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それ初耳なんだけど!?

last update Last Updated: 2025-05-26 19:01:50

ケイロの発言に驚きながらも、俺はそれを止めることはできなかった。

物は言いよう。異世界に行くってことは言わずに、だけど事実はしっかり伝えている。

どこまでも真っ直ぐに伝えるケイロの横顔を、俺は目を見開きながら凝視する。

お前なあ……もっと慎重になれよ! ってか、言うなら事前に相談してくれよ! 俺はケイロと違って図太く生きられないんだからな! と恨み節を心の中でぶつける気持ちが一番大きい。

だけど――本当に逃げずに、ケイロなりに向き合ってくれてるんだなっていうのが伝わってきて、嬉しい気持ちもあった。

ケイロの話を聞いて、母さんが息を呑む。

「圭次郎くん……これは冗談じゃなくて、言葉通りに受け止めていいのね?」

「ああ。ぜひそうして欲しい」

「つまり大智は……」

母さんが持っていたスプーンを置き、小さく手を震わせながら口元を覆う。

信じられないって表情だ。

うん、分かる。

いきなり出会って間もない俺たちが、卒業後に遠い地で共に支え合って生きるだなんて晴天のへきれきだと思う。

きっと少しずつ理解していく内に、焦りとか、もっと考えなさいっていう怒りが湧いてくる――ん?

なぜか母さんの目が輝き始めた。

「圭次郎くんが卒業と同時に起業して、右腕として雇ってくれるってことなのね! 一学期の成績がボロボロだったから、進学も就職もどうしようって思ってたのに……イケメン同級生の元に就職内定だなんて、良かったわぁ!」

ケイロの話を聞いて、母さんが勝手に脳内変換しちゃった!?

まあ、確かにケイロを支えるってことは、右腕の腹心的な存在になるってことでもあるから、あながち間違ってはいないような……? 

ってか母さん、俺にあれこれ聞かずに「しっかりやりなさいよ」って言ってたけど、実は目が潤むほど心配してたのか。やっぱり親だし心配して当然だよな……でも、なんか一気に浮ついてないか?<

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  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   過ぎてしまえばこれぐらいどうってことないけど……

    ◇◇◇夕飯を終えると、ケイロはアシュナムさんたちの分のカレーが入った容器を手にして帰っていった。家族二人になった後の母さんは、それはもうミーハー丸出しに興奮しながら後片付けをしていた。俺にケイロと何があったか教えて欲しいと興味津々で聞いてくるし、別にいいだろって突っぱねてもしつこいし、明日の弁当を作らないって人質ならぬ弁当質を取ってくるしで、俺は観念して差し障りのないことを話した。特に球技大会で優勝したって話が母さん的にはクリティカルだったらしく、「これぞ青春ね!」とはしゃいでいた。……蓋を開けたら青春なんて爽やかさの欠片もない、愛欲まみれの関係なんだけど。心の中で遠い目をしながら、俺は素直に喜ぶ母さんを見つめるばかりだった。母さんの片付けと、根掘り葉掘りの俺とケイロの友情馴れ初め語りに一区切りつけた後、俺は自分の部屋に戻る。ガチャッとドアを開けると、「遅かったな、大智」ここが自分の部屋だと言わんばかりに、ベッドの上で脚を組み、ニヤリと笑うケイロがいた。バタン。 しっかりドアを締めると、自動的に防音魔法が発動して声が部屋から漏れなくなる。どれだけ大声を出しても大丈夫。準備はオッケーだ。 俺は思いっきり息を吸うと、一気にケイロとの距離を縮め、ガシッと両肩を掴む。そして体の力が抜けるのを堪えながら、ケイロの体をガクンガクンと振りまくった。「ケイロ、お前なあ……っ! 心臓に悪いことを勝手にするんじゃねーよぉぉっ! 生きた心地がしなかったんだからな!」「だが問題なかっただろ?」「結果論だし! あんな母さんだったから良かったけど、普通なら怪しまれて反対されるからな!」俺に体を揺さぶられながら、ケイロは平然と言い返してくる。「さすがに俺も人となりを知らずに動く真似はしない。大智が赤点補習とやらをやっている間に母親と接触して、やり取りを重ねてきたんだ。その上で話をしても大丈夫だと判断した」「ちょっとは考えてやったみたいだけど、それでも俺に前もって言えよぉぉ

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   それ初耳なんだけど!?

