婚約破棄されたし、宰相する?

婚約破棄されたし、宰相する?

last updateDernière mise à jour : 2025-08-13
Par:  satomiComplété
Langue: Japanese
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‘真実の愛’とやらで伯爵令息に婚約破棄されたハルカ=グリーン伯爵令嬢。彼女は‘婚約’に興味がないので、今後宰相補佐として生きることを家族に宣言!  陛下は王子殿下を宰相補佐として支えるようにと仰りますが…

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Chapitre 1

1.

「おい!俺はこの愛くるしいハナと真実の愛に目覚めた!よって、貴殿との婚約は破棄させてもらう!」

そんなことをドヤ顔で言われてもなぁ…

ハナでしたっけ?最近庶民から男爵令嬢になったばかりの子…

えーと、私の元婚約者は伯爵家の一人息子でしたよね?いきなり庶民から男爵家の令嬢でマナーとか大丈夫かしら?

まぁ、私には知ったことではないわ。

は~すっきりした!だって、元婚約者のハチは名前が犬みたいだし(本人は気にしてるみたい。苦情は名付け親にしてほしい)、致命的に頭が悪いのよね……。

ま、それは私と婚約破棄して真実の愛とか言ってるあたりでわかるけど。

それはそうと、家に帰ったらとりあえず怒られたりするのかなぁ?

でも、私に非はないわけだし?慰謝料取れたりする?慰謝料はオイシイなぁ。

**************

「よくやった!ハルカ!」

おとーさま……抱きつきすぎです。く…苦しい。

「あのハナタレノータリンと婚約破棄できて嬉しいぞ!」

あってるけど……言い過ぎでは?

「そうだぞハルカ!」

ぎゃあー!おにーさままで抱きついてきた!

お父様から解放されたと思ったら、おにーさま……

お母様はニコニコ傍観してるし。タスケテクダサイ。

私はお兄様からも解放された後、ある提案をした。

「自由な立場になったわけだし(貴族は違うかもだけど)宰相の仕事をやりたいん…だけど……?」

「なにー?思わぬ所から下剋上か?そうなのか?ハルカが優秀なのは知ってるぞ、うん。しかしだなぁ、私の仕事を奪うつもりか?」

お父様は宰相閣下です。

そんなこともあって婚約が結ばれたわけですね、ハイ。

ただの政略結婚なので私にはあのハナタレノータリン元婚約者…口が過ぎたかしら?には微塵も興味がありません。

「いーえ、そんなことは考えていません!はじめは宰相補佐でも……。……やっぱり女性が職業を持つのはダメですか?」

「確かに俺のハルカは美しく賢いもんなぁ」

賢いのは宰相として必要かもだけど“美しい”は欲目ですよ、お兄様。

そして、いつお兄様のものになったんでしょう?

「宰相補佐(・・)ならいいんじゃないか?」

お父様……フランクで軽いです。しかしこの国の宰相だもんなぁ。腹の中で何を考えてるのやら?

「お父様大好き!!」

ふっ。こう言っておけば、あとくされないだろう。カエルの子はカエルとはよく言ったものです。

「俺は?」

げっ、お兄様が参戦してきた!

「もちろん好きですよ!」

「親父は“大好き”で俺は“好き”……」

なんか凹んだけど、見た目にそぐわず何だこの親子は‼私をめぐり争う?オカシクナイ?

あ、お父様とお兄様は老若男女問わず一目見るか見ないかってところで逃げられます。別に取って食われないのに。

お兄様は完全にお父様に似ています。二人してゴツイ・イカツイ・領地の子供に泣かれる容姿。

私はお母様似です。幸いです。良かったぁ。

お母様は黒髪が艶やかです。

性格が……おっとり・のんびり・しっかりって感じです。

あ、性格は私似てないなぁ(私付きの侍女談)。

お父様が筋骨隆々で強面なのです。でも文官。宰相閣下だから文官のトップでしょうか。見た目は武官のトップっぽいんだけどなぁ。騎士団長とかそんな感じ。騎士団長は勝手な私のイメージだけど。

お兄様がこの家、グリーン伯爵家の跡継ぎです。

本来ならお兄様が宰相も継ぐんでしょうけど、お兄様は領地経営の方がいいと……。

そうなると宰相の座はどうなるんだ?というのが当面の王宮のナヤミのようです。

いやぁ、我が家に限らず、優秀な人材を登用すればいいだけの話だと思うのですが、そこは派閥やらが絡んでくるようです。……王宮コワイ。

あ、あとお兄様は異常に私の事が大好きです。えーと、“しすこん”っていうんでしたっけ?

