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第9話

Author: ニタマゴ
翌年の夏、妊娠が分かった。

航平は、スイスの家の庭に立つ大きなブナの木に、私のためのブランコを作ってくれた。

最後のロープを結び終えると、まず自分で腰を下ろした。

「大丈夫。しっかりしてるよ。美月も座ってみて」

ブランコへ座ると、航平が後ろからゆっくり押してくれた。

夕暮れの風が頬を撫で、心地よかった。

それから毎日、夕方になると、しばらくブランコで過ごすようになった。

……

私があの家を出たあと、実家ではいろいろなことがあったらしい。

返事をしなくても、兄からは何度もメッセージが届いた。いつか私が読んでくれると思っていたのだろう。

【母さんは、いつも美月の部屋でぼんやりしてる。できれば、1度電話してやってくれないか】

【陽菜は結婚生活がうまくいってなくて、しょっちゅう実家に戻ってきてる】

【母さんは、胃にやさしい料理をいくつも覚えた。お前が帰ってくるのを、ずっと待ってる】

【美月。もう、実家には帰ってこないのか?】

義母が持ってきてくれたイチゴを食べながら、最後のメッセージを開いた。

指先が震え、イチゴの果汁が服にこぼれた。

背後から航平が手を伸ばし、
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    翌年の夏、妊娠が分かった。航平は、スイスの家の庭に立つ大きなブナの木に、私のためのブランコを作ってくれた。最後のロープを結び終えると、まず自分で腰を下ろした。「大丈夫。しっかりしてるよ。美月も座ってみて」ブランコへ座ると、航平が後ろからゆっくり押してくれた。夕暮れの風が頬を撫で、心地よかった。それから毎日、夕方になると、しばらくブランコで過ごすようになった。……私があの家を出たあと、実家ではいろいろなことがあったらしい。返事をしなくても、兄からは何度もメッセージが届いた。いつか私が読んでくれると思っていたのだろう。【母さんは、いつも美月の部屋でぼんやりしてる。できれば、1度電話してやってくれないか】【陽菜は結婚生活がうまくいってなくて、しょっちゅう実家に戻ってきてる】【母さんは、胃にやさしい料理をいくつも覚えた。お前が帰ってくるのを、ずっと待ってる】【美月。もう、実家には帰ってこないのか?】義母が持ってきてくれたイチゴを食べながら、最後のメッセージを開いた。指先が震え、イチゴの果汁が服にこぼれた。背後から航平が手を伸ばし、私のスマホをそっと取り上げた。「もう読まなくていいよ。つらくなるだけだろ」航平はスマホの代わりに、温かい飲み物の入ったカップを手渡してくれた。「赤ちゃん、また蹴った?」私は首を横に振り、ふくらみ始めたおなかへ目を落とした。これからの日々を思うと、自然に頬が緩んだ。……さらにおなかが大きくなった頃のことだった。庭で散歩している途中で疲れ、ブランコへ腰を下ろしたところへ、航平が帰ってきた。その後ろには、父と母がいた。母は以前より背中を丸め、ゆっくりと歩いていた。父に支えられながら、落ち着かない様子でこちらを見ている。私はブランコから勢いよく立ち上がった。義母が慌てて声を上げた。「美月さん、急に立ったら危ないでしょう。びっくりしたわ。疲れたなら中に入りましょう?今夜はお魚にしましょうね」そう言いながら近づいてきた義母は、私の視線を追い、両親に気づいた。義母の笑顔がわずかに薄れた。短く挨拶を交わすと、航平と一緒にその場を離れた。母は私の前まで来たものの、あと数歩のところで足を止めた。これ以上近づいていいのか、分からないようだっ

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