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第555話

Author: 冷凍梨
そんな過去、本当は取るに足らないものだ。

八雲はきっと、そんなことを思い出すことなんてないだろう。私だって振り返るべきじゃない。

だって、私たちはもう、終わったんだ。

あの記憶は瓶に詰めて、しっかり蓋をして、そのまま永遠に忘れてしまうべきだ。

……全部、颯也のせいだ。

今日ずっと「可愛い」なんて言うから、こんな記憶まで引きずり出されてしまった。

それでも頬の熱は引かず、焦る気持ちを抑えきれずに立ち上がった。「すみません、夏目先生。ちょっとお手洗いに……」

「場所、分かる?一緒に行こうか?」颯也はまだ心配そうに立ち上がり、付き添おうとする。

「大丈夫です、前に来たことがあるので分かります」私はすぐに断った。

「実は、俺もちょっと手洗いに行きたいんだ」

彼は座り直す気はなく、私より先に個室のドアへ向かい、取っ手に手をかけようとした。

だが――その手が触れるより先に、ドアは外から勢いよく開けられた。

颯也がとっさに半歩下がらなければ、扉がそのまま鼻にぶつかっていたところだった。

同時に、聞き覚えのある大きな声が響く。

「雲沢の間って、この部屋のはずよ。葵ちゃん、早
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