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2.
本日はお日柄も良く初出勤です!周りから奇異な目で見られる。主に男性から。そうですよね、だってキングオブ強面の宰相閣下が私を連れているんですもの。はた目にはどこかに連行しているように見えるのではないでしょうか?あと、なぜか王城にいる令嬢から睨まれます。私にはお父様やお兄様よりもこっちのほうが怖いです。貴族の令嬢が王城になんの用でしょう?彼女らが侍女になりたいわけじゃないだろうし…。「お父様、なぜ貴族の令嬢は登城しているのでしょう?」「あー、それは……。この国の殿下がなぁ、通りすがりに一目ぼれしてくれないかという思惑だな」「へぇ。確率が低いですね。どこを殿下がお通りになるのかわからないじゃないですか。一日中部屋にこもりっぱなしかもしれないし、この通路を使うとは限らないし、自分を見初めるかもわからないじゃないですか」すごい低い確率に日常をかけてるんだなぁ。故に私への視線か。納得。ぽっと出の令嬢(つい最近婚約破棄されたと噂アリ)がはた目に宰相に連行されてるんだもんなぁ。このまま陛下に謁見そして殿下にお目通り……と彼女たちの頭で思い描くのだろうな。「我が娘よ、賢いのはわかるがそこまでにしておけ。令嬢の視線が鋭く私まで痛い」「わかりました。貴族の令嬢というものは大変ですね」「お前もそうなんだが……」「私は婚約破棄をされたのでキズモノです」「おのれ、あのアホボン!」「そのアホボンの父が登城している可能性がありますので、お父様も気を付けて下さいね」そうこう言いながら歩いているとお父様が普段仕事をしている部屋ではなく、何故でしょう?陛下の御前へと来たのです。いや、お父様は宰相なのだから、当然でしょうか?私も宰相補佐の仕事がしたいと言ったわけですし。「面をあげよ。発言を許す。この者は宰相とその娘だ。他の者は部屋から出るように」偉そうだなぁ、と思ったけど、偉いんだから当たり前か、ふう。「相変わらずですね、陛下。あ、こちらが我が愛する娘のハルカです」「お初にお目にかかります。ハルカ=グリーンと申し上げます」「いやいや、デビュタントの時に見たぞ。ひときわ美しい令嬢がいるなぁ、と思っていたんだ。そうか、宰相の娘だったのか。いやぁ、宰相に似なくて良かったな」それは私も思いますけど。「陛下、酷くないですか?この間の案件、ちょっと遅らせてもいいんですよ
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3.
私は王宮の侍女に案内されて殿下の執務室に到着した。この侍女の女性からも睨まれたんです。怖かった~。「本日付けで殿下の宰相役を陛下より仰せつかりました、ハルカ=グリーンと申します」「マジかよ?聞いてない」それはついさっき決まったからですね。それにしても……この部屋仕事が溜まってるのでしょうか?そこらに紙が散らばっている。「まずは整理整頓ですね。あ、ハルカとお呼びください」殿下……噂では秀才と聞いてるけど、この乱雑に散らかった紙!仕事が遅いんでしょうか?見た目は眉目秀麗・容姿端麗ですよ。8頭身でしょうか?足長っ。顔小さっ。羨ましい!貴族の令嬢が見初められないかと廊下で待っているのもわかる気がする。あぁ、私が殿下と仕事をしてるって広まれば、やっかみが増えるのかな?面倒な!仕事なのに……。睨まれたら怖いし、嫌だよ~。私はひとまず、提出期限順に散らかった紙をまとめて机に置いた。「君は仕事が早いな」「ハルカです」「じゃあ私の事もカイルと呼ぶように」「畏れ多い。カイル様ですね」「まぁ、それで手を打とう」「それよりもカイル様。明日が期限の書類がありますので、決済をお願いします。カイル様が決済をした書類は私が陛下の元へ持って行きますので」「わかった」そういうと、黙々と仕事が始まった。そこには私語もなかった。「ハルカ、明日が期限の書類は全て決済をした。見直して、不備がなければ父上…でなくて陛下の元へ持って行ってくれ」「わかりました」この人は……仕事を与えればできる人なのね。ただ……周りにそんな人がいないのでしょう。不憫。「不備がないので陛下の元へ書類を持って行きます。その間はどうぞ、おくつろぎ下さい。この書類を仕上げるのにかなり集中していらしたから。あら?お茶を淹れる侍女もいないの?ベルは?」「あぁ、女は俺の側にいると鬱陶しいから、侍女は解雇した」「私は女性デスケド。……仕方ありません。私でよろしければお茶を淹れます。毒見が必要でしょう。私がしますね」なんて面倒な王子でしょう。出待ちみたいに一目惚れ狙いで城の廊下で待ち構えている貴族令嬢が不憫に思える。そうして、私はお茶も淹れ、毒見もし、書類を陛下の執務室へ届けることになった。**********「貴女、いったいどういうつもりなの?」ハイ、件(くだん)の貴族令嬢達に絡まれています
