はぁ今日も疲れた。
あれから隣街へと交渉へ向かうメンバーが発表された。サラお嬢様、ルーカス、アーノルドさん、そして、お嬢様の世話役として私。 従業員の間で恰好の噂のネタとなった。 ルーカスに付き纏うリナ、 3角関係だとか、 サラお嬢様は騙されているんだとか、周囲は執拗に私を悪者に仕立てていく。 私は、一緒に行くことを望んでもいないのに。 このまま真っ直ぐに帰りたくなくて、 行くあてもなく、ただ遠回りをして歩いていた。 「リナ?」 この声はもしかして……。 振り返ると、こちらへ向かって歩いてくる笑顔の青年の姿があった。 「━━エミリオ」 今、一番会いたくない人。 ルーカスと別れることになった原因の人。 こんな言い方は、失礼ね。 エミリオは、何も悪くないのに。自分の性格の悪さに嫌気がさす。 「あれ、リナの家ってこの辺りなの?」 エミリオは、戸惑う私を気にすることなく、気軽に話しかけてくれる。 「ううん、ちょっと歩きたくて。」 「何かあった?」 お願い優しくしないで。 今、優しくされると、あなたに縋ってしまう。そんなことしたくない。エミリオの問いに何も答えられないでいた。 「あ、そうだ、この辺りによく行く店があるんだけど、良ければ一緒にご飯どう?何か元気ないし、そういう時は美味しいものを食べると元気でるから。あれ、単純かな俺」 屈託のない笑顔が眩しい。エミリオは取引先のお店に勤める従業員だ。うちの商会へ品物を届けてくれたり、新商品の営業に来たりと何かと顔を合わせる機会が多い。 こんな風に帰り道に会うこともあった。 取引先の方だし、何度か食事の誘いを受けたことがある。 今までは……。 でも、ルーカスに誤解されたこともあるし、さすがにもう断わろう。 「エミリオ、私━━」 「荷物重そうだね? 持つよ、さぁ行こう、ね?」 野菜などを購入していた私は、買い物袋を持っていた。エミリオはヒョイッと私の手から買い物袋を取ると、先に歩きだす。 断るつもりだったのに、買い物袋を持つエミリオを追いかける形となり、結局お店まで一緒に来てしまった。 窓辺の席に案内されて、私達は隣り合わせで座った。 どうして来てしまったのだろう……。 こういう曖昧な態度が、ルーカスに誤解されてしまったのに。 そもそもエミリオは、私をどう思っているのだろう。 「リナは、何食べる?」 「えっと、じゃあ、エミリオと同じもので」 「そっか、分かった」 注文を終えて食事を待つ間、居心地が悪くて窓の外を眺めていた。 別に何も悪いことをしていないのに、なんだか落ち着かない。 通り過ぎる人達を見ていると、自分のことを考えずにすむ。 これから帰るのかな、誰か待っているのかな、とか、一人空想の世界へと入っていた。 そんな私を、じっとエミリオが見つめていたことも気づかないくらいに。 食事が運ばれてくると、食欲はないと思っていたのに、一口食べると美味しくて、結局完食してしまった。落ち込んでいる時でも、食事が喉を通るのが不思議だ。 「どう? 少しは、元気なった?」 エミリオは、私を元気づけようと明るく声をかけてくれる。食事中も、他愛もない話題を提供してくれた。 エミリオは優しい。 それはまるで、私に好意があるのではないか、と勘違いするほどに。 私の曖昧な態度も、エミリオへ勘違いさせてしまうものなのかもしれない。 「エミリオ、あの……、もしも、 勘違いだったらごめんなさい。こんな事言うなんて、私なんかが自惚れた発言するようで、心苦しいんだけど……。私ね、好きな人がいるの。その人とは付き合ってたんだけど……。だから、もう、こんな風に2人で食事したりすることは遠慮したいの。あの、エミリオがそんなつもりで誘ってくれたなんて、思っているわけじゃないんだけど!もしそうだったら、その、エミリオを傷つけてしまう?