LOGIN「これは……」
二教室目は、三教室にあった児童用机を横に繋げ、黒服が用意した家庭科室の食器が並んでいた。
その横並びの机に沿い座らせられた十三人の遺体。 仕草、視線、体の向きまでが正確に再現されている。言わずと知れたレオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』である。
中心にいるのがイエス・キリストとし、他十二人の使徒たちが左右に座り会食しているサンタマリア教会の有名絵画。
そしてこの絵の論点がよく話題になる、裏切り者になる使徒のユダの存在。キリストから三番目に位置し、小袋を持った男だが、蛍がユダにしたのは焼死体の男だった。「二つ目は神か ! 『生と死』、『神』なかなか考えたね ! 」
「……」
ルキがはしゃぐ中、美果は無言だった。
本来ユダは首吊りで自死をする男である。
何故、焼死体を選んだのか…… ? だがこうも考えられる。 モニターで観ている謎の観覧者達。この場の映像を、どれ程の解像度で流れているのか。もし粗悪な映像であれば、はっきり分かる方がいい。「テーマは……」
ここでようやく蛍は解説を口にする。
「テーマは『三世界』。一室目が『生と死』、二室目は『天国』、そして三番目は『地獄』」
「地獄…… !? 」
美果とルキは若干の興奮を抑えられず、すかさず三教室目へなだれ込んだ !
「……うっ……嘘……」
最後の教室。
蛍の言う『地獄』。 そこにあったのは床に転がったままの香澄の姿だった。 黒服に追われ、この教室に飛び込んで来た瞬間背後から鉛玉を喰らった香澄。あの時のまま。
他に変更点は見つけられない。「あんたたち……彼女をここで殺したの !? 彼の幼馴染で友人だったんでしょ !? なのに目の前で撃ったというの !? 」
美果が顔を歪ませルキ達を責め立てるが、ルキはこの時、別の事を考えていた。
蛍は間違いなくサイコパスだ。この状況を許容出来ていることもそうだが、香澄の遺体が欲しいとリクエストした事も。それに香澄を自分が殴った時だって、何の制止もなかったと思い出す。「これが地獄 ? ケイの表現する地獄 ? 」
「突然です。友人を奪われました。普通でしょ ? 」
蛍はそうルキに答えるが、空気で分かる。蛍は悲しんでなどいない。
ルキにはそれが不思議でならなかった。 何故これが地獄だと言うのか。蛍にとっては友人だったとしても地獄だと言わせるほどの悲惨では無いはずなのだ。 そうルキは言い切れる自信があった。「……まぁ、他の人から見たらそうだろうね……」
ルキは問い詰めることは止めた。
これほどの逸材。 いや、自分のお気に入りを今、殺すには勿体ない。 ここで「いまいち」と口にしてしまえば、客もそう流されかねない。 ルキは蛍を売り込みたいのだ。 だが、それは美果が口にしてしまった。「イカれてる……。他人から観たら…… ? そうなのね。
事情を知らない人間にとってはそうってだけで……蛍君はこれをなんとも思ってないんだ……」そこへ椎名のスマホがバイブ音を上げる。電源を切れと言っていたルキが椎名にため息をつく。
「すみません、スミスからです」
「出ていいよ……」
椎名はスマホ片手に廊下へ向かおうとし、直ぐに踵を返してルキの元へ耳打ちする。
「涼川 蛍の最後の晩餐を写真で買いたいと申し出が出ているようです……」
「んも〜 ! 今日は珍品オークションじゃないっての !! 」
