تسجيل الدخول裏切られた夜、夢に現れたのは炎の中で祈る私、梨央は過去世は神殿巫女ナフィーラだった。 彼に斬られた記憶と、胸に残る強い悲しみ。 そして今、同じ瞳をした男が目の前にいる。 彼は過去世で私を裏切った騎士カイム、真一だった。 でも、もしその裏切りと思っていた事が誤解だったとしたら? 過去と今が重なる時、私達はもう一度、愛を選び直す。 彼の真実に触れたとき、心の奥に眠っていた痛みと祈りが蘇る。 守りたかった、信じたかった、けれど失われた愛。 たとえ何度裏切られても、何度傷ついても 今世では私はあなたを、信じ抜く。 これは、私達の魂が赦しと再生を選ぶ物語。 輪廻の果てに再び巡り逢った私達は、運命さえも書き換えていく。
عرض المزيدエルゼリアの懐妊は、カイルの世界を静かに、しかし決定的に塗り替えた。かつて彼を苛んでいた絶望や虚無感は、鳴りを潜めた。 代わりに彼の胸を満たしたのは、狂おしいほどの守護の意志と、燃え盛るような独占欲だった。「俺が、守る」彼は何度も、自分に言い聞かせるように呟いた。 エルゼリアを、そしてまだ見ぬ我が子を。 この腕の中にある小さな世界だけが、彼のすべて――それ以外は、排除すべき敵だった。その新たな「誓い」は、彼の力に恐ろしい変質をもたらした。奈落の力は、彼の強い意志に呼応し、より深く、より濃密な闇となって彼に流れ込んだ。 だが、それはもはや純粋な破壊の力ではなかった。 彼の独占欲を映し出し、触れるものすべてを支配し、変質させる――禍々しい呪いそのものだった。彼が歩けば、足元の草花は生命力を吸われたように黒く枯れ果て、 彼が湖の水を覗き込めば、水面は鏡のように光を失い、濁った沼と化した。森の動物たちは彼の気配を恐れ、鳴き声ひとつ上げることもなく姿を消した。 かつて生命に満ちていた迷いの森は、カイルの歪んだ愛を体現するかのように、静かで不毛な「彼の領域」へと変貌していく。かつて、どんな絶望の中でも人々の希望となっていた彼の手が、 今はただ、命を枯らす黒い炎となって森を焼いていた。そして――彼自身も、その変化に気づいていた。だが、彼はそれを意に介さなかった。むしろ、心地よいとさえ感じていた。この静寂こそが、二人と一人の聖域を守る結界。 この枯れた大地こそが、誰にも侵されない安息の揺りかご。「どうした、カイル? 難しい顔をして」エルゼリアが、彼の背中にそっと寄り添う。 彼女の存在だけが、このモノクロームの世界で唯一、鮮やかな色彩を放っていた。「……いや。この森が、静かになったと思ってな」カイルは振り返り、愛おしげに彼女の頬を撫でた。 その指先から放たれる微かな闇の波動に、エルゼリアが気づくことはない。「ええ、そうね。でも、私はこの静けさ、好きよ。 あなたと、この子と、三人だけでいられるのだもの」彼女は幸福そうに微笑み、カイルの胸に顔をうずめた。その無垢な言葉が、カイルの心をさらに奈落へと突き落とす。(そうだ。これでいい。これが正しいんだ)彼の瞳の奥で、かつての英雄の光は完全に消え失せ、底なしの闇だけが揺らめいてい
リアムとセイ=ラムが森の闇に消えた後、湖畔には重たい沈黙だけが残されていた。冷たい空気を裂くように、カイルはゆっくりと振り返り、震えるエルゼリアをそっと後ろから抱きしめた。その腕の力は、たしかに優しかった。かつて彼女が安らぎと感じた、あの包容と同じはずだった。「……もう大丈夫だ」けれど、その腕はもう、彼女にとって安息ではなかった。まるで逃がさないと囁くように、静かに締め付ける――鎖のような重さ。彼の胸に耳を当てると、焦りを孕んだ鼓動が、エルゼリアの魂に刺さるように響いてくる。