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第985話

Author: レイシ大好き
まさかここまで言ったのに、まだ引く気がないとは思わなかった。

口調すら変わらないその様子に、加津也はますます苛立ちを覚えた。

彼は手を振り上げ、紗雪に思い知らせてやろうとする。

紗雪は目を見開き、男が本気で手を上げようとしていることに驚いた。

「警告してやるわ。もし私に触れたら、西山グループもただじゃ済まないから」

一瞬だけ彼はためらった。

だがそれも本当に一瞬だった。

初芽のことが頭をよぎる。

あの女も可哀想な人間で、紗雪に散々な目に遭わされてきた。

にもかかわらず、自分のために何かと動いてくれている。

自分のことなど後回しで、ただ自分が紗雪のせいで牢屋に入れられたことばかり気にしている。

そこまで思い出すと、目の前の紗雪がさらに癇に障った。

「俺を脅すつもりか?」

加津也は首をわずかに傾け、意地の悪い笑みを浮かべる。

その瞬間になってようやく、紗雪は少しだけ恐怖を覚えた。

今回は自分が軽率だった、と悟る。

もっと慎重に動くべきだった。

あるいは、吉岡を連れてくるべきだった。

そうすれば多少は対抗できたはずだ。

だが、加津也がここまで狂っているとは思わなかった。

紗雪は息を整え、タイミングを計って反撃に出ようとしたが、その動きはすぐに見抜かれてしまう。

目を大きく見開き、信じられないという表情になる。

どうして自分の動きが読まれているのか。

以前の加津也はこんなタイプだっただろうか。

自分の中の彼のイメージは、もっと頭の悪い単細胞な男だったはずだ。

だが今、まるで別人のように見える。

加津也は鼻で笑い、吐き捨てるように言う。

「どうした、まだ俺が昔のままだと思ってたのか?俺はもう前とは違う。甘く見るなよ」

紗雪は振りほどこうとするが無駄で、彼の傲慢な顔を睨みつけるしかない。

ところが次の瞬間、彼は手を出すのをやめた。

代わりにニヤリと笑った。

「これだけの美人を殴るなんて、もったいないじゃないか」

そう言い、顔に触れようと手を伸ばしたその瞬間――

ドン、と勢いよく扉が蹴破られた。

室内の二人は揃って息を飲む。

特に加津也は驚きで紗雪の顎を放してしまった。

紗雪はその一瞬を逃さず、頬に平手打ちを叩き込み、続けざまに肩を取って投げ飛ばす。

今が最高の好機だと判断しての行動だった。

誰が来たのか
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