Mag-log in「でもせっかくあーやって社長と話す機会があったのに、あんな感じだと、依那のその純粋な想い社長に伝わらないのもったいない気がするけどな~」
「そうだね。あの言葉も勘違いされたかもな~」
「あの言葉って?」
「まともに接するの無理って……」
「あぁ~。確かに」
「あれはさ。社長みたいな人と話すことなんて自分の中で想像出来なかったし、実際今まで全然関わらなかったから、憧れの存在で普通に接するなんて恐れ多くて無理って意味だったんだけど……」
「いや、絶対あの流れじゃ、それ伝わってないよね(笑)」
「だよね~! あ~絶対嫌な印象しかなかったよね~」
改めて言葉にすると冷静になって、ようやくその時のことを思い出してきて後悔してしまう。
「依那が悪魔とか言うからじゃん(笑)」
「いや、あたしん中で天使と悪魔って最上級のランクの崇める例えっていうかさ」
「それ絶対依那しかわかんないやつだから(笑)」
「あたしん中では、ルイルイが可愛くて癒しで天使の存在だとしたら、社長は厳しくてストイックだけど、でも尊敬出来て刺激もらえる存在のそういう悪魔というか……」
「いや、だからわかんないから(笑)」
「あ~絶対勘違いされてるだろうな~!」
「ちゃんとあの時、尊敬してますとか憧れてますとか言えば、そんな勘違いもされなかっただろうに」
「うん。でも、あんな流れでそれ言っちゃうとさ。なんかとってつけて言ったみたいな感じというか。言い訳がましくその場しのぎで適当にそんな感じで言ってんだろうなって思われるかなって」
「あぁ~。まぁそれはなくもないかもだけど」
「でもあたしはそういう簡単な気持ちで伝えたい訳じゃないし。ホントに社長の仕事尊敬してて、社長の外見やスペック狙いで憧れてるとかそういうのじゃないから、余計伝えられないっていうか」
「まぁね~。だからってタイプじゃないいとか言わなくても(笑)」
「いや、だって、社長ってそういうのかなり愛想尽かしてるって聞いたよ?」
「あぁ~そうみたいだね。結局はそれ目当てで寄ってくる女性が多いから本命の彼女も作れないって話だよね。実際そういう女性しか寄ってこないってことなのかね」
「そうだとなんか悲しいよね。社長のちゃんとした部分見てないってことでしょ?」
ただの噂でしか知らないことだけど、あたしにとってそれほどの憧れの存在なのに、そういうところを見る人はいないのだと少し悲しくなった。
だからあの時あたしはそういう風に見てる訳じゃないのだと無意識に伝えたかったのかもしれない。「なら、依那ならそういうのちゃんとわかってるからいいんじゃない?」
「え!? 無理無理無理。あたしは社長に対してそういうんじゃないし」
「実際、依那可愛い人がタイプとは言ってるけどさ。実際、社長といい感じになったらその気になるんじゃない? 社長カッコいいとは思うんでしょ?」
「いや、そりゃまあ、カッコいいとは思うけど……。でも逆に恐れ多い人だから、そうやって考えられないというかさ。あたし恋愛すること自体、なんか不器用で向いてないっぽいし、元々ハードル高い人いかなくても……ね」
「だからルイルイ?」
「うん。ルイルイならそういうの全部取っ払って推しとして癒されるし楽しめるし、そういう気持ちも味わうことは出来るしさ」
「そっか~。でもその感じだと、社長、ないこともないってことだよね」
「ん? なんでそうなった??」
「あたしはなんか二人で話してて、なんか二人の雰囲気いいな~って思ったけど」
「え? あれが? なんで? そもそもそういうのマジで社長となんてありえないし、相手にもされないから!」
そんな恐れ多いこと、恋愛初心者のあたしが考えるだけで失礼ってなもんだよ!
