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第363話

Author: レイシ大好き
彼の中での紗雪は、常に決断力があり、雷のように迅速で果断な人物だった。

仕事中に上の空になるようなタイプでは決してなく、今のように何か悩みごとを抱えている様子など想像もできなかった。

職場ではその魅力で周囲を圧倒していたし、今のような優柔不断な様子とはまるで別人だった。

だからこそ、秘書は紗雪の状態を心配していた。

もしかしたら体調でも悪いのではないかと。

「......大丈夫よ。それより、仕事の報告は終わった?」

紗雪は秘書を見やり、さっきまでの上の空が嘘のように、目に再び冷静さが戻っていた。

そんな彼女の様子を見て、秘書もようやく胸を撫で下ろした。

やっぱりこうでなくちゃ、これが彼の知っている紗雪だと感じた。

「はい。終わりました。新しいディレクターのランドとも、いい感じで連携が取れています」

紗雪は頷いた。

「それならよかった。あっちからもし無理な要求があったら、すぐに私に知らせて」

「はい」

そう言い残して、秘書は部屋を出ていった。

紗雪は閉まった扉を見つめながら、自然とまた京弥の姿が脳裏に浮かんだ。

なぜかわからないけれど、昨日あのネットでの罵倒の数々を見てからというもの、彼のことが胸を締めつけるように痛んで仕方がなかった。

あんなもの、本来なら京弥が受けるべきじゃない。

なのに、何の関係もないはずの彼がその中傷を背負わされている。

もしあれらの罵倒が自分とは無関係だったなら、ここまで罪悪感を抱くこともなかったはずだ。

けれど、それは紛れもなく自分が彼にもたらしたものだった。

だからこそ、紗雪は申し訳なさでいっぱいだった。

彼女は小さくため息を吐き、今日からは京弥にもっと優しくしようと心に決めた。

そうでなければ、自分の中のこの後ろめたさはずっと消えない気がした。

そしてLC社のことを考えると、紗雪の瞳は鋭さを増した。

今はランドとの協力関係にあるが、もし相手側が不当な要求をしてきたら、自分が一番最初にそれを拒否するつもりだった。

ジョンの件が、何よりの前例になっている。

ジョンの名を思い出した瞬間、紗雪の胸がどきりとした。

自分とランドの協力関係が発表されてから、ジョンが何の反応も見せていない。

あの性格なら、すぐにでも何らかの動きがあってもおかしくないのに。

それなのに、ここまで音沙汰がないのは
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