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第241話

Author: レイシ大好き
この瞬間、傷ついていたのは緒莉ただ一人だった。

誰も彼女のことを気に留める者はいなかった。

皆、紗雪が無事に客との契約を成功させたことを祝っていた。

なにしろ、相手は海外でも有名な会社だ。

誰の目にも、これは偉業の達成だった。

辰琉も、みじめな緒莉を見たが、助けに行こうとはしなかった。

大勢の目があるこの場面で、彼の視線には、ただ輝かしい紗雪の姿しか映っていなかった。

スポットライトの下、紗雪とジョンは互いに握手を交わしていた。

ここに、二川グループは国際化への第一歩を踏み出し、まさに新たな世界の扉を開けたのだった。

辰琉の瞳には、舞台で光り輝く紗雪だけが映っていた。

一方、髪を乱した緒莉は、対照的に、まるで狂人のように見えた。

辰琉は、この場から逃げ出したかった。

だが無情にも、緒莉に見つかってしまった。

緒莉は力なく呼びかけた。

「辰琉......病院に連れてって......」

辰琉は目を閉じ、聞こえないふりをしようとした。

その態度を見た緒莉は、怒りで顔が歪んだ。

彼らは婚約者同士だというのに、この男は一体何をしているんだ?

「辰琉!どこに行くつもりなの!」

彼女が大声で叫ぶと、会場中の視線が一斉に辰琉に注がれた。

こうなってしまっては、もう逃げることもできない。

辰琉自身、まるですべての力を失ったかのようだった。

この様子を見て、紗雪は心の中で可笑しさを堪えきれなかった。

たとえこちらが関わる気がなくても、向こうから勝手に騒ぎを起こしてくる。

一方的に退いても、相手はそれを「恐れている」と勘違いするだけだ。

その後、ジョンが尋ねた。

「騒いでいたあの女性のこと、知ってる?」

「ええ、知っています。彼女は私の実の姉です」

紗雪は苦笑を浮かべた。

こんなこと、誰が信じるだろうか。

実の姉が、妹の会社の成功すら許せないなんて。

この言葉を聞いたジョンは、紗雪との契約が正しかったと確信した。

敵がたった一人の姉だけなら、恐れるに足りない。

彼はさらに安心して紗雪と手を組む気になった。

「よくわかりました」

ジョンは紗雪に手を差し出した。

「二川さんと協力できることを嬉しく思います。これから素晴らしい未来を築きましょう」

紗雪は赤い唇を弧を描くように持ち上げ、百花繚乱のような笑みを浮かべた。

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