LOGIN中学生卓ゲーマー・佐武きいろが、仲間とともにTRPGを自作する! 女の子たちがわちゃわちゃする、ほのぼの物語!
View MoreF市立・第十一中学校グラウンド。
今日は部活の見学日で、勧誘に熱心な部員たちと、新入生で賑わっていた。
「あーあー、しょくーん!」
唐突に、台の上で一人の女子生徒が拡声器で声を張り上げる。
一同の視線が、そちらに集まった。
黒髪のショートカット、背は低く、胸は真っ平ら。制服のスカートが風で翻るが、黒いスパッツを履いているので、気にしていないようだ。
顔立ちは、とても愛らしい。
「我々、『卓ゲ部』は、絶賛、部員募集中でーす! どーかどーか、入ってくださーい!」
ざわつく一同。そこに、一人の女性教諭が台に駆け昇った。
「こら!
拡声器をひったくる。
「あ、ギンコせんせー! さっき、許可もらったじゃないですかー」
佐武と呼ばれた生徒、佐武きいろが、悪びれず、にこにこと返事。
「ギンコって呼ばない! しろがねです! というか、鈴木先生と呼びなさい! そもそも、許可なんて出していません!」
一方、ギンコと呼ばれた鈴木しろがねという女教諭は、ぷんすかという擬音を絵にしたような有様だ。卓ゲ部の顧問でもある。
「えー。さっき、職員室で『新入部員勧誘してくるんで、許可くださーい』って言ったら、いいですよーって」
「それで、どうして拡声器の持ち出しOKになるんですか!?」
「ならない?」
くりっと、小首をかしげるきいろ。
「なるわけないでしょう!」
「とう!」
「ぐは!」
唐突に、いつの間にか台の上に上がっていた女生徒が、背後からきいろの首に手刀を入れる。
「すみません、鈴木先生。きーちゃんの所業は、私の監督不行き届きです」
彼女は、
髪は黒のロング。背が高く清楚な顔立ちだが、ご覧のようにツッコミ気質だ。胸も清楚。
「いえ、あの。教師の目の前で暴行しないで?」
「あーもー、グダグダじゃんよー。ふつーに勧誘しよーぜ?」
台の下から三人の漫才を見上げる、黒髪ショートの女生徒。
彼女は、
「しょーがないなー。拡声器は取られちゃったし。今行く!」
台を駆け下り、卓ゲ部の机にダッシュするきいろ。
「ふー……。佐武さん、英語と社会以外の成績はいいし、授業態度もいいのに、どうしてそれ以外だと、ああなのかしら」
「うちのきーちゃんが、ご迷惑をおかけしてすみません」
鈴木教諭に深々とお辞儀する歌留奈。
「いえ、奥野さんが謝ることは。ただ、暴行はしないでね?」
「善処します」
再度、深くお辞儀。
鈴木教諭は、やれやれといった調子で、職員室に戻っていく。
一方その頃、きいろはというと――。
「ねー、そこのギャルズ~。卓ゲしようよー。特に、TRPG面白いよ~」
ギャル風の生徒二人に、すがりついていた。
「いや、なんなん唐突に」
「うちら、そんなん知らんし」
「えっとTRPGっていうのはね! 言わばMMORPGを紙と鉛筆で遊ぶゲームで、MMOよりさらに自由度が――」
「うっざ。わけわかんねーし。いこいこ」
早口で説明するきいろに心底うんざりし、立ち去ってしまった。
「ああ~……トランプでもUNOでもいいから、やろうよ~」
「無理無理。おめー、TRPG好きなのに空気読めねーよなー。ギャルが釣れるわけねーべ」
後ろで珍問答を見ていたにこが、頭の後ろで指を組んで、苦笑する。
「そーゆー、にこちんこそ、もっと気合い入れて勧誘してよー」
「アタシなりにはやってるよ。きいろはゴーイン過ぎて不気味なんだと思うぞ」
「がーん!」
きいろ、うなだれる。
結局この日は、釣果ゼロであった。
「はー……。ボク、勧誘の才能ないのかなあ」
翌日、部室で机に突っ伏し、とろけているきいろ。
部室には、数こそ多くないが、トランプやオセロ、UNOといった一般受けするものから、ウィングスパンやソード・ワールドRPG、クトゥルフの呼び声といったマニアックなアイテムまで棚に並んでいた。
「それ言ったら、私もだけどね。多分ね、観察が足りなかったんだと思う」
自キャラのイラストを書きながら、そう言う歌留奈。
「観察とな?」
顔を上げるきいろ。にことハモる。
「うん。ちょっと、一年の教室行ってみよ?」
歌留奈に誘われ、教室を立つ三人であった。
