たくげぶ!

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last updateLast Updated : 2026-07-14
By:  みなはら つかさUpdated just now
Language: Japanese
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 中学生卓ゲーマー・佐武きいろが、仲間とともにTRPGを自作する!  女の子たちがわちゃわちゃする、ほのぼの物語!

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Chapter 1

第一話 賢いバカが、あらわれた!

 F市立・第十一中学校グラウンド。

 今日は部活の見学日で、勧誘に熱心な部員たちと、新入生で賑わっていた。

「あーあー、しょくーん!」

 唐突に、台の上で一人の女子生徒が拡声器で声を張り上げる。

 一同の視線が、そちらに集まった。

 黒髪のショートカット、背は低く、胸は真っ平ら。制服のスカートが風で翻るが、黒いスパッツを履いているので、気にしていないようだ。

 顔立ちは、とても愛らしい。

「我々、『卓ゲ部』は、絶賛、部員募集中でーす! どーかどーか、入ってくださーい!」

 ざわつく一同。そこに、一人の女性教諭が台に駆け昇った。

「こら! 佐武さたけさん! どこから持ってきたんですか、こんな物拡声器!」

 拡声器をひったくる。

「あ、ギンコせんせー! さっき、許可もらったじゃないですかー」

 佐武と呼ばれた生徒、佐武きいろが、悪びれず、にこにこと返事。

「ギンコって呼ばない! しろがねです! というか、鈴木先生と呼びなさい! そもそも、許可なんて出していません!」

 一方、ギンコと呼ばれた鈴木しろがねという女教諭は、ぷんすかという擬音を絵にしたような有様だ。卓ゲ部の顧問でもある。

「えー。さっき、職員室で『新入部員勧誘してくるんで、許可くださーい』って言ったら、いいですよーって」

「それで、どうして拡声器の持ち出しOKになるんですか!?」

「ならない?」

 くりっと、小首をかしげるきいろ。

「なるわけないでしょう!」

「とう!」

「ぐは!」

 唐突に、いつの間にか台の上に上がっていた女生徒が、背後からきいろの首に手刀を入れる。

「すみません、鈴木先生。きーちゃんの所業は、私の監督不行き届きです」

 彼女は、奥野歌留奈おくの・かるな。きいろの幼馴染にして、卓ゲ部の部員でもある。

 髪は黒のロング。背が高く清楚な顔立ちだが、ご覧のようにツッコミ気質だ。胸も清楚。

「いえ、あの。教師の目の前で暴行しないで?」

「あーもー、グダグダじゃんよー。ふつーに勧誘しよーぜ?」

 台の下から三人の漫才を見上げる、黒髪ショートの女生徒。

 彼女は、大須おおすにこ。きいろと歌留奈の親友であり、卓ゲ部員でもある。胸は発展途上。

「しょーがないなー。拡声器は取られちゃったし。今行く!」

 台を駆け下り、卓ゲ部の机にダッシュするきいろ。

「ふー……。佐武さん、英語と社会以外の成績はいいし、授業態度もいいのに、どうしてそれ以外だと、ああなのかしら」

「うちのきーちゃんが、ご迷惑をおかけしてすみません」

 鈴木教諭に深々とお辞儀する歌留奈。

「いえ、奥野さんが謝ることは。ただ、暴行はしないでね?」

「善処します」

 再度、深くお辞儀。

 鈴木教諭は、やれやれといった調子で、職員室に戻っていく。

 一方その頃、きいろはというと――。

「ねー、そこのギャルズ~。卓ゲしようよー。特に、TRPG面白いよ~」

 ギャル風の生徒二人に、すがりついていた。

「いや、なんなん唐突に」

「うちら、そんなん知らんし」

「えっとTRPGっていうのはね! 言わばMMORPGを紙と鉛筆で遊ぶゲームで、MMOよりさらに自由度が――」

「うっざ。わけわかんねーし。いこいこ」

 早口で説明するきいろに心底うんざりし、立ち去ってしまった。

「ああ~……トランプでもUNOでもいいから、やろうよ~」

「無理無理。おめー、TRPG好きなのに空気読めねーよなー。ギャルが釣れるわけねーべ」

 後ろで珍問答を見ていたにこが、頭の後ろで指を組んで、苦笑する。

「そーゆー、にこちんこそ、もっと気合い入れて勧誘してよー」

「アタシなりにはやってるよ。きいろはゴーイン過ぎて不気味なんだと思うぞ」

「がーん!」

 きいろ、うなだれる。

 結局この日は、釣果ゼロであった。

「はー……。ボク、勧誘の才能ないのかなあ」

 翌日、部室で机に突っ伏し、とろけているきいろ。

 部室には、数こそ多くないが、トランプやオセロ、UNOといった一般受けするものから、ウィングスパンやソード・ワールドRPG、クトゥルフの呼び声といったマニアックなアイテムまで棚に並んでいた。

