Lilas

Lilas

last update最終更新日 : 2026-07-28
作家:  一ノ瀬 結海たった今更新されました
言語: Japanese
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概要

現代

純愛

切ない恋

幼なじみ

初恋

年齢=非リアな24歳、風間あさひ。ある日、中途で入社してきた初恋の相手、桐山夕也がやってきて…!?

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44 チャプター
1.予期せぬ再会
「げっ、夕也!?」 私は風間あさひ。24歳。 地元から少し離れた田舎の食品工場で働いている。 昔から男っぽい性格のせいか、好きな人ができても毎回玉砕しており、いまだに彼氏がいない。 今日は工場に新しく入った人が何人かいて、私が工場を案内する役目を担った。 そしてどういう訳か、その新人たちの中に私の初恋、桐山夕也がいたのだった。 「お、あさひじゃん。」 私が突然声を上げたことに周りがざわついたため、慌てて謝って工場案内を続けることにした。 「き、急に大きい声を出してすみませんでした。この度はご入社、おめでとうございます。私は第二製造課の風間と申します。これから工場を案内しますので、よろしくお願いします。」 「お願いしまーす。」 「よろしくお願いします。」 「しゃーす。」 食堂から工場の入口へ新人たちを案内する。 「こちらは毛髪・塵除去機になります。どの工場でも外から入る際には必ずこれを使って全身に付いた毛や塵などの汚れを吸わせてください。製品の品質向上のためどうかご協力をお願いします。」 「すみませーん、質問いいですかー?」 「はい、なんでしょう。」 「これってどのくらい吸わせたらOKなんですかー?」 「ああ、ごめんなさい、言い忘れてましたね。この機械は一度吸い始めると15秒で止まる仕組みになっていますので、機械に出ている数字が15から0になるまで全身くまなく綺麗にしてください。」 「はーい。」 「それと…みなさん、内履きは持ってきていますか?」 「持ってます。」 「ありまーす。」 「持ってきました!」 「では、この玄関で外靴から内履きに履き替えてください。皆さんの名前が下駄箱にシールで貼られてますので、外靴は下段の方に入れてください。青いテープがある方が上段、黄色いテープがある方が下段です。」 靴を履き替えた人たちが外靴を下駄箱に入れ、全身に付着した汚れなどを機械に吸わせていく。 「万が一、内履きを洗うために持ち帰って忘れてしまったりした時は、事務所から貸すことができるので、その時は上司、または事務員に声をかけてください。」 その後、作業内容の説明も兼ねての工場案内をし、お昼の時間になり食堂へと戻る。 「最後に、皆さんに集まっていただいたここが休憩所兼食堂になります。休憩時間ですが、10分休憩は10時10分から
last update最終更新日 : 2026-07-27
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2.転校生
私が夕也と出会ったのは、小学4年生のとき。 元々私は大きな街で生まれ育ったのだが、父の転勤に伴い、ちょっとした田舎に引っ越すことになった。 その転校先の学校で出会ったのが夕也だった。 ちょうど新学年の始まりで、私は全校集会で校長に転校生として紹介された。 運が良かったのか、みんなが優しかったのか、私はいじめられることもなくすぐクラスに馴染むことができた。 転校してからしばらくの間、私の案内役として担任に指名されたのが夕也だった。 「俺、桐山夕也。よろしくな。」 「私は、風間あさひ。よろしく、桐山くん。」 「夕也でいいよ。みんなそう呼んでるから。」 「わかった。じゃあ、夕也って呼ぶよ。私は風間でもあさひでもどっちでもいいよ。」 「じゃあ俺はあさひって呼ぶ。何がどこにあるとかは流石に分からないよな?」 「ああ、うん…全然わかんないや。」 「だよな。トイレの場所は?」 「さっき、階段登ってすぐのとこにあったような?」 「あー、あそこは4年生は使えないんだ。」 「えっ、そうなの?」 「何でかわかんないけど、そういうルールなんだって。」 「へぇ…」 「5年生と6年生はさっきのトイレ…西側のトイレは使える。俺たち4年生と、けやき教室に行ってる子はこっちの東側のトイレを使わないといけないんだ。」 「わかった。」 けやき教室とは、訳あってクラスに馴染めなかった子や、ちょっとした病気を抱えた子達が通う特別教室のことだ。 その後1ヶ月ほど、移動教室の際の場所の案内などで、夕也と行動を共にしていた。 そんなこともあって、夕也とは休み時間や放課後でも一緒に遊ぶほどの仲になった。 季節が過ぎて、とある夏の日の休み時間、私と夕也を含めた何人かの友達でかくれんぼをして遊ぶことになった。 夕也が鬼で、他のメンバーは隠れることになった。 「ぜってぇ見つけてやるよ。」 「はっ、やれるもんならやってみな!」 そういう会話を交わして私は隠れる場所を探し始めた。 「木の裏は絶対見つかるし、一輪車の置き場所も絶対覗かれるよなぁ。プールの裏は、ダメだな…あっ、そうだ。」 そういって私は体育館に向かった。 「ここなら絶対にバレない。」 私が隠れた先は、体育館の中にある、マットや跳び箱などをしまっておく倉庫。 それまでに何回かかくれんぼをしていたが、
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3.ドキ…?
