——♪~いつか~君と~虹の~架け橋へ……。
今日は恭弥さんと一緒に、ドライブとお買い物デート。
彼は、所有している漆黒色で施した四輪駆動の車で運転している。
目的地はホームセンターやアウトドアショップなど、主に庭で使うキャンプ用品のものを買い物へ出掛ける。
——それは遡ること、先日の夜。
「俺の寄りたいところ以外、最終日にお買い物する場所はどこにする?」
家に帰り庭でキャンプが終わった後、この連休で何をするか話し合っていた。
恭弥さんはソファーでキャンプ雑誌を読みながら、ドライブの行き先を聞いてくる。
「ん~……そうだねぇ……」
私はスマートフォンを使って検索サイトで調べている。
だが……。
(行きたいところ……うーん、どこだろ……?)
いざ、ここへ行きたいと言える場所が思いつかない。
むしろ貴重な連休だからと、真剣に考え込んでしまった。
「固く考え過ぎ」
彼にとって、私のいつもの悪い癖なんだろう。
そんな姿を見かねちゃったのか、苦笑いする彼はいつもこう言う。
「でも……」
「空が行きたい好きな場所でいいんだよ。ここじゃないとダメとかないんだから」
彼がそう言っても、やっぱり考えちゃう。
仕事もこの連休のために、早めに済ませたんだから。
オマケに忙しかった分、外でお買い物をすることが食料品を買うこと以外していない。
けれど、結局のところ……。
「じゃあ……」
「ん? 決まった?」
「恭弥さんと同じ……アウトドアショップで……」
「うん、わかった」
私は思い切ってそう答える。
他に行きたい場所が思い当たらない結果だった。
ただどちらかといえば、彼と一緒に見に行きたい意味が正しいと思う。
そのアウトドアの専門店が入っているショッピングモールで回るのが良さそうだと判断した。
——そんな感じで決まり、現在に至る。
(そういえば、ドライブ自体も久しぶりだなぁ……。二人でお買い物もだけど)
心の中で思いつつ、恭弥さんをチラッと横見る。
運転している彼は、いつも通り愛用のサングラスを着用するスタイル。
音楽も同じく、彼の好きな邦楽や洋楽をスマホを繋いで曲を流している。
(この曲、やっぱりいい曲……。いつも私の好みに合うような曲を持ってきてくれる)
ジャンルの幅が広いから、詳しくいうと大半はロックかメタル辺り。
メタルでも特にシンフォニックものが多いと思う。
ただ思うのは、彼の選曲はいつもシチュエーションに合っているなぁと思う。
(今度は、新曲かな……?)
私の聞いていない曲が増えている。
でも、ドライブなら運転しやすさなどのために選曲してるという感じだ。
帰り道も行きとはまた違う雰囲気のものを選んで合わせている。
まるで、お店のBGMやDJみたいな選び方だ。
そういうところも私は、恭弥さんのことを尊敬している。
(あぁ、もう……。久しぶりすぎてウズウズしちゃっている~……)
そんな自分が、心の中で緊張と入り混じってムズムズ騒いでいる。
「……ら、空?」
「ひ、ひゃい!」
突然、彼からの呼び掛けに思わず驚いてしまった。
「ん? どうした、そんなに驚くこと?」
「な、なんでもないよ……。きょ、恭弥さんこそ……何かあったの?」
「いや……暑いからさ、途中に店あるからアイスコーヒーでも買っていこうと思うんだけど、一緒に買う?」
途中にあるといっても、そこまで行く時間はそう掛からない場所。
むしろ、道沿いにあるすぐ近くにあった。
「う、うん。そうだね」
私も、喉が渇いている。
緊張もあるけれど、単純に暑さから解放されたい。
途中にあるコーヒーショップへ寄り道して辿り着くことにした。
「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」
ドライブスルーでアナウンスが掛かった。
恭弥さんは自分の飲むブラックコーヒーと私のカフェラテを注文する。
共にアイスを選んだ。
「はい、どうぞ」
「ありがと」
彼から飲み物を受け取った後、また目的地へドライブを再開した。
(ん~! 冷たっ!)
プラスチックカップの中に入っている氷の冷たさが手に伝っている。
今日は五分袖の服でも過ごしやすいぐらいの気候である。
夏日といっても、真夏みたいに蒸し暑いほどではない。
それでも冷たいものは欲しくなるものだ。
「美味しい?」
私は、彼にコーヒーの味を聞いてみた。
ブラックが飲めない私にとって、美味しさはわからない。
けれど、店によってコーヒーの味は違うのだろう。
「まぁ、いつも通りの味だね」
「そっかぁ」
イコール、彼のその答えは『美味しい』の意味でもある。
ドライブしながら、こうして私達はたまにたわいない話も交わしていた。
――ドライブを再開して十数分後。
「ねぇ、恭弥さん」
「ん? 何?」
今度は、私から恭弥さんに今日のお買い物について聞いてみることにする。
「今日は、何を買う予定とかあるの?」
「俺? 俺は買うとかいうよりか……そうだなぁ……」
(なんだろう……?)
