神様だか悪魔だかわからない。その、何かに引き寄せられるように 出会うはずのないわたしたちは出会い そして恋に堕ちた。引き返すことはできなかった。 たとえ、この恋が罪だとしても……*************************************〈side Ayano〉「結婚してくれないか」 週末。 いつものように、ふたりで過ごしているときだった。 食後のコーヒーを飲みながら、彼は唐突に告げた。わたしは藤沢文乃、25歳。 大手メーカーに勤める会社員。隣にいる高柳俊一と付きあいはじめて、もうすぐ2年になる。奥手だったわたしの、はじめての恋人。 新年会の帰り道、ふたりきりになったときに「きみが入社してきた日、一目惚れしたんだ」と告白されて。 大学卒業後、親のつてで大手メーカーに就職し、営業部に配属された。 俊一さんはわたしより4歳年上の、頼れる先輩だった。一流企業勤務。高年収。性格は温厚。 ちょっと堅物すぎるぐらい真面目。 煙草は吸わない。お酒も適量。 ルックスもずば抜けてるってわけではないけれど、まあ、いいほうだと思う。 つまり、結婚相手として申し分ない人。典型的な職場恋愛。 ふたりの未来もきっと、平凡を絵に描いたようなものになる。
Terakhir Diperbarui : 2025-06-04 Baca selengkapnya