Masuk(うん、これで準備万端だ!)
まずは手始めに……。
やっぱりなんと言っても、メインは焼肉を美味しくいただくことだ。
主役のお肉から焼かないことには始まらない。
用意した豚肉は、週に一度は通う馴染みのスーパーで買ったもの。
鮮やかな桃色のお肉と乳白色の脂の割合がちょうど良い。
その上、塩レモンのタレと香草などの調味料で加工されている。
豚肉をステンレス製のトングで摘み、網の上へ三枚ほど敷いてじっくり焼く。
まだかまだかと、ソワソワする気分になりながら待っている。
(あっ、色が変わってきた!)
下の面が焼けてきたら、ひっくり返して反対側も焼く。
艶のある脂の雫が今にも落ちそうだ。
脂の雫が燃料となって炭にぶつかり、パンッと弾けて火がまた燃えていく。
その瞬間が、炭火で焼く焼肉の醍醐味ともいえるだろう。
(そろそろ、焼き加減もいい頃合い。じゃあ、今から……)
「いただきます」
お肉が良い焼き色になったのを確認したところで、食事を始める挨拶を呟いた。
ここからが庭ごはんの時間だ。
そのまま、焼き上がった豚肉をステンレス製のお箸で取って口のなかへ頬張る。
(うん! 塩とレモンのサッパリした味付け、なかなか良い! それにしっかり味付けしてあるから、タレが無くても食べられる)
次は輪切りにした玉ねぎを焼いて、ついでにお肉の追加もしておく。
そうこうしていると、横で炊いているメスティンの蓋が浮いている。
まるで水分が抜け出すかのように、沸騰しながら少し容器の外へ溢れ垂れてきた。
(この調子だったらもう少しでお米が炊ける……。楽しみだぁ……)
ワクワクしながら、お米の炊き上がりを待っている。
だが、よそ見している暇はない。
近くから煙が少し立っていた。
(はっ! のんびりしている場合じゃない! 玉ねぎが焦げちゃう……そろそろ返さないと!)慌てて玉ねぎをひっくり返してみると、少しだけ黒の焦げがついていた。
一人だとマイペースには出来ても、やることが多くてこなさないといけない。
忙しくはなるけれど、その分楽しさは生まれてくる。
(玉ねぎが良い感じに焼けたから、そろそろ引き上げよう)
焼けた玉ねぎは、一度タレ無しで食べてみることに……。
(ん~! これは甘い! 意外にタレが無くてもイケる!)
私は玉ねぎの甘さに感動を覚えた。
多少焦げた部分が苦かったとしても、甘みの方が勝っている。
そして、同時に焼けた豚肉も一緒に食べてみた。
(あぁ、美味しい……! 所々でタレが絡み合って。あっ、そうだ! 今度こそ、ご飯の様子を……)
ちょうど、メスティンの蓋が先程の沸騰から収まったのか元に戻っていた。
ある程度蒸らしたら食べ頃になる。
耐火手袋を右手につけ、焚き火台の火から外すため蓋をしたままメスティンの取っ手を掴む。
テーブルの上に置いて、そのまま蒸らして待つ。
(よし! ご飯が完成間近だし、そろそろきゅうりの浅漬けとキムチの出番だ)
野菜も同時進行に、玉ねぎを焼いた後の所へ今度はキャベツも……。
◇ ◆ ◇
——ご飯を蒸らしてから十分くらい後。
(お待ちかねのご飯がそろそろ食べ頃だな……開けてみよう)
メスティンの蓋を開けると湯気と熱気が立っている。
中身のお米は煌めいて、一つ一つ粒が立っていて炊きたてご飯のお出ましだ。
まるで、宝箱を開けたようなキラキラと白米の艶が際立っていた。
(これは美味しいはず……。だって、お米の一粒みんなが輝いている!)
私はご飯を一口サイズの大きさに、お箸でよそって食べてみた。
(う~ん、美味しい! そして噛むほど甘い!)