「ねぇ。買取手は外国人なの ? 」
頭を抱えるルキの側で、美果が椎名に聞いた。
「いえ、それはお答えできませ……」
「そうだよ」
椎名を遮りルキが答える。
「このカメラは配信用。ネットで観てるんだ。その多くが外国人だよ。
でも何故そう思ったの ? 」「売れたのが二教室目の最後の晩餐だからよ。
彼の作品は矛盾している。貴方が言う通り、ブラックジョークなのよ。皮肉なのね。 産まれなかった赤ん坊のパーティ ? わたしも馬鹿だわ。確かに違和感があったのに。 香澄ちゃんの死体を地獄と言った所で、全てを理解出来たのよ」「往々にして、三部作とはそう言うものだね。
続けて」「これが蛍君のブラックジョークだと言うなら、最後の晩餐のユダの違和感。ユダは絵画で生きた姿で描かれているし、死因も首よ。
じゃあ、何で焼死体を使ったのか。最初に考えたのは『焼かれる』というキーワード。いつだって神は悪を火で焼いてきた。日本神話でも神のイカズチという言葉があるくらい、罰と火は密接な関係にある。 そして今の電話。どうして買い手が付くのか。キリスト教は自殺は許されない。だからこそユダは自死を選んだのかもしれない。けれど、火で裁かれる方が余程神らしいと思うのよ。 つまり蛍君が作ったのは──映え作品」「映え ? その為にダ・ヴィンチをテコ入れするなんて、俺はおこがましいと思うけれど……」
「精確な模写ならそうかもしれないけれど、そもそも人体アートなんて不謹慎じゃない。 素晴らしいアートなんて誰も望んでないのよ……」
「なるほどねぇ ! 流石美果ちゃん。
よし、椎名。最後の晩餐モドキだけ写真に撮って。スミスに連絡してくれる ? 実は美果ちゃん、君のデスマスクも買い手が付くようだよ」「え…… !? 」
そこへルキに着信。
普段、鳴ることのないルキの着信音に椎名どころかルキ本人も眉を寄せる。「俺だよ。
なんだ ? ……何故今日に限って……ああ、そういう事 ? 分かった」ルキは浮かない顔をしながら通話を切る。
「参ったね。ここを暴きたい連中が来るようだ。
椎名、写真を早く。部下を集めて全て撤去させろ。一時間で奴らは来る」何者かの襲撃の匂い。
これには緊張が走る。「特にこの二人は、無傷で湊市内に返さなければならない」
この言葉に美果が反応する。
「わたし、帰れるの !? 」
「今回は大目に見るよ、評論家さん」
「……」
美果はアーティストとしては生き残れなかった。しかし、蛍の作品を読み取った事で息を吹き返した。
美果にこの時、複雑さはない。 創るも評価するも、自己レベルに直結する才能だからだ。「いいわ。じゃあ、車貸して。女一人のドライブよ。誰にも怪しまれないわ。行かせて」
「ふむ……。車少ないんだけどね。いいよ。俺のを使うといい。駐車場にある黒のレクサスだ」
「ルキ様 !? 」
椎名が止めようとするが、ルキは首を横に振る。
「材料運びに使ったトラックに部下を詰める訳にはいかないしね」
「ですが、先に避難して頂かないと……」
「大丈夫。はい、美果ちゃん。
次回があるか分からないけど、生還おめでとう ! 」「他言はしないけど、もうゴメンだわ。車は湊駅前に乗り捨てる。鍵はコンビニに落し物として預けるわ」
「オーケー。コンビニには時間見て連絡する」キーを受け取った美果は急いで駐車場へ向かって行った。椎名は他の部下に美果を攻撃しないよう指示を出す。
ルキは少し微笑むと、蛍の方を振り返る。「はぁ、車無くなっちゃった !