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4.
……うーん、あの書類の束…本当は明日が締め切りじゃないんだよなぁ。カイル様には悪いけど。本当の締め切りは明後日より先。お父様が見たら一目瞭然だろうなぁ。バレないといいなぁ……。と、私はのん気にソファに身を沈めて(カイル様の執務室にあるソファはフカフカなのよ!)、お茶を飲んでいた。「おお、カイルよ。やはり、執務の補佐がいると仕事が早いな。どれどれ、宰相!書類のチェックを!」「明日が締め切りというように補佐からは聞いています」「それはお前も急いで仕上げたんだろうなぁ。ご苦労」「もったいなきお言葉です」ハルカ……殿下を謀ったようだな。ともすれば不敬罪だというのに。「書類に不備はありません。殿下、お疲れ様です」「ああ、久しぶりに目いっぱいやった感があるな。それにしても……貴殿の娘はよく働くな。どこでその技術を学んだんだ?男性なら、文句なく出世をしただろうに」「もったいなきお言葉。あれは……社交などが苦手でかわりにできるようです。教え込んだわけではないのです。殿下もお疲れでしょう。どうぞ執務室にお戻りになりゆっくりお休みください」私は、ハルカの不敬(締め切り期日を嘘吐いて働かせた)が公になる前に殿下を追い返した。「陛下、書類は完璧に仕上げられています。殿下も努力をしたと思われます」「ほぅ、どれ。明日が締め切りだったな」流石陛下。覚えていたか。ハルカ…我が家が消えるやもしれない!「はははっ。愉快愉快!こんな事に騙されたのか?しかも自分より年下の娘に!あいつも少しは痛い目にあった方がいいんだ。この件は不問にする。書類も無事にできたしな。これが貴殿の娘の“上司の操り方”かもしれないしな。いつ気が付くのか楽しみじゃないか?」「はっ、有難きお言葉。娘のハルカにも伝えておきましょう。いや、伝えない方がいいのか」「様子を見ようじゃないか?あー、愉快愉快。久しぶりに面白い人材に出会った」陛下…笑いすぎです…。とりあえず我が家が消えなくてよかった。ほっと一息。この件については家でみっちりと問い詰めよう。いくら父の心臓が強くてもこんな事が続けば身が持たない!*************「カイル様、陛下への書類の提出お疲れ様です」私はソファの上でだらけていた体を起こして、カイル様を迎えた。内心は「畜生!もっとダラダラしたかったのに。戻ってくるの早いん
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5.
その日私は思った。『貴族令嬢として髪は重要かもだけど、仕事するのには邪魔よね』と。そして行動に移した。髪を切った。「お兄様の友人で後ろで髪をまとめている方がこのくらいの長さだったから…」と肩の下くらいでバッサリと髪を切った。私付きの侍女が泣いた。「お嬢様の美しい髪が…。ああ、修道女のようになられてしまった…」そんなに私の髪が重要なら散らばってる髪でカツラでも作ればいいじゃない?「髪なんてまた伸びるわよ」と慰めたけど、あんまり効果なかったなぁ。翌日、短い髪で朝食の場に出た。「おはようございます。お父様、お母様、お兄様」「おぉ、ハルカ。髪を切ったのか?殿下がもしやおまえになんかしたんじゃあるまいな?」「殿下じゃないですよ。仕事に邪魔だったから切りました。後ろでまとめてしまえば手元がスッキリして仕事がやりやすいし!」「……そうか」「私はハルカちゃんとお揃いの長さが良かったんだけどなぁ」お母様に言われると、罪悪感が……。仕事は短い方がいいんだと自分に言い聞かせた。もはや、お母様と仕事のしやすさを天秤にかけた形になってしまった。「お母様の髪は美しく、そのままでいてくださいね。私はあく(・・)まで(・・)も(・)仕事のしやすさで髪を切ったのです」「ハルカー‼ 私は悲しい!しかし髪を切っても可愛いなぁ。流石私の妹だ!」だから、いつお兄様のものになったのでしょう?