰って来ると思って外で待っていたんだよ。今日はやっと眞子の家に入ることに成功したから、ずっとここで過ごしていたんだけど、サプライズで外で待っていたらこんなシーンに遭遇してさ。いやぁ、怒りを抑えるのに苦労したよぉ」「ひっ…!」 嗚咽が漏れる。留守中自宅にずっと侵入されていたなんて……! 考えただけで恐怖が全身を貫く。毛穴中が開き、ぞわっと鳥肌が立っている。 あまりの気持ち悪さに眩暈がして吐きそうになった。 「眞子はどうして僕を裏切ったりするの? こんなことをしても僕の君への愛は変わらないよ? もうこんなことをするのは止めようね」 ニタニタしながら言うTakaさんが怖くて後ずさりしていると、いつの間にかリビングまで後退していて、そこに置いてある小さなソファーにぶつかってバランスを崩した。はずみでその上に置いていたハンドバックが倒れ、バラバラと中身がこぼれ出た。証拠用に持ち歩くため、中に入れっぱなしにしていた封の切った状態の白い封筒も一緒に落ちた。「あ、これ、読んでくれたんだね。良かった」猟奇的と言えるような笑みを浮かべながら、Takaさんが落ちた封筒を拾い上げた。 えっ…?
この情景が目の前で行われている事が現実に思えなくて息を呑んだ。 なぜ、どうして、と頭が真っ白になる。 開けられた扉はきちんとかけておいたドアチェーンに阻まれ、全開になる事は無かった。そのため、ひとまず安堵できた。ほっとしたら涙が滲んでくるが問題が解決したわけではない。「あーあー、ドアチェーンなんか掛けちゃって」 Takaさんはやれやれ、という顔をほんの少し開いた扉の向こうで見せた。「あ…Takaさん、なんで……どうしてっ、わ、わたし、の家の鍵っ……!」「なああーんだ、そんなこと? 簡単だよ、合鍵を作ったんだ」 ニタぁ、と歪んだ笑みが扉の向こうに見える。気持ち悪い笑みは更に恐怖を煽った。「最近は便利だよね。カギの救急車とかサービス満点な会社がいっぱいあるからさ」「か、勝手に…そんなことしてっ、は、犯罪だからっ!」 更に声がうわずる。もう怖い。 どうしよう、どうしよう、誰か助けて――! 「犯罪じゃないよ。僕たちもう付き合っているじゃないか。それなのに複数の男と浮気したりして、眞子は酷い女だよ。僕の運命の彼女がビッチだなんてマジで赦せないな。――でもね、僕は心が広いから、赦してあげるよ。魔が差すこともあるよね。だから話し合おう。ここを開けて?」 あまりの恐怖に声が出ない。ただ激しく首を振った。スマートフォンを操作したくても、指が氷漬けになったみたいにぴくりとも動かせない。「あ、そ。知ってた? ドアチェーンなんてクソの役にも立たないんだよ、眞子」 Takaさんは大型のチェーンカッターを持参していたようで、数センチ開いたドアの隙間からカッターを器用に入れ、いとも容易くチェーンを切ってしまった。「っ…!!」 目の前で無残に切られたチェーンが、途中からだらしなく垂れ下がった。私を守ってくれる小さなチェーンはいとも簡単に壊され、惨めな姿を晒している。「念のために持ってきておいて良かったよ。優しく言っ
「どちら様ですか!」 私のマンションは築ン十年と経っているため、古いから家賃が安い。従って、ドアも簡易的、インターフォンに画面が付いているような、今風のセキュリティー抜群な場所ではない。玄関の扉越しに、来客に向かって怒鳴るように言った。 けれども返事は無い。 代わりに、ピンポーン、ピンポーン、とインターフォンが鳴り響く。 仕方なくドアスコープから来客を確認した。予想通り、Takaさんが玄関に立っている。 どうしてここにという間抜けな疑問が頭を掠めるが、恐らくあおいさんにある程度の私の情報を聞いて、後は独自に調べ上げたのだろう。粘着質な感じの人だったし、あおいさんから見せられた気持ち悪いSNSの文章や、隠し撮りした写真を許可も無く平気でアップする神経とか、総合的に考えると色々納得がいく。『眞子、すぐそこにいるんだろ。ここ、開けてよ』 ドアスコープを覗いていると解ったTakaさんは、ニタニタと笑いながら言った。名乗ってもいないのに、私の名前までちゃんと知っている。 その姿の気持ち悪いこと! 恐怖しか感じなかった。 『まーこー』 背筋が寒くなる。名前を呼ばれるだけで、背中を虫が這いずり回るようにぞわぞわと悪寒が走った。