ねぇ、ケイ。少し歩かない ? 山から見る星は綺麗なんだ」「星なんか見る気ないだろ。朝まで薮に潜んだ方が安全、そう考えただけだろ ? 」
「脱獄あるあるだね。大丈夫、準備はしてるから」
「いいよ。一ついい ? 香澄の遺体だけはここに置いておいて。見つけて貰いたいんだ」
部下に任せたら痕跡もなく消されるだろう。蛍の幼馴染だ。そこはルキも首を縦に振った。
「分かった。親御さんの元に返すよ。
さぁ行こうか」「不本意だけどね……」
蛍はルキと二人、廃校舎を後にした。
参考文献 +診断名 サイコパス(ロバートDヘア) +図解 眠れなくなるほど面白い 犯罪心理学(越智啓太) +図解 サイコパスの話(名越康文) +面白いほどよくわかる 犯罪心理学(高橋良彰) +死体と話す NY死体調査官が見た5000の死(バーバラ・ブッチャー) +大事件ゆっくり解説 様https://youtube.com/@incident_of_yukkuri_commentary?si=vNLHW1NF77Z8ymWEここまで読んで下さった読者様及び支えてくださった担当様に感謝致します。完結に出来て寂しい反面、ケイとルキはまだまだあのままでいて欲しい気持ちが強かったのでラストはあんな感じで集結しました。サイコパスを書くにあたり多方面から情報を取り入れ、中でも強く影響を受けたものを上記に記述させていただきますm(*_ _)mそれでは(・ω・)ノシ
ルキはMの仕事の大半を引き継いだ。ゲームマスターをしている暇は無くなったという訳だ。「以前言ってたろ ? 俺のゲームは直接殺しが出来ないからつまらないって」しかし、蛍は悩みもせず一蹴した。「言ったけど、案外あんたのも悪くなかったかな。Mのが殺せるルールだったじゃん。でも、あれになんの意味があるのか疑問に思っちゃった。俺は自分で殺れればいいんだ」そして悩み込む。「でも……そうだね。俺も顔を売りたい訳じゃないし……。取材も椿希に丸投げしようかな」「狩り場を変えればいいのに」「嫌だね。狩りの為に生活を変えるなんて」「湊周辺じゃ限界だ。歴代のシリアルキラーだって一つの町に留まり続けない奴も多い。大事なのは、免許と車を手にするタイミング、そして使用する日と犯行日時だ。前に言ったろ ? 俺のゴーストに乗った……中野の時、車で下見に来れたのは良かったって」「……まぁ、便利なアイテムではあるけれど……」「無免許で捕まっちゃ仕方ないし、車もそれなりの物に乗るといい。検問で中から死体が出てきたなんてことがあったら……」「あるし」「ん ? 」車好きのルキは御託を並べたい。だが蛍はそこまでこだわりが無い上に、ルキの車の趣味が悪いことを知っている。「うちに『それなりに高級で俺が乗って、死体を入れててもおかしくない車』あるから」勘づいた結々花がブフッと吹き出す。「え ? どういう事 ? 」「アッハハハ ! そりゃ高級でしょうよ ! 」ガチャ !そこへ美果がやってきた。「香澄ちゃん両親帰りました。なんの話し ? 」「美果ちゃん、ケイ君の家で『高級で死体が乗っててもおかしくない車』ってなーんだ ? 」「……
ガシャッ …… !蛍はVRゴーグルを放り投げる様に外した。「……」内線電話を握ると結々花にかける。「すぐに応接間に通して ! なんで入れたんだよ ! 」『〜〜〜っ ! ……っ ! 』結々花は反抗的な割にルキには逆らわない。今回もルキの方が無理にフィールドへ入ってきたんだろう。 それにしても、第一ゲームの加害者と実行犯、被害者遺族が揃うとは恐ろしい事だ。そばにいた美果が不安そうにする。「大丈夫 ? 」「……案内、代わりやって。香澄の両親、まだ見学してるから」「わかったわ。 本当に大丈夫 ? 」「うん。ごめん美果」事業立ち上げから、蛍は少々丸くなった。 美果を気遣うのもそうだが、世渡りの必要性。それには今のままの性格ではやっていけないと。