じゃないかと思って……」 店内は食事を楽しむ人が多く、賑わっていた。人々のざわめきが聞こえているのに、返事を待つ間は、2人だけの空間のようにも感じられた。 なんだか居づらくて、もしも勘違いだった場合は、自分の発言が恥ずかしくて、とにかく逃げ出したくなった。 「エミリオ、私、そろそろ帰るね。」 「勘違いじゃないよ」 「━━え?」 「その、付き合っていたってことなら、今は別れたってことだよね?言葉のあやをとるようで悪いけど。俺だって、そんな時につけ込むようなことはしたくない。だから、別にそんなに深く考えないでほしい。リナが迷惑じゃなければ、友人として、こうして時々一緒に会ってもらえたら…嬉しいかな、なんて。はは、都合が良すぎるかな?やっぱり……」 エミリオは、私の気持ちを知ってもそれでも友人としてあろうとしてくれる。 職場で孤立している私にとって、その言葉は荒んだ心にじわじわと滲み入るものだった。 エミリオは優しい。 だから、甘えてしまう自分がいた 「友人…としてなら」 「じゃあ、また誘うね。友人として」 ニコッと私に笑いかけてくれるエミリオ。 最近はいつも気が張っていることが多くて、知らず無表情になっていた。 職場では、誰にも弱い所を見せたくなかったから。 エミリオの笑顔につられて、私も顔が綻ぶ。 エミリオの優しさのおかげで、少し元気になった気がした。体調も回復した頃、私はレナルドお兄様から呼び出しを受けた。 どんな時も表情を崩さないお兄様にしては珍しく、厳しい顔つきをしていた。 部屋の空気も重く感じられ、挨拶もなく用件を述べ始めたことに、私は言いようのない不安を感じた。 「サラ、あれだけ忠告したのに、君には伝わらなかったようだね。 ━━サラ、もう商会を君には任せておけない うちは信用が第一なんだ。 君たち二人揃って仕事を放棄して、何をやっているんだ! ルーカスのことは……君の耳にも入っているよね、健康上の理由だから仕方ないとして、君の軽率な行動は見過ごせない。 まるで、ルーカスに隠し子がいるかのように尋ねて回ったそうだね? 噂が私の耳にも届いたよ。 あぁそれから、君がルーカスを略奪したとか、今はどこかの富豪の愛人だとか色々とね。 いったい、きみは何がしたいんだい? この商会を潰す気なのか!」 「それはっ」 「何も言うな、聞け」 「この商会は私が引き継ぐ。 残念だけど仕方がない。 これ以上醜聞を広めることはできない。 今後、ゴーテルの名を名乗ることは許さないわかるね? ここからの発言は、兄としてだ。 サラ、身体のことは……女性にとってはつらいことだろう、 後継ぎが産めないことは致命的だ。 せめてもの家族の情として、 連れ戻すことはしない。 傷モノのお前の行き場は、限られてくるからな。 それなりの金額は渡す。 だが、そこまでだ。 後は自分でなんとかしろ。 あれだけ仕事がしたいと、女でも自立できると言っていたお前なら、大丈夫だろ? ルーカス達には、生活に困らないように援助をするつもりだ。 こちらにも責任の一旦はあるからな。 お前は二度と関わるな。」 口を挟む隙を与えず言い終えたレナルドは、言い忘れたことがあると付け加える。 「父上に泣きついても無駄だ」 「お父様も…同じ意見なの?」 「父上は、お前に甘い。父上が許したとしても、勘違いするな! 数年して私が当主になったら、すぐに追い出す。 家の汚点のお前を置いておけない。 つけこまれて、足元をすくわれかねない」 「レナルドお兄様……」 「私には━━もう……妹はいない」 レナルドは、一瞥することもなく立ち去った。 こんなにあっさりと縁を切られるとは、思わなかった……。 何をしても許
