Masuk病弱ゆえ、十三歳の誕生日を前に、早世してしまった少年が、異世界で、元気あふれる猫耳少女、「アユム・トマルナー」として生まれ変わった! 夢は、長生きすること! 元気の塊な健康オタク少女と化し、友人たちと、ほのぼのとした、でもときに切ない日常を繰り広げます!
Lihat lebih banyakぱちっと、目が覚める。
身を起こし、う~んと伸び。今日も体の調子がいい!
がらりと窓を開けて、「おはよー! 今日も元気をありがとう!」と、誰に言うでもなく叫ぶ。まだ、外は完全に明るくなっていないけど、スズメたちも元気だ!
ジャージへの着替えとトイレを済ませたら、洗顔。
鏡に映っているのは、金髪ショートヘアの美少女。ただし、猫耳。いや、
寝癖を治すついでに、猫のしっぽも、軽くブラッシング。ちなみにこれも、
顔を洗ったら、台所へ行き、ホワイトボードに赤マジックで「アユム ジョギングに行ってきます!」と書き残し、家を出る。
新聞は……まだ来てないか。少し待っていよう。
少しすると、向こう側からスクーターが近づいてくる。
「おっはよー! 今日も早いねえ、アユムちゃん」
猫耳ヘルメットな運転手のお姉さんが、ボクの前で停車し、新聞を一部手渡してくる。
「おはようございます! お姉さんもお疲れ様です!」
「ありがと。じゃ、次のお宅行くから」
そう言って、彼女は再発進。遠ざかっていく。
さーて、新聞を家に入れたら、ボクもご近所流そうかな!
◆ ◆ ◆ 「ただいまー!」心地よい疲れとともに、帰宅。
台所を覗くと、お母さんが料理を作っていて、おじいちゃんが新聞を読んで、おばあちゃんはテレビを見てる。三人とも、猫耳に猫しっぽだ。
「おはよー!」
元気に挨拶すると、それぞれから「おはよう」と返事が帰ってくる。
「お父さんはお店かな? ハーちゃんは……今日もねぼすけか」
うんうんと、一人
「そういうわけだから、シャワーの前に起こしてきてくれる?」
お母さんにそう頼まれ、「ラジャー!」と、二階に向かうのでした。
◆ ◆ ◆ ボクの部屋の隣、「ハーシル」というかけ札のドアをノック。……返事なーし。「入るよー」
中に入ると、妹のハーちゃんが、すごい寝相で寝息を立てていました。
頭が、枕と逆だし。どこをどうやったら、そーなるの?
「起きてくっださーい。あっさでっすよ~!」
シャーッとカーテンを開けると、「うにゃ~、まぶし~!」と、可愛い妹が苦情を言う。
「あと、
「ごはん、できちゃうよ? 冷めたら美味しくないよー。さあ、起きる起きる!」
がばっと布団を剥がすと、「うにゃ~!」と、濁音が混じったような声で悲鳴を上げる。
「くはあ~。おはよー……」
大あくびをしながら、挨拶するハーちゃん。
「はーい、おはよー。じゃ、ちゃんと起こしたから、ボクはシャワー浴びてくるねー」
そう言って、彼女の部屋をあとにするのでした。
◆ ◆ ◆ ふー。ロードワーク後のシャワーって、なんでこんなに気持ちいいんだろう。ご飯がもうすぐできるから、あんまり悠長に出来ないので、軽く汗を流すだけなのが残念だけど。
それにしても、自分の体を見て、改めて思う。
「ほんとに、女の子なんだなあ」って。
ボクの前世は、こことは違う世界で、人間の耳もこんな感じではなく、丸っこいのが顔の横についていた。しっぽもなし。
そして、ボクは男の子だった。
ボクにとっては、前世はただの記憶の一部っていうのかな。今生で女の子であることには、とくに違和感がないんだけど、幼い頃、前世の記憶がなにかの拍子で戻ったときだけは、大変パニックを起こしたらしい。
それ以来、転生したと公言しているのだけれど、残念ながら、唯一の例外を除き、家族も含めて首を傾げられてしまう始末。
こんなボクだけど、前世ではとても体が弱く、たいそう早死にしてしまったようだ。
たしか、覚えている限りだと、十三歳の誕生日を迎える直前だったはず。
学校も、中学まではなんとか上がったけれど、ほとんど入院生活だった。
だから、ボクの今生の目標は、ズバリ長生き! とりあえず、念願の十三歳の誕生日を、元気に迎えたい!
前世では、よくお父さんとお母さんが、「丈夫に産んであげられなくてごめんね」って泣いて謝っていたけれど、誰も悪くないよ。ただ、神様がイジワルなだけだったんだ。
前世のお父さん、お母さん。そして、お姉ちゃん。ボクこそ、長生きできなくてごめんね。みんな、向こうで元気に暮らせているのかな。ボクはこっちでは、とても元気だよ!