お米の固さも、固すぎず柔らかすぎずで丁度いい。
無事に成功したことで安堵している。
少し焼いておいたキャベツもシャキ感を残しつつ、何よりも野菜の甘さが噛むことで滲み出てる。
(あっ、そうだ! きゅうりの浅漬けを食べないと……すっかり忘れるところだった)
実家で作っているきゅうりの浅漬けは、昆布の出汁が効いた飽きない味なのである。
それにお肉とは打って変わり、ポリッとした食感。
お肉に飽きてしまった時、味変としての役割も果たしている。
(あと、キムチでさっぱりさと唐辛子の辛さが欲しい)
キムチは市販のもので、私がいつもお気に入りで買っている国産の白菜キムチ。
白菜一切れ分を箸でつまむ。
本場のものに比べると辛さはマイルドなものだけど、ちゃんとピリっとした辛味は残っている。
酸味も感じるけれど、コクがあって奥が深い。
キムチを食べる分リセットされ、またご飯と豚肉のセットで繰り返し食べたくなる。
お肉を網へ追加し良い焼き色に仕上がったら、ご飯の上に乗せて一緒に合わせた。
(これぞ、お肉とご飯を一緒に食べる醍醐味……。はぁ~……幸せ……)
表情は出さないも、目が糸目状になってうっとりしちゃう。
すまし顔なのに、私の心の表情から表へ至福のオーラがダダ漏れになりそうなくらい。
ご飯の幸せさを堪能してると、ピコンッとLIMEの短い通知音がなった。
ご飯以外の楽しみなことが来ているのかもと、期待しながらスマートフォンを取るのである。
ある程度ごはんの蒸らし時間も過ぎた。そろそろ開けてもいい頃合いだろうと、メスティンの蓋を開ける。あとは、保冷剤の入った小さめのクーラーボックスから、ラップでアルミ皿ごと包まれている生春巻きを取り出したら、全て出揃った。(よし、これで全部完成して揃った! 冷めない内に頂くとしよう)「いただきます」まずは前菜の生春巻きから頂こう。本来なら、お店や惣菜についているのはスイートチリソースをつけて食べることが多い。けれど、私の場合は違う。少し醤油の味が欲しい理由からポン酢を選んでいる。ポン酢でも種類があって迷うけど、ここは好みだと思う。ちなみに、私は柚子ポン酢をオススメしている。(一本目の真ん中の部分を取ろうかな)割箸で三等分に切った春巻きを掴み、ちょこっとだけきゅうりなどの野菜の方につけて口へ運ぶ。(ん! 野菜のシャキシャキとサッパリとしたポン酢の味に、少し塩気のあるスモークサーモンが良い塩梅だ!)もちろん、ライスペーパーのモチモチ感がある。もう一つと先程取った一本目の右端っこを取り、同じようにして食べる。端っこは、どうしても具材が少ない。その分、ライスペーパーのモチモチ感が一番分かりやすいだろう。さて、いよいよお待ちかねの、メインディッシュであるラムチョップ。ローズマリーの香りとラムのほんのりとした獣の匂いが漂っている。骨を右手に取り、左端も左手で添えて、フライドチキンを食べるような食べ方で一口かぶりついてみる。(おっ! これは、柔らかい……!)オリジナルスパイスがかかっただけでも、すごく美味しい!お好みでソースをつけてもアリだ