ルーカスが突然いなくなって、商会の雰囲気全体が沈んでいた。 私が追い出したのではないか、とか陰口も飛び交っていた。 商会のことを放棄することが増えていた自分は、完全に皆からの信頼を失っていた。 以前なら、自分の陰口を耳にすることなどなかったのに……。 ルーカスがどこに行ったのか、気にはなるものの、日々の仕事が滞ることがないように黙々と処理した。 責任者の自分がいるから回っているが、これが逆だったら業務に支障がでていただろう。 そう、以前自分がいなかった時のルーカスの大変さが身に染みて分かった瞬間でもあった。 そこで、ふと先ほど紅茶を用意したことを思い出す。 ルーカスの分を用意していた時の名残りだった。 気分転換に少し休憩をしようと、 カップを取りに向かった。 室内に入ると、誰かが用意していたカップに何か入れているのが見えた。 「何してるの?」 ふいに声をかけると、帽子を被ったその人物は、飛び上がらんばかりに驚いた様子で、慌てて走り出て行った。 不審に思い後を追いかける。 「待って!ちょっと」 走り去る後ろ姿を見失わないように、必死に追いかけた。 こんなに脇目もふらずに走ったのは、人生で初めてかもしれない。 これ以上走るのは無理かもしれない。 体力の限界を迎えそうな時に、 運よく逃走者が転倒した。 起き上がろうとしているところを、必死で後ろから掴もうとした。 その拍子に、被っていた帽子が脱げ落ちた。 隠れていた黒い髪が流れ落ちる。 見覚えがある人物だった。 「あなたは━━メグミさん?」 「あーあ、見つかったわ、ざーんねん、ほんとに悪運の強い人ねあなたは」 「どういうこと、どうしてあなたが商会にいるの?何してたの」 「はははは!何って?ほんとにおかしなお嬢様ね。 あーあ、思ったより元気そうじゃない もっと苦しんでると思ったのに あなたなんかいなくなればいいのに━━ 死ねばいいのに」 よく知りもしない相手から、明確な殺意を向けられて、頭が真っ白になった。 「なーにその顔は?分からない?でしょうね、でも先に奪ったのはあなたでしょ」 「奪う?」 「そうよ、ダーニャが死んで、チャンスだったのに 唯一の子のナタリーを取り込んで、フェリクスの遺産を独り占めする計画だったのに、横から急に入りこんできてさ!
「二人に協力してほしいことがあるの」 私は、全てを打ち明けることにした。 政略結婚から逃れる為に、ルーカスと婚約を結ぶことになった経緯も含めて。 軽蔑されることを覚悟の上で。 そして、自分の行いを悔いて、ルーカスの為にも、リナを探していることを。 最初は、リナの父親へコンタクトをとった。リナに大切な話があるから、居場所を教えてほしいと。 リナは、心機一転出て行ったと、もう構わないで欲しいと一蹴された。 何度もおねがいしたけれど、 用件は自分が伝えるからの一点張りだった。 結局、連絡先は教えてもらえなかった。 仕方なく調査してくれる人を雇った。そして、リナが隣街に住んでいることが判明した。 子供がいることも。 いてもたってもいられずに、教えられた近辺に尋ねて回った。 引っ越してきたのは何年前か、 子供の容姿など、とにかく情報が欲しかった。あれからリナがどうなったのか、気になって仕方がなかった。 タイミング悪く、リナには会えなかったけれど。 「誰にも邪魔されずにリナと話をしたいの。もしも、リナと連絡が取れたら、この邸の部屋を借りてもいいかしら?」 「サラなら、いつでもこの邸は自由に使っても大丈夫だよ。 邸のことはいいんだけどさ、込みいったことを聞くけど、サラはその人と会ってどうしたいのか聞いてもいい? まぁ、私も人のことを言えるほど綺麗な人生送ってないんだけどね」 「━━償いをしたくて」 「償い? サラ、 厳しいことを言うようだけど、その人はサラに会いたくないんじゃないかな。 