保健室に運ばれて2時間ほどすると、夕也が給食を運びに来てくれた。 「あさひ、給食持ってきたよ。」 「…あ、ありがとう。」 「まだ気持ち悪い?」 「ううん、もう大丈夫。」 「そっか。…ごめんな。」 「え?」 夕也の突然の謝罪に、私は疑問を抱いた。 「なんで謝るんだよ?」 「俺が早く見つけてれば、こんな事にならなかったのに。」 「そんな、夕也のせいじゃないよ。あんなところに隠れてた私が悪いんだ。」 「でも、ちゃんと探さなかったのは俺だ。本当に、ごめん。」 「も、もういいから。謝るなよ。ってか、夕也のご飯冷めちゃうから早く教室に戻ったら?」 「え?あ、うん。そうする。じゃな。」 「またあとで。」 夕也は教室へと戻って行った。 なんだか、寂しい気分になった。 給食を食べ終え、体調もだいぶ良くなったので、5時間目からの授業を受けることにした。 「風間?もう大丈夫なのか?」 「はい、もう大丈夫です。」 「もうあんなところに隠れるんじゃないぞ。桐山が場所を当ててくれなかったら、もっと大変なことになっていたかもしれない。」 「え…夕也が?」 「風間が帰ってこなくて先生たちで探そうとした時に、『もしかしたら体育館にいるかもしれない』って、一緒に体育館に行って探したんだ。…良かったよ。風間を見つけられて。後でちゃんと桐山にお礼を言いなさい。」 「はい…先生も、ありがとうございました。あと、ごめんなさい。」 「風間が無事ならそれでいい。もうあんなことはするな。先生もみんなも、風間の家族も心配する。」 「はい。本当に、すいませんでした。」 放課後、待っている夕也の元へ走っていった。(帰る方向が一緒だったため) 「夕也ー!」 「おう、あさひ。」 「夕也、あのさ…」 「…ん?」 「先生から聞いたんだ。見つけてくれてありがとう。」 「ん?ああ、どういたしまして?」 「でも…なんであそこにいるって分かったんだ?」 「勘。あさひだったら誰も行かなそうなところに隠れるだろうなって。」 「へぇ…わっ!」 何も無いところで躓いてしまった。 やばい…転ぶ…! そう思い、目をきゅっと瞑った時… 「っと、危なっ。大丈夫?」 夕也が左腕で咄嗟に私を抱きとめ、私が転ぶのを防いだのだ。 「だ、大丈夫。ありがとう…」 「あさひって、た
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4.初めての恋
夕也よりも早く教室に着き、私は愛華に昨日の帰りに起きたことを話した。 「…って感じなんだよ。」 「ふぅん…あさひ、それはね…」 「うん…?」 「『恋』だよ。」 「こっ…!いやいやいや、そんなわけ…」 「胸が変な感じしなかった?ドキドキしなかった?」 「…した。」 「じゃあ、恋だね。」 「いや、あの時は転びそうになったからびっくりして…」 「いーや、恋だね。」 「えー…」 「じゃあさ、もし夕也が女の子と手繋いでたら、どう思う?」 「なんでそうなる。」 「いいから。どう?」 「…なんか、嫌。」 「それは恋してるってことだよ。」 「そういう、ことなの…かな…?」 「そういうこと。」 その時、息を切らした夕也が教室に入っていた。 「はあ…はあ…はあ…おい…お前らなんで急に逃げるんだよ…」 「夕也があさひのことびっくりさせるからでしょー。」 「あう、びっくりしてごめん…」 「俺のせいなの?ってか、結局何の話してたんだよ。」 「え、いやそれは…」 「女の子だけの秘密の話ですぅ。」 「なんだよそりゃ。」 「はい、関係ない男の子はあっち行った!早く座ったら?朝の会始まるよ?」 「わかってるよ。…なんだよ、女の子だけって…」 ブツブツ言いながら夕也は自分の席に着いた。 「ありがとう、愛華…」 「いいえっ。」 月日が流れ、私たちは中学生になった。 私、愛華、夕也は同じ中学に進学した。 3人とも別々のクラスになったが、仲良しのままだった。 私と愛華は美術部に、夕也はサッカー部に入部した。 