でも安泰のために一応頷いておいた。リアクションが激しい家だなぁ。さて、今日も元気に働こう。あ、お父様この髪の事を陛下に言うかも。まぁいいか。仕事のために切ったんだし。「ハルカよ…仕事熱心なのはよい。しかしだ。しかしだなぁ、昨日のように殿下を謀るのはイカンぞ!」サスガはお父様。やはり見破ったのね。「陛下は『愉快』と笑い飛ばしていらしたが、父は生きた心地がしなかった。このようなことはないように!」陛下にまで見破られたのかぁ。しかも今後は禁止令?「おはようございます、カイル様」「おはよう。ハルカ、髪はどうしたんだ?」「やだなぁ、カイル様まで。仕事に邪魔だから切りました。スッキリして仕事が捗ります」「……そうか」「あ、昨日精査しておいた書類仕事ですが、この山の上より決済をお願いします。途中、孤児院訪問などの慈善事業もありますので、お忘れなきよう」「うーん、書類についてはわ
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6.
「ハルカ嬢よ…。髪を切ってしまったのか?まさか?!うちの愚息が何かしでかしたのでは?」「殿下は関係ありませんよ、私の独断です。ええ、仕事もこの方が捗ります。ついでに、後ろでくくってまてめてしまおうかと……。いっその事男装……」「……それはやめておいた方がいいのでは?」うーん、陛下に反対されては何も言えないなぁ。やめざるを得ない。やめるしかないか、残念。「そうですね。似合いすぎて、殿下待ちの貴族令嬢達の新しい扉を開きかねないからな。やめておくのが吉だろう」お父様までそのような戯言を。新しい扉?何のことでしょう??似合いすぎてるなら問題ないのでは?不思議です。「陛下、こちらが今回持ってきました書類です。お目通し願います」「ああ、そうだな。そうだった、では宰相まずチェックを頼む」「今回は執務室の書類の中で締め切りが近いものから順に持ってきました」「うむ、宰相どうだ?」「こちらになります。陛下もどうぞご覧ください」「いやぁ、ハルカ嬢が宰相補佐になってからあいつの仕事の速度が上がったなぁ。はははっ」「恐れ入ります」「あいつには今日はもう休むように伝えてくれ」「承知しました」陛下からのお達しだからカイル様も素直に休むだろう。その間に私は他の書類を決裁順に並べたり、慈善事業の予定をカレンダーに記入したり、と作業をしよう。……結構することあるじゃん。やっぱり髪をまとめて作業しよう。きっとソファも呼んでるだろう。楽しみ楽しみ♪なんてこと!?殿下がソファを独占している……。長い脚がはみ出ているのに!休むなら自室で。仕事は執務室でしてほしい。「カイル様、陛下より今日はもう休むようにお達しがありました。どうぞ自室にてゆっくりとお休みください。あら、いけませんわ!殿下のお顔が少しおやつれになったような……」嘘も方便。殿下の顔は元気だ。どっちかというと私の方が疲れている。特に肌!殿下の顔の肌はピチピチ、きめ細やか。透き通るような美しい肌だと私は思う。対して私はというと、連日無理をしているつもりはないが。殿下のような肌ではない。そのことは重々承知している。*************Side カイル(王太子)はぁ、何ということだろう?俺はこのままでいいんだろうか?多分ダメだろうな。最初にハルカを見たのは王家主催の舞踏会。ハルカは目立つか
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7.
俺は思い切ってハルカにこの想いをぶつけた。「……殿下。正気ですか?」「正気だ」「私は伯爵家です。この間髪を切りました」「そんなものは関係ない!」いやぁ、我が家では結構死活問題だと思う。お兄様は跡を継いでくれるんでしょうけど。髪の毛は勝手に伸びるか……。貴族の派閥問題とか?私はよくわかんないけど。「それにですねぇ、殿下には既に麗しいワーグナー公爵家のフェブラリ様という立派な婚約者がいらっしゃるではありませんか!嗚呼、私が男で彼女と婚約出来たら……と思いますよ!!」「彼女は正妃として、ハルカは側妃ではだめか?」「ダメですよ!!何を血迷ってるんですか?二股なんてサイテー。フェブラリ様をまさか?!お飾りの王妃にするつもりでいるんじゃないでしょうね?王妃教育に一生懸命力を注いでいるというのに!それも幼い頃から。そんな彼女を裏切って二股?ハァ、あり得ないですね。