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第3話

Penulis: 不思議の国のアリス
それから2日後、萌音の誕生日を迎えた。

誕生日の晩餐会は古城のような館で開かれた。大広間は金色にきらめき、花の飾りつけからバースデーケーキに至るまで、細部にまで趣向が凝らされている。

招かれた客は名士や富豪ばかりだったが、その彼らでさえ、この宴には思わず感嘆の声を漏らした。

「この花、全部洲人様が今朝、わざわざ空輸で取り寄せたんですって。萌音お嬢様が甘いものがお好きだからって、脩平様は王室御用達のパティシエまで呼び寄せたそうよ。なんて心のこもったお祝いかしら!」

「こんなに大事にされるのは萌音お嬢様くらいよ。宮近家と冴木家の御曹司おふたりに、蝶よ花よと可愛がられて。ただのお誕生日なのに、ほかの人じゃ到底真似できない盛大さだわ!」

「本当よねえ。それに比べて、どこかのみっともない貧乏娘ときたら。こんな格式ある席に、まともなドレスの1着も用意できないなんて。恥ずかしくないのかしら!」

人々はひそひそと囁き合いながら、広間の隅に立つ響子に蔑むような視線を投げた。

響子はうつむき、自分の着ているドレスに目を落とした。

成人のお祝いに、脩平の祖母――冴木家の大奥様が贈ってくれたものだ。袖を通したのはたった3回。大切にしてきたから、今でも新品同様に見える。

けれど、金を湯水のように使うこの人たちの目には、みすぼらしい安物にしか映らないのだろう。

それでも響子は恥じる様子もなく、背筋を伸ばして堂々と立ち、何も聞こえないふりをした。

時は刻々と過ぎ、宴はプレゼントを贈る時間へと移った。

洲人が贈ったのはプライベートクルーザー。脩平はある星雲の命名権を手に入れ、「萌音」と名づけた。

会場じゅうから羨望のため息が上がる。萌音は頬を染めて脩平を見つめ、恥じらうように口を開いた。

「脩平、もしもうひとつおねだりしたら……聞いてくれる?」

脩平は甘やかすような眼差しを彼女に注いだ。

「何が欲しくたって、全部お前にやるよ」

萌音はもう遠慮することなく、彼の首元を指さした。

「じゃあ、それが欲しい!」

その指先を追った響子の目に、小さな銀のペンダントが映った。

響子の瞳が、かすかに揺れた。

婚約が決まったその日から、響子は脩平にいくつも贈り物をしてきた。けれど彼は、そのどれひとつとして気に入らず、ろくに目もくれなかった。

ただひとつ、この銀のペンダントだけは違った。

脩平が交通事故に遭ったとき、響子は3日3晩、ほとんど眠らずに彼のそばに付き添った。目を覚ましてそれを知った彼は、たった一度だけ、彼女に穏やかな顔を見せてくれた。

そして、亡き祖母が響子の無事を願って贈ってくれたそのペンダントを、響子が彼の首にかけるのを、黙って許してくれたのだ。

そのペンダントを、今、脩平は自らの手で外し、愛おしげな表情で萌音へと差し出した。

萌音は受け取るなり、そばにいたペットの犬の首にそれをかけ、無邪気そのものの笑顔を咲かせた。

「ずっと思ってたの。こんな貧乏くさいもの、世界でいちばん、いーっちばん素敵な脩平には似合わないって。ワンちゃんにあげたら、やっとふさわしい持ち主が見つかったね!」

響子の顔から血の気が引いた。爪が掌に深く食い込む。

このペンダントをどうするかは、もう脩平が決めることだ。そうわかっているからこそ、響子は懸命にこらえ、胸の奥に渦巻く怒りを押し殺した。

何気なくこちらに目をやった洲人は、何かを察したのか、冷笑まじりに口を挟んだ。

「いや、それは違うな。うちの犬だって数百万はする血統書付きなんだぞ。どこの露店で買ったかもわからない安物の飾りなんて、釣り合うわけがない。まあ、見た目がいいから付けてやってるだけさ」

広間じゅうの人々がそれに調子を合わせ、たちまち笑い声がどっと湧き起こった。

脩平もうなずき、萌音の鼻先を軽くつついた。

胸が苦しくなり、響子はその場を立ち去ろうとした。ところが、萌音に呼び止められた。

「あら?響子、私へのプレゼントは用意してくれなかったの?お金がなくていいものなんて買えないのはわかってるよ。だから、代わりに乾杯してくれない?」

会場じゅうの視線が、一斉に響子へと集まった。

響子は深く息を吸い、グラスを手に取るしかなかった。

グラスを合わせようとしたその瞬間、萌音がわざと響子の手首に指をかけ、ぐいと下へ引いた。

次の瞬間、響子のグラスは傾き、萌音のドレスにシャンパンが広く染みを作っていた。

萌音の目がたちまち赤く潤み、か弱げに責め立てる。

「……っ。私のことが気に入らないのはわかってるよ。でも、こんな大勢の前で、そこまで好き放題して、私の顔を潰さなくたっていいじゃない……

お兄ちゃん、パパとママがくれたドレスが台無しになっちゃった。ふたりが知ったら、きっと悲しむよ……うっ、ううっ……」

両目から涙がこぼれ落ち、洲人たちはたちまち胸を痛めた。

脩平はすぐさま萌音を腕の中に庇い、厳しい声でボディーガードを呼びつけた。

「萌音がせっかくお前を誕生日会に招いてくれたのに、恩を仇で返すような真似をして、わざと嫌がらせをしやがって!謝れ!」

洲人は冷たい目をしたまま、響子を乱暴に突き飛ばした。

「響子、お前が卑しい生まれなのはわかってたが、ここまで嫉妬深くて性根が腐っているとはな。素直に言うことを聞かないなら、こっちも容赦しない――おい、ここにある100杯以上の酒を、残らずこいつに飲ませろ!」

命令を受けたボディーガードたちは、すぐさま響子を押さえつけた。テーブルのシャンパンを手に取り、彼女の口をこじ開けて流し込んでいく。

冷たい酒が次々と口に流し込まれ、気管にまで入り込んで、響子は激しくむせ返った。

必死にもがきながら、喉の奥から、悲痛な叫びを絞り出す。

「わ、私……アルコール、アレルギー、なの……!」

誰もがその声を聞いていた。それなのに、止めようとする者はひとりもいなかった。

脩平は萌音の涙を優しく拭い続け、苦しみもがく響子には、一度も目を向けようとしなかった。

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