中学での生活にも慣れ、愛華の家で学校の課題をやっていた時、 「ねえ、あさひはいつになったら夕也に告白するの?」 「へっ?」 「もう長いこと夕也に片思いしてるじゃん?夕也超モテるし、そろそろ気持ち伝えないと他の子に取られるよ?」 「うっ…分かってるけど…はあ…すんなり告白できたら苦労しないって…」 「当たって砕けろ!告白してダメだったら、次に進めばいい。」 「それはそうなんだけど、夕也は…もし告白してダメで、友達じゃいられなくなったら、嫌じゃんか…」 「…まあ、そうだよねー。」 「恋愛って難しい…」 「でも、本当に早く伝えないと。夕也にいつ彼女できてもおかしくないんだからね。」 「う、はい…そういえば、愛華たちは
last update最終更新日 : 2026-07-27
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5.初めての失恋
翌日、私はいつも通り愛華と一緒に喋りながら登校していた。 「あ、愛華、あのさ…」 「ん?なになに?」 「夕也に、告白しようかなって思うんだ。」 「…えっ、ついに!?わああああっ!」 「ちょっ、あんまり大きい声出すなっ…」 「あはは、ごめんごめん。いつ言うの?」 「うーん…せめて夕也たちの市内大会が終わってからにしようかなって…今は練習に集中したいだろうし。」 「そっか。頑張って!」 「うん。ありがとう、背中押してくれて。」 「私は何にもしてないよ。ないと思うけど、もし泣かされたら私かぶん殴っとくから。」 「そっ、そこまでしなくていいよ。」 学校に着いて、私たちはそれぞれの教室に向かった。 「あさひちゃーん、おはよう!」 「あ、おはよう、美奈。」 塩谷美奈。私と同じクラスで、同じ係になった事で仲良くなった。 「ねえねえ、聞いて聞いて!」 「ん?どうしたの?」 「美奈ね、彼氏ができたの!」 「えっ、おめでとう!」 「えへへっ、誰だと思う?」 「えー?」 「あさひちゃんも知ってる人だよ!」 「誰だろう…このクラスにいる?」 「ううん、違うクラスだよ!」 「違う、クラス…」 その瞬間、嫌な予感がした。 まさか… 「もしかして…桐山、夕也…?」 「そ!せーかいっ!」 嫌な予感はいつも的中する。 自分の中で、何かが崩れていく音がした。 「よ、よかったじゃん!お似合いだと思うよ。あいつ優しいし。おめでとう。」 「えへへ、ありがとう!今度市内大会があるでしょ?絶対その後誰かが告白するから、取られちゃう前に告白しちゃえー!って、告白したら付き合うことになったんだ~。…あっ、ねえあさひ。」 「うん?」 「桐山くんのこと、絶対好きにならないでね?」 一瞬、ゾッとした。 「まさか!ないない!ただの友達を好きになるわけないよ!」 「ふふ、だよね!あっ、朝の会が始まっちゃうから美奈戻っちゃうね!」 「はーい…」 胸がズキズキと痛む。 嘘だと思いたかった。 私の好きな人が、私じゃない人を好きになったんだ。 放課後、その日は美術部の活動が無かったため、私は昇降口で愛華を待っていた。 「あさひ…」 「おっ、来た。帰ろう?」 愛華が心配そうな顔をしていた。 夕也と美奈が付き合ったという話が耳に入ったのだろう
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6.どうして
