Masukそんなことがあったことも、すっかり忘れかけていた数日後。
「すいません! 乗ります!」
今にも締まりそうなエレベータのボタンを押して、中に乗り込もうと、中の人へ声をかけると。
「あっ……」
たまたま中にいた社長に気付いて、思わず声が出る。
どうしよう。社長一人だ。
なんか前の流れのままだと気まずいな。 ってか、そもそもあたしのことなんて覚えてないか。「なんだ? 乗らないのか?」
ドアを開けたまま乗り込まないあたしに社長が声をかける。
「あっ……乗ります」
この前のこと一応謝る方がいいのかな……。
でもあんなの覚えてないだろうし、また変な印象つけちゃうの嫌だしな。少し戸惑いながらも中に乗り込み、壁際にいる社長を背後にして、前方の方に立つ。
「外回り?」
「えっ?」
すると社長から話しかけられて思わず驚いて反応する。
「今、駅前のカフェの仕事担当してるみたいだな」
えっ、社長なんであたしの仕事内容把握してんの!?
あの時初めて知ったレベルだよ? かなりの社員いるのに、絶対一人ずつの仕事なんて把握出来ないはずだし、絶対社長そんなことに気を回せるほど暇じゃないはずなのに。「あっ、はい。そうです。ちょっと他のカフェの調査に行ってて」
「そっ。収穫はあった?」
「えっ、あっ、まぁ……。っていうか、なんか社長が意外すぎて……」
思わず呟いたあたしの言葉に。
「何が?」
すかさず社長が反応して言葉を返す。
「いや一社員に社長がわざわざこうやって仕事の内容把握して声かけてるんだなって」
「はっ。まさか。この会社に何人社員がいると思ってんだよ。そんな何百人の社員の仕事いちいち把握してられるかよ」
「……え? なら……なんで……」
「お前だからだよ」
「えっ!?」
社長の意外な言葉に、思わずあたしも勢いよく振り向いて社長を見る。
「言ったろ。この前、お前の仕事ぶり見せてもらうって」
「あたしのこと……。覚えてるんですか?」
「逢沢だろ?」
「あっ、はい。ホントに覚えてた……」
「覚えたって言ったろ」
「でも今までこんな喋る機会もなかったのに、あんな一瞬の出来事で印象のないあたしなんかのこと覚えたりするんだなって……」
「いや。かなり印象あったろ、あんなん」
「え?」
「あんな必死に金欲しいとか、オレのこと悪魔だとかいろいろボロクソに言ってるヤツ、今までいなかったからな」
「あぁ……ですよね~……」
あぁ~やっぱそうだよな~!
そういう印象持っちゃってるよな~! あれはつい言っちゃっただけなのにな。 どれも偶然だったり切羽詰まった状況で出た言葉とはいえ社長にとっては結局聞いた言葉がすべてで、それがあたしの印象になっちゃうってことだもんな……。 と、その状況に少し落ち込みそうになっていたら。「まぁ金がそんな欲しいならそれだけ見合う仕事すりゃちゃんと考えてやるから」
社長が思ってたような言葉と違う言葉を返してくれる。
「あっ、ありがとうございます……。でも、仕事頑張るの、お金欲しいだけじゃないんで」
「どういうこと?」
「ここの仕事。好きなんですよ」
「え?」
「ずっと夢だったんで」
「夢って?」
チーン。社長に聞かれたタイミングで目的の階にそのまま到着。
「あっ、着いた。じゃあ失礼します」
「おい」
あたしがそのまま話を終わったせいで社長は気になったのか声をかけてくるものの、そのまま乗り続ける理由もないので、エレベーターから先に降りて、そのままその場を立ち去る。
ビックリした~。 今まで社長とまったく関わる機会もなかったのに、あの一件以来、こんな風に偶然会って話しかけられるくらいになるなんて。にしても、あたしのこと覚えてたんだ、社長。
ってまぁ、別にいい印象じゃないだろうけど。 でもあんまりいい印象じゃないままっていうのは嫌だしちょっとは印象挽回しないとな。 ホントなら仕事で活躍して夢叶えた時いつか社長に自分のことを知ってもらいたかったのにな。 まさかこんな変なタイミングでその前に変な覚えられ方しちゃうとか……。いや、でもそもそもあんな風に気軽に話しかけられるような人じゃないし。
こんなきっかけでも知ってもらえたのはラッキー……とか?いやいや、覚えられ方もカッコ悪すぎるし、誤解されたまま覚えられてるとかちょっとな……。
でもこれ以上印象悪くならないようにこの仕事のこともっともっと勉強しなきゃ。 早くここで自分の好きな仕事を任せてもらえるくらいの知識や情報たくさん身に着けておかないと!よしっ、今日の夜もいつものようにまた勉強だ!