ようやく夕方の四時を回った。(あっ、そうだ! ラム肉は焼く前に、常温に戻して置かないと!)忘れないうちに、お肉だけ先に冷蔵庫から取り出しキッチン台に置いた。理由は中に火を通す際、生焼けを防ぐためである。料理の準備を完成した私は、外へ出てメッシュタープを立てに外へ出る。しかし……夕方とはいえど暑さはまだ残っている。(うぅ……蒸し暑いなぁ)そこで私は、対策を立てることにした。首に冷やしタオルと紐で掛けられるファンを装備して暑さを和らげる作戦だ。少しでも涼しく感じながら作業が出来たら割と動きやすくなる。その二つを首にぶら下げて外へ出る。(最近買った虫除けスプレーには、レモンとかが漂っている……いい香り)足元や腕周辺に服の上から掛けてもいい虫除けスプレーも撒いた。メッシュタープや焚き火台、チェアやテーブルといつものように外の収納庫から道具を取り出す。メッシュタープをいつもの所定地に立て、テーブルとチェアを設置する。焚き火シートを敷いて焚き火台を乗せ、乾燥して開いた松ぼっくり二個と小さめの炭や細く切った薪を並べる。火を付ける前に家の中から食材や食器一式、他にナイフなどの道具。それから、外で電子本を読めるようにタブレットも持って準備を進めた。(んー……こんなところかな?)これだけあれば充分だし足りない分は、側にある収納庫から取り出そう。まずは、焚き火の火を付ける作業からだ。時間が少しでも惜しいしすぐに火を作りたい。その手段としてガスバーナーで炙ることにした。火が少しづつ大きくなり始め、追加として少し大きめのサイズの薪を足していく。(あとは、火が整
さて、話は調理の方に戻そう……。今回はスキレットで焼くため、塩胡椒と乾燥ハーブを塗して置いておく方法で行う。お肉を焼く工程には、しっかり下味をつけることが大事だ。私一人で食べる分量として、二本分だけ用意をする。(まずは白い脂の部分を……)火が回りやすくするために骨のついていない脂部分を、包丁で均等に軽く切り込みを入れる。その後、下味をつけるのだが……羊肉の食歴が初心者レベルの私。そんな人でも使える味付けスパイスを選んだのが、洋食をメインとしたお肉専用のオリジナルスパイス。サラサラと軽く、表裏のお肉に振りかける。(おぉ……相変わらず、カレーのスパイスにも似た香りが)中のスパイスは瓶に貼り付けてあるラベルの説明によると、塩と胡椒、ガーリック、ローレルなどの色んな種類の粉末が入っている。まるで料理を美味しく手助けしてくれる、魔法の粉のようだ。それにプラス、私はある乾燥ハーブの入れものを取り出した。そのハーブは前回、恭弥さんが使ったお肉料理でお馴染みの細長い葉が沢山入っている。スッキリとした爽やかな香りを持つ、ローズマリーだ。特に、淡白な鶏肉やラム肉に風味付けとしてもってこいの香草である。(おっ、良い感じのスキっとする匂い)それを振りかけ、お肉に馴染ませておき、アルミのお皿に移して一旦冷蔵庫へ入れた。次は副菜として作る「生春巻き」だ。幼少期、大型スーパーにあるサラダや惣菜コーナーで初めてそれを買って食べた思い出がある。子供ながらもすごく美味しかったのを覚えている。以来、ここに移り住むまではスーパーで見かけ食べたくなったら買うことにしていた。(え? コレって自分でも……?)
