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悪魔の悪戯

last update Last Updated: 2025-04-17 11:14:09

コメ:娘に守られる勇者……おる?

コメ:今度こそ死んだかと思ったわ!

コメ:勇太の心拍メーターさ、一瞬ゼロになってたんだけど?

勇太:あー、回らないお寿司を食べた思い出を振り返ってた時ですかね?

コメ:知らんわ!www

コメ:脳が死を受け入れてて草

 膠着状態から一転して大剣同士の激しい打ち合いが始まった。

 動きが速すぎて俺には二人が何をしているのか分からないが、右で左で剣戟が鳴り、その度に衝撃波が飛んでくる。

 俺はサッとナタリアの後ろに隠れたので、もう安心だろう。

 念の為にバリアのポーズをしておいた。

「やーっぱり年とったらダメダメじゃんねー? 俺っちのパワーとさー、魔剣ゲイルウィングが合わさっちゃったらさー、だーれも勝てないワケなのよー!」

 ランデルが押され始めた。

 ランデルは、地に足をつけて腰を起点にした遠心力を生かす攻撃を得意としている。

 ネフィスアルバは、それと同等の威力を右腕だけで繰り出せる。

 体格差があるため、単純な力の勝負で分が悪いランデルは技術でカバーしていた。

 しかし、剣に加えて突きや蹴りの格闘術を織り交ぜ始めたネフィスアルバの猛攻は凄まじく、なかなか反撃の隙を見出せないランデルは後手に回らざるを得なくなってしまった。

「ぬぐあっ!」

 なんとか紙一重で攻撃を受け流していたランデルであったが、ネフィスアルバの左拳を肩に受け、体勢を崩してしまう。

 その隙を見逃さず、ネフィスアルバが強力な袈裟斬りを放つ。

 ドラゴンの翼膜のような禍々しい刃がランデルに迫る。

 咄嗟に剣の腹を盾にしたランデルであったが、真正面から受け止めた凄まじい衝撃により、後方に吹き飛ばされてしまった。

 振り下ろされた魔剣ゲイルウィングの刀身から漆黒の斬撃が放たれたのだ。

 剣を振るった軌跡を追うように弧を描いた闇の剣線に押し出されたランデルは、その勢いのまま瓦礫の山に突っ込み、ガランガシャンと音を立てながら埋もれてしまった。

 ネフィスアルバが初めて見せた飛ぶ斬撃だった。
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