(まな板はこれにして、包丁は……)
まな板と包丁を用意し、下準備として野菜を切ることから入る。
焼き野菜用に、キャベツを手で大きめにちぎる。
大きい方が焼きやすいし大雑把にしても構わない。
(寧ろ、その方が美味しく感じるんだよなぁ)
私の勝手ながらだけどそう思う。
玉ねぎは外皮を剥き包丁で先端と根を切り落とす。
その後、一センチほどの厚みで輪切りに切る。
ここである食べ物を思い出した。
一昨日、実家から自家製きゅうりの浅漬けが届いていたことだ。
(一品ものも欲しいし、ちょうど良さそうだ。下準備が終わったら冷蔵庫から取り分けておこう)
玉ねぎを早めに切り終わらせ、再度冷蔵庫の中を覗く。
きゅうりの浅漬けはプラスチック製のタッパーに入っている。
冷蔵庫内の食材を探っている中、白菜のキムチも入っていることに気づいた。
行きつけの焼肉屋で頼んでいるメニューの一つに、必ずと言ってもいいくらいキムチも頼んでいる。
それをキッカケに想像していたら、また違うメニューが浮かんだ。
(あぁ……焼肉をやるとなったらやっぱり白ご飯も欲しくなる……。だったら先日、百円ショップで購入したメスティンを使ってご飯を炊いてみたい!)
想像するだけでヨダレが垂れそうになる。
もちろん、顔の表面上はすまし顔だけど。
(ご飯を炊くなら、今のうちにやってしまおう)
米びつからカップですり切り米一合分だけ掬い取る。
すぐにご飯を炊けるよう、あらかじめ白米を少し洗う。
お米を炊くための四角いメスティンに入れて吸水させる。
(食材の準備はこれで大丈夫かな?)
食事の準備を終えた私は、急いで庭に出る時用の格好に武装する。
所謂、私の趣味である庭でキャンプする時の服装のことだ。
黒のジーンズ、中に暖用仕様の長袖シャツの上に紺色のトレーナーパーカー、ワインレッドのウインドブレーカーで武装をする。
これが、私が着る庭キャンプをする時の正装である。
(よし、着替えもバッチリ! 外に出よう!)
着替えた後、私は紺色のアウトドア用ブーツを履き外に出る。
庭にある収納庫からメッシュタープと自分用に座るベージュ色したローチェア。
メッシュと板状の二つタイプが合わさった折り畳み式の黒のスチールテーブル。
焚き火台としても使えるバーベキューグリルを出した。
(あとは炭と、家の中のものを運べる準備とか出していこう)
その準備の合間で、読者の皆さんに説明をしよう。
さて、ここで一つ疑問を抱くかもしれない。
私の住んでいる場所は何処なのか? ということだ。
プロローグに説明をしているが念の為、もう一度。
とある山奥の村に住んでいて、春でもまだ少し寒さが感じやすい場所なのである。
さらに、私の家は数軒分の区画で整理されている。
どんな家かというと、庭付き一軒家で収納庫まで完備されているという親切なオマケ付き。
その収納庫付近の空いた土地で、庭キャンプするのが定番だ。
中は、タープや焚火台などキャンプ用の道具がいっぱい収納している。
収納庫以外にも玄関内の横にある大きな収納室。
そこへ食器など細々したものを大きめのケースにまとめて入れている。
(ふぅ、外での用意はこんなところかな?)
メインであるタープは、側面がメッシュタイプで屋根付き四角形のもの。
冬以外の季節は、必ず何かしらの虫がいる。
その上、特に夏が一番多いから虫除けの為に購入したのだ。
(……私自身、虫はあまり好きじゃないのもあるけどね)
メッシュタープはあらかじめ即座に外へ出せるよう、布に取り付けてある。
あとは、風が強くない限りポールを伸ばして広げたらそれで完成だ。
次は、角に丸みが帯びた長方形の形をした黒色のテーブルを広げる。
半分は、メッシュ状で火を扱うコンロや小さめの焚き火台を置くのが可能だ。
ローチェアも直ぐに出せるよう折り畳まれた状態から、伸ばして広げておく。
(テーブルはタープの真ん中、椅子はこの辺にしよう)
——家の収納室から食材や食器など、全て運び終えたところ。
(必要なもの全部運び込んだし、焚き火の火入れをしようっと)
テーブルのメッシュ側の方に炭を受けるトレー付きの小さめの焚き火台を乗せる。
中に入れる着火剤となるものは、乾燥で広がった松ぼっくりと枯れ草。
小振りの炭も敷いたら、その上に中間ぐらいの大きさの炭を置く。
(この大きさは小さい方……こっちは追加用で……)
今回の炭は、先日ホームセンターで買っておいた「切炭」という不揃いの形をした炭だ。
一般的に販売していて初心者でも使いやすい。
補足しておくと焚き火台には、色々な形がある。
正方形や長方形、変わった形だとヘキサゴンタイプも。
我が家では、正方形の網が敷けるタイプの焚き火台を使用している。
(今日は、バーナーで着火しよう)
ガスバーナーを点火する。
乾燥でカサが広がった松ぼっくりを焦点に当て、様子見ながらじっくり火を起こした。
(よし、火力も良い感じに……!)
