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12・別れのとき

ผู้เขียน: 泉南佳那
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-07-17 06:34:53

「お疲れ」と安西さんは握手を求めてきた。

「お疲れ様でした……」

 そう言って、手を伸ばしたとたん、操り人形の糸がぷっつりと切れたように、足に力が入らなくなった。

「文乃ちゃん!」

 安西さんはふらついたわたしをとっさに支えた。

「だ、いじょうぶです。少し目眩がして」

「控室で休もう」

 彼はわたしの肩を抱いて、建物に向かった。

「これ、飲むといい」

 手渡されたのは温かい缶コーヒー。

 少し甘めのミルク味が疲れた身体に染み渡っていった。

「無理させて悪かった」

「もう大丈夫です。ご心配かけてすみませんでした」

  まだ少しふらついていたけれど、安西さんを安心させようと笑みを作って答えた。

「撮影は? わたし、ちゃんとできましたか?」

 安西さんはこれ以上ないほどうれしそうな顔で頷いた。

「ああ。きみをモデルに選んで正解だった。大満足! 最高だった!」

「よかった……」

  心の底からほっとした。役に立てたことが何よりも嬉しい。

「さっき紹介した酒井さん、アート・ディレクターの。彼も文乃ちゃんのこと、すごく気に入ったみたいでさ。休憩中におれのところに来て、CMに使いたいからプロフィール教えろって、もううるさいのなんの――」

 さっきのあの人の態度を思いだして少し嫌な気分になった。

 わずかに顔もしかめてしまった。
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  • たとえ、この恋が罪だとしても   12・別れのとき

    「お疲れ」と安西さんは握手を求めてきた。 「お疲れ様でした……」 そう言って、手を伸ばしたとたん、操り人形の糸がぷっつりと切れたように、足に力が入らなくなった。「文乃ちゃん!」  安西さんはふらついたわたしをとっさに支えた。「だ、いじょうぶです。少し目眩がして」 「控室で休もう」  彼はわたしの肩を抱いて、建物に向かった。「これ、飲むといい」  手渡されたのは温かい缶コーヒー。  少し甘めのミルク味が疲れた身体に染み渡っていった。「無理させて悪かった」 「もう大丈夫です。ご心配かけてすみませんでした」  まだ少しふらついていたけれど、安西さんを安心させようと笑みを作って答えた。「撮影は? わたし、ちゃんとできましたか?」 安西さんはこれ以上ないほどうれしそうな顔で頷いた。 「ああ。きみをモデルに選んで正解だった。大満足! 最高だった!」「よかった……」   心の底からほっとした。役に立てたことが何よりも嬉しい。 「さっき紹介した酒井さん、アート・ディレクターの。彼も文乃ちゃんのこと、すごく気に入ったみたいでさ。休憩中におれのところに来て、CMに使いたいからプロフィール教えろって、もううるさいのなんの――」 さっきのあの人の態度を思いだして少し嫌な気分になった。 わずかに顔もしかめてしまった。

  • たとえ、この恋が罪だとしても   11・撮影本番

     つらくて、切なくて……どうにかなってしまいそうで。 気づかないうちに心の内が表情に現れていたのだろう。 安西さんはファインダーから目を外し、じっとわたしを見て、言った。「うん、その表情、いいよ。そう頬杖をついて、遠くを見て。そのまま目線を上げて、そう」 そろそろ日が落ちる。  夕陽が水平線を黄金色に染めていく。「次は海に向かって歩いてみて……。佐藤、ちょっと裾直してきてくれる? うん、OK」  安西さんのよく通る声を聞くのも今日で終わり…… けれど撮影が終盤に近づくにつれ、そうした雑念が、一切消えていった。 俊一さんへのやましさも、紗加さんへの嫉妬も不思議なほど薄れていった。 今、この時だけがすべて。 安西さんの言葉を聞いて、ポーズをとること。 そのことだけがすべてになった。  「夕陽のほうを向いて胸の前で手を組んでみて。もう少し上で。そう、それでいい」 カシャ、カシャというシャッター音さえ名残惜しい。  もっと聞いていたい。  わたしと安西さんをつなぐ唯一の紐帯(ちゅうたい)。 もうすぐで……あと、数カットで…… 「OK! 終了!」 その声とともに、スタッフの拍手に包まれていた。 とても素敵でした、とアシスタントの学生さんに感極まった調子で声をかけられ、ようやく我にかえった。   終わった……

  • たとえ、この恋が罪だとしても   11・撮影本番

    ************ 海に沈んでいく夕陽を背景にするために、最後は庭園での撮影となった。 風はかなり冷たかったが、我慢できないほどではない。 いや、カメラの向こうから注がれる安西さんの視線だけに意識を集中していたから、寒さを感じなかったのかもしれない。 目だけでなく、うなじで、背中で、肩で、腕で、胸で、脚で、安西さんの眼差しを感じとっていた。 「後ろを向いて、そのまま振り返って。そう」 心のなかには安西さんとの数少ない思い出が浮かんでは消えていた。 わずか1カ月半の間のこととは思えない。 もっと長い時間のようにも、一瞬だったようにも感じる。 初めて会った日のこと、スタジオを訪ねた日のこと、星空の下で抱きしめられたこと。 そして……あの雨の日。  薄暗がりにぼんやりと浮かんだ紗加さんの白い首筋、紗加さんを弄る安西さんの大きな手、吐息、おもわず漏れでたふたりの声……。 記憶とともにあのときの痛みも鮮明によみがえる。 どうして、あそこにいるのはわたしじゃないの……その想いに身体中が占領されていた。 心身を焼き尽くす嫉妬心もよみがえる……  いや、今もまだ……その場で見ているように、紗加さんの美しい肢体を組み敷いている安西さんの姿が脳裏に浮かび、きりきりと心を締めつける……     