―そら視点― 妹のあさひが目を腫らせて帰ってきた。 あさひは滅多に泣くことが無い。 そんなあさひが、泣き腫らした顔をしていたのだ。 「あさひが泣くってよっぽどだぞ…」 牛乳を温めてココアパウダーを混ぜ、食品棚から取り出したあさひの好きなクッキーと共にあさひの部屋へ持っていく。 「あさひ、入るぞ。」 「ん…もうご飯?」 「まだだけど、ココアとクッキー持ってきたから…気休めにもならねぇと思うけど。」 「ありがと…」 目を腫らしたままのあさひが体を起こす。 「…なんで泣いてたんだ?誰かにいじめられたのか?」 「違う…」 「何があったんだ?」 「…同じクラスの友達が、夕也と付き合ったって…」 「…!」 信じられなかった。 夕也くんなら、絶対にあさひと付き合うだろうと思っていた。 夕也くんも、夕也くんがいる時のあさひと同じ顔をしていたから。 「それ…本当なのか?」 「うん…素直な子だから嘘はつけない、あの子は。」 これほど落ち込んでいるあさひを見たことがなかった。 どんな事があっても明るく振る舞い、友達にも、家族にも見られない場所で泣く、強がりな奴。 それがあさひなのだ。 そんなあさひが、おそらく帰る途中で泣いて帰ってきた。 それくらいショックが大きかったのだろう。 俺は虚ろな顔をしたあさひの頭を撫でた。 「飯、食えなさそうだったら無理して食わなくていい。兄ちゃんが母さんたちに上手く言っておくから。」 あさひの部屋を後にして1階のリビングに向かうと、兄のだいちがいた。 「あれ、兄貴、帰ってきてたんだ。」 「ああ、ちょっと取りに来たいものがあったから。あさひは帰ってきてるのか?」 「帰ってきてる…けど、今はそっとして置いた方がいい。」 「なんだ?」 「ああ…俺が言ったって事はあさひに言わないでくれよ?」 「…?分かった。」 「夕也くんいるだろ?」 「ああ、あさひの…」 「あさひと同じクラスの友達と付き合ったらしい。」 「夕也くんが!?まじか…」 「目真っ赤にして帰ってきたんだ。しばらく1人にしてやってくれ。」 「…そう、だな…」 ―あさひ視点― 翌朝、私は鋭い頭痛によって起こされた。 「いっ…今日は休も…」 酷く痛む頭を押えながら、母のいるキッチンへ降りていく。 「お母さん…頭痛いから休
last update最終更新日 : 2026-07-27
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7.またな
私が失恋してから数年、私達は中学の卒業式を迎えた。 あれ以来、私は愛華とは遊んでいたけれど、3人で遊ぶことはなくなった。 何より美奈に申し訳ないし、愛華と夕也の仲が悪くなってしまったからだ。 それでも、私の夕也への思いはまだ消えていなかった。 私と愛華は市内の別々の高校に、夕也は県外の高校に進学することになった。 「只今より、第34回、卒業証書授与式を始めます。」 生徒たちが担任に名前を呼ばれて壇上に上がり、校長から卒業証書を受け取る。 堪えていた涙は、結局自分達の合唱の時に溢れてしまい、退場したあともしばらく涙は流れていた。 「あさちゃん!あたしのアルバムに寄せ書き書いてくれるー?」 「風間っち、私も!」 クラス中が寄せ書きを書くのに忙しくなっていた。 他クラスからも友達は来るから、卒業生のいる階は騒がしかった。 もちろん、夕也も愛華も来た。 『あーさひっ!ついに卒業しちゃったよぉ…高校から別々になっちゃうのは悲しいけど、途中まで方向は一緒だからこれからも一緒に登校しようねっ!大好きだよ!by 親友の愛華』 『ほとんど遊べなかったけど、今までありがとう。もし、予定合わせられたら、遊びに誘ってほしい。高校行っても頑張れよ。 夕也』 「結局最後まで気まずかったし、愛華も嫌そうな顔してたなぁ…」 お世話になった先生達に挨拶回りをして、後輩からも色紙やプレゼントを貰えて、寂しい半面、私は心が温まった。 荷物を持って外に出ると、みんな仲良かった人達との写真を家族に撮ってもらっていた。 「本当に卒業したんだなぁ、私達。」 「ね~、早いよね。ねえ、私たちも撮ってもらおうよ。」 「うん。お母さんにお願いしちゃうよ。」 「ありがとう~!」 私は母を呼び、愛華との写真を撮ってもらった。 「あ、ごめんあさひ、ちょっとお腹痛いからトイレ行ってくるね?」 「えっ?いいよ、早く行ってきな?」 「ごめんね~、すぐ戻るから!」 「ゆっくりしてきて~。」 愛華は校舎の中へ入っていった。 すると、夕也がやってきた。 「なあ、あさひ…」 「…夕也。」 「俺も、一緒に写真撮りたいんだけど…」 「えっと…いい、けど…美奈に悪くない?」 「別に写真くらいいいと思うけど。」 「分かった…」 気まずい気持ちになりながらも、私は笑顔を作って夕
