過去に失った愛にもう一度出会った~それが運命の始まりだった

過去に失った愛にもう一度出会った~それが運命の始まりだった

last updateLast Updated : 2025-06-05
By:  吉乃椿Updated just now
Language: Japanese
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「好きな人ができた」その一言で、私の世界は壊れた。五年付き合った恋人と、信じていた親友の裏切り。泣き疲れた夜、夢に現れたのは「女であることなんて、呪いだ」と愛を拒んだ炎の中の私。そして今、出会った彼は夢の男と同じ瞳をしていた彼は過去世で私を裏切った人。そしてまた、今世でも出会ってしまった。でも、もう逃げない。たとえ何度裏切られても、もう一度、愛したいから。本当に愛してると、何があってもあなただけを愛してますと、心の奥底から思える私になる。

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Chapter 1

彼の裏切り

「……ごめん、好きな人ができた」

その瞬間、時間が止まったようだった。

耳鳴りがして、彼の声だけが、空気を切り裂くように響いた。

隣に立っていたのは、私の――親友だった。

仕事の愚痴を聞いてくれた。恋の悩みを相談していた。

何でも言い合えた、たったひとりの、信じていた人。

「……冗談、でしょ?」

喉が詰まり、声がうまく出なかった。

視界がにじむ。足元がふらつく。

けれど彼女は、彼の腕にそっと手を添え、微笑んでいた。

あの日、彼に初めて「好き」と言えた場所。

何度も一緒に笑ったあの場所で、

そのふたりは手を繋いでいた。

「ねえ……私の、何がいけなかったの?」

かすれた声がやっと出た。

情けなくて、みっともなくて、それでも聞かずにはいられなかった。

「梨央は……強すぎるんだよ」

その一言は、胸の奥に突き刺さる刃だった。

“強い女は、愛されない”

“弱さを見せない女は、可愛げがない”

