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第528話

Author: レイシ大好き
この質問をした瞬間、伊吹は少し後悔していた。

というのも、伊澄が紗雪を嫌う理由については、彼もなんとなく分かっていたからだ。

女同士のいざこざなんて、大体がそんなものだ。

特に伊澄の性格を考えれば、原因が人間関係にある可能性も高い。

だが、初芽に関しては、本当に予想外だった。

「私と初芽が知り合ったのは、紗雪と初芽の今の彼氏が以前関係があって......彼女と紗雪はライバルだったの」

その言葉に、伊吹は目を見開いた。

まさか、あの京弥の相手が、そんなに純粋な人間ではなかったなんて。

過去にそういう関係があっただなんて、少しも思わなかった。

彼の中では、京弥が選ぶ相手というのは、もっと清廉潔白なタイプのはずだった。

けれどまさか過去にそんなことがあったとは。

そのことが意外すぎて、思わず顔に笑みが浮かんでしまった。

「何笑ってるの、お兄ちゃん」

不思議そうに彼を見つめる伊澄。

彼女には、目の前の兄が突然にやけたように見えたのだ。

「ん?いや、なんでもない。ただちょっと意外だっただけ」

その言葉を聞いて、伊澄もすぐに理解した。

「私も意外だったよ。だって、私の京弥兄は『恵まれた存在』なのよ?あんな人が、なんでこんな屈辱を受けなきゃならないの?」

そう言って、ますます紗雪に対する嫌悪感が募る。

過去のある女なんて、本来なら京弥兄にはふさわしくないはずだ。

伊吹は、そんな妹の様子を見ておかしくなってきた。

やっぱり、自分と妹では考え方が違う。

たしかに、自分は京弥と小さい頃からの親友で、深い絆もある。

けれど、それでも心のどこかでは比べてしまうところがある。

そういう気持ちは、どうしても避けられない。

でも今、京弥が選んだ女性も実は「普通の女」だったと知って、正直ちょっと安心してしまった。

「......お兄ちゃん、口元の笑み、そろそろ引っ込めたほうがいいよ」

伊澄がそう忠告した。

「これから病院に行くんだから。京弥兄は今でもあの女を大事にしてるみたいだし、下手なことすると逆効果だよ?」

その言葉に、伊吹も思わず姿勢を正し、ハンドルに手を添えて真面目に車を停めた。

「わかった。もうすぐ病院だ、そろそろ降りるぞ」

伊澄は口をすぼめ、特に反論もせず素直に従った。

だって、このお見舞いの件は彼の提案だったのだから。

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