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第17話

Author: ラフな子犬
蓮もまた、マンションへと戻っていた。

マネージャーが待ちくたびれた様子で彼を出迎える。

「もう、蓮ってば!一体どこ行ってたのよ?

いいニュースよ。武田監督が新作の準備をしてて、主役は絶対に蓮がいいって譲らないの。

前回、彼が撮った『蒼き月』でオスカーの主演男優賞を取ったでしょ?この作品なら二度目の受賞も夢じゃないわ!」

マネージャーは有頂天で語っていたが、蓮の魂が抜けたような様子には気づかなかった。

休む間もなく、彼女は蓮を会社へと連れて行った。

「久しぶりだね、蓮」

黄金の髪と蒼い瞳を持つ大柄な男――武田監督が、蓮を見るなり熱烈な挨拶をしてきた。

蓮は辛うじて口角を上げ、引きつった笑みを浮かべた。

スタッフたちが契約の詳細を詰め、最後に双方が満足してサインを交わした。

武田監督が蓮の手を固く握りしめる。

「蓮、君は本当に素晴らしい妹を持ったね。私が君をキャスティングしたのは、彼女の熱意に負けたからだよ」

蓮の脳裏に美月の顔が浮かんだ。彼は複雑な表情を見せた。

「美月のことですか?彼女は……」

武田監督が不思議そうに首をかしげる。

「美月?君の妹さんの名前は『栞』じゃなかったか?」

蓮は硬直した。

「……何だって?監督に連絡を取っていたのは、栞だったんですか?」

監督は大きく頷いた。

「そうだよ。何百通と届いた推薦メールの署名は、すべて【栞】だった」

そう言って、監督はタブレットで過去のメールを見せてくれた。

そこには確かに【栞】の名前があった。

蓮の顔から血の気が引いていく。

「栞……そうか……全部、栞がやってくれたことだったのか……」

美月の手柄だと思い込み、栞を罵倒していた過去の自分が脳裏をよぎる。

蓮は弾かれたように立ち上がった。うわごとのように呟く。

「栞、すまない……ごめん、僕が悪かった……」

彼はふらふらとした足取りで、部屋を飛び出した。何も見えていなかった。ただ、謝らなければという一心で道路へ飛び出す。

キキーッ!

「危ない!」

ドンッ!!

ブレーキ音も虚しく、疾走してきた大型トラックが蓮の体を跳ね飛ばした。

……

一方、拓実もまた、放心状態でアトリエに戻っていた。

秘書がすぐに駆け寄ってくる。

「拓実先生、織物の継承者の方がお見えです。どうしても先生に会いたいと」

拓実は眉間
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