last update最終更新日 : 2026-07-27
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8.あなたと再び
高校に入ってからも、私はしょっちゅう愛華と遊びに出かけたりした。 夕也は部活が忙しかったらしく、結局会うことなく私は高校を卒業した。 私が夕也の事を忘れようとしているのを知っていたのか、愛華は夕也の話題を出さないでくれていた。 高校を卒業して私はそのまま今の会社に就職し、愛華は看護学校に行って今は地元の病院に勤めている。 初恋の人がまさか同じ会社に来るとは思ってなくて、久々に気まずい雰囲気を味わっている。 「髪、伸ばしたんだな。」 「へ?ああ、うん。中学まで短かくしてた反動で高校から伸ばしてるんだよ。」 「綺麗だと思う。」 「えっ、あっ、ありがとう。」 話題を見つけられず、しばらく会話ができなかった。 話を切り出したのは夕也の方だった。 「なあ、あさひ。」 「…ん?どうした?」 「今って、彼氏とかいたりすんの?」 唐突な質問にどぎまぎしつつも、私は答えた。 「ああ、えっと…笑わないでくれるか?」 「?うん。」 「今の今まで、彼氏できたことないんだ…」 夕也が目を見開いた。 「…うっそ、マジで?」 「…マジで。気になる人ができても、すぐその人に彼女できるんだよな。」 「そっか…ってことは…」 「?」 心做しか、夕也が嬉しそうな顔をしているような気がした。 「いや、なんでもない。でももったいねぇな。あさひ、美人だしいい奴なのに。」 「…はっ?な、何言ってんだよ。そういう冷やかしはやめろ。」 急に何を言い出すんだ、この男は。 「俺は思ったことを正直に言っただけ。」 動悸が早まるのを感じていると、おっちゃん社員が近づいてきた。 「よぉ、あさひちゃん!あれっ、そいつ今度うちの部署に来るイケメン新人くんじゃねえか!口説いてんのかい?」 「ちょっ、やだなぁ、栗原さん。この人は私の知り合いなんです。変なこと言わないでください。」 「へえ、そうかそうか!なあ、新人くん、えっと、名前は…」 「桐山夕也です。これからよろしくお願いいたします。」 「桐山くんな!どうだい?あさひちゃん、べっぴんさんだし貰ってやってくんねえか?がはは!」 「そうですね。あさひみたいな彼女いたら毎日楽しそうですし。」 「あんたも変な事言うなっ!」 「がははっ!若いっていいな~!あ、そうだあさひちゃん。頼みたいんだけど。」 「うん?ああ、
last update最終更新日 : 2026-07-27
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9.また会えた
―夕也視点― 新しい会社に勤めることになった。 前の会社が超のつくブラック企業で、睡眠が上手く取れず転職を決めたのだ。 まさかその転職先で、またあさひに会えることになるとは思わなかった。 俺の初恋で、唯一恋をした人。 片時も忘れたことはなかった。 美奈と付き合っていた時も、いつも美奈にあさひの姿を重ねてしまう。 美奈と付き合えば、あさひに対する気持ちが美奈へ移ると思っていた。 人形のように可愛くて、学年のマドンナ的存在だった美奈。 結局、あさひへの思いを忘れられず、高校に入ってからサッカーに打ち込んでいたことで美奈との関係が完全に冷めてしまい、1年の時に別れた。 それ以来、あさひ以外の誰かを好きになることも、誰かと付き合ったこともなかった。 もう恋なんかしない。 そう心に決めたのだ。 9年ぶりに会ったあさひは、最後に会った時よりもうんと綺麗な女性になっていた。 