幸い椿希がやる事全て詐欺の塊だが、愛想だけは妙にいいのだからこれほどモデルに相応しいものはいない。少なくとも自分以外を、内か外か選別する程度には。以前は自己以外全てが外だったのだから大きな進歩である。 蛍はエレベーターで一階へ向かう。ポーン♪「あ ! スミス !! 」扉が開くと、丁度スミスが横切った瞬間だった。「なんで今日ルキが来たんだよ ! 止めてよ、そういうの ! 困る ! 」「蛍さん !! いや、あの……結々花に許可は頂いて……一応真面目に見学という事で……」「真面目に見学ぅ〜 ? 」「ルキ様はMの墓標を建てませんでしたからね。真理さんの事も考え、てここを見たいと……」「え ? あぁ、そういうこと ? 」そうなれば話は別だ。 真理自身が来てくれれば希望を叶えられるが、なかなか死ぬ為の準備を生きてるうちに始める……というのはまだまだ根強い文化とまではいかない現状。「予約してくれれば良かったのに。なんで今日の朝言わなかったんだろ」「今日の……朝…… ? ルキ様は真理様の御自宅へいたはず……あ
『と、ここまで進化した最新の墓標はいかがでしょうか ? 今回は展示という事で込みの価格が表示されていると思いますが、普段は無いですよ〜。まさか売り物じゃあるまいしねぇ ? 』『ははは』 結局、客前でトークするのは椿希の役目になってしまった。 蛍も最初こそ無愛想にしていたが、途端その技術が必要と理解すると、すぐに吸収していった。 だが今日は突然の来訪者が顔を出した。 それにより、客人に合わせメタバース霊園を見るようになったのだ。『凄いね。現代的だ』『ええ。それに、あんな小さかった蛍君がこんなに立派になるなんて ! 嬉しい……』 アポ無しでたまたま飛び込んできた夫婦。 商店街で花屋を営む、涼川葬儀屋の契約生花店の二人だ。 つまり──香澄の両親だった。 回線を三人だけにし、蛍が対応していた。『俺も驚きました。 その……聞くに聞けなくて。お墓の場所とか……』『そうよね。葬儀は蛍君のところでしたけれど、その後どうしても……。納骨するのが寂しくて今まで……』 香澄の死後。 両親は四十九日、百か日を過ぎても娘の死を受け入れられなかった。四十九日の法事は重明が取り仕切り、するだけの事はしたが、納骨には至らず参列者にテンプレ通りの挨拶を述べるだけで精一杯だった。 香澄の骨壷はずっとダイニングで共に食事の際にも置かれ続け、就寝の時も両親が寝室へ運んでいた。 その後、蛍の知る通り、花は毎日学校へ持たせ誰かに飾らせ、自分たちは香澄の死の真相を探り続けた。 転機はMの提示した湊駅周辺でのゲームだった。『他にもここを検討してる人、沢山いてね〜』『そうそう。被害者の会でよく話題に上がるのよ』 蛍の起こしたテロと椎名、久岡、そして真理の無差別殺人事件。 これにより墓が急激に売れる始末。中でも、未だ墓地を持たず尻込みしているのが、子供を亡くした家庭だった。 その混乱の中、香澄より幼くして亡くなった多くの命。それを見るうち、両親の中で香澄の死は今回の騒動の一端だったのではないかと心の整理が付いたのだ。 子の多くは集合住宅の飲水やプールの給水で亡くなった。 酷いテロの混乱を目の当たりにして、急激に冷静になったのかもしれない。 それを引き起こしたのが蛍だとも知らず。『パソコンから画像だけでも見れ
残された蛍と結々花は無言のまま。 ポンっと音が鳴り、エレベーターの扉が開く。 最上階ルームはエレベーターから直接、一歩踏み出すとワンフロアを贅沢に使ったゲストルームだ。霊園だとは思えない温かみがありながら、どこか近代的な造り。 結々花はガラス屋根を見上げながら、つい先日この場で行われたショーに関して呟く。「まさか先日、この天井に人がぶら下がってたとは……今日のお客様は知る由もないわね……」「だってダリの最後の晩餐は、いるじゃん。上に。半裸の人」「んー。絵ってあんまり興味無いし、ダリが最後の晩餐描いてたのも知らなかったわ。 