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第1046話

Author: 落流蛍
車に戻ると、日奈の顔にはついに得意げな表情が浮かんだ。

彼女は高坂家から最後に出てきた冬樹を一瞥し、彼の顔に満面の笑みが浮かんでいるのを見ると、すべてがうまくいったと悟った。

案の定、冬樹が車に乗り込むと、満面の笑みで彼女に言った。

「父さんと母さんが同意してくれた。妹の厄介事を解決してくれるなら、俺たち二人は結婚していいってさ」

それを聞いた日奈は、安心したように冬樹の胸に身を寄せた。

彼女の声には少し不安の色が混じっていた。

「ねえ、私、こんなことして、腹黒いって思わない?」

冬樹は笑って言った。

「そんなことないよ。前回だって、日奈の助けがあったから、高坂家と賀茂家が協力できたんだ。日奈みたいに優秀な人を妻にしたいって、前から思ってたさ。

残念ながら、家族が反対してただけでね。

今回は妹を助けることを条件に、両親がやっと結婚を許してくれた。外で聞かれたら少し格好悪いけど、仕方ないさ。両親が俺たちの結婚を反対してたんだから。

それに安心して、ちゃんと両親には言っておいたよ。これは俺の提案で、お前は何も知らなかったって」

日奈はようやく心の底から安堵した。

「そうだ。父さんが聞いてるよ。お前はいつ哲郎に会いに行くつもり?」

日奈は口角を少し上げた。

「家に戻ったらすぐ、哲郎様に会いに行くわ」

彼女は冬樹に、この件が自作自演だとは言わなかった。

哲郎は何も知らない。

彼女はただ賀茂家系列のメディアを利用して、記事を流しただけだった。

だから記事を取り下げるのに、哲郎の許可など必要ない。

彼女一人でできることだ。

彼女の狙いは、冬樹の両親に「日奈がいなければ報道を止められない」と思わせることだ。

そうすれば、冬樹が自然と両親に結婚を持ち出せる。

すべては彼女の計画どおりに進んでいた。

もうすぐ、彼女は高坂家の嫁になれる。

その時こそ、本物の高坂家の嫁として、華恋を相手にするのも今よりずっと簡単になる。

そう考えていると、一台の車が入ってくるのが見えた。

その車に乗っている人物を見て、日奈の表情がわずかに変わった。

「冬樹、華恋が来たの?」

しかも栄子まで来た。

まさか……武と里美は、今ここで栄子を正式に認めるつもりなの?

冬樹は二人が高坂家に入っていくのを見て、笑いながら言った。

「きっと港の件だよ」

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