それでも、会いたいと言うのならば、その人をこれ以上傷つけないようにする努力は必要だと思う。 この先、同じように後悔することがないように」 「えぇ、分かってるわ。 もう、これ以上後悔したくないの。 だから、どうしても彼女に会いたいの!」 固い決意を込めた瞳で、フェリクスを見つめる。 フェリクスは、サラの強い意志を汲み取ると、これ以上止めても無駄だと判断した。 「そう……そこまで決意しているのなら、仕方ないね、応援するよ。 でも、一人で勝手に突き進まないで。 相談して。 いつでも話は聞くから。」 「ありがとう、フェリクス」 いい加減だと思っていたフェリクスだけど、親身になって相談に乗ってくれる一面に胸を打たれた。思わず目が潤ん
✳︎✳︎✳︎ 「何をしている!」 「これは、調べているんです」 「手に持ったものを渡すんだ!」 「それはできません」 「これは何だ!何をいれたんだ!お前は誰だ?」 「何を騒いでいるの⁉︎」 騒がしい声が聞こえてきて扉を開けると、ルーカスとデボラが言い争っていた。 ルーカスは、嫌がるデボラの手首を掴んで、スプーンを取り上げようとしていた。 「ルーカス、デボラの手をはなして!」 ルーカスの手を振り解こうと近づいた瞬間、ルーカスは後ずさった。 まるで、ほんの少しでも私に触れられるのを拒否するように。 嫌われてることは知っているけれど、さすがに傷つく。 「デボラ、来てたのね。大丈夫?どうしたの、そのスプーンは……」 見覚えのあるスプーンをみて、デボラが何をしていたのか理解した。 そして同時に、そのスプーンが変色していることに気づき動揺する。 デボラは無言で頷く。 「ルーカス、デボラは私達を助けてくれたのよ!これは飲んではいけないわ!」 「サラ、また君は……。はぁ、 前にも言ったよね、新しく人を雇う時は教えてと」 新しく雇う? 以前ルーカスは、デボラのことを見かけたから、知らない人がいると驚くと言ったのではないの? 忘れているのかしら。 「飲んではいけないって、君が用意したものだよね?」 「た、確かに私がさっき用意したものだけど、おそらく私が離れた後に、誰かが何かしたのよ!」 「何かしたって、まるで毒でも入ってるみたいに言うんだね」 「多分、毒…かもしれない… 私も驚いてるわ、でも誓って私は何もしてない!」 「はっ!やってないか、犯人の常套句だね。 やはり自作自演か… 少しは改心したのかと、あやうく騙されるところだった。 もう同じ空間にいるのも耐えられないよ! 失礼する」 「ルーカス!」 立ち去るルーカスが少しよろめく。 心配で手を伸ばそうとしたけれど、振り払われる。 ルーカスの顔色が悪い。 よろめくルーカスの様子に既視感を覚えた。 まるで、体調不良だった時の自分のようだ。 大丈夫かしら。 やっとルーカスと挨拶くらいは交わせるようになっていたのに……。 唯一の接点だったのに。 いったい誰が毒を入れたの? 「サラお嬢様、お飲みにならなくて良かった
✳︎✳︎✳︎ ある日のこと。 この日は、珍しくルーカスと鉢合わせた。 極力顔を合わせることがないように、必要な書類などは誰かに橋渡しを頼んでいた。 「お疲れさま」 「あぁ」 無視するわけにもいかないので、挨拶をした後立ち去ろうとした。 「サラ」 呼び止められて、ドキッと心臓が跳ね上がる。 何か文句を言われるのかもしれない。 思い当たることが多すぎて、耳を塞ぎたかった。 逃げるわけにもいかないので、姿勢を正して向かい合う。 すると、射抜くような視線を向けられた。 ルーカスの目をまともに見ることができずに、すぐに視線をそらす。 「新しく人を雇う時は、僕を通すか、一言連絡してほしい。 突然見慣れない人がいると、驚くじゃないか。 