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第8話

作者: 匿名
……

家に着くなり、啓介は仕事を理由に書斎へと逃げ込んだ。きっと智子をなだめに行ったのだろう。そのとき、美穂のスマホが鳴り、智子からの写真が届いた。

そこには智子と啓介がベッドの上で抱き合っている、あまりにも露骨な写真が映っており、続けて挑発的な長いメッセージが目に飛び込んできた。

【美穂、私があなただったら、もう厚かましく啓介のそばに居座ったりしないわ。私が啓介の子を妊娠しているって知ってるくせに、まだ何も知らないふりをしてるなんて】

【自分が本当の愛に出会ったと思ってるの?知らないでしょうけど、あなたたちが付き合って三年目のときには、啓介はもう私を口説いていたのよ。あなたの誕生日も、結婚記念日も、さらにはあなたの両親の命日でさえ、彼は私のそばにいたのよ】

【私が一言でも言えば、啓介はあなたを眼中に置かなくなるわ。試してみる?】

美穂の喉はまるで綿を詰められたように塞がり、苦しくて息もできない。スマホを握った手が力なくだらりと垂れ下がった。

確かにどんな大事な日でも、啓介はいつも何かと理由をつけて抜け出していたわけだ。あんな昔から、啓介と智子はすでに関係を持っていたのか。

その時、啓介がドアを押して入ってきた。さっきまでの不機嫌そうな様子は跡形もなく消え、代わりに笑顔を浮かべて言った。「数日出張に行くことになった。君のためにお手伝いさんを二人頼んでおいたよ。食べたいものがあったら作ってもらって、絶対に無理しないでね」

啓介は美穂の返事を緊張した面持ちで待っていた。拒まれるのが怖いのだろう。だが彼女はただ彼の目を見つめ、ふっと笑って言った。「いいわ、行ってて」

数分後、彼女のスマホに智子から一枚の写真が届いた。そこにはモルディブ行きの航空券が二枚写っていて、搭乗者の欄には啓介と智子の名前が記されていた。

だがその時の美穂は、もう気にも留めない。離れると決めた以上、そんなものに心を傷つけられることはない。

ここ数日、美穂はずっと荷物の整理に追われていた。自分の痕跡をすべて消し去るつもりだったのだ。けれど智子は相変わらずしつこく、さまざまな写真を送りつけてきた。リゾートワンピースで啓介と海辺を歩く姿、砂浜で彼が優しく彼女のお腹にキスをしている写真、そして啓介が丁寧に彼女の髪を結っている写真まで……

美穂は何も返信しなかった。啓介、これからはあなたの世界に、もう私はいない。あなたが約束してくれたモルディブ旅行も、もう行きたくない。

その日、啓介が珍しく彼女にビデオ通話をかけてきた。「美穂、この数日会議が立て込んでてすごく忙しいんだ。A市で一人なんだから、ちゃんと気をつけて。俺に心配させないでくれよ」

会議で忙しいの?それとも智子とのバカンスで忙しいの?

もう考える気力も残っていない。美穂は何も言わず、電話の向こうの啓介は異変に気づいたのか、何度も彼女の名前を呼んだ。「美穂?美穂?聞こえてる?」

美穂は口元にかすかな笑みを浮かべ、弱々しく答えた。「大丈夫、ちょっと信号が悪かっただけ。あなたは仕事に戻って」

「美穂、すごく会いたいよ。君がそばにいてくれたらいいのに」啓介の深い愛情を湛えた視線を見た瞬間、美穂は思わず吐き気を覚えた。「そう?てっきりそっちで楽しくやってるのかと思ったわ」

啓介の目に一瞬、後ろめたさがよぎる。「仕事中だよ、変な想像するなって!」何か言いかけたものの、美穂のいつも通り穏やかな表情を見て、安心したように通話を切った。

通話を切った直後、美穂のスマホに智子からメッセージが届いた。写真の中の智子は頬を上気させ、啓介の胸に身を預けている。首筋には濃い赤のキスマークがくっきりと残っている。

【彼があなたを思い出すのは、私たちがやった後だけよ。勘違いしないでね】
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