目には見えない小さな亀裂が、二人の間に静かに生まれていた。夜。焚き火のそば、エルゼリアは静かに口を開いた。「カイル……」思いがけず、落ち着いた声が自分の口から出ていた。「あの、光の剣を持った人は……本当に私たちの敵なのでしょうか?」カイルの肩が、かすかに強張った。「……そうだ。奴らは神々の尖兵だ。俺からお前を奪い、偽りの秩序の中に閉じ込めようとする」エルゼリアは首を横に振った。「でも……あの時、あなたの纏う闇が、一瞬だけ揺らいだように見えたの。まるであなた自身が……苦しんでいるみたいに。カイル、あなたは一体、何と戦っているの?」その言葉は、刃のようにカイルの胸を貫いた。彼は一瞬、答えを失い、視線を逸らす。だがすぐに、冷たく硬い仮面を被り直した。「お前は、何も知らなくていい。ただ……俺に守られていればいいんだ」彼のその声は、問いへの答えではなかった。それは懇願であり、呪いであり、彼自身の魂を繋ぎ止めるための唯一の祈りだった。そしてその夜――エルゼリアは、彼の腕の中で疑念が溶けていくのを感じていた。真実も、正義も、どうでもよかった。この腕の中がすべて。この人がいる場所が、自分の世界のすべてだった。彼の背にそっと腕を回し、彼女は自らを捧げるように、その愛を受け入れた。たとえその先が、光のない奈落の底だったとしても。カイルは、その儚い存在を壊してしまいそうなほど強く抱きしめ、唇を求め、肌を重ね、魂ごと喰らい尽くすようにエルゼリアを愛した。彼女は、その激しさに身を委ねながら、微かな違和感が胸の奥に残っていることに気づいていた。――これは、ほんとうに“守られている”感覚なのだろうか?その問いは、快楽に溶けるように霧散した。けれどその夜、彼女
迷いの森の中心、霧が淡くたゆたう湖畔。それまでエルゼリアに穏やかな視線を向けていたカイルの表情が、凍り付いたように変わった。彼の腰に佩かれた剣が、鞘の中で高く澄んだ音を立てて鳴いた。「来たか――」湖の水面が風もなくさざ波立ち、森の空気が鉄の匂いを帯びていく。それは神聖なる者が放つ、紛れもない神意の波動だった。「カイル……?」不安げに立ち上がるエルゼリアを、カイルは背後から強く抱き寄せた。「大丈夫だ。誰がお前を奪いに来ようと、俺が全てを斬り捨てる。俺だけを信じろ。俺だけが、お前を守れる」その言葉に、彼女は何も言わず、ただ小さく頷いた。だがその胸の奥、どこかにわずかな震えがあった。愛と呪縛――
王都アストリアから東へ数日の距離にある、広大な「迷いの森」。 その森の入り口に、二つの異なる勢力が、期せずしてほぼ同時に到着していた。 【ガイウス率いる王国軍】 森の南側。陽光が届く開けた街道に、王国騎士団を主軸とした大規模な軍勢が陣を敷いていた。掲げられた旗は、王家の紋章。しかし、その軍を支配する空気は、正義のそれとは程遠い、欲望と焦燥に満ちていた。 「まだ見つからんのか! 奴らはこの森のどこかにいるはずだ!」 陣の中央で、豪華な装飾鎧に身を包んだガイウスが、地図を睨みながら斥候に怒鳴りつけていた。彼の野心は、日ごとに膨れ上がっていた。魔女を手に入れ、その力を独占し、病床の王に代わってこの国を掌握する。その輝かしい未来予想図が、彼を焦らせていた。 「しかし、ガイウス様。この森は古くから『神隠しの森』と呼ばれ、一度入れば二度と戻れぬとの言い伝えが…」 古参の騎士が懸念を口にするが、ガイウスはそれを鼻で笑った。 「臆したか? 迷信に怯える腰抜けは、ここで王の帰りを待っているがいい! 功名を立てる好機を逃すことになるがな!」 ガイウスは、兵士たちに向かって高らかに宣言した。 