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第242話

Author: レイシ大好き
翌日、紗雪はこの件を考えれば考えるほど、ますます不快になった。

特に、あのパーティーで緒莉があんなに攻撃的だったことを思い出すと、気持ちが収まらなかった。

紗雪は怒りが収まらず、仕事を終えるとすぐに二川家に向かった。

彼女は、もう耐えられなかった。

緒莉はどんどん調子に乗っていた。

あんなに傲慢な態度、もう見過ごせない。

以前は何度か我慢したが、今回は、目の前で彼女と彼女の客を恥をかかせるようなことをされたのだ。

今回は、紗雪も我慢できなかった。

仕事が終わると、彼女はコピーしたビデオを手に、車で二川家に向かっていた。

二川家に到着すると、ちょうど美月がソファに座って、顔からメガネを外そうとしているところだった。

美月は紗雪を見ると、少し驚いた様子で言った。

「紗雪?どうして帰ってきたの?」

この娘のことについては、もちろん美月も知っている。

紗雪は部屋を見渡し、緒莉がいないことに気づき、少し疑問を抱いた。

「母さん、緒莉は?」

「何を言ってるの!」美月は顔をしかめて言った。

「緒莉はあなたの姉でしょう?ちゃんと『姉さん』って呼んで」

紗雪は冷笑を浮かべて言った。

「姉?私にはそんな姉はいないわ。私を邪魔することしか考えてないし、あの人」

美月は眉をひそめ、紗雪をじっと見た。

「その言い方は何?普通に喋りなさい」

美月は平然と前の茶を一口飲み、落ち着いた様子を見せた。

その態度は、焦った紗雪の様子とは対照的だった。

紗雪は美月のその落ち着きが気に入らず、思い切って言った。

「でははっきり言わせてもらうわ。もし緒莉が昨日あんなことをしなければ、もっと早く契約を結べたはず。でも、彼女のせいで、せっかくお招きした客がほぼ逃しかけた」

紗雪は空いている椅子に座り、足を組んで、美月をじっと見ながら語った。

今回は、美月が一体どっちの味方をするのか、すごく興味があった。

美月は紗雪の目に含まれる含み笑いに気づき、思わず息を呑んだ。

もちろん、紗雪が何を言いたいのかは分かっていた。

緒莉がその犯人だなんて、美月はどうしても信じられなかった。

「言うことには証拠があるの?」

この言葉を聞いた紗雪は立ち上がり、美月に容赦なく言った。

「分かった。証拠が見たいというのね、じゃあ見せましょう」

紗雪はすでに悟っていた。

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