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第135話

Auteur: 雪八千
俊彦の表情が、みるみるうちに険しくなっていく。

さっきまで和やかだった食卓は、空気がピタリと止まる。藤原家の者たちは、紀子の部屋の重要さを誰より理解している。グラスを持っていた者は、驚きのあまり手を滑らせ、それを落とすくらいだった。

そして次の瞬間、全員がほとんど反射的に走り出した。部屋にいた綾と弘樹も、物音に気づいて飛び出してくる。

けれど誰よりも速かったのは――俊彦だった。

いつも落ち着き、威厳を崩さない藤原家の当主が、今は足元もおぼつかない。だがその足は、紀子の部屋の前に立った途端ピタリと止まる。

ドアの前に立ち尽くしたまま、俊彦の呼吸は荒く、喉仏が上下する。

もし中が荒らされていたら――

その想像だけで胸が潰れそうなのだ。

美穂はそんな俊彦を見つめながら、焦りの声を上げる。「どうして玲さんが紀子の部屋に入ったの?そこは大事な場所なんでしょ?もし部屋が汚されたり、変な匂いがついたりしたらどうするの!」

そして矛先は使用人の長岡(ながおか)へ。

「長岡さん、どうして玲さんを止めなかったの?」

長岡は慌てて首を振る。

「私は止めていたんです!美穂様のご指示通り、玲様を美穂様の部屋へ案内しました。でも、玲様は紀子様の部屋を見た途端、すごく綺麗だからどうしても入りたいと言い出して……私の力じゃ、とても止められなくて……」

「お母さん、長岡さんは悪くないわ」

綾も声を荒げて続ける。「悪いのは玲よ。長岡さんは歳だってのに、あの強情な女を押し返せるわけがないでしょ?」

弘樹は黙ったまま冷たい顔で長岡を見ているが、長岡は涙をため、肩を縮めて震えていた。

年配で誠実な彼女の姿は、見ている者に同情を誘う。

そして藤原家の親族たちは、すぐに口々に騒ぎだした。

「なんて子なの!最初は大人しくて可愛らしいと思ってたのに!」

「やっぱり出身の悪い子はダメね。いいものを見ると、すぐ手を出そうとするもの。ここは藤原家なのよ?こんな無礼、絶対許せないわ」

「秀一くんは彼女と結婚すべきじゃなかった!俊彦さん、急いで離婚させたほうがいい!今回は紀子さんの部屋だが、次は藤原家そのものを壊しかねない!」

親戚たちの怒号が飛び交う中、俊彦の胸は怒りで震える。だが彼が気にしているのは藤原家の体裁でも、誰の言葉でもなかった。

――紀子の部屋がどうなっているか、それ
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