瑠偉と談笑しながら、ファンと仕事と気持ちが行ったり来たりしてる中。スタジオの入口の方で、なんだかザワザワと騒いでいるのが見える。「うわ~すいません! ありがとうございます! こちら今差し入れいただきましたー!」そして、誰かが来て差し入れをもらったとスタッフさんが大きな声で合図して皆に伝える。ん? 差し入れ??誰だろ。瑠偉の事務所の人かな?と思いながら、その声をした方を見ると……。――えっ!?!?慧さん!?!?そこにいたのは、まさかの慧さんと本村さんの姿だった。えっ、えっ! なんでなんで!?なんで慧さんがここにいるの!?ここ会社じゃないよ!? 撮影スタジオだよ!?てか、顔出すなんて一言も言ってなかったよ!?あたしは現れたまさかの慧さんの存在に、心の中で一人パニックになる。だけど、慧さんが来たところで、あたしはいつものように慧さんの元に駈け寄って行ける訳でもなく、出来るだけあたしはその嬉しい気持ちがバレないように、そのまま仕事モードの自分を保つ。そんな社長の登場に皆気付いてからは、こういう形で社長がまさか現れるなんて思ってないので、スタジオ内のスタッフもさっき以上に騒ぎ始める。「えっ、神城社長。生で見ると更にめちゃめちゃカッコよくない!?」「そこらの芸能人よりイケててヤバいんですけど」いろんな芸能人と仕事をしているスタイリストさんやメイクさんたちの中でもそんな声が上がっていて、こっそり聞き耳を立てていたあたしは、やっぱりそれほどのカッコよさなのだと改めて実感する。確かに芸能人でもない普通の一般人なのに、なぜにあんな立ってるだけでスタイルよくてカッコよすぎてオーラもすごいのか。目の前の瑠偉もそれを言えば確かに芸能人のキラキラやオーラはすごい。だけど、カッコよさの種類が二人は違うというか。慧さんは芸能人の雰囲気とはまた違うんだけど、でもなんか惹きつけられる色気というか余裕さというか。慧さんの仕事の姿勢とか自信とか、そういうのも外見に現れていて、自然ときっとそういう魅力が放たれているような気がする。そんな慧さんは慧さんで、本村さんと壁際で話をしていて、顔も真剣なお仕事モード。「えっ。どうしよう。逢沢さん。神代社長が見に来てる……!」すると、隣の瑠偉もそんな慧さんを見てキラキラした目で、あたしにこっそりと話しかけてく
「逢沢さん。ちょっといいですか?」次のパターンを撮影前に琉偉の衣装チェンジを待っていると、撮影前に琉偉の衣装を準備しているスタイリストさんから声をかけられる。そして琉偉とそのスタイリストさんの元へ行くと。「瑠偉さんの次の撮影なんですけど。資料にある逢沢さんがイメージされてる感じなら、衣装どちらのがいいですかね?」と、衣装さんが最初に予定していた衣装と新たに用意した衣装のどちらがいいかを尋ねてくる。「そうですね~。本来の瑠偉さんなら、多分こっちを選びがちなんですが、今回のうちのプロジェクトのコンセプトでいくと、逆にこちらですかね。次の花のセットがさっきよりかは落ち着いた感じではあるんですが、服によってその花が際立つので、こちらの白い衣装にした方がいいかなと。次はちょっと一体感というか、琉偉さんと花が自然に溶け合ってるようなそんなイメージにしたいんです」「なるほど。そうですね。じゃあ、こちらのがいいですね。すいません。琉偉さん、こちら着てもらってもいいですか?」自分が伝えた意見で、スタイリストさんが衣装チェンジして、琉偉がそちらの衣装に変更する。「わかりました」それからスタイリストさんの指示通り着替えてきた琉偉が、そのイメージになっているかの確認をするため、その衣装を着て新たな花のセットの前に立つ。そして、それを見たあたしは。「うわ~いいです! めちゃいいです! イメージ以上です!」自分が想像してたイメージよりもっと素敵になっていて、思わずあたしは興奮のまま伝える。「瑠偉さん。そのまま少し顔を上げて、そのままこちら見てもらって少し微笑んでもらっていいですか!?」と、あたしはそのままそのセットに立った琉偉に、興奮しながら指示を出す。そして、琉偉がメージ通りの表情をする。あーもう琉偉わかってる!さすがだわ瑠偉!「あーそれですそれです! 最高ですー!!」あたしは思わずいつものファン目線のテンションが入ってしまう。ダメとは思いつつ、やっぱ目の前でこんな自分の理想通りの表情とポーズを推しが撮影してるとか、マジで最高。あーしっかり目に焼き付けとこう。そしてそのイメージで撮影も進行していく。琉偉はホント理想通りの撮影してくれるよな~。琉偉は元々そういう、周りの人の伝えたいことをちゃんと察知して対応出来る能力が優れていて、気配りも出来る