そんな言葉に、いつの間に私は縛られていたのだろう。

泣きたかった。叫びたかった。

「行かないで」「私だけを見ていて」

「私を、捨てないで」

――本当は、そう言いたかった。

けれどその時、親友――美里が口を開いた。

「ごめんね、梨央。私たち……ずっと愛し合ってたの。

私、彼のこと大好きになっちゃって……」

頭が真っ白になった。思わず顔を上げた。

「……いつから?」

「三年前、くらいからかな」

「私の方が可愛いって。彼、よくぎゅって抱きしめてくれるの」

「梨央に、いつ言おうか迷ってたけど……結局、言えなかった。ごめんね?」

あまりにも軽く、悪びれもなく笑いながら話すその姿に、背筋が冷たくなった。

信じていたふたりに、思い切り裏切られた。

「梨央も、知的で綺麗だし、美人だよ。

でも……やっぱり、美里の方に惹かれてしまったんだ。ごめん」

その言葉で、心臓をえぐられたような気がした。

――私は可愛くない。そう言われた気がした。

「……そっか。お幸せに」

口が勝手に動いた。そう言ってしまった。

それだけを言って、私は背を向けた。

雨が降っていた。

誰も、傘を差し出してはくれなかった。

それだけを言って、私は背を向けた。

雨が降っていた。冷たく、静かに、容赦なく降り続いていた。

ふらつく足取りで数歩だけ歩いて、思わず足を止めた。

怖かったけれど……ほんの少しだけ、希望が残っていたのかもしれない。

……もしかしたら、彼が呼び止めてくれるかもしれない。

罪悪感を抱えた顔で、こっちを振り返ってくれるかもしれない。

それだけでも――きっと救われた。

私は、ふっと後ろを振り返った。

でも。

彼らは振り返らなかった。

肩を寄せ合い、笑い合いながら、何事もなかったように歩き去っていった。

まるで私なんて、最初からいなかったかのように。

遠ざかるその背中が、ぼやけていく。

雨か、涙か、もうわからなかった。

胸が締めつけられて、呼吸がうまくできなかった。

嗚咽を堪えながら、唇を強く噛みしめた。

雨に打たれて散ったのは、五年間育てた愛だった。

まるで、一輪の花のように。

私の手のひらの中で、音もなく崩れていった。

私は一歩も動けず、その場に立ち尽くしていた。

壊れたのは、恋じゃない。

失ったのは、人じゃない。

自分自身だった。

胸が、張り裂けそうに痛んだ。

だけど、泣くことすらできなかった。

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彼の裏切り
「……ごめん、好きな人ができた」その瞬間、時間が止まったようだった。 耳鳴りがして、彼の声だけが、空気を切り裂くように響いた。隣に立っていたのは、私の――親友だった。 仕事の愚痴を聞いてくれた。恋の悩みを相談していた。 何でも言い合えた、たったひとりの、信じていた人。「……冗談、でしょ?」喉が詰まり、声がうまく出なかった。 視界がにじむ。足元がふらつく。 けれど彼女は、彼の腕にそっと手を添え、微笑んでいた。あの日、彼に初めて「好き」と言えた場所。 何度も一緒に笑ったあの場所で、 そのふたりは手を繋いでいた。「ねえ……私の、何がいけなかったの?」かすれた声がやっと出た。 情けなくて、みっともなくて、それでも聞かずにはいられなかった。「梨央は……強すぎるんだよ」その一言は、胸の奥に突き刺さる刃だった。 “強い女は、愛されない” “弱さを見せない女は、可愛げがない”そんな言葉に、いつの間に私は縛られていたのだろう。泣きたかった。叫びたかった。 「行かないで」「私だけを見ていて」 「私を、捨てないで」 ――本当は、そう言いたかった。けれどその時、親友――美里が口を開いた。「ごめんね、梨央。私たち……ずっと愛し合ってたの。 私、彼のこと大好きになっちゃって……」頭が真っ白になった。思わず顔を上げた。「……いつから?」「三年前、くらいからかな」 「私の方が可愛いって。彼、よくぎゅって抱きしめてくれるの」 「梨央に、いつ言おうか迷ってたけど……結局、言えなかった。ごめんね?」あまりにも軽く、悪びれもなく笑いながら話すその姿に、背筋が冷たくなった。 信じていたふたりに、思い切り裏切られた。「梨央も、知的で綺麗だし、美人だよ。 でも……やっぱり、美里の方に惹かれてしまったんだ。ごめん」その言葉で、心臓をえぐられたような気がした。 ――私は可愛くない。そう言われた気がした。「……そっか。お幸せに」口が勝手に動いた。そう言ってしまった。それだけを言って、私は背を向けた。 雨が降っていた。 誰も、傘を差し出してはくれなかった。それだけを言って、私は背を向けた。 雨が降っていた。冷たく、静かに、容赦なく降り続いていた。ふらつく足取りで数歩だけ歩いて、思わず足を止めた。 怖かったけれど……ほんの少し
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孤独の空間で
ふらつく足取りのまま、どうやって帰ったのかも思い出せない。 何駅乗ったのか、誰とすれ違ったのかさえ記憶にない。 ただ、胸がひどく苦しくて、息をするのもやっとだった。叫びたかった。 泣きたかった。 でも、それを外でする勇気はなかった。 人目が気になったんじゃない。 ただ、あまりにも惨めすぎて、声すら出せなかった。どれくらい歩いたのか、覚えていない。 靴はずぶ濡れで、冷たさが足の裏から這い上がってきた。 電車にどう乗ったのか、何駅で降りたのかさえ思い出せない。ただ、息をするたびに胸が痛くて、 足を前に出すたび、心が裂けていくようだった。(どうして……どうしてこんなことに……)頭の中で何度も問いかけても、返ってくるのはあの声。「梨央は、強すぎるんだよ」 「三年前から、私たちずっと愛し合ってたの」 「美里の方に、惹かれてしまったんだ」家の鍵を差し込む指が震えて、うまく回せなかった。 やっとのことで扉を開けて中に入った瞬間―― 何かが、崩れ落ちた。気づいたら、玄関にへたり込んでいた。 震える肩を抱え込んで、息を殺すように泣いていた。堪えていた涙が、もう止められなかった。 嗚咽がこみ上げてきて、声が漏れた。 誰にも見られていないはずなのに、涙を隠すように顔を覆っていた。「……なんで……どうして……私じゃ、だめだったの……?」強くあろうとした自分が、惨めだった。 平気なふりをして背中を向けた自分が、哀れだった。 本当はただ、愛されたかっただけなのに。どれくらい泣いていたのだろう。気づけば、部屋の空気がひどく冷たく感じた。 濡れた頬に、室内の静けさが突き刺さるようだった。そして――意識が、静かに沈んでいった。 深く、深く、底の見えない場所へ。暗闇が広がり、耳鳴りのような静寂が訪れる。 深く、深く、どこか底の見えない場所へ落ちていく感覚。 眠ったわけじゃない。けれど、目覚めているとも言えなかった。その先に、炎の匂いが待っていた。
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