    ケイロの発言に驚きながらも、俺はそれを止めることはできなかった。物は言いよう。異世界に行くってことは言わずに、だけど事実はしっかり伝えている。どこまでも真っ直ぐに伝えるケイロの横顔を、俺は目を見開きながら凝視する。お前なあ……もっと慎重になれよ! ってか、言うなら事前に相談してくれよ! 俺はケイロと違って図太く生きられないんだからな! と恨み節を心の中でぶつける気持ちが一番大きい。だけど――本当に逃げずに、ケイロなりに向き合ってくれてるんだなっていうのが伝わってきて、嬉しい気持ちもあった。ケイロの話を聞いて、母さんが息を呑む。「圭次郎くん……これは冗談じゃなくて、言葉通りに受け止めていいのね?」「ああ。ぜひそうして欲しい」「つまり大智は……」母さんが持っていたスプーンを置き、小さく手を震わせながら口元を覆う。信じられないって表情だ。うん、分かる。いきなり出会って間もない俺たちが、卒業後に遠い地で共に支え合って生きるだなんて晴天のへきれきだと思う。きっと少しずつ理解していく内に、焦りとか、もっと考えなさいっていう怒りが湧いてくる――ん?なぜか母さんの目が輝き始めた。「圭次郎くんが卒業と同時に起業して、右腕として雇ってくれるってことなのね! 一学期の成績がボロボロだったから、進学も就職もどうしようって思ってたのに……イケメン同級生の元に就職内定だなんて、良かったわぁ!」ケイロの話を聞いて、母さんが勝手に脳内変換しちゃった!?まあ、確かにケイロを支えるってことは、右腕の腹心的な存在になるってことでもあるから、あながち間違ってはいないような……? ってか母さん、俺にあれこれ聞かずに「しっかりやりなさいよ」って言ってたけど、実は目が潤むほど心配してたのか。やっぱり親だし心配して当然だよな……でも、なんか一気に浮ついてないか?

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   まさか……隠す気がないのか?

    俺はソファに座りながら、キッチンカウンター越しにケイロと母さんが並んで料理を作る光景を見つめる。夢でも見ないような、夢みたいな状況だ。もしここにアシュナムさんたちが居たら、きっと俺と同じ気持ちになるかも……いや、ケイロに長く振り回されて人となりを熟知しているから、俺以上に驚くような気がする。王子だから自分の国では料理なんてしたことないだろうし、こっちに来た後も未経験だと思う。それでも母さんに質問しながらだけど、野菜を切ったり皮を剥いたりする姿は板についていた。しばらくして、食卓に夕食が並ぶ。今日は夏野菜カレーとサラダだ。まだ食べていないのに、カレーの匂いで既に口の中が美味しい。キッチンから戻ってきたケイロと母さんが椅子に座ると――俺の隣にケイロが来たから、体がうっすら疼いて困る――俺たちは手を合わせた。「じゃあ、いただきます……あ、うま。でもいつもより少し辛味が強いような……?」カレーを一口食べて、俺は思わず感想を漏らす。テーブルの向かい側から、母さんがワクワクした目で俺を見てくる。「ちょっと味付け変えてみたのよ。大智はどっちが好きかしら?」「前のヤツよりこっちのほうが好きかな。辛さで味が引き締まってる気がするし、今日も暑かったから口の中がスカッとして良い感じ」素直に思ったことを伝えると、なぜか隣からフッとケイロの勝ち誇った笑みが聞こえてきた。つられたように母さんも嬉しげに笑う。「良かったわー。実はね、圭次郎くんに味付けを調整してもらったのよ」「……え?」「こっちの味付けのほうが大智は好きだって、圭次郎くんが提案してくれたんだけど……まだ引っ越してきて二ヶ月も経ってないのに、大智のことよく分かってるわー。愛だわ、愛」ごふっ。母さんの発言に、危うく盛大に口の中のものを吹き出しそうになる。どうにか堪えたけど……愛って

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   遠回りな正攻法

    どうやって話を聞き出そうかと考えていると、母さんがニコニコしながら教えてくれた。「夏休み入ってからね、たまたま買い物帰りに圭次郎くんとばったり会ってさ、なんと重そうだからって持ってくれたのよ! イケメンなのに優しいって、サイコーでしょ!」お、おう……いつの間にそんなことが起きてたとは。ケイロも相手によっては猫被れたのかーって驚きよりも、母さんのハイテンションっぷりのほうに圧倒されてしまう。たまたまばったり?ただの親切心でケイロが手伝うなんて考えられない。何か狙いがあるはず――。ケイロの意図を読もうとする俺だったけれど、「しかも仕事お疲れ様って労ってくれるし、夕食の準備も手伝ってくれてさ、もう母さん幸せ過ぎて心の栄養満タンよー! イケメン成分で夏バテ知らずのお肌ピッチピチよー!」ちょっ、落ち着いて母さん! ケイロがイケメンなのは認めるけど、コイツ本当は超俺様天上天下唯我独尊王子だから! 騙されるなよ……っ。母さんがイケメン好きなのは知ってたけど、こんなにテンションがおかしくなるとは思わなかった。あまりのはっちゃけぶりにケイロも呆れ返っているだろうと思ったら、案外と悪い気はしていないようで、なぜか俺に勝ち誇った笑みを浮かべていた。お前……母さんの反応に喜ぶなよ。褒め称えられて嬉しいなんて、まだまだガキだな。大きな溜め息をつきながら、俺は冷蔵庫に近づいた。「はいはい、タダで健康と若返りの術を手に入れて良かったなー」「棒読みはやめてよ。心が籠もってないじゃない」「ごめんな百谷。こんな落ち着きのない大人の面倒見てもらって……」母さんの文句を軽くスルーしつつ肩をすくめる俺に、ケイロはフッと得意げに口端を引き上げた。「気にするな。目上の女性を敬うことは当然だ。それに俺にも利があるからな」「利? 何があるんだよ?」「料理を分けてもらえる……アイツら……いや、兄たちの料理は食べられるだけで、美味しいとは言い難い」ほんの一瞬、ケイロが遠い目をする。なるほどなー。アシュナムさんもソーヤさんも、家事をし慣れていなさそうだもんな。こっちとあっちで調味料も食材も、調理法も違うだろうし。でもそれだけじゃないだろ?俺が目を合わせて視線だけで尋ねると、ケイロは短く頷いた。「それに長期の休みだというのに学校へ行かざるを得ない大智を、労ってやれるからな。

