By the Sea

By the Sea

last updateLast Updated : 2025-09-11
By:  Jane KnightOngoing
Language: English
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After Sarah finds her boyfriend in the arms of another she heads to the beach to clear her thoughts. Once there, she meets Dom, who she thinks will be the perfect distraction from her broken heart. It's only for the weekend? But what if it's not? When Sarah gets home her best friend Kane is waiting for her with open arms. Kane's more than he appears and when Dom shows up, she's going to have to make a choice or will she?

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Chapter 1

Chapter 1

彩也子が弾かれたように振り返り、建物の中へ駆け戻ろうとした。

克己がとっさに彼女の腕を強く引いた。

「だめだ。お前は子供の頃に肺を患っている。煙を吸ってはいけない」

彩也子は焦りで目を真っ赤にしていた。

「じゃあ、遥華はどうなるの……!」

小織がその肩をそっと抱き寄せる。

「消防隊の人が、きっと助けてくれるよ」

幸い、私が消防隊に救出されるまで、そう時間はかからなかった。

救急車の中で、彩也子は私を見つめたまま、涙で目を赤くしていた。

「遥華……ごめんなさい」

大丈夫、と言おうとした。けれど口を開いた途端、喉が痛んで、声が出なかった。

代わりに口を開いたのは小織だった。

「遥華はあなたを責めたりしないよ。悪気があって置いていったわけじゃないんだし」

慎一もそれに同調する。

「遥華は昔から物分かりのいい子だろ。何もかも自分のせいにするな」

克己が、彩也子の髪をそっと撫でた。

「今は自分の体のことだけ考えろ」

病院に着くと、医師が「ご家族の方はいらっしゃいますか」と尋ねた。

3人が、ほとんど同時に足を止めた。

克己は私をちらりと見やり、それからまだ咳の止まらない彩也子に目を移す。

「妻が担架の上です。先にそちらを診てください」

そう言って、私のあとを2、3歩追ってきた。

彩也子の脇にいた看護師が、喘息の既往はないかと尋ねる。

克己はすぐに足を止めた。

7歳の時の肺炎、12歳の時の呼吸器のけいれん症状、去年の秋のアレルギーによる入院。彼は淀みなく答えてみせた。

看護師はそれを書き留めると、今度は私を指して聞いた。

「あちらの患者さんに、持病は?」

克己は一瞬、黙り込んだ。

「……特には、なかったと思います」

私はそっと目を閉じた。

結婚して3年。彼は彩也子の子供の頃の入院歴を、ひとつも忘れていない。

なのに、私が2年前に肺の手術を受けたことすら知らずにいる。

処置室の照明は、刺すように白い。

検査報告に目を通した医師が、克己の方を向いた。

「患者さんに肺の手術歴がありますね。何年前のことですか?切除の範囲は?術後、長く注意すべき点は聞いていますか」

克己が固まり、ちらりと私を見る。その顔には見覚えがありすぎた。私自身の話になるたび、彼が一拍遅れて戸惑いながら理解しようとする、あの表情だ。

「手術?」

彼は眉をひそめる。

「手術とは、何のことですか?」

聞き取れなかったのだと思ったのか、医師はもう一度繰り返した。

「CTでは右肺の下葉に、はっきりとした手術痕が見えます。少なくとも1年以上前のものかと。ご家族は、何も知らないのですか?」

克己は答えなかった。

横から慎一が口を挟む。

「遥華は昔から体は丈夫な方で……そんな大きな手術なんて、したことはないと思いますが」

小織も続いた。

「あの子、痛いなんてほとんど言わない子だから。きっと小さな手術で、ひとりで耐えたんじゃないかと」

医師の視線が3人の顔をゆっくりとなぞり、どこか微妙な色を帯びた。

「肺の部分切除は、小さな手術ではありません。術後半年は激しい運動を避け、定期的に肺機能の検査が要ります」

少し間を置いて、また続いた。

「本当に、ご存じなかったんですか?」

3人とも、言葉を失った。

だが、その沈黙は数秒しか続かなかった。隣のベッドで、彩也子が小さく咳き込んだのだ。

3人はほぼ同時に振り向いた。

克己が、ペニシリンは使えないと告げる。

慎一が、ある咳止めにアレルギーがあると付け足す。

小織はもう鞄から吸入器を取り出していた。1回に何吸入するかまで、迷いなく答えて。

3人の呼吸はぴたりと合っていた。まるで数えきれないほど稽古を重ねたかのように。

この白い照明の方が、あの黒煙よりもよほど息苦しいと、天井を見上げながら私は思った。

医師は私を入院させ、経過を見ることにした。煙を吸ったせいで手術を受けた肺が感染を起こす恐れがあり、足首の捻挫も固定して安静にする必要があるという。

しばらくして、彩也子を落ち着かせた3人が、ひとり、またひとりと私の病室に現れた。

克己はカルテの【右肺部分切除】という文字を、長い間じっと見つめていた。ようやく開いた口から漏れた声には、どこか責めるような響きがあった。

「……こんな大事なこと、どうして黙ってたんだ」

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