元々美人だったが、更に磨きがかかったように綺麗に成長していた。 そんなあさひに、惚れないわけがなかった。 「おはよう、あさひ。」 たまたま見かけたあさひに、思わず声をかけた。 「お、おはよう、夕也。意外と早いんだな。」 「ここに来たばっかだし、迷子になるかなって思ったから。」 「それもそうか。」 「今日は普通に製造の仕事?」 「うん。昨日早退したフォークマンは普通に出勤してるみたいだから。今日は元の作業場に戻るよ。」 「そうか。なあ、今日も昼飯一緒に食べてもいいか?」 「えっ!?ま、まあ、別に構わない、けど…」 もじもじしているあさひが愛おしくてたまらない。 まだ俺のことを好きでいてくれたらいいのに、と、叶いもしない願いを胸に抱く。 「そういや、土曜日にやる会社の歓迎会、あさひは参加するのか?」 「うん。毎年参加してるよ。タダだし。」 「ははっ、そりゃ参加するっきゃないか。」 俺達はタイムカードを押して、それぞれの持ち場に向かった。 ―あさひ視点― 今日は会社の歓迎会。 いつも楽しみにしているけど、今年は行きたいような、行きたくないような、なんとも言えない気持ちになっていた。 「まあ、行くか。」 アパートを出て、歓迎会をやるお店に歩き始めた。 20分ほど歩いて、そのお店に着いた。 「さてと、どこに座ろうか…」 「あさひの近くに座りて
last update最終更新日 : 2026-07-27
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10.勘違い
「じゃあ、お互いの初恋の相手とか知ってたりするんですか?」 「んえー?私は言ってないけど、夕也の初恋が誰かは知ってるよー?美奈だろー?」 「ん?違うけど?」 「はあー?違うのー?じゃあ誰ー?」 「…あさひが言わないから俺も言わない。」 「あっそ。まー別に誰だろーが私は知ったこっちゃないんらけどー。」 「あれ、風間さん酔いが回ってきてる…?」 「うー…なんかグルグルするー…」 「おい、もうそれ以上飲むな。死ぬぞ。」 「んだよ、うっさいなー…」 「悪い、ちょっとこいつに外の空気吸わせてくる。」 「あ、はい、分かりました…み、水飲ませた方がいいですよね…?」 「そうだな。おい、あさひ、水飲め。」 「んー?ありがと…」 あさひが水をごくごくと飲む。 水を飲んだことを確認して、夕也はあさひを担いで外に出る。 「大丈夫か?気分悪い?」 「んー、大丈夫…ここで休むから中戻ってなー?」 「こんな時間にあさひを1人にするわけないだろ。」 「私の事はいいから戻れってー…」 「だめだ。心配だから。」 「…私に優しくすんなよ…」 「え?」 下を向いて目に涙を溜めてあさひは言う。 「なんで、私に優しくすんだよ…」 「なんでって、そりゃ…」 あさひが好きだから、と言いそうになるのを堪えて、夕也は上手く誤魔化す言葉を探す。 「…好きでもない相手に、優しくすんなよ…」 「…あさひ?」 あさひの目から大粒の涙が零れる。 「夕也が優しくしてくるから、私、私っ…」 あさひの涙を拭おうと、夕也が手を伸ばしたその時。 「夕也の事、また好きになっちゃったじゃんか…」 ああ、言ってしまった。 言うつもりなど無かったのに。 これで確実に夕也に引かれた。 嫌われたな、と、あさひは思った。 顔を上げた瞬間、夕也があさひに唇を重ねた。 「んっ…いま…なに…」 「俺も好き。」 「え…?」 「俺もあさひが好きだった。昔からずっと。」 「何言って…」 「…4年生の時から、あさひが好きだった。」 「…嘘だ。」 「嘘じゃない。俺はあさひ以外好きになったことが無い。」 「美奈のことが好きだったんじゃ…」 「あれは…俺が悪いんだ。あさひが俺の事嫌ってるって勝手に勘違いして、他の子と付き合えばあさひへの気持ちを忘れられるって思ったんだ。最低
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