誠意が感じられません。私の中でカイル様の株がただ下がりです」「そこまでなのか?」「そこまでです。全貴族の女性の鑑のようなフェブラリ様をお飾りにしようなんて……。あり得ない……。絶句です」「わかった。とりあえず、想いを伝えただけだ。今後どうこうという話ではない(ことにしよう(色々怖いから))」「それでは本日の事務的な話に移ります。本日は孤児院訪問を予定しています。そうだ!次回の孤児院にはフェブラリ様と共に訪問してはいかがでしょう?」「そもそも孤児院とはどういう組織なのだ?」あぁ、お金持ち……。というか、俗世間から離れて生活し過ぎだなぁ。「そうですね……。簡単に言うと、捨てられた子とか、望まれずに生まれた子とかを収容して育てている施設です」「そんなものがあるのか?望まれずに生まれる?」「一例として娼館はわかりますよね?そこで意図せずに妊娠をしてしまった場合、そして子供を産んだ場合、その子供は捨てられてしまいます」「そんなことがあっていいのか?」「それが現実です。というか、知らなかったのですね。国のトップとして恥ずべき事案ですよ」「そうだな」「孤児院の運営資金は寄付金です。しかしながら、寄付金が十分ではなく孤児院で暮らす子供はひもじい生活をしています。多くの孤児院では専門の経理を行う者が存在せず、ドンブリ勘定で経営をしています。悪徳孤児院になると、経営者が寄付金の一部を着服し、子供が
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8.
さて、今回の訪問の目的である“寄付”ですが、どのような形にするのでしょうか?「経営者は子供達と一線引いているように思う。経営者に寄付金を渡して、子供達が本当に求めているものになるだろうか?」それがカイル様の出した答えだ。「そうですね。子供たちの服装ですが、制服なんでしょうか?構わないんですけど。いいえ、もうちょっと気を使った方がいいと思います。人は見た目で判断しますからね。制服だと『孤児院の子』というのがどこから見ても一目瞭然ですよね。それに、オシャレをしても良いのではないでしょうか?女の子に化粧をしろとかじゃなくて、服装でオシャレです。あと、お風呂にはどんな頻度で入っているのでしょうか?孤児院の衛生管理も気になります。あぁ、予防接種もきちんと受けているのでしょうか?色々考えると孤児院だけで問題が山積みですね」「ああ。陛下はこの実情は把握しているのだろうか?」「最低限度ですね。孤児院に一部の貴族が経営に関与していて、口封じをしているという話も耳にします」「うーん、せめて国が管理している孤児院に衛生管理、経理などの情報をしっかりとまとめてもらいたい」「そうですね。最低限度、我々にできるのはそこまでですかね?さ、執務室ではこの現状と改善策を陛下に奏上するべくサクサク働きますよ!」「……はい」あら?カイル様の元気がない。実務経験を元にしたレポートを陛下に提出するようなものですが、苦手なんでしょうか?カイル様は特に仕事ができないわけではないですよね…。うーん、体を動かしている方がいいのでしょうか?脳筋…?あ、不敬ですね。いけない、いけない。「それでは、次回に訪問する際にはフェブラリ様もご一緒しましょう。楽しみですね。私は楽しみですよ。なにしろ、全貴族の令嬢の鑑とも言うべき女性ですからね!」私はフェブラリ様にお会いするのが楽しみだ。何しろ、全淑女の鑑!あぁ、お会いしたい!!王宮に戻った。「ごきげんよう、カイル様」ああ、あれに見ゆるは全貴族の令嬢の鑑!フェブラリ様ではありませんか!?ああっ、心の準備が。鼻粘膜は大丈夫だろうか?お父様譲りで丈夫であれ!「ああ、来てたのか。今日は孤児院に行ってきた。次回はフェブラリも一緒に行こう」サラっと誘うのですね?まぁ、王家には逆らえませんから、スルーですけど?「今日は何をしてきたのですか?」「孤児院にいる
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9.