だから、あまり自分たちを責めないでね。
「ただいまー!」 バーシに勇気づけられて、元気に帰宅の言葉!「おお、アユム。おかえり」「おかえり、アユムちゃん」「おかえりー」 おじいちゃん、おばあちゃんとハーちゃんが、リビングから声をかけてくれた。三人で、JANGOをやっていたらしい。「アユム。ちょっと、座ってくれ」「うん」 ハーちゃんに詰めてもらって、隣に腰掛ける。「オレたち、アユムとハーちゃんが寝た後、二回話し合った。で、バーシムレちゃんとのこと、こう考えることにした」 ごくり。つばを飲み込む。「オレな、マエへさんとの交際、彼女のお義父さんに、何度も断られてな。何度も通って、ひたすら誠意を見せた。最後には赦しをもらったけど、一年ぐらいかかったっけな。でな、アユムにも、こんな苦労させるわけにはいかねえなって思った」「あのときは、ほんと大変でしたからね」「だからアユム。堂々と彼女と付き合いなさい。オレらからは以上だ。アルクたちも、仕事が終わったら、話すことがあるそうだ」 こほんと、咳き込むおじいちゃん。「ありがとう!」「席を立ち、ぐるっとテーブルを回り込んで、おじいちゃんたちに抱きつく。「おっぷ。ふふ。孫を困らせちゃいけねえよな」 しばらくそうしていると、背後から声がかかる。「おねーちゃん。私からも、話がある」「うん」 そう言われ、再度ハーちゃんの隣に腰掛ける。「私、フーちゃんと『やけジュース』した。フーちゃんも、ショック受けててさ。ダブル失恋だよ。でも、フーちゃんとこれ以上気まずくならなくなって、良かったのかな。とにかく、いじょっ!」 ため息一つ吐く、ハーちゃん。「ありがとう。二人とも。ごめんね。そして、ありがとう。今度、フーちゃんに直接言うね」「うん」 ずー……と、ジュースをストローで吸い上げる、マイシスター。「絶っっっ対、幸せになってよね! 私たち、同時に振ったんだからさ!」「約束する」 互いに、真剣に見つめ合う。そして、ハーちゃんは、「ん」とだけ言った。「アルクたちが、仕事終わってから、飯にしよう。今日は、特別に七時で店じまいだ」「お父さんたちに、お礼言わなきゃね」「かわいい娘の誕生日だものよ。いつもみたいに九時じゃ、ハーちゃんが寝ちまわあ」 とりあえず、お風呂に入っている時間はありそうなので、汗を流して、部屋着に着替える。 お風呂上がり
「今日はありがとう、みんな!」 ククの家で、再びお誕生会。その主役は、ボク! ついに、ついについに! 夢にまで見た、十三歳になったのです! 今回も紙の輪飾りがそなえ付けられ、テーブルには、でん! と今度はチョコクリームのショートケーキ!「すごいねー、クク! これ、一人で作ったの? 学校あったのに、大変だったでしょ?」「まあ、ずいぶん早起きしたけど、大親友のためだもんよ! 頑張ったぜ!」「ほんと、ありがとう!」 十三本のろうそくの、なんと感動的なことか!「じゃあ、いくよ! ふーっ……!」 火がすべて消える。「アユム、誕生日おめでとう!!」 みんなから、拍手をもらう。ああ、二度の人生で、最良の日だ!「ねえ。ボクのために、歌ってほしい歌があるんだ。前世の歌だから、一回ボクが歌うね」 『ハッピーバーデー・トゥー・ユー』を歌う。前世の誕生日では、おなじみだった歌。前世でも、十三回聴きたかった歌。ボクはこの世界で、やっと十三回目のこの歌を、大切な友達たちから、耳にするんだ。「お誕生日おめでとうって、そのまんまな歌なんだけど。どうかな? 歌えそう?」 前世の言葉だから、ここ、ラドネスブルグの言葉ではない。「簡単な歌詞だから、意味はわかんなくてもいけると思う」 バーシの言葉に、凸凹カップルも頷く。「じゃあ、お願い」 みんなが、『ハッピーバースデー・トゥー・ユー』を歌ってくれる。ちょっとたどたどしいけど、嬉しい!「ハッピーバースデー、トゥーユー……」 再度、三人から拍手。「ありがとう! ほんとにありがとう、みんな!」 ぺこりとお辞儀。ちょっと、涙出ちゃった。「じゃ、ケーキ切り分けていいかな?」「おねがい」 ククの手で、ケーキが、みんなのお皿に載せられる。「いただきます!」 ぱくっ……。んん! ククのお母さんのに、負けず劣らずおいしい!「おいしい! おいしいよ、クク!」「お褒めに預かり、光栄だぜ」「ほんと、いいお嫁さんになれるよ~。シャロン、やったね!」 サムズアップ。「へへ~。結婚したら、姉さんのおいしいごはん、食べ放題っす~」「ばっ……おめー、照れるじゃねぇか……」 もじもじするクク。ふふ。 ケーキもおいしく食べ終わり、プレゼントお渡し会。「色々悩んだ末に、三人でお金出しあって買ったんだけど……」
