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1.雪山のギルド

last update Date de publication: 2025-04-24 14:00:00

「浮かないね」

 この人も知らない。結構、年上だよね ? でも……凄い腹筋と綺麗な歯。褐色肌が雪原地域のここじゃ、全員の目を惹いてる。凄く引き締まった腹筋なのに、釣り合わない程の大きな胸。

 それに……ニヤッとしてるけど、嫌味がない笑顔だわ。

「あんた、ずっと一人だよね ? この村に来た時から気になってたんだ」

「え…… ? ……一人客なんて他にも……」

 ギルドの酒場。

 わたしは毎日ここに通い続けた。

 もうドラゴンの上から落ちた記憶しかない。自分がどう生きてきたのかも、どんな武器を使っていたのかも思い出せなかった。

「この辺り、結構討伐報酬高いしさ。良ければあんた誘うおうとしてたんだけど、毎日居る割りに湿気たツラしてるからさ」

「……そうでしたか。実はパーティのメンバーが戻らなくて……」

 ギルドにさえ出入りしていれば仲間だった人に見つけて貰えるかもしれない……そう思って毎日欠かさずここへ来てた。

 いつかパーティの仲間が………… ? 

 仲間だった人…… ? 

 それも思い出せない。でもこの地帯は高レベルのモンスターしかいないし、女性一人の冒険者は稀だとみんなが言う。だから、きっと仲間はいるはず。

「へぇ。そうなの ? はぐれて今日で何日 ? 」

 こういう質問を受けるのは初めてじゃない。

 わたしの装備が結構質がいいみたいで、実力を見込んで声をかけて来る人がいる。でも身体はもう、どう動けばいいのか覚えてない。

「二ヶ月です」

「二ヶ月ぅ !? そりゃ……あんた…………」

 自分でもわかってる。

 多分、置いていかれたか、全員殉職したかしかない。でも前者は絶対ない ! じゃあ、何 ? その人達はどうなったの ? 何もかも整理ができてない !

「あ……ごめんよ。そんなつもりじゃ……」

「いえ。討伐中の事故のせいで記憶が曖昧になってしまって……。空から落ちたみたいなんです。

 今はもう戦えなくて。仲間の記憶も曖昧なんです……」

「仲間って、連中の名前は ? あたし海の方からここに来たけど……」

「実は、それも覚えてないんです……。

 あ、申し遅れました。わたしリラ · ウィステリアです。ギルドのジョブプレートは持ってて」

    木低札に名前と登録ギルド名。グランドグレー大陸発行の紋章が付いてるけど、グランドグレー自体が広大な土地過ぎてとてもじゃないけど出身地とは言いきれないような場所らしい。ただし、確実に分かるのは名前と、ジョブ。

    わたしのジョブプレートには魔法使いで登録した事を示す六芒星のマークが彫ってある。相変わらず何も思い出せないけど、魔法使いだった事は間違いないよね。

「グランドグレーってもだいたいそうだろって感じねぇ ! へぇ〜魔法使いか。珍しいわね。

    あたしレオナ ! よろしく ! 

 しかし……その仲間も、いるかどうなのかも今はもう分からないって……。真面目にさぁ、元々ソロだったんじゃないのかい ? 」

「魔法使い何ですけど、同じ場所に双剣も落ちてたんです。柄の部分に『カイ』って男性の名前が書いてあるし……」

「唯一の手掛かりってわけだね ? 」

 レオナは真剣に話を聞いてくれた。そして小樽に波々と注がれたエールを一瞬で飲み干すと、すぐにパッと笑顔に戻る。

「あんたの仲間は今頃探し回ってるだろうね。

 でもさ。よく聞いてよ。

 ここって結構レベル高い地域じゃん ? このままじゃ、仲間と合流しても武器が使えないんじゃお荷物になっちまうよ ? 」

 確かに一理あるかも……。この双剣がわたしの物でないなら、わたしは今戦う術を知らない……。

「ここに居続けるなんて勿体ないよ。あんた、外に出な」

「でも……戦えないし……」

「山を降りた町は武器屋が大きいんだ。多分、試し切りの施設もあったはずだしそこで相談したらいいんじゃない ? 勧められた武器でも扱ってりゃ、そのうち勘が戻るかもよ ? 

    だいたい魔法使いだったら尚いいじゃないか。また学べばさ ! そんな顔すんなって。

    ほら、あいつに言って紹介状でも書いてもらいな」

 そういい、レオナはギルドの受け付けに立つ老人を指した。

「あ……倒れてたわたしを、ギルドまで運んでくてくれた人の一人です」

 村長はこちらを見ると、くしゃくしゃの笑顔で微笑んだ。老齢なのに村中の男衆を集めてわたしを救出してくれた。その上、仮住まいの部屋まで用意してくれて本当に助かった。男衆の中にはハーブ屋もいて、毎日野菜には困らない。

 でも、そうだよね。

    わたしは今、町の出入口で短剣を持って草食獣を狩る毎日。感謝の気持ちと、申し訳ない気持ちでいっぱい。

 このままじゃいけないのは分かってる。

 レオナがここに現れたのは運命なのかな。

「動かなきゃ。冒険者やんのか、引退するのかさ ! 

 ここでボサっとしてても仕方ないだろ ? 」

 決断するべき時が来たんだ。

 本気で考えなきゃ。

「掲示板見たよ。ギルドに来て掲示板見ないやつはいない。あんたの仲間が探してくれてりゃ、張り紙一つで見つけられるんだからさ ! 」

 この人。圧が強い 。

 正直、こんなこと他人に言われなくても分かってるし、頭ごなしに言われたくない。

 でも……レオナは本気でわたしを思ってくれてる。そう感じた。

「あ、ありがとうございます……」

「どう ? これから一杯 ! 奢るよ ! 」

「いえ、お酒は ! 」

「以前は飲んでたかもしれないし、全く飲めないかもしれないじゃないか ? どうせ、そんなことも確認してないんだろ ? 」

「そ、それは……」

「ジルって相棒が酒場にいる。紹介するから来なよ。一日くらいいいだろ ? 」

「え、ええ。勿論」

 そう言って、レオナは引き摺る様にわたしを隣接する酒場へと連れていった。

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