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第912話

Autor: 魚ちゃん
無駄に自信過剰な男とか、やたら上から目線で語りたがる男とか、世の中には本当にいろんなタイプの人間がいるって噂には聞いていた。でも、自分には一生縁がない世界だろうと勝手に思っていたのだ。

大間違いだった。現実は、想像の斜め上をいっていた。

ある男性は知人のお子さんで、実家も手広く商売をやっているという。会った当初の挨拶こそ紳士的だったのに、席についてしばらくすると、優香の服装にあれこれと文句をつけ始めたのだ。

――なんの落ち度があるというのか。その日、優香が着ていたのは、ただのシンプルなタイトめのニットワンピースだった。体のラインが綺麗に見えるだけで、肌なんてどこも露出していない。

露出が多い?

首の鎖骨が少し見えてるだけで?

「そういう体の線が出る服は、家の中だけにしてほしいな。僕の妻になる人が外に着ていくのは、ちょっとどうかと思う」と男はしたり顔で言った。

優香はとっさに、完璧な営業用の笑顔を貼り付けた。いくら腹が立っても、礼儀は礼儀だ。「私には、自分で着る服を選ぶ自由があると思いますけど」

「まあ、今どきの若い子はみんなそういうことを言うよね。でも結婚したら、やっぱ
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    無駄に自信過剰な男とか、やたら上から目線で語りたがる男とか、世の中には本当にいろんなタイプの人間がいるって噂には聞いていた。でも、自分には一生縁がない世界だろうと勝手に思っていたのだ。大間違いだった。現実は、想像の斜め上をいっていた。ある男性は知人のお子さんで、実家も手広く商売をやっているという。会った当初の挨拶こそ紳士的だったのに、席についてしばらくすると、優香の服装にあれこれと文句をつけ始めたのだ。――なんの落ち度があるというのか。その日、優香が着ていたのは、ただのシンプルなタイトめのニットワンピースだった。体のラインが綺麗に見えるだけで、肌なんてどこも露出していない。露出が多い?首の鎖骨が少し見えてるだけで?「そういう体の線が出る服は、家の中だけにしてほしいな。僕の妻になる人が外に着ていくのは、ちょっとどうかと思う」と男はしたり顔で言った。優香はとっさに、完璧な営業用の笑顔を貼り付けた。いくら腹が立っても、礼儀は礼儀だ。「私には、自分で着る服を選ぶ自由があると思いますけど」「まあ、今どきの若い子はみんなそういうことを言うよね。でも結婚したら、やっぱり妻としての身だしなみには気を使ってほしい。うちは商売をしてるけど、祖父母は厳格な学者で、世間体をすごく大事にする家風なんだ」「あら」優香はにっこりと笑って言った。「じゃあ、私には到底分不相応ですね」男の顔色がさっと変わった。「いや、そういう意味じゃ……」優香はバッグを手に取り、すでに席を立ち上がっていた。どういう神経してるのよ、まったく。次の相手も、思い出すだけでため息が出るような、どうしようもない男だった。もう誰かに愚痴る気力すら湧かなかった。そんなことを何度か繰り返すうちに、お見合い自体がすっかり楽しくなくなっていた。でも段取りは既に何件も組んであって、無碍に断るわけにもいかない。仲介人には、せめて少しスケジュールに間隔を空けてほしいとはお願いしておいたけれど。こんなに精神的に疲れるなら、普通に会社で働いている方がよっぽどマシだ。その点、今日の相手は比較的まともな部類に入った。特別目を引くようなイケメンというわけでもないが、容姿や身長、雰囲気といったものは、どれも平均よりやや上といったところだ。そもそも、家柄の格で相手を探そうとすると、河野家に

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