「では、瑠偉さん。次はこちらのパターンでお願いします」「わかりました。よろしくお願いします」撮影スタッフさんの指示に返事をして、カメラの前に立つ琉偉。現在、プロジェクトの撮影真っ只中。撮影スタジオで撮影スタッフと共に、あたしは琉偉の撮影をチェックしている。打合せで決めたテーマ通りになるように、あたしは資料をチェックしながら随時カメラマンさんやスタッフに、こちらのイメージなどを伝える役目。今回の撮影は、SEIKAプロジェクトで使う花とコラボした企画。華やかな色鮮やかなたくさんの花に囲まれた琉偉が、カメラの前で満面の笑みでポーズを決める。くーっっ、これこれ!!琉偉のイメージにピッタリ!うん、だってこれはあたしが琉偉をイメージして全部企画した撮影だからね!絶対この色鮮やかな感じが琉偉に似合うと思ったんだよな~!やっぱりこの花の組み合わせのチョイス我ながら最高!と、自分で選んだ撮影の花のセットを自画自賛しながら、撮影を見守る。今回このEveRに関わることは、あたしが中心に考えることが出来て、実は今回のこの企画も自分が決めたもので。EveRの撮影に関しては、どういうイメージにすると、よりその魅力が伝わるかと、どれだけうちのプロジェクトとリンクさせてそれぞれの良さや目的を伝えられるか。そしてうちの仕事だからこそ引き出せるEveRの新しい魅力というのも重視させたかった。そして今回テーマになっているのが『花×EveR』。撮影では何種類ものイメージの違うの撮影が行われる。華やかな明るいイメージの花の時は、可愛い満面の笑みで。落ち着いた品を感じられる花の時は、少し微笑む感じの優しさと大人っぽさを感じさせて。そしてクールな美しさを感じられる花の時は、クールでカッコいい色気を漂わせて。それぞれのそのテーマごとに使う花のイメージは、そのままカフェでも使用する。そのテーマごとに設けたメニューを作り、それぞれのイメージの世界で楽しめるそれぞれのコースも用意。そのイメージごとに撮影をし、EveRのそれぞれのメンバーにも今まで見たことないような魅力を開花させるというのも裏テーマになっている。今まではそれこそグループのイメージだったり、メンバーの決まったイメージだったりっていうのを守ってた所も正直あって。実はそのイメージを一度壊して
「じゃあ、そろそろ準備するかな」「えっ? まだ朝早くないですか?」さっき時計を見たらいつもよりまだ全然早い時間だったから、正直まだ慧さんとイチャイチャ出来るかと思ってたんだけどな……。「あぁ。今日はちょっと朝一で会議があってさ。その前に先に柾弥と打合せすることがあるから、ちょっと早めに出ようと思って」「そうなんですね……」なんだ残念……。「朝食も会社で適当に済ますから。まだ朝早いし依那はもう少しゆっくり寝てから出勤するといい」そう言って、慧さんがあたしのおでこに優しくキスをして微笑む。少し残念に思うも、慧さんに朝から甘いキスをもらって幸せな気持ちに戻る。「はい……。慧さん頑張ってくださいね」ベッドから起き上がった慧さんに、あたしもエールを送る。「ん。ありがと」そしてまた優しい微笑みを返してくれる慧さん。部屋を出て行ったあと、あたしはまたベッドに潜り込んで、慧さんのいない残り香と温もりをそっと味わう。うぅ……、さっきまで一緒だったのに、もう慧さんが恋しい。もっと慧さんの温もりを感じていたい。一緒にいればいるほど、くっつけばくっつくほど慧さんを好きになる。ホントはもっと慧さんを独り占めしたいって思っちゃう。慧さんは社長さんだし忙しい人だし、そんなの絶対無理だけど。休みの日だって、慧さんとはなかなか合わないし。