「聞け、者ども! この先に、国を裏切った逆賊カイルと、災いを呼ぶ魔女がいる! だが、恐れるな! あの魔女を捕らえた者には、望むだけの金銀財宝と地位を約束しよう! 陛下の御名において、私が保証する!」 金と地位。その言葉に、兵士たちの目がぎらついた。彼らの多くは、騎士団の誇りよりも、目先の報酬に心を動かされる傭兵上がりの者たちだった。士気は、歪んだ熱狂によって高まっていく。 彼らにとって、これは聖戦ではない。一攫千金を狙う、宝探しのための戦争だった。 【リアムとセイ=ラム】 一方、森の西側。古木が鬱蒼と茂る、獣道さえない場所に、二人の人影があった。 リアムと、彼の師であるセイ=ラム。 リアムは、息を殺して森の奥の気配を探っていた。セイ=ラムとの地獄のような修練を経て、彼の五感は人間を超えた領域にまで研ぎ澄まされていた。 「…南の方角から、大軍の気配がします。かなりの数です」 リアムの報告に、セイ=ラムは静か
光の粒子となって還った二つの魂は、静かに神殿の大広間へと降り立った。ナフィーラが目を開けた時、最初に目に映ったのは――自分の手を、強く握りしめるカイルの姿だった。「カイル……」その名を呼ぶだけで、胸が熱くなった。 もう二度と届かないと思っていたその存在が、こうして目の前にいる。 彼の手の温もりが、何よりの証だった。「……ナフィーラ」カイルの瞳には、もう迷いも濁りもなかった。 すべてを赦されてなお、彼の視線には深い悔いと、取り戻したいという意志が滲んでいた。「……すまない。俺は……お前を……」言葉にならない罪の想いを、彼は絞り出すように吐き出す。 ナフィーラは静かに首を振
ナフィーラの祈りが天に届き、神々の新たな試案が動き出した頃。“堕落の次元層”から現実世界へと滲み出たカイルは、夜の闇に紛れ、かつて自らが守護したはずの王都に立っていた。彼が最初に向かったのは、セナトラ神聖騎士団への寄進も多く、カイルを「王都の英雄」と公然と讃えていた豪商の屋敷だった。夜会が開かれているのか、窓からは明るい光と楽しげな音楽、そして人々の笑い声が漏れ聞こえてくる。以前の彼ならば、その平和な光景に安堵し、静かにその場を去っただろう。だが、今のカイルの耳には、その全てが自分を嘲笑う不快な騒音にしか聞こえなかった。(俺が血を流して築いた平和の上で、何の苦労も知らずに笑う者ども
「戦神セイ=ラム……剣と誓いの神、ねぇ」リゼアは艶然と微笑みながら、カイルの胸にそっと指を滑らせた。硬質な鎧の上からでも、その指先からは魂を蕩かすような熱が伝わってくる。「そんな重苦しいものを背負って、疲れない? 誓いだの、忠誠だの……そんなもので自分を縛り付けて。本当は、もっと自由になりたいのでしょう?」「自由……」カイルの唇から、無意識に言葉が漏れた。その言葉に、脳裏に一瞬、ナフィーラの祈る姿がよぎる。彼女の清廉な光。神託によって結ばれた魂の契約。それはカイルにとって絶対の理であり、誇りそのものだったはずだ。だが、今の彼には、その記憶さえも色褪せて、無味乾燥なものに感じられた
それは、風が変わったある日のことだった。大河ナーイルの西より、王国に見慣れぬ者たちが訪れた。 名を、リゼアとユラエルという。男女一対の者たちは、旅人の姿をしていたが、 その身から放たれる気配は明らかに“神の御魂”に連なるものだった。リゼア―― それは、欲望と色香の神。 神々の末裔と伝えられ、神の御魂を分け合った双子の半身とされる存在だった。その微笑みは甘く、声は深く、 肌を撫でるような視線は、見る者の内側に直接触れるようだった。初め、カイムは彼女たちを警戒していた。 セナトラ王国において、見たことのない神系。 女神セレイナと同じ天より来たとは思えぬ、その気配。けれど―