「とりあえず店で色々見てからかな? 何が流行っているのかとか」
「そうなんだ」
彼はきっと、トレンドものなど情報を収集したいのかもしれない。
私も職業上、コラムを書いたりするから気持ちは分かる。
「空は、何か欲しいものある?」
「うーん……欲しいもの……。夏用に何か、かな?」
「空も、見てから判断って感じか」
「うん、そんな感じ」
私も彼と同じく、現物を見てから判断という考えだ。
「せっかくドライブもお買い物も久しぶりだからさ、思う存分楽しもう」
「そうだね」
彼の言う通り、緊張も含めてもっとこの日を楽しもうと思う。
車の中で流れている音楽も、私達を楽しませてくれるみたいだ。
二人のノリに合わせているようにも感じる。
——楽しいデートへの道のりをドライブで加速するかのように……。
——タイマーの待ち時間、彼は私たちの出会いを語ろうと提案してくれた。「俺らって、初めて会ったのは何年前だっけ?」「確か……」そう、あれは出版社の創立記念パーティーのこと。「乾杯!」私は当時、編集社員としてまだ一年か二年目くらいの頃だった。重要な事情がない限り、全社員はそのパーティーへ出席していた。(うぅ……。コミュ障の私にとって雪絵さんがいないと心細いなぁ)しかし、当の本人は別の事情あってどうしても出られないという理由で欠席。彼女以外の仲の良い人は一人も居なくて困っていた。乾杯の挨拶など進行通りに進めた後、歓談会へとフリータイムになった。(どうしよう……。私から話しかけるのも……怖い)その時のことだった。一人の男性から、私が一人でいるのを見かけて声を掛けてきた。「ねぇ。君、一人?」「は、はい……」黒のスーツ姿に紅色のネクタイで締めていて、まるでバーテンダーの佇まい。そして彼の手には、ネックホルダー付きの立派な一眼レフのカメラも持っていた。彼の顔から、優しそうな目の眼差しと柔らかい微笑みを見せる。それが、後の夫・恭弥さんだった。当時の彼は、パーティーの出席者兼写真撮影の担当として呼ばれていた。私はふと、その当時のことで一つ疑問に思っていた。「そういえば、あの時、なんで声を掛けてくれたの?」「ん? あぁ、一人だったからのもあるけど……」「けど?」恭弥さんの顔を少し覗き込むと、なぜか少し頬が赤い。「
——次の日の午後。いよいよパーティーの当日がやってきた。恭弥さんは外の収納庫で、キャンプの道具を取り出してメッシュタープなど設営に勤しんでいる。私はキッチンでの作業として、二品のメニューを庭で料理できるように材料の下準備をする。(恭弥さんの料理は楽しみ! だけど、私の作る料理は……大丈夫かな?)緊張も相まって手が少し震えるけど、ひとまず調理から始めなきゃだ。まずは、ローストチキンの下ごしらえから。(えーと、鶏肉に使う調味料はコレだけかな?)……というのもチキンをスパイスやオリーブオイルにつけて、ある程度寝かさないといけないからだ。私は手袋をはめ、鶏肉をフォークで何箇所か突いてからポリ袋の中に入れる。その中にオリーブオイルやハーブソルト、胡椒、ローズマリーを加えて揉みこんでしばらく置いておく。次は、野菜を切る作業に入る。(昨日買った野菜だけど、皮も食べられる新じゃがを選んだんだね)新じゃがをしっかり水で土落としをして、食べられる一口ぐらいのサイズに切っていった。人参はジャガイモよりも少し小さく乱切りにし、ブロッコリーは軸から切り落として小分けに切っていった。野菜も、ジップ付きの袋にまとめて入れた。(ローストチキンに使う食材の準備は完了。次は、パエリアの下ごしらえ……)量の少ないものを作るのは、意外と容易ではなかったりする。玉ねぎをみじん切りにしておいてから、パプリカを切る。(パプリカは四分の一以下ぐらいしか使わないから残りは冷凍しておこう)
——ある記念日の前日。私と恭弥さんは、今スーパーで食材を買いに行っている。なぜなら、夫婦にとって重要なイベントの準備をしている最中だ。それは……次の日に行う私達の結婚記念日。いつもならレストランで予約を取ったりしている。けれど、今年はちょっとした事情があった。 ◇ ◆ ◇ ——遡ることある日、私が晩御飯を食べている時間。この日のおかずは、人参やジャガイモの入った煮込みハンバーグ。リビングでテレビを見ながら、のんびりと頬張っていた。その最中にピコンっと、スマホから通知音が鳴った。(あっ、恭弥さんからだ)恭弥さん「空、今LIMEしても大丈夫?」私「うん、大丈夫だけど……どうしたの?」何となくだけど、彼がちょっと焦っているような気がした。そして、次のメッセージを見て腑に落ちた。恭弥さん「いつも予約しているレストランなんだけど、今年は臨時休業で予約取れなくなったんだ」私「え? そうなの?」恭弥さん「なんか、オーナーシェフが言うにはお店の設備点検らしい」恭弥さんが予約をしようとしているレストラン。その店は仕事関係も含め、私達が懇意しているイタリア料理のカジュアルレストランだ。夫婦で営む一軒家の小さなお店を構え、コース料理を売りにしている。味は一級品なのに、値段が手の届く範囲のリーズナブル。なんでもオーナーシェフは、下積み時代にホテルや有名料理店で修行を積んでいたらしい。オーナーの奥様も、パティシエのスタッフとして店を手伝っている優しい方である