「うぅ~……暑い……」そろそろ九月を迎え入れようする、ある残暑の日。午前十一時を回り、もう少しでお昼を迎える。私はいつものように、自宅内の仕事場で校正の作業をしていた。エアコンは効いているものの昼間に近づくにつれ、外からの暑さが更に増していく。(今年の夏も、やっぱり暑すぎる……)真夏も苦手だけど、残暑も同様……いやより苦手である。特に湿度の高い暑さやられが、私にとってジワリと身体から体力のダメージを受ける。山奥でも家の中には、エアコンがあるから涼しい。それでも一歩、家から外に出たらやはり暑い。(こういう時こそ、何かスタミナがつくようなものを食べなきゃ……)私は何か相応しい食材があるかを考えてみる。スタミナの言葉でイメージできる食材を浮かぶうちに大体答えが決まっていた。当たり前のような答えで結論からいうと「肉料理」。あとは味付け次第だろうけど、単純過ぎるかなと思ってしまう。(スタミナがつきやすい食べ物といったら何だろうか? 一度冷蔵庫を見てから判断を……)「あっ!」ひとつ、思い出したことがある。私の記憶が正しければ『アレ』を買っていたことだ。キッチンへ行き、冷蔵庫の中を確かめることにした。すると思った通り、例の『アレ』を発見!(ふふふ……コレがあれば大きめのスキレットで……)トレーの中に入っていたこの食材をみて、心の中で少しニヤけている。時計を見るとそろそろお昼ご飯である。しかし炎天下の中、庭で料理をするのに私の体力ではかなり厳しい。無理矢理に行うと、熱中症にもなりかねない。連
(今日も真夏日かぁ……)私は、リビングにあるテレビで、夕方のワイドショーを見ていた。最初の特集が、現在の天気にまつわるもので各地の猛暑日などを取材している。(都会の猛暑は、いつ見てもバテそうだ……)という私も、結婚する前は都会に住んでいた。コンクリートから出る熱気に、体力が消耗して負けてしまう。そう思うと、この暑さでよく通勤や通学していたものだと感心してしまった。今日はオフの日……というよりも、お盆期間に入った。私の夏休みは、今年の場合だと五連休。旅行に行く分には良いのだが、何かをしたい訳でもない。ちなみに恭弥さんは、明日から家に帰ってくる予定だけど三連休しかないらしい。(早ければ今日の夜に着くと、彼は言っていたけど、どうかしら?)理想としては安全運転でありつつ……だけど、なるべく早く帰ってきて欲しい。ソファーにあった丸いクッションを抱え、彼の帰りをドキドキしながら待っている。(あ、そうだ! 今日の晩御飯……まだ何も用意してない)ボーッとテレビを見ている内に、気がつけば夕方の六時をとうに回っている。まだ、メニューを決めていなかったことに気づいた。ソファーから立ち上がり、キッチンの冷蔵庫やパントリーの棚を開ける。今、何があるのかと食材を確認する。(今日のお昼間もかなり暑かったし、何かさっぱりしたものが食べたくなるなぁ……)パントリーの棚を見ていたときに、ある食材を発見した。未開封で、中に白いものが束として入っていた透明
食事後、焚き火の中にやや太さがある薪を二本追加する。ご飯だけではなく、星空を見るための庭キャンプ。特に夏の大三角といわれるものや季節の風物詩である、七夕といえばお馴染みの天の川が見えやすい時期だ。夕方六時半とはいえ、そろそろ夕日が落ちてしまう時間になる。(よし、そろそろ明かりをつけよう)私は、小さめのLEDランタンを先につける。先日恭弥さんから誕生日プレゼントでもらった、テーブルランタンをつけることにした。テーブルランタンは、OD缶という上側に丸みがあるガス缶を取り付けて使用する。ちなみにODの意味はOUT DOORの略のこと。ホームセンターやアウトドアショップ専門店で売られている。(ランプ取り付けたら、まずはガス栓ダイヤルの確認から……)ガス栓がマイナスになっているか、チェックしておく。そして、ダイヤルの反対側にある火力調整レバーを左に寄せていよいよ着火だ。ランタンの着火する場所の隙間でも、着火しやすい先端が伸縮出来るライターでカチカチと火をつける。ライターに火がついた瞬間、着火場所の隙間を狙う。ガス栓のダイヤルを回しながら、ランプの火をポッと灯していく。あとは、私好みの灯火の形や大きさを調整して完成!(あぁ、良い眺め……)ランタンを見つめてはウットリしている。他にこれも初登場であろう、オイルランタンも導入することに。オイルランタンは別の日にでも使うから、機会があれば説明できたらと思う。火をつけ終わると、メッシュタープの柱にランタン用太めのハンガーを引っ掛け吊るした。夜の七時を過ぎると、夕焼けの出番も終わって暗くなり始めている。これからが夜の始まり