火吹き棒で風を送りながら火力を高めると、少しずつ火周りが良くなってきた。
大きめの炭を数個置いて、炭の火力が整ったところで焼肉用に使う正方形の網を敷いた。
(火が整ったし、先にご飯を炊こう)
心の中では小躍りするかのようにワクワクしている。
吸水させたお米の入ったメスティンを網の上に置く。
(お米が美味しく炊けると良いなぁ……。美味しく出来上がりますように、行ってらっしゃい)
あとは、無事に炊けるよう祈るのみ。
キッチンで切ってきた焼き野菜用のキャベツと玉ねぎは、厚手のジッパー付きビニール袋に入っている。
スーパーで買った塩レモン香草の味がついた豚肉も、野菜と一緒に木目調側のテーブルの上へスタンバイ。
浅漬けのきゅうりやキムチといった一品ものも忘れずに……。
——タイマーの待ち時間、彼は私たちの出会いを語ろうと提案してくれた。「俺らって、初めて会ったのは何年前だっけ?」「確か……」そう、あれは出版社の創立記念パーティーのこと。「乾杯!」私は当時、編集社員としてまだ一年か二年目くらいの頃だった。重要な事情がない限り、全社員はそのパーティーへ出席していた。(うぅ……。コミュ障の私にとって雪絵さんがいないと心細いなぁ)しかし、当の本人は別の事情あってどうしても出られないという理由で欠席。彼女以外の仲の良い人は一人も居なくて困っていた。乾杯の挨拶など進行通りに進めた後、歓談会へとフリータイムになった。(どうしよう……。私から話しかけるのも……怖い)その時のことだった。一人の男性から、私が一人でいるのを見かけて声を掛けてきた。「ねぇ。君、一人?」「は、はい……」黒のスーツ姿に紅色のネクタイで締めていて、まるでバーテンダーの佇まい。そして彼の手には、ネックホルダー付きの立派な一眼レフのカメラも持っていた。彼の顔から、優しそうな目の眼差しと柔らかい微笑みを見せる。それが、後の夫・恭弥さんだった。当時の彼は、パーティーの出席者兼写真撮影の担当として呼ばれていた。私はふと、その当時のことで一つ疑問に思っていた。「そういえば、あの時、なんで声を掛けてくれたの?」「ん? あぁ、一人だったからのもあるけど……」「けど?」恭弥さんの顔を少し覗き込むと、なぜか少し頬が赤い。「
——次の日の午後。いよいよパーティーの当日がやってきた。恭弥さんは外の収納庫で、キャンプの道具を取り出してメッシュタープなど設営に勤しんでいる。私はキッチンでの作業として、二品のメニューを庭で料理できるように材料の下準備をする。(恭弥さんの料理は楽しみ! だけど、私の作る料理は……大丈夫かな?)緊張も相まって手が少し震えるけど、ひとまず調理から始めなきゃだ。まずは、ローストチキンの下ごしらえから。(えーと、鶏肉に使う調味料はコレだけかな?)……というのもチキンをスパイスやオリーブオイルにつけて、ある程度寝かさないといけないからだ。私は手袋をはめ、鶏肉をフォークで何箇所か突いてからポリ袋の中に入れる。その中にオリーブオイルやハーブソルト、胡椒、ローズマリーを加えて揉みこんでしばらく置いておく。次は、野菜を切る作業に入る。(昨日買った野菜だけど、皮も食べられる新じゃがを選んだんだね)新じゃがをしっかり水で土落としをして、食べられる一口ぐらいのサイズに切っていった。人参はジャガイモよりも少し小さく乱切りにし、ブロッコリーは軸から切り落として小分けに切っていった。野菜も、ジップ付きの袋にまとめて入れた。(ローストチキンに使う食材の準備は完了。次は、パエリアの下ごしらえ……)量の少ないものを作るのは、意外と容易ではなかったりする。玉ねぎをみじん切りにしておいてから、パプリカを切る。(パプリカは四分の一以下ぐらいしか使わないから残りは冷凍しておこう)
——ある記念日の前日。私と恭弥さんは、今スーパーで食材を買いに行っている。なぜなら、夫婦にとって重要なイベントの準備をしている最中だ。それは……次の日に行う私達の結婚記念日。いつもならレストランで予約を取ったりしている。けれど、今年はちょっとした事情があった。 ◇ ◆ ◇ ——遡ることある日、私が晩御飯を食べている時間。この日のおかずは、人参やジャガイモの入った煮込みハンバーグ。リビングでテレビを見ながら、のんびりと頬張っていた。その最中にピコンっと、スマホから通知音が鳴った。(あっ、恭弥さんからだ)恭弥さん「空、今LIMEしても大丈夫?」私「うん、大丈夫だけど……どうしたの?」何となくだけど、彼がちょっと焦っているような気がした。そして、次のメッセージを見て腑に落ちた。恭弥さん「いつも予約しているレストランなんだけど、今年は臨時休業で予約取れなくなったんだ」私「え? そうなの?」恭弥さん「なんか、オーナーシェフが言うにはお店の設備点検らしい」恭弥さんが予約をしようとしているレストラン。その店は仕事関係も含め、私達が懇意しているイタリア料理のカジュアルレストランだ。夫婦で営む一軒家の小さなお店を構え、コース料理を売りにしている。味は一級品なのに、値段が手の届く範囲のリーズナブル。なんでもオーナーシェフは、下積み時代にホテルや有名料理店で修行を積んでいたらしい。オーナーの奥様も、パティシエのスタッフとして店を手伝っている優しい方である