そんな対象に見ちゃうってことだけで、申し訳なくなる。「へ~。そっか~。まぁ人生何が起こるかわかんないからね~」
そう言ってなぜだか桜子はニヤニヤして意味ありげに言う。
絶対そんな社長と何かあるはずないって、そう思ってたのに。
まさかこれから先自分にとってホントに予想もしないような現実が訪れるなんて……。 この時のあたしはまだ知る由もなかった――。「慧さん……?」「今度は……ちゃんとオレだけの為にそうやって綺麗にした姿見せてよ」あたしの髪や顔に少しずつゆっくりと触れながら、優しく見つめたまま、慧さんがそう囁く。「はい……。慧さんの為にあたしも着たいです」「ん」「あっ、そしたら、慧さんも一緒に浴衣着てほしいです!」「あぁ~そっか。そうだな。そうしようか」「うわ~嬉しい! 慧さんの浴衣姿見れる♪」「お前の為だけに着てやるよ」「へへッ。やった」「だから、お前もオレの為だけな?」「もちろんです。あっ、そしたら今度はもうちょっと大人っぽい綺麗系の浴衣着たいです」「うん。今のもいいけど、また違う感じのも見てみたい」「はい。楽しみにしてますね」「ん」「あっ!」「何? どした?」「あの、せっかくなら一緒に写真撮りたいです!」「え? 写真?」「はい。せっかく恋人っぽい感じのこと今日出来たんで、その記念に」「あぁ……」「あっ……! もし一緒に写真撮るのマズかったら全然大丈夫です!」そうだよね。あたしのノリでそんなん言っちゃダメだよね……。「いや……いいよ。撮ろうか?」「ホントですか?」「あぁ。せっかくそんな綺麗な格好してるしな。一緒に撮っとくか」「ありがとうございます!」あたしはウキウキで携帯を取りに行って写真を撮る準備をする。「てか、オレこんなん改まって撮ったことねぇわ」「え? 前の彼女とか藤代さんとかと二人で撮ったりとかしなかったんですか?」「あぁ……うん。ないかも。写真撮るの自体あんま好きじゃないし、そういうの残したくないタチだから」「えっ、でも仕事関係では写真も映像もバンバン出てるじゃないですか」「それは仕事だから仕方なくだよ。今のご時世そんなん嫌だとか言ってらんねぇだろ。自分の顔見せて自分の言葉で伝えた方が伝わることも多いし、興味も持ってくれることも多いからな」「確かに、そのお顔を武器にしないともったないです……」「まぁそれがいいときも悪いときもあるけどな」「ですよね。そういうこともきっとありますよね。……じゃあ、なんで、あたしとは撮ってくれようと思ったんですか?」「ん? お前だからかな」「あたしだから?」「そう。お前だから撮りたいって思った」「フフッ。嬉しい」
「それに。せっかくそこまで綺麗にしてんだから。すぐ着替えちゃもったいないだろ」「え、それ慧さんが言ってくれるんですね」「だから。もっとちゃんとよく見せて」「えっ? こんなんでよければ……」「うん。お前のその姿ちゃんと見たい」「あっ、じゃあちゃんと立ってお見せしましょうか?」「あぁ。いいね」「では。はい! どうぞです!」そう言って慧さんの前に立ち、手を広げてクルクルと回って浴衣姿を披露する。「どうですか?」「うん。綺麗だよ」「へへ。やった」こんな時も慧さんは優しく見つめて笑ってくれる。「ホントは。あたしも慧さんに見てほしかったんです」「そうなの?」「このイベントはルイルイたちが浴衣で来てほしいって言ってたイベントで、ファンの子もみんなそれ聞いて浴衣着てきたりして。もちろんそれはそれでこういう格好出来るのとかも嬉しかったんですけど。なんかイベント来てるカップルの人とか見ると、やっぱ普通に慧さんのこと思い出しちゃって、あぁあたしも一緒に来たかったな~、浴衣姿見てほしかったな~って思ってました」「へ~。そんな時までオレのこと思い出してくれてたんだ?」「はい」「そのルイってヤツに会いに来てるイベントだし、オレのことなんてすっかり忘れてると思ってたよ」「ルイルイは推しですけど、あたしがいつでも会いたいって思うのも好きだって思うのも慧さんだけです!」「えっ、それどう違うの? ルイってヤツも好きなんだろ?」「はい。好きです」「で。オレは?」「好きです」「フッ。どう違う訳?(笑)」「全然違いますよー! えーなんて説明すればいいんだろー! ちょっと待ってくださいね! どう言えば伝わるかちゃんと考えますから!」「いやいや、そこまではしなくていいから(笑)」「でも!」「オレのこと好きだってちゃんとわかってるから」「ホントですか?」「あぁ~。いや、やっぱわかんねぇかも」「え?」「だから。ん」「ん?」「ここ。座って」そう言って慧さんが自分の膝に座るように合図をする。「え!? そこ!? なんで!?」「ん? まだよくわかんねぇし」「え? わかったって言いましたよね!?」「やっぱわかんなかった」「え! なんでですかー!?」「だから。こことりあえず座って。もっと近くでよく見せて」「えっ……。近すぎません……?」「あ