だから少しでも時間が合えば慧さんと一緒にいたいって思う。でもきっと慧さんは仕事に戻っちゃうと、きっと頭の中は仕事だけになっちゃうだろうし、あたしのことなんか全然思い出したりしないだろうな。慧さんは仕事が一番の人だし、あたしが一番にならないのはわかってるし、決してそうなってほしいわけでもない。実際仕事してる慧さんが素敵だし、それが慧さんだし、そんな慧さんに憧れて好きなんだし。だけど、やっぱり、だからこそ、ふとした時に、一瞬でも、あたしのことも思い出したりしてほしいなぁなんて、ちょっと思ったりしてしまう。なんて、そんなの贅沢で我儘なことだけどさ。一緒にいれて、家に帰ってきたらこんなに甘い慧さんでいてくれてるんだから、それだけで幸せだって思わなきゃな!最初は好きになってくれるだけでいいと思ってたのに、好きになってもらえたらまたそれ以上に望みが出てきてしまう。あ~相手はあの慧さんなんだぞ!付き合ってもらえて一緒にい
◇ ◇ ◇昨夜、甘い慧さんをたっぷり堪能したあとは、そのまま慧さんと同じベッドで寄り添って眠った。今朝ふと目覚めた瞬間、すぐ目の前になんとも美しい表情で眠る慧さんがいて、あたしは昨夜の甘い幸せを想い出しつつ、今の穏やかに眠っている慧さんの寝顔を見て、目覚めているのに夢心地になる。慧さんが起きないのをいいことに、あたしは目の前の慧さんをマジマジと見つめる。無造作にラフに降ろしてる前髪も、長い睫毛も、スッと整った顔も、見ればみるほど美しくて、あたしはまた朝からうっとりしてしまう。何度見ても飽きない。どれだけいても飽きない。それどころかもっと見つめたくなって、もっと一緒にいたくなる。こんなに綺麗でカッコいい人が自分の彼氏なんだと、未だに信じられない時がある。こんな人を独り占め出来てるのだと嬉しくなる。仕事をしてる時はあんなに凛々しくて頼もしい男らしいカッコよさを感じるけど。こうやって一緒にいる時、こういう時間に、飾らない素の慧さんを見せてくれることで、更にその嬉しさが増す。こんな姿を知っているのは今は自分だけなんだと、胸が熱くなる。そしてその美しい肌に、寝顔に触れたくて、あたしはそっと寝顔の慧さんに手を伸ばす。起きてほしいような、起きてほしくないような。自分を見つめてほしいような、ずっとこの寝顔を見つめていたいような。慧さんが好きすぎて、どんなことでも満足して、どんなことでももっと欲が出てきてしまう。もっと今以上慧さんを感じたくてたまらなくなる。すると、慧さんが少しずつ目を開ける。「んっ。はよ……。依那……」まだ眠たそうな表情のまま、目の前のあたしに声をかける。「おはようございます……」あたしがそう応えると。「ちゃんと眠れた……?」そう言いながら優しく微笑んで、あたしの髪を触りながら優しく頭をなでる。「はい。眠れました」そしてあたしも微笑みながら答える。「ん。よかった」そう言いながらずっと頭をなで続ける慧さん。「慧さんもちゃんと眠れましたか?」「うん。依那が隣にいてくれたから、安心してぐっすり眠れた」「よかった……」「でも、もう少し、このまま……」そう言って、慧さんはあたしを抱き寄せギュッと抱き締めてくれる。あたしはそんな慧さんの胸に顔をうずめて、その幸せを噛み締める。「慧さん」「ん?」「今日慧さ
「じゃあ、その代わり……。もう少し依那感じさせてもらってい?」慧さんが耳元でそう囁いて、あたしを見つめ微笑む。その声は、静かに甘くあたしを誘惑する。「慧さん……」その囁きと微笑みに、あたしはまた胸が高鳴り、その瞳に吸い込まれるように、うっとりと見つめる。すると。今度は、さっきまであたしを優しく支えてくれていたと思っていた手に急に力が入り、グイッとあたしの腰を更に慧さんの方に引き寄せ身体ごと近づける。そして、すぐ目の前に近づいた慧さんを見つめると。「浮気すんなよ?」そう言ってニヤりと怪しく微笑んで……。「そんなの……、んっ!」“そんなのするわけない”と反応しようと思ったら、その言葉を言う前に、目の前の慧さんの唇でその言葉も塞がれる。こんな素敵な慧さん目の前にして、あたしはいつだってドキドキして限界ギリギリで。こんなに甘く唇を塞がれるだけで、胸がいっぱいになって仕方ないのに。