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第2話

Auteur: ほろ酔いの猫
橘は私の手から離婚届をひったくると、にやっと口角を上げて陽翔にサインを急かした。

陽翔は受け取った書類を見たまま、手が一瞬止まった。

その瞳に浮かんだのは――明らかな苛立ち。

「梅香、君ってさ、すぐ離婚だの何だの言い出すよな。正直、もううんざりなんだよ。

とにかく……今は落ち着こう?帰ってから話そう。な?」

私はそんな彼を、乾いた目で見つめ返した。

「話すことなんてないよ。これは、あんたが望んだことじゃないの?

それとも、彼女と堂々と一緒になりたいわけじゃなくて……こっそり不倫してるスリルだけが目当てだったの?」

陽翔の表情が凍りついた。

口を開こうとしながら、言葉が詰まって、しばらく何も言えなかった。

ようやく絞り出すように呟いた。

「……俺と彼女、君が思ってるほどじゃない……そういうことまではしてない」

私は小さく笑った。

「それはどうもご丁寧に。でも、『心だけの浮気』も『身体だけの浮気』も、どっちも気持ち悪いってことには変わらないよ」

彼が何か言い返そうとした瞬間、橘が陽翔の腕に縋りついてきた。

目を見開いたまま、声を上ずらせて叫ぶ。

「ちょっと……正気なの!?財産の半分だけじゃなくて、あの海辺の別荘まで取るつもりなの!?」

私は彼女を冷ややかに見つめ返した。

「それがどうしたの?これは私と彼の『夫婦としての清算』の話。あんたには一ミリも関係ないよね?」

彼女は一瞬ぽかんとしたけど、すぐに顔を真っ赤にして怒鳴り返してきた。

「どうして関係ないのよ!?あんた、『ふたりを応援する』って言ったじゃない!だったら、ちゃんと譲歩しなさいよ!

いい?あんたは最大で財産の四割まで。あの海辺の別荘は絶対にダメ!あそこは私が一番気に入ってるんだから!」

あまりの図々しさに、私は思わず拍手してしまった。

「すごいね、あんた。そんな厚かましさがあれば、世の中なんだって渡っていけるよ。

でも、残念。相手が私じゃ、夢の続きは見られないと思ってね」

橘は足を踏み鳴らして、今度は陽翔の腕にすがって泣き声で訴える。

「ねえ陽翔、お願い……見てよ、彼女すごく怖い!私、あの別荘大好きなのに、お願い、彼女に渡さないって言ってよ……!」

その瞬間、陽翔は勢いよく橘の手を振り払い、離婚届を破り捨てた。

「梅香、君の言ってることは全部、感情的なだけ
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