それから近くに停めてあるからと社長の車へ二人移動してきた。「今日車で来られてたんですね」「あぁ。ここ以外にもいろいろ動く予定あったから車のが移動しやすかったし」「そうなんですね。でも、もっと混んでるのかと想ったらそうでもないんですね」「あぁ~。ここちょっと離れたし、皆帰るの逆方向だからこっち来るとそこまで混んでないんだ。まぁ少し歩かせて悪かったけど」「いえ。その間また慧さんにくっついて十分恋人時間堪能出来たので満足です♪」「それは確かに」「はい」「ん。お待たせ」「ありがとうございます」それから車に乗り込んだあとは、いきなり泊まりだと大変だろうと、ホテルまでにある遅くまでやってるお店に寄って、服や小物を買えるようにしてくれた。さすがだな。あたしなんて泊まれることに浮かれてなんも考えてなかった。そうだよな、いきなりお泊りするってことはそういうことだよな。確かに浴衣脱いだらあたしもう自分で着れないし、そしたら着替えいるもんな。しかもメイク道具は持ってるけど、メイク落としとか化粧水とかそういうのも持ってきてないし。なんてスマートなんだ。自然すぎてビックリしたわ。てか、やっぱ慣れてるな……。女性の扱い方めちゃわかってる……。今までもこういうことあったのかなって、少し胸がチクッとするものの、それほど大人でスマートな慧さんに同時にキュンとする。だけど二人の時はこうやって一番にあたしのことを考えてくれる。きっとこれは社長としてじゃなく恋人としてなのだと、一つ一つのそのさりげない気遣いや優しさから、ちゃんと伝わってくる。そのおかげで、あたしの意識も "社長" ではなく、ちゃんと "慧さん" という彼氏に対しての呼び方や感情に自然に変わっていける。そして着いたホテルは思ってたより、やっぱりすごい豪華なホテルで。部屋に入ってもダブルとは言いつつ、めちゃ広い……。え、いつもこんなとこ泊まってるんだ……。「ソファーあるし座って」「あっ。はい」そう言って部屋に入ると、慧さんがソファーへと促してくれる。「ん。スリッパ」「あ、ありがとうございます」「もうそれ脱いで楽にしとけ」「はい」え、もうどこまで気が付くのこの人。「すいません。何から何まで」「フッ。こんなん当たり前だから」当たり前じゃないんだよな。普通の人だと気付かな
「抵抗ある?」「えっ?」すると顔を覗き込みながら社長が声をかけてくる。「抵抗……は、ないです。ちょっとそんなの想像もしなかったので、戸惑ってはいますけど……。でも、あたしもまだ一緒にいたい……です」「なら、よかった。てか、お前が嫌だって言ったところで、んなの却下だけどな」「え!?」「そりゃこんな中で返す訳ねぇだろ。オレがいんのに一人帰す方がありえねえし。お前がそんな足で人混みの中帰ろうとすんなら、社長命令で強制的に泊まらせようと思ってた」「そんな時だけ社長利用するんですね(笑)」「それならお前も断れねぇだろうし(笑)」「社長命令って都合いいですね(笑)」「だろ? でも。今は社長としてじゃなく恋人として彼女の心配してるだけ」そう言って優しく笑う。あぁ、社長はそうやってさり気なく幸せにしてくれるんだよな。ホントにあたしのこと心配してくれてるんだ。あたし以上にあたしを気にかけてくれる人。やっぱりあたしはホントに素敵な人好きになったんだな……。「ありがとうございます。慧さん」「ん」あたしにこうやって優しく笑いかけてくれる慧さんが好き。あたしをこうやって気にかけてくれる慧さんが好き。あたしをこうやって幸せにしてくれる慧さんが好き。慧さんの全部が好き。「フフッ」「ん?」「いえ。幸せだなぁと思って」「そっ?」「はい」「こんなもんじゃないから」「え?」「もっとお前を幸せにしてやる」「慧さん……」「だから、お前もこんなんで満足すんなよ?」「はい」その言葉は決して強制的でもなく、命令的でもなく。社長としての言葉じゃない、恋人としての慧さんとしての言葉。優しく笑いかけてくれながらそう伝えてくれる言葉。きっと、あたしはこの人を好きでいる限り、その度に幸せを感じてずっと満足し続けていくと同時に、好きが増え続けてその満足も留まらなくて満足し続けていくのだろう。好きという想いに限界なんてなくて、一瞬一瞬過ごす時間が、一瞬一瞬交わす言葉が、一瞬一瞬感じる想いが、どれも違って全部が特別な幸せとして、きっとずっと重なっていくから。
