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サンプル、自滅へ
サンプル、自滅へ
Auteur: レオナルド

第1話

Auteur: レオナルド
一条蓮(いちじょう れん)は、帝都の社交界で有名な「少女狩り」だ。

彼の最上の愉しみは、気高い少女のプライドをへし折り、従順なカナリアに飼い慣らすこと。

界隈の誰もが知っている。私こそが、彼の最高傑作だと。私は名分を求めず、呼び出しには即座に応じ、彼が「長い髪が好きだ」と言えば、三年間一度も髪を切らなかった。

友人が彼に尋ねた。

「今回は本気になったのか?」

蓮はタバコの灰を弾き、気だるげに答えた。

「飼い慣らした犬だよ。俺がいなきゃ、あいつは死ぬ」

だが彼は知らない。私の正体が、業界トップの心理コンサルタント「プロフェッサー S」であることを。

私が彼の傍にいたのは、データ収集のため。そして、ある二億円の依頼を遂行するためだ。

それは、一条蓮の精神異常を証明し、一条グループを破滅させること。

……

「20万円賭ける。紬が莉子を見て十分以内に泣いて飛び出す方に」

個室のドアは完全に閉まっておらず、中の声が漏れ聞こえてくる。

「十分?蓮の手腕を舐めてるな。俺は五分だ。それも、土下座して出て行くに賭ける」

笑い声が大きくなり、グラスが触れ合う硬質な音が混じる。

私、篠原紬(しのはら つむぎ)は廊下に立ち、手の中のボイスレコーダーの赤いランプが点滅するのを見つめていた。

中にいるのは帝都で最も性根の腐った御曹司たち。主賓席には一条蓮、そして被害者は私。

これは蓮が入念に設計した、服従テストの実験場だ。

私は深く息を吸い、顔の筋肉を調整し、数え切れないほど練習した卑屈な笑みを浮かべて、ドアを開けた。

部屋の中は紫煙が立ち込め、蓮は中央に座り、その腕には白石莉子(しらいし りこ)を抱いていた。

莉子は純白のドレスを着て、無垢なウサギのように見えたが、私を見る瞳の奥には隠しきれない挑発の色があった。

「おっ、紬ちゃんのお出ましだ」

誰かが野次を飛ばす。その口調は、見世物を楽しむ悪意に満ちていた。

蓮は私を見ようともせず、ただ手の中のライターを弄びながら気だるげに言った。

「莉子に酒を注げ」

それは命令であり、相談ではない。

私は歩み寄り、最も高価な赤ワインのボトルを手に取った。

莉子が足を伸ばし、私を引っ掛けた。

これは想定内の妨害工作だ。

私はよろめき、体勢を崩してワインを数滴、莉子のドレスの裾にこぼした。

「きゃっ!」

莉子が大げさに悲鳴を上げる。まるで硫酸でもかけられたかのように。

「ごめんなさい、わざとじゃ……」

私が慌ててティッシュで拭こうとすると、蓮に突き飛ばされた。

力が強く、私はテーブルの角にぶつかった。痛みが瞬時に全身を走る。

「酒一杯でさえまともに注げないのか。飼ってる意味がないな」

蓮の声は氷の破片のように冷たかった。

周囲の人間は皆笑っていた。その笑い声は針のように鼓膜を刺す。

「蓮、こんな不器用な女、捨てちまえよ」

「まったくだ、見てて食欲が失せる」

私は頭を下げ、痛みを堪え、反論しなかった。

ここで反論するのは「わきまえない」ことであり、実験プロセスを破壊することになる。

私はより深い恐怖と媚びへつらいを演じ、彼の歪んだ支配欲を満たさなければならない。

「ごめんなさい、蓮。私が悪かったわ。すぐに綺麗にする」

私は跪き、床のワインの染みを拭こうとした。

「もういい。出て行って頭を冷やせ」

蓮は傍らのワインボトルを蹴り飛ばした。ガラスの破片が床に散らばる。

「顔を見るだけでイラつく」

これは退去命令であり、私の服従に対する最終判決でもある。

私は唇を噛み、目に涙を溜め、こぼれ落ちる寸前を演出した。

「……出て行くわ。今すぐ」

私は立ち上がり、頭を下げて個室を飛び出した。

ドアが閉まった瞬間、中から爆発的な哄笑が聞こえた。

「ほら見ろ、やっぱり犬だ」

「蓮の調教テクニックは超一流だな」

私は廊下の突き当たりまで行き、壁に背を預けた瞬間、顔の涙は乾いた。

ボイスレコーダーを取り出し、保存ボタンを押す。

「被験者は109回目にして、パートナーを貶めることでドーパミンを獲得。顕著な身体的攻撃傾向を伴う。

判定基準。重度の自己愛性パーソナリティ障害。支配欲の閾値は既に臨界点を突破」

廊下の突き当たりのガラス窓に、私の無表情な顔が映っていた。

さっきまで卑屈に泣いていた女は、まるでいつでも捨てられる小道具のようだった。

ポケットのスマホが振動した。

暗号化されたメッセージが一件。短い一文だけだ。

【データ収集の進捗は?】

私は返信した。

【100%。網を絞るよ】

スマホをしまうと、私は服を整え、次なるクライマックスを迎える準備をした。

だが、行く手を阻む人影があった。

西園寺慧(さいおんじ けい)が壁に寄りかかっていた。オーダーメイドのスーツを着こなし、手の中でブラックカードを回している。

西園寺グループの後継者であり、二億円の依頼主。

私のビジネスパートナーだ。

彼は私を見て、口元に意味深な笑みを浮かべていた。

「いい演技だった。特にさっきの目、俺も危うく信じるところだったよ」

彼と無駄話をする気分ではなかった。私はそのカードに手を伸ばした。

「残金」

慧は手を引っ込め、カードを渡さなかった。

「急ぐなよ。ショーはまだ終わってない」

彼は個室の方角を指差した。

「一条蓮は今が一番得意絶頂だ。今お前が消えたら、あいつの挫折感は半減する」

「どうしろと?」

「戻れ」

慧はカードを私のジャケットのポケットにねじ込み、指先で私の鎖骨をなぞるように触れた。

「荷物はすべて持ち出せ。一つも残すな。

あいつに思い知らせてやれ。自分の犬が、実はいつ噛みつくかわからない狼だったとな」

私はポケットの中の冷たいカードに触れ、次の手順を計算した。

急激な離脱による脱感作。それはナルシストに対する最も効果的な治療法だ。

彼を雲の上から突き落とし、粉々に砕いてやる。

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