「はァッ!?」 お昼休み、昨日家族に、バーシとの関係を告白したことを、当の本人と凸凹カップルに告げると、驚愕とか呆れとか、何か色々混じってそうな、変な大声が三人から上がる。「しーっ。クラスのみんなには、内緒だよ」「って、アユムねえ……私に、一言相談しなさいよ!」「それは、ほんとごめん。祝福してもらえると思ったら、なんか真逆の反応でさ」 右手で顔を覆い、首を振るバーシ。「これ、私も家族に、ハッキリ言わなきゃいけない流れじゃん……」「ほんと、ごめんて」 恋人に、深く頭を下げる。ボク、さっそく尻に敷かれてるね。「しっかし、ダイタンっすねえ~。パパとママに姉さんとのこと言ったら、どうなるやら、想像もつかないっす」「だなー。うちらはまだ、内緒にしとこうな」 肩をすくめる二人。「まあ、ボクから言うべき話は以上だけど、今日、一番大事なユーフラジーの出来栄えは?」「ああ。こんな感じにしてみたんだが……」 ククが、巾着袋から、ぼろい人形を取り出す。「え! 新品じゃないの?」「新品も新品だぜ。ただ、火事から十四年だろ? で、その前もアイちゃんが愛用しててさ。だから、わざとくたびれた感じに作ったんだ」 はー……。器用なもんだ。「シャロンは、いいお嫁さんゲットしたねえ」「ちょ、恥ずかしいこと言わないでほしいっす!」「お、おう! あたしまでその……照れるじゃねえか……」 もじもじする二人。「ちょっと~。私がいいお嫁さんに、なれないみたいじゃない」「そうは言ってないよ~」 バーシに責められてしまった。どうも、昨日から歯車がうまく回らないな。アイちゃんを送るときに、響かなきゃいいけど。 そんなこんなで、なんだか調子が狂ったまま、放課後を迎えるのでした。 ◆ ◆ ◆「着きましたよ」 車を、教会近くに停車させる先生。ついに、この時が来てしまった。 みんな、表情が険しい。「そんなじゃ、アイちゃんにニセモノだってバレちゃうよ。スマイル、スマイ~ル」 にっと、指で口角を上げ笑顔を作る。「なんだよ。お前だって、できてないじゃんか」「んー……バーシ」「何? ちょ、やめ! 私、脇腹弱いの!」 彼女の脇腹を、くすぐり回す。「緊張、ほぐれた?」「ふー……おかげさまで。お返し!」「やーめー! あははは!」 逆襲されてしまった~!「姉さん
今日もヤマト街に繰り出して、帰宅。こないだから、話そう話そうと思っていて、話せなかったことに、やっと決心がついた。「ええと、家族のみんなに、打ち明けたいことがあります。ちょっと、集まってほしいんだ」 お父さんたちが、なんだなんだと、ボクに招かれるままに、ダイニングに集まる。「あのね……。ボク、バーシと付き合い始めた。恋人として」 えーっ! という絶叫に包まれる一同。「本気か、アユム」 おじいちゃんが、困惑を絵に描いたような顔で尋ねてくるので、こくりと頷く。脱力するおじいちゃん。「冗談でしょう?」 おばあちゃんも困惑。今度は、首を横に振る。「はあ……。仲がいいのは結構だが、そういう関係とは……」 お父さん、頭を抱えて下を向いちゃった。「お母さん、こないだの夜遊びで、ちょっと臭いなーと思ってたけど、ほんとにそうだったなんて……」 この中では一番理解のありそうなお母さんも、ショックは隠せないようだ。 でも、一番ショックを受けてるのは……。「お姉ちゃんのバカ! なんで私じゃないの!?」 ハーちゃん、ボロボロと涙をこぼして、怒り泣き。「ハーちゃん。お母さんと約束したでしょ。ボクとハーちゃんはね、そういう仲には……」「うっさい、バカーッ!」 乱暴に立ち上がり、そのまま駆け出してしまう。「おい、ハーちゃん!」 お父さんとお母さんが、慌ててあとを追いかける。「アユム、その、考え直す気はないのかい?」 力なく、尋ねてくるおじいちゃん。「うん。ボク、今サイコーに幸せ。誰に言われても、友達に戻るつもりはないよ。キスも済ませたし」「キッスだと!? ああ……ちょっと、休んでくる」 おじいちゃん、去ってしまいました。「イクゼさん……。はあ……。孫の顔、見たかったけどねえ」 おばあちゃんも、顔が渋い。「それについては、本当にごめんね。前世だと、女同士で子供作れる技術があったんだけど。だから、結婚したら養子でも取るよ」「簡単に言ってくれるねえ……。ちょっと、イクゼさんが心配だから、見てくるわ」 ボク一人になっちゃった。 ハーちゃんが気になるな。こういうとき、ハーちゃんが行くところといえば……。 二階へ上がるための階段に向かう。 あ、やっぱり。お父さんと、お母さんがいた。「ハーちゃん、出てきて」「しょうがない、鍵を