「友達とは別でもう大丈夫なんだろ?」「あっ、はい。さっき連絡し合って、別々で帰ろうってことになりました」「なら問題ないよな」「問題はないですけど、意味がよく……」「なら余計その足でお前一人で帰らせられねぇだろ」「あっ、そっかこの足……」社長に言われてまたようやく痛かったことに気付く。あまりに幸せだったから痛かったのまた忘れてた。そういう痛みも幸せが上回ると、ホントに忘れるくらいになっちゃうんだなぁ~。なのに社長は自分のことじゃないあたしのことをずっと気にかけて心配してくれるなんて優しすぎる。「どうせその足で家帰ったって駅からまた少し歩かなきゃだし。その距離でもそんな格好でお前キツイだろ」「あっ。そうですけど……。そこ今から行って空いてるもんですか? あっ、めちゃ高いとこですよね!? いくらくらいですか!? えっ、あたしそんな払えるとこかな……」と、一人悩んでいると。「アホッ。んなのお前に出させる訳ねえだろ。心配ないよ、元々オレが取ってる部屋だし。お前はなんも出さなくていい」「え、何個か取ってたってことですか?」「いや? 一部屋」「一部屋?」「そう。オレの部屋にお前も泊まるってだけ」「えっ!?!? 一緒にってことですか!?」「そう」「いやいやいや!」いや、そんなあっさりと!確かに同じ家に住んでるし、付き合ってもいるけど……!でもホテルの部屋ってことは、ベッドそこにあるよね?ってことは同じ空間だよね?さすがに同じ家に住んでても、今まで社長の部屋に入ったこともないのに!なのにいきなりこのハードル!?えっ、あっ、でもツインとかなら、まだ反対向いて寝れば、ギリギリ社長との寝るまでの時間は楽しめたりするってことかな?「は? 何? いやってこと!?」「いや、え、そうじゃなくて。えっと、もちろんツインですよね?」「は? んな訳あるかよ」「いや! え!? そこにあたしも一緒にですか!?」「えっ、何、お前動揺してんの?(笑)」「いや、まぁ、ちょっといきなりでビックリして」「あぁ~。でもダブルで一人使いしようと思ってたから、んな部屋もベッドも狭くねぇから安心しろ」「えっ、でもベッドは一つですよね?」「そうだな」「そうなんだ……」こんなのいきなりすぎて心の準備出来るとかのレベルじゃない!でも社長とはまだ一緒に
瞳に、記憶に、すべての花火とこの幸せな時間を焼き付けて、最後の打ち上げ花火が終わると同時に皆から拍手と感嘆の声も上がる。「綺麗でしたね」「あぁ」そして、あたしも隣の社長に声をかけるも。もう終わってしまった寂しさに少し肩を落とす。もう社長とお別れかな。もう帰らなきゃだな。終電なくなる前に、あたしも人混みの中帰らないと。さっき綾ちゃんたちも心配してくれてメッセージくれたから、その時に知り合いと会えたから一緒に見るって伝えて安心はしてくれてたけど、さすがに今からこの人混みじゃ合流は出来ないし。今から一人でこの人混みの中帰るのか……。社長とも明日には家で会えるのに、まだ離れたくない気持ちが残ったままで、急になんかいろいろ重なって心細くなる。「……どした?」「……え?」すると、社長がすかさずそんなあたしを見て声をかけてくる。「いや、なんか急に沈んだ顔してるから」「……ハハッ。すごいな、慧さんは。こんな時までそんなのわかっちゃうんですか?」ちょっとだけそんな表情になってただけのはずなのに、この人はなんでこんなにちゃんと気付いてくれるんだろう。「わかるよ」「そんなにあからさまに沈んだ顔してました?」「いや、オレがお前をずっとちゃんと見てるからじゃない? お前のちょっとした変化でもすぐにわかる」何……それ……。サラッとそんなすごい嬉しいこと……。そんな少しの変化でも気付いてくれるほど、あたしをずっと気にしてくれてるなんて……。「あぁ、なんかそういうの愛されてるのかな~とか、ちょっと調子乗っちゃいそうです(笑)」元々優しい社長だから、どこまでの感情なのかもわかんないけど。そうであってほしいという想いを込めて、冗談交じりに反応を返す。「そりゃそうに決まってんだろ」なのに、社長はなんの抵抗もなしにまたサラッと答える。「え……冗談っぽく言ったのに、まさかホントにそんな風に返してくれるとは……」そして逆にあたしの方が戸惑った反応をしてしまう。「は? 何? お前オレの気持ち全部そんな風に思ってたってこと?」「いや……そうじゃなくて……。ただ、あたし自身そういうのに慣れてないというか信じられないというか、そういう覚悟がないだけで……」「へ~。お前、それっぽっちの覚悟も全然出来てねぇんだ? 」「は……い……」「お前、そんなんでビビ







