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87話

Author: 籘裏美馬
last update Last Updated: 2025-11-23 20:09:17

私は、慌てて身を乗り出しつつ苓さんに話した。

「そのっ、あの時は確かに御影さんは婚約者でした…っ!だけど、今はもう違うんです。私と御影さんの婚約は白紙になっていますから……」

だから、安心して欲しい──。

そう言葉を続けようとした私は、思わず口を噤む。

何で、安心して欲しい、なんて……。

どうして私は苓さんに誤解して欲しくない、と強く思ったの。

どうして苓さんにだけは勘違いして欲しくない、と思ったの──。

その答えに行き着いた私は、真っ赤になればいいのか、真っ青になればいいのか分からなくなった。

あれほど彼──御影さんを好きだったのに。

それなのに、私は今苓さんを──。

頭の中がぐちゃぐちゃになった。

そんな私の変化に気付いたのだろう。

苓さんが慌てて席から立ち上がった。

「茉莉花さん!?顔色が悪い……!どうしたんですか!?」

狼狽えるような苓さんの声がすぐそばで聞こえ、彼の力強い手のひらが私の肩に回る。

私は苓さんに支えられつつ席から立ち上がった。

「茉莉花さん、お母様のお見舞いはまた明日にしてはどうですか?体調が優れないようですし……茉莉花さんの元気がない姿を見たら、お母様もきっと心配すると思います」

優しい声音で、苓さんが提案してくれる。

苓さんは、私にも、お母様にも気遣ってくれていて、その優しさがとても嬉しい。

意識がなくても、人は聴覚は動いていると聞いた事がある。

だから、私の体調が悪かったら、意識のないお母様にもそれが伝わってしまうんじゃないか。

お母様に心配をかけてしまうんじゃないか、と苓さんが気遣ってくれて、私はその言葉に頷いた。

「そう、ですね……。私もお母様を心配させたくはありませんから」

「ええ。そうしましょう?茉莉花さんの家まで、俺が送ります」

「ありがとうございます、苓さ──」

私が苓さんにお礼を伝えようとした時。

私たちはもう既にテラスの入口付近まで来ていた。

だから、テラスに駆け込んできた人に、会話が聞こえてしまったのだろう。

「茉莉花の、お母様……?母親が、入院していたのか……?」

息を切らし、テラスに駆け込んできた人物──。

まさか御影さんに聞かれて
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