あぁ、それとも僕への嫌がらせで知らせないのかな? こっちは君と違って、お遊びで仕事している訳ではないんだよね。 お気楽なものだよね? 気が向いたときだけ働いて、都合が悪くなったらいなくなって。 こっちはその間必死で働いているというのに! せめて一言何か言うことはできないのか? 必死に探し回る僕を見て嘲笑っているのか? 君の署名が必要な書類があったののに……。 悪趣味だね……。まぁ、もっとも、君に何を言っても無駄だろうけど。 あぁ、それにその雇った人には、君は あまり好かれてないみたいだね。 飼い犬に手を噛まれるともいうしね。 せいぜい気をつけることだね」 「ちがう! 彼女は、従業員ではないわ━」 まただわ。 ぐらりと身体がよろめいた。倒れそうになるのを、近くにあった棚に手をついて支えることができた。 ルーカスは、ぴくっと片眉をあげて不審そうな顔をしている。 「はぁ、都合が悪くなったらそういう演技をするのか。 君って本当に……。」 「これは、本当に気分が……」 答え終わる前に、ルーカスは見向きもせずに退室した。 演技ではないのに……。 ルーカスの言っていた見慣れない人というのは、デボラのことだろう。 デボラは、表情に表さないだけで優しいのに。 何も知らないくせに。 あぁ、知らないのはお互いさまか。 いまさらどうしたらいいの……。 こんな私なんて、追い出せばいいのに! 立場上追い出せるはずないか。 分かりきってることなのに。 あぁ、気持ち悪い……。 一度、診
「バタフライピー? あぁ、もしかして彼女は、月のものの最中ではないですか?」 「えぇ」 先程、マリの着替えの介助をしたので間違いない。どうしても不安感が拭えなくて、この邸のメイド達だけに任せることができなかった。特に怪しい動きを見せる者はいなかったので、そこまで監視する必要はなさそうだった。 月経による貧血なのかしら……? 「バタフライピーには、子宮収縮作用があるのです。 アントシアニンという成分が、含まれていましてね。妊娠や月経中に飲みすぎると、出血が止まらなくなる恐れもあるのですよ。 なるほど、それが原因とも考えられますね。 旅の疲れも重なったのかもしれないですね。 しばらく安静に休ませてください。 それではお大事に」 「ありがとうございます」 一人で納得した様子で、医師は立ち去って行く。 長く呼び止める訳にもいかず、お礼を言って見送った。何の根拠もなく疑うのはよくない。まずは、自分で確認することが先決。 さっそく図書室の入室許可をもらい、バタフライピーについて調べてみる。 結果、医師の言っていた通りの内容が書かれていた。 飲食物の成分にまで、気が回らなかった。自分の落ち度に、気が滅入る。 異国の食べ物が口に合わずに、体調を崩すこともあると、聞いたことがあるのに……。マリには可哀想なことをしてしまった。やはり、ここまで連れてくるのではなかったわね。早く回復するといいのだけれど。 不可抗力だったのに、人為的なものではないかと、疑ってしまった自分に嫌気がさす。 あの時のマリの言った言葉が、少しひっかかるけれど……まだ、話せる状態ではないものね。 元気になった時にでも、詳しく尋ねてみましょう。その時は、笑い話になっているといいのだけれど。 ✳︎✳︎✳︎ 数日後。 マリの容態は、芳しくなかった。その為、このままここに留まるよりも、帰国したいというマリの強い希望を聞き入れることにした。 本来なら、回復してから帰国するつもりだったのだけれど。 無理のないように、休憩をとりながらゆっくりと進んだ。 帰り着いたのは、当初予定していた1ヶ月はとうに過ぎていた。 マリは、療養を兼ねて実家へと帰すことにした。 早く元気になってほしいわ。 この出来事は、何年も後に思い出すことになる。 ✳︎✳︎✳︎ 「サラ!よく来てくれ