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第1部 一章【財前姉妹】その12 第三話 ウソツキ剛太

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-07-10 10:00:00

154.

第三話 ウソツキ剛太

 佐々木剛太(ささきごうた)は破天荒な見た目に似合わず、とてつもない守備力の高さを誇る完全守備派雀士であった。

 ある雀荘では月間トップ率No.1打数No.1マナーNo.1ラス回避率No.1のそれぞれにサービス券を10枚プレゼントという月間イベントをやっていて。佐々木はそこでラス回避率部門でのNo.1を取る常連だった。(マナー部門はスタッフ全員で話し合って決めている。ちなみに佐々木はそれでNo.1になったことはない)

 そこのスタッフAが言うには佐々木剛太が鳴いてるホンイツに放銃した所なんて見た事がないという。佐々木曰く「分かってる満貫に振り込むことないだろ」という事らしいが、そうもいかないのが普通ではないだろうか。しかし、彼は本当に放銃しない。

 また、彼は成田離婚経験者でもある。新婚旅行でアメリカへ飛びラスベガスで喧嘩して成田で離婚。そんなことをする男。

 発言もしょーもなくて「剛太さん、これ通った?」と局終了時に聞かれた時には必ず「通った通った! 大通りよ」と言う。当たり牌でもだ。

 剛太曰く「当たりだったよなんて言って気分良くさせる必要ないだろ。通ってたかー。ガッカリ。って気分にさせて落としていくんだよ」と言う。言い分はわかるが普通そこまでするだろうか? そんな普通ではない彼だから、プロ入りして即で新人王を取っているし、その後『牌覇王(はいはおう)』という大きなタイトルを2連覇している。

 そんな彼が南1局の親番にドラの南を仕掛けた。切ったのは左田だ。かなりの勝負手が来ていたので腹を括って第一打で捨てたが、あろうことか親に鳴かれたのである。最も悪い展開。そして、8巡目。マナミが捨てたのは二萬。それに対して……。

「チー」

 一三と晒してカンチャンチー。マナミは(しまった!)と思った。佐々木はマンズを1枚も切っておらず、マンズホンイツの予感はあったのに(1枚くらい)と切ってみたらカンチャンで喰われてしまったのだ。これは痛

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