——カシャッ、タンッ、タンタン。(うん、この写真がいいからこれにして……送信っと!)私はスマートフォンのカメラで、出来上がったカレーライスの写真を数枚撮る。写りのいいいものを選択して、恭弥さんにLIMEで送った。もちろん、メッセージも添えて……。(あとは返事が来るまで待つ……その間冷めないうちに食べてしまおう)彼からの返信を待ちながら、カレーライスを食べることにする。「いただきます」手を合わせて食事の挨拶をした後、カレーの皿に添えた木製のスプーンを手に取る。カレーとご飯の狭間の部分をひと口分すくって口へ運ぶ。(おぉ! ガラムマサラをかけたことで、ピリッとしたスパイシーさが増してる)でもそんなに嫌な辛さはなく、大人なら誰でも食べられる辛味が良い。それも加え奥にある甘みや酸味、旨味といったコクのハーモニーが上手く調和されている。(くぅぅ~、やっぱりカレーは美味しいから最高!)一口食べるごとに、どんどん食欲が増していく。時折、カレーに添えた甘めの福神漬けで食感を変えるととまらない。これを食べて、今年も夏バテから乗り越えられたらいいなぁと思っている。——カレーライスを半分くらい食べた頃……。ピコンッ!スマホからメッセージの通知がきた。(あっ、恭弥さんからだ! どんな返事が来たかなぁ?) 
——扉を開け、外へ出てみる……。(うっ! 眩しい……!)青空の天上から、太陽が燦々と眩しく照らしている。梅雨の期間、あまり外へ出ていなかったから尚更だ。目や肌へ日差しの刺激がより感じる。(今日はそんなにジメジメした湿気が少ないけど、これから先はもっと湿っぽくて暑くなるだろうなぁ)しかし、ここでへたれていたらダメと気合いを入れ直す。もちろん念の為、水分補給用のスポーツドリンクも用意している。この時期でも、やはり熱中症には気をつけたいことだ。(よし、行きますかぁ!)家の外の右端にある収納庫へ向かう。メッシュタープやローチェア、焚き火台などを出していつものように作業を開始する。メッシュタープを立て風に飛ばされないように、紐を引っ掛けられるフック付きレンガ調の重しもつけて固定していく。これからの夏は、日差しが強い。側面のうちの二面分だけメッシュの上から日光避けのシートも一緒に取り付けてある。(今日は出入りする面の遮光シート一枚を、屋根にして立てよう)その後、テーブルとローチェアを設置し、テーブルの近くにはトレー付きの焚き火台を置いた。今回も切炭をメインに使用するけど、そのためには着火の素が必要だ。下に乾かして傘が開いた松ぼっくりと細かい枝木、ナタで捌いた細めの木を山の形になる様に組む。(土台は出来たから、先にカレーの材料を持ってきた方が良さそう)キッチンからカレーのルーやカット済みの野菜やお肉、食器などをひとまとめておく。暑さ対策として、食材は保冷剤の入った小さいクーラーボックスに入
——七月初旬のある日の午後。(ぬぅ~暑い……。暑いよう……)季節は、もう夏を迎えている。薄手の長袖から半袖への衣替えも兼ねて、そろそろ部屋の中へ扇風機を設置しようか迷っていた。最近、この時期の昼間は少しずつ暑くなってきた。天気予報では、夏日に近い気温を示す日中も増えている。けれど山奥の気候は平地と違い、朝と夜はまだ涼しい。(長袖の服もそろそろおしまいかなと思ったら、逆戻りもするしどっちを着ればいいのだろう)こんな心境で毎日迷うから困る。特に雨が降ると冷えて肌寒くなるくらい、昼との気温の差が激しい。ただこれから訪れるであろう厳しい暑さに耐えられるのだろうか?そういわれたら、この先は絶対バテるに違いない。身体が、なかなか外の気温に順応してくれないのである。(暑さを凌ぎれるスタミナが欲しくなるし、そろそろつけたいなぁ……)今のままだと身体がドロドロに溶けてしまうくらい、私は夏バテしやすい体質だから尚更だ。夏を乗り切るために、簡単にスタミナのつくスパイシーなものが食べたい。(うーん、夏といえば……。あっ、それに相応しいメニューがあるじゃないか!)そうだと一人で相槌を打ちながら閃いた。(夏……スタミナがガッツリつくスパイシーなもの……カレーだ!)キャンプ飯の定番メニューの一つだけど、まだ作ったことがない。先週の話には触れていなかったものだが……。&