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34.最後のペナルティ

last update Huling Na-update: 2025-07-14 17:00:00

 ゴッ !! 

 Mが掴んでいた坂下の首を、床に投げ捨てた。

「Foooooooooooo ! 」

 Mのパフォーマンスは会場のあちこちで盛り上がりを見せていた。

「蛍 ! 今回もおめぇに賭けたぞ ! 勝ったな !! 」

「あ。さっきの……ありがとう、おじさん」

「おう !! 俺ァまた、お前に賭けるぜ ! 」

 単細胞なのか、芯がぶれないのか、この中年男性はマスクからはみ出た目尻をくしゃくしゃにして笑っていた。

「またな ! 」

 そして最後。

 降参した椿希。

 Mは鮮血で真っ赤に染まったシャツのまま、椿希を見下ろしていた。

 椿希には少しの恐怖の色が見える。しかし泣きわめくことも無く、覚悟を決めて椅子に座る。先程までの軽薄な軽口を叩く子供とは面持ちが違っていることにMが気付く。

「面白い。しかし、普段の軽薄な様子は何も、お前に恩恵を齎さないと思うぞ」

「う〜ん。わざとではないんですよぉ。子供の頃から口が減らないものでぇ」

「なぜここへ ? 」

「ルキさんに招待受けて」

「入るには金がいったはずだ。どこから出した ? 」

「継いだ山王寺グループの中から……」

「ルキ、山王寺グループとはなんだ ? 」

「マフィアです。半グレからヤクザ崩れの者で構成された組織で、高学歴者が多いのが特徴です。詐欺やマルチ商法が得意で、人前に直接姿を現すタイプの犯罪が生業のようです」

「……減らず口は職業病か」

 Mがしょうもなさそうに椿希を見る。

「まぁ腕は諦めろ、出せ」

 そこへ椿希が右腕を差し出す。

「ふ……ふはは。お前、正気か ? それともサービスか ? 」

「マジでぇ ? すっげー ! 」

 Mを騙すことは出来ないのだ。

「何 ? 」

 美果がぽかんとしている側で、ルキが椿希が使っていたナイフを指差す。

「椿希くん。左利きだよ」

「えぇ ? あ、本

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  • PSYCHO-w   34.最後のペナルティ

     ゴッ !! Mが掴んでいた坂下の首を、床に投げ捨てた。「Foooooooooooo ! 」 Mのパフォーマンスは会場のあちこちで盛り上がりを見せていた。「蛍 ! 今回もおめぇに賭けたぞ ! 勝ったな !! 」「あ。さっきの……ありがとう、おじさん」「おう !! 俺ァまた、お前に賭けるぜ ! 」 単細胞なのか、芯がぶれないのか、この中年男性はマスクからはみ出た目尻をくしゃくしゃにして笑っていた。「またな ! 」 そして最後。  降参した椿希。  Mは鮮血で真っ赤に染まったシャツのまま、椿希を見下ろしていた。  椿希には少しの恐怖の色が見える。しかし泣きわめくことも無く、覚悟を決めて椅子に座る。先程までの軽薄な軽口を叩く子供とは面持ちが違っていることにMが気付く。「面白い。しかし、普段の軽薄な様子は何も、お前に恩恵を齎さないと思うぞ」「う〜ん。わざとではないんですよぉ。子供の頃から口が減らないものでぇ」「なぜここへ ? 」「ルキさんに招待受けて」「入るには金がいったはずだ。どこから出した ? 」「継いだ山王寺グループの中から……」「ルキ、山王寺グループとはなんだ ? 」「マフィアです。半グレからヤクザ崩れの者で構成された組織で、高学歴者が多いのが特徴です。詐欺やマルチ商法が得意で、人前に直接姿を現すタイプの犯罪が生業のようです」「……減らず口は職業病か」 Mがしょうもなさそうに椿希を見る。「まぁ腕は諦めろ、出せ」 そこへ椿希が右腕を差し出す。「ふ……ふはは。お前、正気か ? それともサービスか ? 」「マジでぇ ? すっげー ! 」 Mを騙すことは出来ないのだ。「何 ? 」 美果がぽかんとしている側で、ルキが椿希が使っていたナイフを指差す。「椿希くん。左利きだよ」「えぇ ? あ、本

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     蛍に立ちはだかった問題。「くっ……」 2.6kgという量。 このウサギの血を抜いたとしても、蛍が普段 食べる食事の量では無いのだ。骨の重さも抜いたところで2kg以下にはならないのだ。 これは椿希と同レベルに辛いゲームになってしまった。更に、思った以上に美果の髪の量も効いていた。 ウサギの内臓は皆が思うより個性的である。 観覧者達も仮面の中の素顔に、思わず眉間に皺を寄せている。 それでも蛍は内容物があるであろう部分は切開せず、そのまま口へ運び、丸呑みしていく。 それにMは気付いたいた。 慣れ。 蛍は食肉加工品以外の肉を食べなれている、慣れを感じる。 長い腸の部分は途中で切ると、剥いだ毛皮を内側にし、包み込んで流していく。スルリと流れるものの、一口が多い。喉に負担がかかってくると、胴体の肉へ味変する。鶏のように弾力のある肉。 その繰り返しだ。 一方、椿希のフォークは完全に止まってしまった。少しの生肉を口にしただけで、普段口にする鳥や豚とは明らかに違う臭み。 内臓と血液だけで時間がかかるほどキツくなる匂い。「 !! ハフフッーーー !! フヘー ! 」 猿轡をされた坂下が「食え ! 」と、椿希に抗議する。「うるさいなぁ……。こんなん……ウプ……あ〜。 そもそも俺ぇ〜。考えたら、伯父さんの腕喰うのも無理だったわ、あははは !! 」「フゴーーーっ !! 」 そんな椿希と坂下の小競り合いの隣、黙々と食べ続ける蛍を観察し続けるM。 その脳内に浮かぶ、一つの疑問と予想。 調査書にはルキと不仲でルキの護衛をしっかり行うという黒服同士の注意書きがあったが、逆なのではないかと。蛍はルキに本当に恨みがあるのだろうか ? 蛍の性質性癖、異常性。望んでゲームに参加し、ルキを誘惑してまで檻に入れ巻き込んだ。 蛍は『ルキに死んで欲しい』の

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