「でさ、週末だけど。またボクんちにこない?」 部室で、例によって皆を誘うリーダー。「あ、わり。土曜は無理」「ほえ? 用事?」「んー? るうとデートすんだよ」 さらっとにこが言ってのけると、耳まで真っ赤になる、るう。「えー? マジ!? るーこ、おめでとー」 きいろが拍手すると、茹でダコみたいになってしまう。「よかったねえ、るうちゃん。じゃ、私はきーちゃん&ノヴァちゃんと遊んでますか」「そうですね。るうさん、おめでとうございます」 歌留奈とノヴァルナも祝福。「とりあえず今日は、コルト・エクスプレスでもやろっか」 佐武家から持ってきたコルトを、楽しむ一同であった。 ◆ ◆ ◆ 土曜。F駅くるる側スターバックス。そこで、るうは三十分も早くから、にこを待っていた。「るう。待たせた?」 不意に、にこから声をかけられ、その姿を認めると、るうの顔がぱあっと輝く。 にこは、ボーイッシュなパンツルックで、カフェラテを持っていた。「いえ、全然! さっき来たところです!」 るうの席に、空きカップ二個を見て、(優しい嘘つきさんだ)と、ふふとなるにこ。「一年生の友達、できた?」「それが、まだ。卓ゲ部の誘いは全滅しましたし、ホラーも乗ってこなくて」「そっか。まあ、ぼちぼちやればいいよ」「はい!」 二人で、飲み物を飲む。るうは、フラペチーノだ。見事なミラーリング。雑談は弾み……。「ん。そろそろ上映だな。行こうか」「はい。つい、時間を忘れてしまいますね」 二人で、当館五階の、TOHOシネマに向かうのであった。 本日二人が見るのは、「ホーンテッド・シップ」という、本日封切りのホラー映画。 予約はすでに、隣り合った席を入れている。 コーラとポップコーンを買い、三番スクリーンへ。 さまざまなCMを見て、映画泥棒のCMが終わると、いよいよ上映。 内容は、幽霊船に乗ってしまったカップルが、脱出を図るというもの。「キャーーーーーーッ!!」 女優の迫真の悲鳴に、ドキッとなるにこ。実はにこ、ホラーが少し得意ではない。でも、優しいので、るうの趣味に合わせている。 思わずるうの方に手を伸ばすと、握り返された。 いつぞやとは、真逆の図である。 やがて、カップルは幽霊船の謎を解き明かし、無事脱出。 エンディングとなり、スタッフロールが流れる。「
「ノヴァちゃん。私、一週間後誕生日なの。そういえば、話してなかったなーって」 部室で、不意に切り出す歌留奈。「オー! それは、お祝いですね!」「うん。うちでパーティーやる予定なんだー。きーちゃんちほど、広くないけどね」「ノヴァっちも、一緒に誕生日プレゼント買おうぜ」 にこも、話に混ざってくる。「かるかんー、なんか欲しい物ある?」「んー。卓上ゲーム……猫グッズでもいいよ」「りょーかーい!」 リーダー、しゅびっと敬礼。 本日は、ウィングスパンなどして解散となった。「で、何買う?」 夜。歌留奈抜きで、四人でZoom。「通販で買えるものがいいよな」「だね。ボクのときもそうだったんでしょ?」「うん」 にこときいろが、中心となっているようだ。「あの、質問なんですけど、奥野先輩って、どういうゲームが好みなんでしょう?」「んー……。割と雑食だけど、ストーリーもの好きかな」「すると、やっぱり、TRPGでしょうか?」 小首をかしげ、思案するるう。「あの、ワタシは猫グッズがいいと思います」「そっちもありだねー」「いっそ、両方ってどうよ?」 にこが、そんな提案をする。「予算、足りるかなー」「そこはなんとか。よし、ボクんちペットショップ近いし、何か見繕ってくる! 三人は卓ゲをお願い」「りょーかーい!」 こうして、方向はまとまった。 誕生日当日。 きいろとにこが奥野家でくつろいでいると、歌留奈がるうとノヴァルナを連れて帰宅した。「おかえりー。自分ちと思ってくつろいでくんなー」「にこちゃんは、くつろぎすぎ」 歌留奈、苦笑。「ほかふぇり~」「きーちゃんは、喋るか食べるか、どっちかに」「んぐ。お母さんみたいなこと言うねー」 将来、おかんキャラ確実だなー、とか思うきいろであった。「じゃあ、ケーキ持ってくるね」「あの、ご両親は? ご挨拶がまだだなって」「あー。うち、共働きだから」 るうの質問に、そう答える。「じゃーん、抹茶ケーキでーす」 抹茶ケーキ一ホールを、テーブルに置く歌留奈。「おお~、美味しそう!」「ろうそく立てるね」 きいろがよだれを垂らしそうだが、まずはろうそくを立て、点火する。「じゃあ、いくよー!」 勢いよく吹き消す。「誕生日おめでとー!」「ありがとう!」 一同から、拍手とともに祝福され、