本当に気持ち悪い!「か、帰って!」声を上げ、反撃に出てみる。恐怖で声が上ずった。『つれない事言わないでよー。僕と君の仲じゃないか』 どんな仲よ!「か、帰って、く、くれないと、け、警察呼ぶから!」 声は上ずったままで舌がもつれる。しっかりしろ、と握りこぶしを固めた。『それは困るなぁ。そうだ、家の中で話し合いしようか。眞子は僕のことを誤解しているだけだから、その誤解を解きたいな』「誤解なんか、し、していないし、そのまま帰って!」 嫌なものは嫌だと訴えられるようになった私は、Takaさんに反論した。家の中だという安心がある。そうだ! この際自分で110番すれば―― 下駄箱の傍の
長く甘いキスを交わし、正式に恋人同士に(お試しだけど!)になり、夢うつつのままマンションの自宅の玄関前に到着。 キスの余韻を思い出すと、もっと玄さんと触れ合いたかったと思う。でも、まさか自分が名前すらも知らない男性と恋に落ちるとか、お試し付き合いを決めちゃうとか、そんなことになるとは思わなかった。 よく考えなくても色々アウトな気がする。理世ちゃんに言ったら『絶対やめた方がいいです、詐欺られますよ』とお叱りを受けそうだ。 でも信じるって決めたし。 けど素性がわからないのは不安になる。 私はプルプルと首を振った。家の前でおかしな行動をとっていないで、早く入ろう。 鍵を穴に差し込むと、ほんの少し違和感を感じた。なんだろう? 普通ならスムーズに入って左に回すと鍵が開錠される。なのに、ものすごく固くて回りにくい。冬場は寒さの影響でサムターンが縮むのか、鍵を開錠するのに苦労する時があるけれど、それとは違う。 おかしいな。夏なのに。今までこんなことはなかった。 固い扉を何とか開錠し、扉を開けるとむせかえる熱気に包まれる。 蒸し暑い室内が、閉め切っていたせいで温度が上がりすぎたのかな、と思って軽く換気し、バーベキュー等で利用した荷物を開けた。利用した網やトングを洗って、ごみを分別しなきゃ! ピルルルル ピルルルル あれ。電話だ。私のスマートフォンが鳴っている。お盆休みのこんな時期に一体誰かな?『眞子、元気か?』「お兄ちゃん!」 電話はビデオ通話アプリで、五歳年上の兄、清川智樹(きよかわともき)からかけられたものだ。お兄ちゃんは今、実家に義理姉と帰省中だ。連絡があったということは――「もしかしてっ、赤ちゃん産まれたの!?」『ご名答! ついさっき、産まれたんだ』「わぁ…! 良かったね、おめでとう!!」 自分のことのように嬉しくて、つい大きな歓声となった。「今日は遅いから明日にでもお見舞いとお祝い持って行くね! あ、産後だから栞(しおり)ちゃん身体辛いかな? 遠
瞬く間に時が過ぎて帰宅時間となった。片づけを終えて夕方に自宅まで送って貰った。自宅到着後、帰り際の車内で真剣な顔をした玄さんに話がある、と引き留められた。「なあ、眞子。お試しでいいから俺と付き合ってくれないか? お互いのことはこれから知って行けばいいと思う。今日は君の言葉に沢山救われた。俺は眞子を大事にしたいと思う。決して裏切ったりしないと約束する。だから前向きに考えて欲しい。まだ出会って間もないけれど、俺はもっと眞子のことを知りたいと思う」「玄さん…」 嬉しさ反面、本当に大丈夫かという気持ちが狭間で揺れた。 勇気を出して付き合いたいと伝えるつもりだったのに、臆病風が吹いてしまう。 でも、これじゃダメだよね。自分から一歩踏み出さないと! 玄さんに自分の気持ちをちゃんと伝えなきゃ。「玄さんの気持ちは、すごく嬉しい。私も、玄さんのことが気になっているのは事実よ。だから、このままお付き合いしたいと考えている。でも、心配なこともあるの」 今しか言うチャンスは無いと思い、意を決してお願いしてみた。「私達、未だ本名も知らないじゃない? せめて、本名を教えてくれないかな。できれば免許証とか見せて欲しい」「…そうだよな。眞子がそう思うのは当然だ。本当は素性もきちんと話して、フルネームも名乗って、眞子を安心させたい気持ちはあるけれど、でもごめん。まだ時期尚早なんだ」 玄さんは瞳を伏せ、悲しそうな顔を見せた。本名名乗るだけで時期とかあるの? 彼の態度で一気に不安になった。 「ごめん。名を名乗れないのは理由があるんだ。本名を言ってしまうと、俺がどんなヤツか、ネットで調べただけですぐわかってしまうんだ。多分、どこかで聞いたことがある名前だから、調べなくてもわかるかもしれない。勝手を言っているのは重々承知だけれど、素性を告げるのはもう少し待ってくれないか。周りの説得も必要だし、これについては三か月、お試し期間として時間が欲しい。三か月後には、包み隠さずに素性を話す。免許証や身分証明できるものを君に見せる。約束するから」