「依那。手、首回して」唇を離して、そう伝えてくる慧さんに、あたしはドキドキしながら、目の前の慧さんの首に両手を回す。「ん。いい子」そう言って今度は優しく微笑んで、更にあたしの頭の後ろに手を触れ、慧さんの方に今度は頭ごとまた近づけて、甘い唇の嵐を降らす。あたしはこの甘い幸せにとろけそうになりながら、必死に慧さんにしがみついて、この甘いキスの嵐を堪能する。浮気なんてする暇ないくらい、他の誰も見えなくて。いつだって、慧さんに夢中なのに……。そして、唇が離れて、慧さんと見つめ合う。あたしは、幸せな気持ちになって笑みが自然と零れる。「フフ。幸せです」あたしは、つい慧さんに素直な気持ちを伝える。お互いの存在を気持ちを求め合って、受け止め合ってるような感じがして、気持ちも満たされる。「依那は、こんなんでいいの?」「えっ?」すると、慧さんがなぜかそんなことを聞き返す。どういう意味かを慧さんに尋ねようかと思ったら……。「オレはこんなんじゃ全然足んないんだけど」さっきまで優しく見つめていたかと思えば、今度は少し求めるような少し熱を感じる視線で見つめてきて、更に慧さんがあたしの感情を揺さぶる。「あたしも……です……」そして、あたしもそんな慧さんに刺激されて、満足していたはずの気持ちが、更にもっとと慧さんが恋しくなる。だから、あたしもその気持ちのまま、そ
「ちょっと……これからのこと考える時間もらってい?」「え……?」これからって……何……?忘れてっていったのに、なんでこれからのことになるの……?「ちゃんと、お前のことどうするか答え出すから」あ……どうしよう……。これ……契約も同居も解消されちゃうやつだ……。あぁ……やっぱり言うんじゃなかった。社員と同居してるだけでも問題なのに、そんな相手に酔った勢いとはいえキスしちゃったなんて事実は、社長の中できっと聞き流せないこと。なんの影響もない相手なら、きっとあたしが演技してた時のように、影響なかったのかもしれないけど。結局それに向き合わせてしまったのは、相手があたしだから。あた
「じゃあ、料理もう出来上がってるんで、準備しますね」「あぁ」そして出来上がった料理をテーブルに並べていく。「このアクアパッツァ。本村さんが社長今日一日仕事頑張ってたから美味しいモノ食べさせてあげたいって準備してくれたモノなんですよ」「え? あいつが?」「はい。でも本村さん。今日自分が来たことで社長が機嫌悪くなるかも、とまでも言ってて。なんかホントにそんな感じになっちゃったからビックリしました……」「え……オレ、そんな感じ?」「え?」「機嫌悪くなってんの?」「はい?? え!? 自分で気付いてないんですか!?」「あぁ……そっか。だから柾弥帰る時、あんな言い方……」「ん?」
「あの。社長。一つ決まりごと作りませんか?」「ん? 決まりごと?」「はい。家で食事出来る時は、ちょっと気まずくなったりしても、絶対一緒にご飯食べるってことにしませんか……?」「え?」「なんか……一緒にいるのに、やっぱり気まずいままとかは嫌というか……。それで、せっかく一緒に食事できる機会がなくなるとか、社長がそれで食べることをまた優先しなかったりするのとか出来るだけなくしたいです。だから、まぁちょっと気まずい雰囲気でも、家にいるなら、ちゃんと一緒に食べるってことにしたい……です」「……わかった。じゃあ、そうしよう」「よかった!」「オレもお前と気まずいままこの家にいるとか嫌だし、
「ハハ。図星か」「なんで……そこまでわかるんですか?」「あぁ~。あいつキス魔なの」「キス魔ぁぁぁ!!??」「かなり酔っぱらうとさぁ。面倒くさく絡んでキス魔になるんだよ」「あぁ……。そういうことですかぁぁぁ……」あぁぁぁ、謎が解けたぁぁぁぁ。そっかぁぁ、キス魔だったのかぁぁぁ。あー、でもなんであたしガッカリしてるんだ?無駄に期待もしなくて悩まなくてよかったじゃん。だけど、今まで感じたことないこの胸の痛みはなんだ?「フッ。ガッカリした?」「いや! ……はい……」「あっ、認めた(笑)」「いや、もうここは認めないと話この先進まないなと思いまして……」「偉いね。賢明な判断







