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第一話 豚肉の塩レモン香草焼き(その四)

last update Date de publication: 2025-03-10 10:48:41

(誰からだろう……。あっ、恭弥さんからLIMEが来た)

 恭弥さんとは、三つ歳上の旦那さんのことなのだ。

たまに「恭さん」と呼んだりもする。

彼は、フォトグラファーとしての活動が主な仕事。

時に取引先から、グラフィックデザインの注文も請け負っている。

仕事上、風景など色んな場所で撮影をするために出張や別宅兼作業場での泊まり込みが多い。

だから毎夜、LIMEでチャットメッセージを送り合う。

たまに時間が合って、長く話せそうな時はテレビ通話もしている。

(さて、届いたメッセージは……)

恭弥さん「今、晩御飯を食べてるのかな?」

私「うん、庭で一人焼肉してる。今日のご飯は豚肉の塩レモン香草焼きにした」

恭弥さん「あっ、美味そう! てか、この前スーパーで買ったもの?」

私「そうだよ。恭弥さんが最初にオススメしてくれたものだけど、美味しかったからリピートした」

恭弥さん「そっか、それは良かった(笑)」

こんな感じで、だいたい私と恭弥さんとのメッセージはたわいのないもの。

日々、平凡な会話を交わしている。

(この時間にメッセージを送るってことは、今……休憩中かな? でも嬉しいなぁ……)

ちなみにこのタープや焚き火台等の道具は、一年前に元々二人で一緒にするために買い揃えたもの。

恭弥さんは昔からアウトドアに詳しかった。

私にタープの立て方や焚き火の火起こしなど、一から教えてくれた。

それに加え彼は、元から料理が得意である。

キャンプ飯も美味しく作ってくれたりとプロ並みの域だ。

実は、庭でキャンプするようになったキッカケがある。

それは、私の心の呟きから始まった。

(キャンプ、してみたい……)

ある日、私が毎週見ているものがある。

深夜帯の時間に放送するテレビ番組のことだ。

その番組は、初心者であるMCやゲスト出演のタレントがキャンプを道具など一から学べるというテーマである。

「さぁ、今日のゲスト講師は東町さんです」

「よろしくお願いします」

「早速、今回のテーマはなんでしょう?」

「今回、僕が紹介したいのはキャンプ飯なんですけど……」

ゲストはキャンプの活動内容によって変わる。

特に講師役は一人、決まっているのはそれを長く経験しているタレントが交代で務めている。

例えば、キャンプ飯を得意とする人であってもそれぞれ違う。

お手軽な料理を目指す人から、食材や調味料にこだわりのある人まで。

他にもランタン、焚き火の魅力、テントなどのキャンプ道具の紹介。

アウトドアならばのアクティビティまで満載だ。

(自分もこうやって出来たら、楽しいだろうなぁ……)

いつの間にか毎週見ているうち、そんな活動をしているシーンに釘付けとなっていた。

それを恭弥さんがお風呂上がりからひょっこり現れ、私の元へ行きつつテレビを見ながらこう言った。

「おっ、キャンプ飯特集かぁ。しかも東町さんの飯、美味しそうじゃん!」

「うん、いつ見ても楽しそうだし、特に焚き火がいいなぁって」

「ん? もしかして、空もしてみたい? 」

私は、自分の顔が無表情のままだけどコクコクと縦に頷いた。

どうやら彼は、私の頷き具合やリズムの速さだけでどういう気持ちなのかが分かるらしい。

「だったら、まずは家の横の庭でやってみようか?」

「え? 家の庭?」 

「あぁ。折角こういう敷地があるんだから。ほら、いわゆる有効活用ってヤツ」

そんな会話を交わし、私のやってみたい想いが通じたのか趣味として始めることにした。

今となって少しずつだけど、ようやく一人でも出来るようになった。

(一人でやってみようと思えば、出来るのだなぁ……)

その一歩を踏み出すことが一番大事なのかもしれない。

私も勇気を出して、いざやってみたら楽しいと思えるようになったのだから。

ご飯を食べ終わる頃と同時に、恭弥さんから今日を締めくくりのメッセージが届いた。

恭弥さん「そろそろ、作業に戻るから焚火の始末だけ気をつけて。おやすみ、また明日」

(……夜遅くまで、いつもお疲れ様)

ほんの少しの笑みを浮かべ、彼へのコメントの返信を打つ。

私「うん、わかった。火が落ち着いてきたら片付けに入るね。おやすみなさい」

ホッとひと息をついた。

普段の恭弥さんは、色んな地方へ出張が多く忙しくしている日々だ。

家に帰ってこれるのは二人の大事な記念日やイベントを含め、まとめて休暇を取れた日のみ。

一人では心細く、ちょっと寂しい時もある。

けど、こうして毎日LIMEのメッセージをくれるだけでも安心はしている。

(次、いつ会えるのかな……?)

そうこうして、ゆっくりとご飯を食べている間に夜の暗さが深くなる。

そろそろ、キャンプ道具を片付けをする時間が来た。

余ったご飯は、今日の夜食としておにぎりにしようと思う。

(あっという間だけど、私も残っている仕事をしないとだし……また次回だ)

締切日の近い原稿が残っているし、時は待ってくれない。

非日常なひと時からまた日常へと戻る。

またその時までに楽しみを取っておこう。

(今日のごはん、美味しかった……。ふぅ、満足できた!)

——今日も美味しいごはん、ご馳走様でした。

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