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第5話

Auteur: 一攫千金
数時間後、二人が出かけようとした矢先、瑛治に執事から電話がかかってきた。彼と怜の寝室が火事になったというのだ。

寝室には、彼と怜の結婚衣装、2年間で撮りためた16冊のアルバム、数百本のビデオテープ、そして怜が彼のために作った手作りのプレゼントが2箱分保管されていた。彼は普段からそれらを非常に大切にしており、他人が触れようものなら激怒した。

案の定、彼は抑えきれない怒りを声に滲ませながら言った。「一体どうして火事になったんだ!」

執事は困ったように言った。「玲奈様です。彼女は私たちの制止をものともせず、ご夫妻の寝室に無理やり入っていきました。そして、2分後には火の手が上がりました......」

瑛治の声色は一変し、焦った様子で尋ねた。「玲奈はどうなった?彼女は無事なのか!」

執事の返事を待たずに、彼は家を飛び出した。

怜は顔色ひとつ変えず冷静に彼を見送ると、一人で川辺へと向かった。花火の開始を待つために。

11時59分、花火が始まる1分前、彼女に玲奈から動画が送られてきた。

動画の中で、玲奈は涙ながらに訴えていた。「私がわざと寝室に火をつけたの!あなたが彼女からのプレゼントを宝物のように扱っているのを見て、辛かったの。私を責める?」

瑛治は優しく慰めた。「お前を責めるわけないだろう。あのプレゼントを大切にしていたのは、怜に見せるための演技だ。俺は本当は何も思っていない」

怜は長い間沈黙した後、吹っ切れたように微笑んだ。

花火が終わり、彼女は家へと向かった。正式に離婚を告げるために、荷物をまとめた。

家に着くと、ドアを開けたのは瑛治だった。彼女を見ると、彼は申し訳なさそうに言った。「悪かった、家の火事の知らせに慌ててしまって、お前を一人病院に残してしまった」

怜は気にしないように笑って言った。「分かっているわ」

彼女が怒っていない様子を見て、瑛治は続けた。「明日は七夕だ。一緒に過ごす約束をしていたが、会社で用事があって、一緒には過ごせないかもしれない」

「会社で用事」という言葉は、彼と玲奈の密会の暗号になっていた。

「ええ」怜は静かに答えた。

なぜ瑛治は直接離婚を切り出さずに、こんな風にコソコソしているのか、彼女には理解できなかった。

もう考えるのも面倒になった怜は、きっと彼らはスリルを楽しんでいるのだろうと考えた。

彼女は離婚協議書が入った封筒を手渡した。「奇遇ね。私も研究所の方で急用ができたから、今すぐ行かなきゃいけないの。明日は戻らないから、早めの七夕のプレゼントを渡しておくわ。明日開けてみて」

怜は国内トップレベルの生物科学研究所で働いていた。感情を忘れる薬剤は彼女が開発したもので、本来は医療目的で使用されるはずだったが、まさか自分が使うことになるとは思ってもみなかった。

瑛治はファイルを受け取り、笑って言った。「俺もプレゼントを用意している。二階にあるから、ちょっと待ってくれ。取って来る」

彼が階段を上るとすぐに、玲奈が出てきた。彼女は勝ち誇ったように怜を見て言った。「先輩の会社に用事なんてないわ。明日は私と海に行くのよ」

怜は彼女を無視し、リビングのテレビに映る経済ニュースに目を奪われた。

「如月家の長男、如月悠貴氏が明日帰国することが明らかになりました。如月悠貴氏は二年前、両親である著名な資産家夫妻と決裂し、単身で海外へ渡航。金融とテクノロジー分野での卓越した洞察力を武器に、ゼロから事業を立ち上げ、最新の世界長者番付では、桐山瑛治氏を抜き、トップの座に輝きました。帰国後、国内経済にどのような影響をもたらすのか、各方面から注目が集まっています......」

カメラは、大勢のボディガードに囲まれた悠貴の姿を捉えた。彼の切れ長の目には、冷徹な光が宿っていた。

怜の僅かに残る記憶の中では、悠貴は温厚な紳士だった。彼女が如月家に来た日から、彼は彼女を優しく見守り、彼女が病気の時はいつも傍で看病してくれた。読書とパソコンいじりが趣味の彼は、それ以外の時間はすべて怜のために使っていた。

怜は義兄を尊敬していたが、あまり親しくはなかった。なぜか、彼の優しさの裏に何か危険なものが潜んでいるような気がしていた。

そして時折、彼が自分を見る目つき......あの目つきが、怜はいつも怖かった。

玲奈もニュースを見て、思わず拳を握りしめた。彼女は悠貴を愛していた。だから瑛治を諦め、2年間彼を追い続けた。しかし、どんなに努力しても、悠貴は彼女に振り向いてくれなかった。

やっとの思いで掴んだチャンスで、悠貴の酒に媚薬を盛り、彼と結ばれようとしたことがある。しかし彼は、薬が効いて意識が朦朧としている中でも、怜の名前を呼び続けていた。彼の服を脱がしても、肌身離さず身につけているペンダントの中には、怜の写真が入っていた。そして、彼女が呆然としていると、意識を取り戻した悠貴に、危うく絞め殺されそうになったのだ。

玲奈は絶望した。怜が結婚していても、悠貴は彼女を愛し続けている。自分ではないのだ。

もう悠貴を手に入れることはできない。だから、彼女は瑛治のもとに戻ってきたのだ。

そして、瑛治なら彼女は完全に怜に勝つことができた。怜が深く愛する男の目に映っているのは、自分だけ。この感覚は彼女にとって堪らなかった。

玲奈は怜を刺激しようと、言葉を続けた。彼女は怜が苦しむのを見るのが好きだった。「先輩があなたにたくさんの服を作ってあげたそうね。でも、サイズの合わない服がたくさんあるんじゃない?どうしてだか分かる?彼が服を作っていた時、心の中にいたのは私だったからよ」

彼女は怜に近づき、「あなたが戻る前に、あなたの服を着て、先輩とあなたのベッドでセックスしたのよ」と囁いた。

しかし、予想に反して、怜は軽く微笑むと、背を向けて出て行った。

彼女が出て行って数分後、瑛治が慌てた様子で降りてきた。「怜はどこだ!」

プレゼントを取りに行った際、彼は誤って怜が昨日着ていたコートを落としてしまい、中から記憶消去剤の投与同意書を見つけた。一番下には、確かに怜のサインがあった。

彼の頭は真っ白になり、持っていたファイルも床に落としてしまった。

中からサイン済みの離婚協議書が飛び出し、彼の足元に落ちた。

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