「ハルカとお茶会してー、ハルカとドレスの採寸してー……」「フェブラリ姉さん、私は仕事がしたいからそれはちょっと……」「も~う、ハルカは固いわね~。私と過ごすのが仕事ヨ」「フェブラリ、妄想でハルカを側に置くのはもういいか?」フェブラリ姉さんがぷくっと頬をふくらまして抗議した。「カイル様、つれないですね。ではまたの機会に会いましょうね、ハルカ!」「はい、フェブラリ姉さん!」私はなんだかちょっと疲れた。なんだか嵐が去ったという感じだ。全貴族の令嬢の鑑のフェブラリ様は気さくというか何というか……。「フェブラリはあんなだから、そう難しく考えない方がいいぞ」……わかる。そして今回は事前にアポイント有で孤児院に慰問という形になる。フェブラリ姉さんも一緒だ。「ハルカ、そんな地味な格好で行くの?」私の仕事の時の格好です。地味なのは当然です。フリルとかリボン全開(?)でカイル様の補佐はできません。「はい、私の仕事着になります」「うわー、お兄ちゃんが王子様の格好で来た」「姫を二人も連れてる。俺、しってる。こういうの‘はーれむ’っていうんだぜ?」私は姫ではありません。ハーレムって…護衛騎士だっていっぱいいるでしょ?「うわー、ほんもののきし様だ剣もほんもの?」「本物だから危ないわよ?」一応注意しておいた。「そうね、あなたがすーっごく努力したら騎士になれるかもね?うふふ」「おい、平民から護衛騎士はなかなかいないぞ?」「キラキラした目で見てる子供の夢は壊さないように振舞うのです」「こっちの姫ははじめましてだけど、びじんだー。おうじもすみにおけないんだな」孤児院の経営者が顔を青くしている。まぁ、子供とはいえ不敬みたいなことを言ってるから内心ドキドキだろう。「初めまして。わたくしはフェブラリよ。よろしくね。将来は騎士になりたいの?」なぜ?私の陰に隠れてしまった。恥ずかしいの?美人だからだろうけど、私だってこれでも美人の部類に入るみたいだけど?なんだかなぁ。女の子に至っては「どうやったらお姉ちゃん達みたいにびじんになれるの?」って聞いてくる。多分遺伝なんだけど…。孤児院でする話じゃないなぁ。化粧水とかもだろうけど、孤児院にそんなお金はないだろうし。「ふふふ、わたくしは妹が欲しいのよ。そうね、お金がかかるのよ。そうだ!ここの女の
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10.
こうして孤児院の訪問は終わった。「結構な成果があったな。とりあえず、あの院長は調査しないとダメだな」「見るからにクロですけどね(笑)」「あら、わたくしが子供達と談笑してる間に何か?」「えーとですね、孤児院の院長と話をしました。院長は子供達と違って質素とは遠い格好で我々を出迎えたのです」「まぁ」「おかしいでしょう?それで、院長が孤児院の経営費の着服の疑いありということで調査をということです。他にも院長はお金に執着しているようで……今回、寄付金ではなくフェブラリ姉さんが提案した体験型にするという話をしたら不服顔だったんです」「子供たちは喜んでいましたわ?」「院長は金が入ってくる方が良かったのでしょう。着服できるから」「ま、そういう事で院長の調査という話だ。あとの一日限定の日程とかはフェブラリも仕事としてよろしく頼む。必要な物品・人員をリストアップしたりする作業が増えたからな。あぁ、あの孤児院の院長の後任については今から考えておく。フェブラリの方でも考えてくれ」仕事が増えた……。子供たちが楽しんでくれるならいいケド。後任……うちの兄はダメだなぁ。あれでも跡継ぎだし。「うーん、もう引退した執事を引っ張り出す。とかは?嫌がらせでしょうか?」「その人によりけりだろうな。子供好きならパラダイスだろう?体力勝負なところもあるけど」「乳母もセットで」「それならいいかもな」私・カイル様・フェブラリ姉さん共に思う事は「目の上のたんこぶみたいな人を上手いこと避けられる」だ。近くにいると何かとうるさいからなぁ。執事は家の内情を知ってたりするし、乳母は我々の黒歴史とも言える歴史を知っている。「うーん、どの家から出しましょうか?」フェブラリ姉さんは笑みを湛えて言うけど、これは……貴族の駆け引き的な気配を感じる。「王家の乳母は無理じゃありませんこと?」フェブラリ姉さんの先制。カイル様は「確かに」と項垂れる。フェブラリ姉さんと私の一騎打ちになった。私は言う。「私の家みたいな庶民に近い家で働いていた経験者が孤児院で働く方がいいのではないでしょうか?」フェブラリ姉さんの家だったら乳母でも、いい暮らしできてただろうし。うちは無理。「そうねぇ」以上より、我が家を引退した執事・乳母を孤児院で働いてもらうこととなった。家に
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