  • たとえ、この恋が罪だとしても   11・撮影本番

     はじめて撮影してもらった日、緊張でがちがちのわたしの気持ちをほぐそうと、安西さんはとても軽い調子で話しかけてくれた。 けれども今日は違った。  すべてのカットが真剣勝負だという気迫が漲っている。「OK。じゃあ、衣装チェンジして」 安西さんの言葉を聞くやいなや、衣装さんとメイクさんがさっと動き出し、控室につくとあっという間に次の衣装の準備が整う。 これぞプロの仕事なのだろう。  その手際の良さには本当に舌を巻く。 12時を回ったころ、お昼休憩になった。 仕出し弁当が配られたが、食欲がなくほとんど手をつけられなかった。 ひとりでお茶を飲みながら、ぼんやり外をながめていると、安西さんと酒井さんが庭のほうから歩いてきて、隣の部屋に入っていった。 わたしから見える位置の椅子に安西さんが腰を下ろした。  パソコンにアップロードされた写真の確認をしているようだ。 くわえ煙草で、厳しい表情で撮影した写真をチェックする安西さん。 こんなに真剣な表情をしている彼を見るのははじめてだ。  目が離せない。 今だけではない。これまで知らなかった彼の姿を、今日はたくさん見ることができた。とくにカメラを構えた彼は、テスト撮影とは醸しだすオーラがまるで違った。 この場を仕切る主役は自分だ、という自信と誇りに満ちあふれていて、目が眩んでしまうほど素敵だった。 こうして、いつまでも彼のことを見ていたい。  その気持ちは果てしなく膨らむ。 でも、それもあと数時間。  この撮影が終われば、この人と共有する時間も終わる。  そう、終わってしまうのだ。

  • たとえ、この恋が罪だとしても   11・撮影本番

     「ほら、立って。深呼吸してごらん。おれも一緒にするから。思いっきり吸ってぇ……はいてぇ」 真剣な表情で深呼吸する彼がほほえましくて……あまりに愛おしくて、わたしは笑顔になった。「うん。その顔。それでいい」「はい。わたしもやってみます」  思いっきり深く息をはいたら、肩の力が抜けて、気持ちがすとんと落ち着いた。「外野のことは気にしないで、文乃ちゃんはおれだけを見て、おれだけを頼りにしてくれればいいんだよ」 彼の、いつもの軽薄さはすっかり影をひそめていた。 普段とは違う、仕事モードの安西さんは、どうしようもなく魅力的で、わたしはどぎまぎしながら「はい」と答えた。   午前9時。撮影はスタートした。 かなりの長丁場になるから覚悟して、と最初に釘を刺された。「でも、疲れたら遠慮なく言っていいからね」  安西さんはそう言って、それからカメラを構えた。 「よろしくお願いします」わたしも位置についた。「はい、こっちに目線をくれる? そういいよ。次は斜め右を見て」 先日の衣装合わせで一日中テスト撮影をして、ようやく写真を撮られることに慣れてきた。 安西さんの言葉に反応して、間違えずにポーズをとることができるようになった。 われながら格段の進歩だ。

  • たとえ、この恋が罪だとしても   11・撮影本番

     「そっちこそ、撮影まえにモデルくどくなよ」 安西さんだった。  ぶっきらぼうにそう言い放った。「忠告してあげたんじゃない、この甘いマスクに騙されるなよって。しかし、よくこんな上玉、いままで隠してたな。もっと早く紹介してくれればよかったのに」 酒井さんは無視して、安西さんはわたしに言った。「打ち合わせたいことがあるから、控室に来てくれる?」「はい」  ほっとして、安西さんの後に続いた。「あいつに変なこと言われなかった? アート・ディレクターとしては超一流なんだけど人間的には下衆だから。おれはあんまり一緒に仕事したくないんだけど、紗加が気に入っているんだ。あいつの仕事」 やっぱりわたしが困っていたから、あの場から連れだしてくれたんだ。 今日、ここに来てからずっと感じていた。  撮影の準備で忙しいはずなのに、どこにいてもわたしのことを気遣ってくれる安西さんの視線を。 こういう現場に慣れていないわたしには、それがどれだけ心強いことだったか。「そんなことより、だいぶ緊張してるだろ。顔に出てるよ」「はい。スタッフの方がこんなに大勢いるとも思ってなかったですし……やっぱり怖くなってきてしまって……ごめんなさい」「よし」と安西さんは急に大きな声を出した。 

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