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第82話

Author: Raisaa
ドクン。

ディリアンは目を開け、セレーネの腹部に何らかの違和感を覚えた瞬間、反射的に腕を強張らせた。彼は眉をひそめた。理由のない不安が、突如として彼を襲ったのだ。

彼はあまりにも鋭敏すぎた。セレーネのどんな些細な変化でさえ、彼を苛立たせる。まるで彼の世界は、常に同じ軸の上で安定して回っていなければならないかのように。しかし今回ばかりは、何かがその軸を揺るがしていた。

……

セレーネが小さく寝返りを打ち、ディリアンの抱擁が緩んだのを感じた。彼女は振り返った。その顔は疲労していたが、安らかだった。

昨夜、二人はただ眠りについただけで、何もしていなかったのだ。ディリアンは無言でセレーネを見つめ、突然、妻の体から漂う薔薇の香りがひどく心を落ち着かせるものであることに気がついた。

まるで、その白い肌の下にあるすべての傷跡や内なる戦いを、優しく覆い隠しているかのように。

無意識のうちに、ディリアンは顔を寄せ、セレーネの唇に柔らかくキスをした。セレーネの瞳が開き、まだ眠気を残したまま、目尻に乾いた涙の痕を浮かべてディリアンを見つめた。

「……まだ朝です」

セレーネは不満げに呟き、邪
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