——カシャッ、タンッ、タンタン。(うん、この写真がいいからこれにして……送信っと!)私はスマートフォンのカメラで、出来上がったカレーライスの写真を数枚撮る。写りのいいいものを選択して、恭弥さんにLIMEで送った。もちろん、メッセージも添えて……。(あとは返事が来るまで待つ……その間冷めないうちに食べてしまおう)彼からの返信を待ちながら、カレーライスを食べることにする。「いただきます」手を合わせて食事の挨拶をした後、カレーの皿に添えた木製のスプーンを手に取る。カレーとご飯の狭間の部分をひと口分すくって口へ運ぶ。(おぉ! ガラムマサラをかけたことで、ピリッとしたスパイシーさが増してる)でもそんなに嫌な辛さはなく、大人なら誰でも食べられる辛味が良い。それも加え奥にある甘みや酸味、旨味といったコクのハーモニーが上手く調和されている。(くぅぅ~、やっぱりカレーは美味しいから最高!)一口食べるごとに、どんどん食欲が増していく。時折、カレーに添えた甘めの福神漬けで食感を変えるととまらない。これを食べて、今年も夏バテから乗り越えられたらいいなぁと思っている。——カレーライスを半分くらい食べた頃……。ピコンッ!スマホからメッセージの通知がきた。(あっ、恭弥さんからだ! どんな返事が来たかなぁ?) 
——扉を開け、外へ出てみる……。(うっ! 眩しい……!)青空の天上から、太陽が燦々と眩しく照らしている。梅雨の期間、あまり外へ出ていなかったから尚更だ。目や肌へ日差しの刺激がより感じる。(今日はそんなにジメジメした湿気が少ないけど、これから先はもっと湿っぽくて暑くなるだろうなぁ)しかし、ここでへたれていたらダメと気合いを入れ直す。もちろん念の為、水分補給用のスポーツドリンクも用意している。この時期でも、やはり熱中症には気をつけたいことだ。(よし、行きますかぁ!)家の外の右端にある収納庫へ向かう。メッシュタープやローチェア、焚き火台などを出していつものように作業を開始する。メッシュタープを立て風に飛ばされないように、紐を引っ掛けられるフック付きレンガ調の重しもつけて固定していく。これからの夏は、日差しが強い。側面のうちの二面分だけメッシュの上から日光避けのシートも一緒に取り付けてある。(今日は出入りする面の遮光シート一枚を、屋根にして立てよう)その後、テーブルとローチェアを設置し、テーブルの近くにはトレー付きの焚き火台を置いた。今回も切炭をメインに使用するけど、そのためには着火の素が必要だ。下に乾かして傘が開いた松ぼっくりと細かい枝木、ナタで捌いた細めの木を山の形になる様に組む。(土台は出来たから、先にカレーの材料を持ってきた方が良さそう)キッチンからカレーのルーやカット済みの野菜やお肉、食器などをひとまとめておく。暑さ対策として、食材は保冷剤の入った小さいクーラーボックスに入
——七月初旬のある日の午後。(ぬぅ~暑い……。暑いよう……)季節は、もう夏を迎えている。薄手の長袖から半袖への衣替えも兼ねて、そろそろ部屋の中へ扇風機を設置しようか迷っていた。最近、この時期の昼間は少しずつ暑くなってきた。天気予報では、夏日に近い気温を示す日中も増えている。けれど山奥の気候は平地と違い、朝と夜はまだ涼しい。(長袖の服もそろそろおしまいかなと思ったら、逆戻りもするしどっちを着ればいいのだろう)こんな心境で毎日迷うから困る。特に雨が降ると冷えて肌寒くなるくらい、昼との気温の差が激しい。ただこれから訪れるであろう厳しい暑さに耐えられるのだろうか?そういわれたら、この先は絶対バテるに違いない。身体が、なかなか外の気温に順応してくれないのである。(暑さを凌ぎれるスタミナが欲しくなるし、そろそろつけたいなぁ……)今のままだと身体がドロドロに溶けてしまうくらい、私は夏バテしやすい体質だから尚更だ。夏を乗り切るために、簡単にスタミナのつくスパイシーなものが食べたい。(うーん、夏といえば……。あっ、それに相応しいメニューがあるじゃないか!)そうだと一人で相槌を打ちながら閃いた。(夏……スタミナがガッツリつくスパイシーなもの……カレーだ!)キャンプ飯の定番メニューの一つだけど、まだ作ったことがない。先週の話には触れていなかったものだが……。&