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第四話 ブレックファースト・ガーデンキャンプ(その三)

last update Tanggal publikasi: 2025-05-26 10:32:19

「今日は超良い天気だし、こういう時の朝食なんて最高だな」

恭弥さんはそう言いながら腕を上に伸ばした後、よいしょっとチェアから立ち上がった。

「……?」

「そろそろご飯を作ろう、お腹空いただろ?」

(あ、そうだった……! まだ食べてなかった……)

彼の淹れたコーヒーをじっくり堪能したくて、つい食べることを忘れるところだった。

それくらい、彼とのコーヒータイムが落ち着く。

「うん、すいた……」

「てか、ごはんのこと……忘れそうだっただろ? ちゃんと俺が作るから」

やっぱりお見通しだった。

今日の朝食は、彼が振る舞ってくれる。

自分以外の作る手料理を味わえるのが、久しぶりだから楽しみだ。

(焚き火台の火を用意してからごはんかな?)

そう思っていたらもう既に火がついている。

オマケに火力の調整は出来上がっていた、網も用意してあった。

あとは焼くのみだから、スキレットを彼に渡す。

(恭弥さん……やる気満々だ)

まずはベーコンから焼いていく。

厚切りでも、あらかじめ四等分に切られている。

それをそのままスキレットの中へ……。

(はぁぁ……!)

ベーコンの脂とお肉の表面から、ジューっとじっくり熱が伝わっていく。

その音と同時にリズムを刻むようなパチパチした音が、食欲を掻き立ててくれる。

私はそれを見て思わず、ヨダレが垂れそうにもなる。

表と裏の焼き目が付いたら、ベーコンを二枚ずつそれぞれのお皿に移し盛り付けていた。

(ベーコンから出た固体の脂が液体の油に変わって旨味も流れ出ている……)

きっとそれを利用して、目玉焼きを作るのだろう。

今度は足りない油分をオリーブオイルで少し追加で加える。

二人分だから、一人一つ食べる計算で卵を二つ割り入れた。

白身のジワッと透明から白色へ焼けていく音、黄身がぷっくりと膨らみが出ている。

これが、卵の新鮮さを表している証拠なんだろう。

——ジューッ……。

水を入れたら、取手つきの蓋をして蒸し焼きにする。

私はちょっと前にキッチンで作ったサラダとテーブルロールをセッティングする。

もちろん、パンの相方であるバターやジャムも忘れていない。

(パンは取りやすい位置にして、サラダは……)

サラダにはそれぞれ好みのドレッシングをあらかじめ掛かっている。

彼の分は、素材を味わいたい要望でハーブソルトにオリーブオイルとシンプルな組み合わせ。

一方、私はサッパリとした黒酢玉ねぎのドレッシングを選んだ。

その傍ら、彼の横顔をチラッと見る。

(……すごい真剣な顔だ)

焚き火の火を見ながら、蓋を開けるタイミングを狙って焼いているのだろう。

しばらくすると目玉焼きが出来上がった。

ひっついている白身を半分に取り分け、ベーコンと同じ皿に添えて盛り付けている。

少し奥の方にオレンジが入る黄身の表面のツヤと鮮やかな白身が美味しそうだ。

「よぉし、出来たぁ! んじゃ、頂こうか」

「うん」

恭弥さんは満面の笑みで誘う。

「「いただきます」」

手を合わせ、久しぶりに二人で朝ごはんをいただく。

まずはサラダを少し食べ、熱々の内に厚切りベーコンを……。

(あつっ! ふぅー……。んっ! はわぁ……肉汁のジューシーさが堪らない)

私は普段から薄切りのものしか使わなかったから、新鮮な感じだった。

薄切りでもカリカリ感が出たりと良さがある。

けど厚切りにも良さがあるんだなぁと、今回の料理で学んだ。

「んー! 美味い! いい感じの焼き加減に出来てる。

恭弥さんもベーコンの美味しさに、笑みが零れている。

「空、美味しい?」

「うん、美味ひい」

彼に聞かれ私は肉の熱気と戦いつつ、頬張りながらコクコクと頷く。

そして目玉焼きの黄身を割ってみると、トロリとちょうどいい加減の半熟が出ている。

白身の外の周りの少しパリッとした焼き跡もなかなか良い。

時にテーブルロールのパンをちぎり、バターやジャムをつけて食べる。

(なんだろう……彼といる時の空間も幸せだなぁ……)

こうやって人と食事すること自体も久しぶりだからなのか、ホッとしている自分。

それと同時に少し口角がニヤッと、ニヤけそうな笑みをしている自分もいた。

「ん? 空、どうした?」

恭弥さんは私の顔を少しマジマジと見ている。

「な、なんでもない……ことではない、けど……」

「けど、なぁに?」

「というか、こういう時間が久しぶりすぎて……」

私は、少し恥ずかしながら言った。

恭弥さんは、ほぉっとした少し驚きな顔をした。

多少の照れもありつつ、すぐに微笑みを返す。

「そうだな……。さっき、コーヒーの時も言ったけどさ」

「うん?」

「夫婦二人でご飯が食べられる時間って、本来なら当たり前の風景なんかもしれないけどさ。俺らには仕事の面でどうしても機会が少ないから、そう感じるのかもね」

少し寂しくもあるような返事だけど、彼は切り返しにこうも答えた。

「まぁでも……回数が少ない分だからこそ、二人で色んな時を過ごすことの有難味を知ることも出来るんじゃないんかな」

「うん、そうかもしれないね」

私はそっと彼の意見に肯定する。

「けど、俺は……」

「?」

「空が心の中から喜んでいるところを見ているだけでも、幸せだけどな」

恭弥さんは、満面の笑みを交わしながら言った。

「うん」

(私もそう言ってくれたり、あなたの傍にいてくれるだけでも幸せだよ……)

口にするのは恥ずかしくてできないけれど、私の心の中がそう言っている。

 ◇ ◆ ◇

食べ終えた二人は、二度目のコーヒータイムの時間を過ごしながら、今後、短いながらの三日間の休日の予定を話し合った。

「さて、今回の三連休は、何しようか?」

「うん、どこへ行こうかなぁ?」

「あっ、そうだ! 最終日なんだけどさ」

私と恭弥さんは、ワクワクしながら予定を考えていた。

外へお出掛けするにも悩むかなぁと思ったら、意外とそうでもなかった。

最終日は私の分の食糧などのお買い物も含めて、彼があるお店に用事があるから一緒に行こうと言う。

本当は一週間の予定だった。

けれど、どうやら仕事の都合上で三日間が限度だったみたい。

(短い期間になっちゃったけど、せっかく彼と過ごすのなら楽しく有意義のあるお休みの日にしたい……)

私は心の中でそう思えた。

今日も温かなコーヒーと朝ごはん、ごちそうさまでした。

——そして、温かみのある幸せな時間と空間にありがとう。

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