「いや~。昨日、外国の人に道案内する羽目になっちゃってさ……」 きいろが、部室でそう切り出す。以下、彼女の回想。 道を歩いていると、なにやら、手書きの地図を見せて、道を訪ねてくる外国人。T霊園に行きたいらしい。 ところが英語で話しかけられ、英語が苦手なきいろはちんぷんかんぷん。 ただ、父がやっているゲームで、一つだけ知っていた単語がある。「T・グレイブヤード!」 びっと、大雑把な方角を指差し伝えると、外国人は礼を言って去っていった。さすがにきいろにも、サンキューぐらいわかる。「……とまあ、こうしてボクはピンチを切り抜けたのですよ! いや~、ボク賢い!」「いや、賢かったら、よどみなく答えられたと思うよ?」「かるかん厳しいなあ。テンパりながら、精一杯切り抜けたのに」 口をとがらせ、カードをシャッフルするリーダー。「MTG用語だっけ。きいろは、それやらんの?」 マジック・ザ・ギャザリング。略称MTG。トレーディング・カードゲームの元祖といえる存在である。大変面白いゲームなのだが……。「あれはお金がかかりすぎるから、お父さんだめだって。でも、カード借りて、何回か対戦したことあるよ」「へー、いいなあ」 羨ましがる、にこ。「ああいう、システマチックな作品いいよねえ……」 きいろ、うっとり。「わたし、やってみたいです」「ほんとだめらしいよ。万単位でお金が飛ぶって」 それを聞いて、すくみ上がる一同。「私たちは、大人しくUNOとかでいいや」「だね」 カードを配り、UNO開始。「そーいやきいろよ。戦闘周りのルール、あれからどうなってる? 黄の6」「んー? とりあえず、敵の回避は基本ゼロにしようと思って。黄のスキップ」「どうしてですか? 青スキップ」 にこ、少し考え。青4。「んー? るーこ、照準定まった銃から、敏捷さで逃げられると思う? 赤4」「無理ですね」「でしょ? じゃあ、目標値上げる方法、遮蔽物しか無いよねって」 歌留奈、小考して。「色々考えるねえ。赤5」「ふふん。ボク、バカだけど賢いのが取り柄だから!」 るう、赤ドロー2。「オー、きついです!」 ノヴァルナ、引き撃ちドロー4で緑宣言。「うげ。きっついなあ。まあ、戦闘周りも着々と進んでるよ」 こうしてゲームは進んでいき……。「勝ちましたー!」 ノヴァル
「お口に合わない?」「いえ! そんなことは! 美味しいです!」「はい!」 食が進まないのを、母に心配され、さば味噌定食を慌ててかきこむ、にことるう。(まずったかなー……) 歌留奈は、急いで話を進めてしまったことを、少し後悔していた。 彼女も、十三歳の女の子。いくらでも失敗ぐらいする。「おかわりもいいよ! というわけで、おかわり!」 リーダーは、平常運転だ。「あの、みなさん。帰るまで、まだ時間ありますよね。ちょっと、後でお話いいですか?」 ノヴァルナが、不意に切り出す。「うん、いーよ! みんなは?」 きいろが問うと、一同異議なし。 かくして、おなじみ客間へ。「ナチスは、同性愛禁じました。それを反省して、最近同性愛認められるようになりました。日本は、まだ遅れてると思います」 唐突な、大上段の真面目話に、ちょっと面食らう四人。「ワタシ、両親がお母さんなんです。お父さんは、ワタシが小さい頃、天国に行きました」 「えっ」っと声を上げる一同。いきなり、ヘビーな話である。「お母さんたち、幸せです。女同士でも、幸せなれます。それだけ、言いたかったです。ワタシ、二人が愛し合うなら、祝福します」 互いに目を見合わせる、にことるう。「そっかー。まあ、アタシもるうのこと好きか嫌いかで言えば、好きだ。ただ、キスとかできるかっつーとわからん。だから、まずはなんだっけ? プラスチック・ラブ?」「プラトニックじゃない?」 歌留奈のアシスト。「うん、多分それ。それからでいいなら」 透き通る瞳で、にこを見つめる、るう。「はい。それで、十分嬉しいです」 心穏やかに微笑む。 当人以上にほっとしたのが、歌留奈。やりすぎたかと、朝食のとき、気が気でなかった。「なんか、いー感じにまとまったね! じゃあ、遊ぼう!」 ぽん! と手を打つリーダー。やはり、天性のムードメーカーだ。「さーて、今日のおすすめはー……これ!」 きいろが、コルト・エクスプレスというゲームをかざす。 列車強盗を題材にしたゲームで、強盗同士の金品の奪い合いがテーマだ。「ドイツのゲームですね! 有名です!」「さすが、ノヴァ子! すでに知ってたんだね。じゃあ、ルール説明~」 ルールは行動をするごとに手札からカードを出し、それに準じた行動が行える。 強盗ごとに特殊