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第48話《5/10㈯》休日①

作者: 霞花怜
last update 最終更新日: 2025-07-01 19:00:46

 土曜日の朝、理玖は晴翔に後ろから羽交い絞めにされる勢いで抱きしめられていた。

 恋人になってから、金曜は二人で理玖のアパートに帰ってくるようになった。

 土日を二人で過ごし、月曜日には同じ家から出勤する。

 お陰で、理玖の部屋に晴翔の私物が増えた。

「俺は反対です。絶対に嫌です。俺が一緒に行くとしても、行かせたくないです」

「まだ言ってるの?」

 昨夜、ベッドの上でも散々言われた。

(エッチしている時なら、やめるっていうと思ったのかな)

 前後不覚になる程度には善くされてしまうから、うっかり頷いたりは、するかもしれないが。

「大学の研究室で話すだけだし、問題ないよ。國好さんも一緒に来てくれるから、安心だよ」

 昨日、真野に折笠と話し合いをすると宣言して、結果を後日伝えると話し、帰した。

 真野が出てくるまで部屋の前に張り付いていた國好に、折笠の所に行く時の警護をお願いしてみたのだが。

『我々の実務は向井先生の警護なので、問題ありません』

 あっさりと承諾してくれた。

 警備の実情も、さらりとあっさり吐露してくれた。

 あっさりいかなかったのは晴翔で、理玖が折笠の所に行くのを、昨日から全然、許してくれない。

「折笠先生のところには、佐藤がいるんですよ。理玖さんはrulerだから、佐藤には理玖さんのフェロモンが効いちゃうんですよ。危険しかないじゃないですか」

 晴翔とspouseになった理玖に、otherである佐藤のフェロモンは効果がない。 

 だが、rulerである理玖のフェロモンは、otherの佐藤に効果がある。

 佐藤だけが発情して一方的に襲われる危険性はある。

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    「でも、臥龍岡先生が折笠先生の愛人なら、鈴木君は……。二人はお互いが折笠先生の愛人だって、知っていたんでしょうか?」 さっきから晴翔の顔が引き攣っている。 きっと晴翔にとっては理解できない次元の内容なんだろう。「折笠先生に複数の愛人がいるのは理研の頃から有名だけどね。お互いが知っていたかは、わからないけど。少なくとも臥龍岡先生は知っていたんじゃないの? じゃないと、鈴木君を利用できない」 さらりと言ってのけた理玖を眺めて、晴翔が信じられない顔をした。「それって鈴木君を恨んでたから利用したんですか? それとも、いっぱい愛人作る折笠先生が憎くなって殺しちゃった?」 晴翔の発想がどろどろの愛憎劇に傾きかけている。「むしろ、臥龍岡は本気で折笠を愛してはいなかったんじゃないでしょうか? RISEのリーダーとしてDollのリーダー折笠の懐に入り殺害するための愛人偽造では?」 國好の解釈も國好らしいというか、大変作為的だ。「栗花落さんは、どう思います?」 どうせなら全員の意見を聞いてみようと思った。 突然、話を振られて栗花落がビクリと背筋を伸ばした。「俺っすか? んー、どうだろうなぁ……」 栗花落が困った顔で笑う。 その顔が引き攣っているように見えた。 ひくりと変な呼吸をしたように見えたが、呼吸を飲み込んで、栗花落が口を開いた。「……純文学の作家さん、っすよね……。愛しているから殺した、みたいな話っすかね。臥龍岡がRISEなら上からの命令も、あったでしょうけど。殺したら自分だけの存在になる、みたいな感じ、とか?」 晴翔と國好が二人揃って同じように不可

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    「俺、秋風音也っていうんだけどさ。宿木サークルのサークル長なんだけど、顧問の臥龍岡先生も、向井先生と話したいって言ってたんだ。WO相談会やりたいんだってさ」 臥龍岡という名とWOという単語を聞いて、満流は思わず前のめりになった。「WO相談会? 宿木サークルって、何をするサークルなんだ?」 秋風が考えるような仕草をした。「あー、色々? 好きな本の話とか、悩み相談とか、雑談とか。サークルとか入ってない奴らの溜り場みたいな感じだよ。顧問が臥龍岡先生だから文学の話多めかな。あと、臥龍岡先生が自分がonlyって公表しているから、WOの話も多いぜ」 臥龍岡叶大といえば、文学部の准教授でありながら純文学の作家でもある。甘いマスクと穏やかな語り口、何よりonlyと公表している話題性で、メディアにもしばしば引っ張られている人気者だ。 つくづく慶愛大学は売り文句が付く学者や教授が好きだなと呆れる。「なるほどね、そりゃ、話聞きてぇわな。WO専攻って、学内に折笠先生と向井先生だけだもんね。けど、臥龍岡先生は折笠先生と昔から仲良しじゃん。よく遊びに来るし、それはもう長居してるぜ。折笠先生に相談すればいーんじゃねぇの?」 特に用事もなく、茶飲み友達風に折笠の研究室に居座っている。 古い関係と折笠が意味深な言い方をしていたから、昔から愛人なんだろう。 さりげなく用事を頼まれて研究室を追い出されることも多い。察して部屋を出るが、戻ったタイミングでまだヤっていたりする。いい加減、愛人とは外で遊んでほしいと思う。(鈴木の時は俺を追い出さないで始めちゃったけどなぁ。視られるスリルが好きなんだろうな) 視感プレイというか、羞恥プレイというのか。 どんなプレイが好きでも構わないが、巻き込まないで欲しいと思う。 otherの満流は、他人

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