あの日、ケイ君がぶら下げ始めた時、観覧者から凄い歓声が上がったわよね」「……客の声なんてオフになってるから聴いてないよ」「美果ちゃんはどうして、ダリの最後の晩餐をここのモチーフにしたのかしら ? だって一応、最初は海玄寺の宗派を受け入れる方針だったじゃない ? 仏門に関する絵じゃないんだ〜って思ったわ」「そう言えば美果は ? 」「来てるわよ。聞いてみよっか」 結々花は半分暇を持て余し、意味無く美果にコールする。数分後、倉庫から美果が飛んできた。「ごめんごめん。つい夢中になっちゃってて」「卒業制作上手くいってる ? 」「すっごい便利 ! まさか秘書室という名のアトリエが貰えるなんて ! 」 美果は結局、涼川葬儀屋へ就職となった。結々花がマンション墓地やスポンサー等との橋渡しなど、重明とあまり関わらない日陰の部分に暗躍するのと違い、美果ははっきり葬儀屋で外へ発信できる人材として存在する予定だ。 このマンション霊園の概ねのデザインもそうだが、位牌や仏壇、ペット用のメモリアルグッズなどを手掛けることで、合法的にこの場にアトリエを持てているのだ。「ただ絵を描いてただけなのに、今は小さい仏壇や神棚を考えて、小物作って、内装をデザインして、宗教も勉強して……人生分からないわ。本当に」「わたしもキャリアを捨てて悪の手先になるなんて思って無かったんだけどねぇ〜」 美果も結々花もぼんやりとガラス越しに朝日を浴びる。 □□□□□□ 第四ゲーム終了時──それは蛍が椿希とコンテナ船へ到着してからの話に遡る。「真理さんは ? 」 コンテナ船の最下部。 会議室のような縦長のコンテナの中、蛍と椿希が並べられた椅子
ドンドン、ドンドンドンドン !! 「けーい、けいけいけい〜 ! 起きてるー ? 」「うるさいな !! いるよ !! 」「うぉ、今日は元気 ……あ」 椿希は蛍が開けた玄関の隙間から、ルキの靴をみて納得する。「うん。そっかぁー。俺お邪魔かぁ〜」「別に。もう出るよ」「あ、椿希君。入りなよ」「ルキさん早よーっす。じゃあ、お邪魔します」「え、いや。俺の部屋なのに、なんであんたらで完結してんの ? 」 蛍が騒ぎ立てる中、椿希はルキに通されると、まっすぐコレクション棚へ向かう。「うぉ〜、今日もあんね。Mの首〜。こういうのって、キメェけど慣れてくると見ちゃうよね〜」「……」 椿希は蛍に向き直ると、さも当然の如く炬燵に潜り込む「なぁ、こないだあのマンション墓地でゲームしたろ ? あれなんだったの ? 」 蛍と第3ゲームに出た椿希が墓地を経営すると聞き付けた烏達は、少しの興味を示してきた。稼ぐ金など烏からすれば微々たるものだが、死者が絡むと合っては何やら期待が大きいようだった。 そこで、ルキが景気付けにデモンストレーションとして蛍にショーをさせた。 内容は第一回目の人体アートと同じルール。 そして場所は蛍と椿希が建てたマンション墓地の最上階。 ガラス屋根で光に満ち溢れた空間。遺族がエントランスで指定したキーを打つと、位牌が最上階ルームに排出されて、墓参りすることが可能なのである。 そしてそのビルのイメージデザインを手掛けたのが美果だ。「死体並べてるだけにしか見えなかった。あれ、何がよかったの〜 ? 」 不貞腐れている椿希の作品は最下位だった。意外な事に、椿希は殺すことは出来ても、遺体が苦手らしく全く使い物にならなかった。これから海玄寺の業務を継ぐかもというのに、蛍もルキも一抹の不安を覚えるが、葬式で見るような遺体と違うのは言うまでもない。蛍がズレているだけなのだ。「ケイは最初に参加した時、ダビンチの最後の晩餐をモチーフにしたんだ」「…… ??? じゃあ今回は ? 」「今回も最後の晩餐をやったってわけ。一回目を知ってる観覧者からすると、今回は伏線あって、更に完成されたなー……って感じかな。そう言う見世物だったんだよ」「最後の晩餐って……あんなんだったっけ ? もっとテーブルで飯とか並んでなかった ? 」「そうそう。レオナルド