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性格の悪い妻に憑依したので、迷わず離婚します

Author: カヤ
last update Last Updated: 2025-06-09 19:27:43

 ……珍しい?

 アデリナは性格の悪い妻で、ローランドの事を完全に私物扱いしてたから、気に入らない事があれば悪口ばっかり言ってたんじゃないの?

 「あら。

 じゃあ普段の私(アデリナ)はいつもローランドの事をどんな風に(悪口)言ってるの?」

 「はい……?」

 この侍女から言わせれば、自分の事なのにまるで他人のように尋ねる私が不審に思えてならなかっただろう。

 茶色の髪にちょっと細い目。

 背も小さめで可愛らしい。

 見た目には随分と大人しめな若い女性。

 まさに本場の外国人メイドといった黒いワンピースに白いエプロンを身につけている。

 その侍女は、少しだけ緊張を緩め粛々と言った。

 「そう、ですね…アデリナ様はいつもローランド様をベタ褒めしておいでです。」

 「そう……私がローランドを。

 ……褒め………!?えッ!?」

 「はい。いつもお恥ずかしそうに顔を真っ赤にし『今日、ローランドが召していた服は私が特別に王室御用達の衣装係に作らせたものだ、とても似合っていた、素敵だったわ。』と。

 『廊下ですれ違った時に睨まれたの。ドキドキしたわ。さすがローランド。目で人を惚れ殺せる天才ね。』『今日、4日ぶりにローランドと一緒に食事をしたの。イケメン過ぎてあんまり顔見れなかったけど、幸せだったわ。』とも。

 アデリナ様はいつもこの様にローランド様をベタ褒めしておいでです。

 だから悪口など仰ったのは今夜が…初めてではないでしょうか?」

 なん………ですって………!??

 間違いありませんと、侍女は何を思い出しているのか頬に手を当てうっとりとして瞼を閉じた。

 「ちょっ……っと待って……

 じ、じゃあアデリナは……まさか、ローランドの事を本気……で?」

 「あ、アデリナ、様…?」

 まさかそんな筈はないと願って、侍女の肩を無意識に強く掴んでいる。

 「……アデリナはローランドを自分の財布だとか、何をしても怒らない道具だとか、自分の私物だとか思ってるわけじゃなくて…?」

 「は…はあ。左様です。

 アデリナ様は結婚されてからずっと、ローランド様を物凄く愛されていらっしゃるではないですか?…一体どうなされたのですか?」

 一体どうなされたのか……?

 そんなの…私だってアデリナに聞きたい!

 この身体の持ち主は一体どこに消えちゃったのよ!?

 それに……アデリナ。あんた。実はローランドの事をそんなにも愛してたの……!?

 え?そんな描写、小説にあったかな?

 だとしても……アデリナ。

 あんたはローランドに嫌われたまま、最後は我が子までも失うんだけど。

 もしかして……アデリナは。

 ただの不器用な女だったってこと!?

 って……不器用すぎるでしょ!!!

 

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     ◇ アデリナ・フリーデル・クブルク。 このクブルク国の王妃。 小国クブルクを他国侵略から守ってやる代わりにアデリナと結婚しろという、マレハユガ大帝国の強引な取引の末に嫁いできた元皇女。 珍しい薄青紫の瞳に、青みがかった黒の髪。 アジア系の顔立ちで息を呑むほどに美人。 美人という設定は悪役あるあるである。 憎まれ役の悪役にせめてもの長所をという作者達のお情けかな? それとも財も権力も美貌もありながら、ヒロインに負けるという展開が、アツいから? 第一皇女として生まれた時から甘やかされて育ってきたアデリナは、傲慢で我儘でとんでもなく性格が悪い。 そんなアデリナがローランドを本気で愛してたなんて……衝撃の事実でしかない。 だって小説がスタートしてからアデリナはただただ性悪妻としてしか登場してこなかったから。 読者がアデリナの悪事の数々に怒り狂い、壮絶なざまあを願う程のキャラだったから。 それがただの不器用な女だったと……? いや、だったらちゃんとローランドに好きって言いなさいよ! って、不器用だったから言えなかったのね。 謎は全て解けた。 だとしたらそんな不器用なアデリナは、ローランドにずっと悪女と誤解されたまま浮気されるという事になる。 まさか戦争を仕掛けてまでローランドを振り向かせたくて? 不憫………! 不憫すぎる! 確かにこの小説の内容を思い返せば、アデリナはローランドとリジーに対して酷いことばかり繰り返していた。 でも愛に飢えている孤独な王と、健気で愛情深いヒロインのリジーの恋はその度に燃え上がっていったのよね。 つい二人に頑張れ! アデリナなんかに負けるな!と、思わずコメントで応援したくなるような。 え?作者天才? 考えてみれば邪悪でしかないアデリナの存在自体が、二人の恋の最強のスパイスだったのかも知れない。 後にローランドに一身に愛を受ける、リジーがヒロインのこの世界。 主役二人の心理描写は毎回当たり前のように登場していたけれど、逆に言えば性悪妻だったアデリナの心理描写なんか全くなかった。 だから、我儘で傲慢で悪事ばかり働くアデリナの本音なんか誰にも分かるはずない。 私は浮気された妻の気持ちが分かるからアデリナを同情の目で見てたけど……  本当は好きで好きでたまらない夫に悪女なんて言われて、浮気

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