周りが綺麗になった頃に丁度炭の火加減がいい感じになる。 予め野菜や肉等の材料は食べやすく切ってきたので、専用グリルの上に網を置いて焼けるまでに時間のかかる食材から並べていく。「手馴れているな。いつからキャンプをやっているんだ?」「昔、高校生の時にクラブでサマーキャンプに参加してからかな。大勢でやったキャンプがとっても楽しくて。一人でも、大勢でも、どっちでも楽しめるからキャンプにハマっちゃったの。だからこの前のお泊り保育、本当は大自然のキャンプをやりたかったんだけれど、園児たちをテントに寝かせるっていうのは、ちょっと厳しいから断念したんだ。でも、いつかやってみたいな」「今、貸しバンガローとか沢山あるから、テントが厳しければそういう施設を貸し切ってやればできるんじゃないの?」「あ、そうだね! テントに拘って考えていたけれど、そっか、そういう手もあるね! よし、来年やってみよう」「グランピングなんか流行っているから楽しいかもな」「ホントだね。やりたいなぁ。でも、グランピングは高いから、予算が…」「そうか。園行事にするにはグランピングは高額か」「だったら、安く借りられる所を探してみようかな」「いいんじゃないか。来年のお泊り保育は楽しそうだ」 玄さんのアドバイスのお陰でアイディアがむくむくと膨らんだ。でも私、来年まで頑張れるのかな。なにかあるごとに羽鳥さんを思い出しては憂鬱になってしまう。正直辛い。 「玄さんはお仕事で嫌なことがあったらどうしているの?」 憂鬱気分が抜けない。玄さんはどうしているのか気になったので聞いてみた。「今のでモンペを思い出したのか?」 急にお仕事の話を振ってしまったからか、玄さんに胸の内を当てられた。こういう所、観察眼が鋭いな、って思う。「わかる? 園の事を考えると、どうしてもモンペのことがセットでくっついてきちゃう。もう、ホントいや」「それだけのことをされたら辛いよな。でも、この前はしっかり言い返せたし、嫌がらせの手紙も証拠を押さえて排除すればいい。眞子が気に病む必要はない」
「あのね、玄さん」「ん?」 玄さんが優しい眼差しを向けてくれた。反社ですか、って聞いてみたい。けど――「焼き鳥食べてる? おいしいでしょ」「ああ、すごくうまい。眞子はいろんな店を知っているな。また教えてくれ」 絶品つくねを頬張る姿も絵になる。そんな彼に、どうしても聞けない。踏み込めない。 焼き鳥がおいしいなんて、どうでもいい話をしたいわけじゃないのに。「眞子さ」「なに?」「盆休みって暇?」「あ、うん。暇だよ。幼稚園休みだし」「俺も休み取れそうだから、デートしない?」「えっ。したい!」「どこ行きたい?」「じゃあ、玄さんといっぱいお喋りしたいから、ドライブデートがいいなぁ」「海でも見に行くか」「それもいいけど、よかったらキャンプしてみる? 楽しいよ」「えっ。テントで寝るの?」「うん。そうなの。それが意外に楽しくて、ハマっちゃうんだけれど…玄さんは寝袋なんかで寝ないよね?」「寝たことは無い。でも、やってみたい」「じゃあ、とっておきの場所でデイキャンプして、一泊キャンプは秋の涼しくなった時にやろうよ。お店は大丈夫? お盆休みだったら定休日は関係ない? 定休日が都合いいなら、合わせるよ」「定休日は無いんだ。年中無休」 年中無休? ますます業種がわからない。お子様も利用するって…もうファミレスしか無いよ! でも、昨今のファミリーレストランは、元旦は休みだったりするところもあるし、もう、謎すぎる!! 焼き鳥やでそんな会話を交わし、さらに日にちは過ぎ、お盆休みに入った。玄さんとデイキャンプに行く約束をしていたので、私ははりきって準備をした。 普段はソロキャンプばかりなので、持っている道具だけでは椅子が一脚しかなかったり、テーブルが小さかったり、足りないものが多く感じた。 玄さんにも楽しんで欲しくて、キャンプ専門店に行ったり通販を利用し、今日を楽しめるように用