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   俺、パラレルワールドに迷い込んじゃった?

    「今戻った。頼まれたものを買ってきたぞ」いつも通りの偉そうな物言いをしながら、ケイロが堂々と俺ん家の玄関で靴を脱ぎ、中へ上がってしまう。これは……いったいどういうことだ?目の前の光景が信じられなくて呆然としてから、俺はハッと我に返る。慌てて靴を脱いで、前に倒れそうになりながらケイロに追いつくと、勢いよく肩を掴んで歩みを止めてやった。「何をするんだ大智? 痛いだろ」「いや、お前、だって……ここ、俺の家だぞ? お前の家は隣りだろうが」「……どうした? 突然当たり前のことを言い出して……そんなこと、言われずとも分かっている」うう、ケイロの肩掴んでると力が抜ける……気を抜いたら廊下に座り込んで、発情期の猫みたいに身悶えそうだ。だけど俺は腹に力を入れて、根性で体の疼きを抑え込んで、ケイロを先に行かせまいとする。まったく理解できないと怪訝そうにするケイロに、俺はボソッと囁いた。「リビングのほうに行ったら、母さんと鉢合わせするぞ。お前が顔出したらビックリして、帰った後に興奮してお前のことあれやこれや俺に聞いてくると思うから――」俺の家はリビングとキッチンの間にカウンターがあるタイプで、どっちもよく見える。もしケイロがリビングに入ったら、隣の塩対応イケメン男子がやってきたーって、母さん大興奮間違いなし。そんでもって、俺とケイロの距離感が実は近いってすぐに見抜いて、積極的にご近所付き合いしようとするハズ。となれば、まだまだ隙だらけの百谷一家だ。母さんに異世界の何かを見られかねない。俺はもう巻き込まれて手遅れだからしょうがない。でも母さんまで巻き込むのはゴメンだ! 絶対阻止だ!俺の中でエロい疼きよりも、使命感のほうが上回る。グググ……っとケイロの肩に指を食い込ませ続けていたら、ドアの向こうから声が飛んできた。「あら、おかえり圭次

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   ケイロの買い出し?

    ◇◇◇午後の補習も終えて、俺はぐったりしながら帰路につく。夕方が近いけれどまだ空は明るく、アスファルトからムワッと漂ってくる熱気が息苦しい。補習で疲れたっていうのもあるけど、しばらく悩んでいるせいで頭がヘトヘトだ。早く家に帰って休みたい……。リビングのソファで、ぐてーんと横になってアイス食いたいなあ。……そういえば、ケイロの国にも夏ってあるのか?剣と魔法と精霊が当たり前の世界だから、ここよりは暑くないような気がする。でも湿気は凄そうな気が――。取り留めのないことを考えながら歩いていると、「こんな時間まで補習とやらを受けてたのか、大智」突然隣からケイロの声が聞こえてきて、思わずビクッと俺の肩が跳ねた。「い、いつの間に……っ!? 急にそばで話しかけてくるなよ、ビックリするだろ」条件反射で声から離れるように横に跳んで顔を向けると、隣で買い物袋を持ったケイロが不本意そうに目を据わらせていた。「我が嫁を見かけて声をかけることの何が悪い?」「……普通は悪くねぇけど、俺らは例外だろ……近くに寄られたら体がまともじゃなくなるんだから」実は最近はケイロに視線を向けられるだけで体が疼く。どんどんいやらしさが増している体が情けないやら、呆れるやら、さらに酷くなったらどうしようと心配するやらで、俺の心の中がグチャグチャだ。責任取れって怒鳴りたくなっちまうけど、結婚しちゃってるから既に責任は取ってるし、口にしたが最後、抱き潰されコース突入が確定しちまう。グッと本音を堪えてから、俺は気を紛らわすために別の話を振る。「ところでお前が買い物してくるって珍しいな。買い出しってアシュナムさんかソーヤさんの役目じゃないのか?」俺の問いかけに、なぜかケイロが得意げに笑う。「普通はそうだな。だが、これは特別だ」「特別?」

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