「それ言ったら、私もだけどね。多分ね、観察が足りなかったんだと思う」

 自キャラのイラストを書きながら、そう言う歌留奈。

「観察とな?」

 顔を上げるきいろ。にことハモる。

「うん。ちょっと、一年の教室行ってみよ?」

 歌留奈に誘われ、教室を立つ三人であった。

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第一話 賢いバカが、あらわれた!
 F市立・第十一中学校グラウンド。 今日は部活の見学日で、勧誘に熱心な部員たちと、新入生で賑わっていた。「あーあー、しょくーん!」 唐突に、台の上で一人の女子生徒が拡声器で声を張り上げる。 一同の視線が、そちらに集まった。 黒髪のショートカット、背は低く、胸は真っ平ら。制服のスカートが風で翻るが、黒いスパッツを履いているので、気にしていないようだ。 顔立ちは、とても愛らしい。「我々、『卓ゲ部』は、絶賛、部員募集中でーす! どーかどーか、入ってくださーい!」 ざわつく一同。そこに、一人の女性教諭が台に駆け昇った。「こら! 佐武さん! どこから持ってきたんですか、こんな物!」 拡声器をひったくる。「あ、ギンコせんせー! さっき、許可もらったじゃないですかー」 佐武と呼ばれた生徒、佐武きいろが、悪びれず、にこにこと返事。「ギンコって呼ばない! しろがねです! というか、鈴木先生と呼びなさい! そもそも、許可なんて出していません!」 一方、ギンコと呼ばれた鈴木しろがねという女教諭は、ぷんすかという擬音を絵にしたような有様だ。卓ゲ部の顧問でもある。「えー。さっき、職員室で『新入部員勧誘してくるんで、許可くださーい』って言ったら、いいですよーって」「それで、どうして拡声器の持ち出しOKになるんですか!?」「ならない?」 くりっと、小首をかしげるきいろ。「なるわけないでしょう!」「とう!」「ぐは!」 唐突に、いつの間にか台の上に上がっていた女生徒が、背後からきいろの首に手刀を入れる。「すみません、鈴木先生。きーちゃんの所業は、私の監督不行き届きです」 彼女は、奥野歌留奈。きいろの幼馴染にして、卓ゲ部の部員でもある。 髪は黒のロング。背が高く清楚な顔立ちだが、ご覧のようにツッコミ気質だ。胸も清楚。「いえ、あの。教師の目の前で暴行しないで?」「あーもー、グダグダじゃんよー。ふつーに勧誘しよーぜ?」 台の下から三人の漫才を見上げる、黒髪ショートの女生徒。 彼女は、大須にこ。きいろと歌留奈の親友であり、卓ゲ部員でもある。胸は発展途上。「しょーがないなー。拡声器は取られちゃったし。今行く!」 台を駆け下り、卓ゲ部の机にダッシュするきいろ。「ふー……。佐武さん、英語と社会
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第二話 クトゥルフ一本釣り!
「あっ、さっそく」 鈴なりになって、一年一組の教室を覗く三人。傍から見て、不審者である。 そんな状態で、歌留奈が声を上げた。「あの生徒の本、見て」 目を凝らしてよく見る二人。きいろが、「あっ!」と声を上げる。「クトゥルフの呼び声!」 視線の先の女生徒が読んでいたものは、小説版の、元祖クトゥルフの呼び声。「釣れると思わない?」「いけるかも!」 さっそく、中に入っていく三人。「ねえ、君。クトゥルフ好きなの?」「ええと、皆さんは?」 三人を見上げる女生徒。髪はボブ。胸はきいろと同等。「ボクたち、卓ゲ部。全員二年。よろしくね」 「はあ」と、気のない返事をする女生徒。「ねね。でさ、クトゥルフ好きなら、いいゲームあるよ!」 女生徒が、ピクと反応する。三人は、(ミャクあり!)と、心の中でガッツポーズ。「その名も、『クトゥルフの呼び声』! ここじゃなんだからさ、ちょっと部室こない? 実物見せるよ」「ぜひ!」 (釣れた!)と、再度、心の中でガッツポーズする三人であった。 ◆ ◆ ◆「自己紹介がまだだったね。ボクは、佐武きいろ。いちおー、部長」「私は、奥野歌留奈」「アタシは、大須にこ」 順に自己紹介していく。「わたしは、工藤るうです。えと、クトゥルフだけじゃなく、ホラー全般が好きでして……」 もじもじと自己紹介する、女生徒改め、るう。「おっけーおっけー。よろしく、るうちゃん。でね、約束のものを……」 棚から、クトゥルフの呼び声のルールブックを取り出すきいろ。 禍々しいクトゥルフが描かれた表紙に、るうが目を輝かせる。「あの、読んでもいいですか……?」「ちょっとまってね。いきなりルールだの読んでもピンとこないだろうから……」 神話生物のページを開いて見せる。「ミ=ゴ! ショゴス! わわ、クトゥルフにニャル様も!」 食い入るように見る、るう。三人は、ビッとサムズアップし合う。「よかったら、一日貸すよ」「いいんですか!?」 るうの瞳が、キラキラ輝く。「うん。それ見ながら、このゲームのリプレイ動画見るのオススメ」「リプレイ?」「うん、こういうの」 適当な、人気リプレイ動画をスマホで見せる。「へー……。こういうのがあるんですね。わ、電子魔導書が出来上がっちゃった……」「まー、色々あるけど
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第三話 初心者、初セッションする!
「すっごく面白かったです!」 翌日、部活時間。部室でるうがルールブックを手に、キラキラした瞳を一同に向ける。「色々、用語も覚えました! dがダイス……サイコロの略だとか。あと、十面体なんて、変なサイコロもあるんですね!」「うんうん。楽しめたようで何より!」 るうから本を受け取り、棚に戻すきいろ。「よっし! 次なる新入部員を求め、一年の教室巡りをしようぞ~」「おー!」 一同、意気軒昂。気合を入れ、部室を飛び出して行く。 ◆ ◆ ◆ しばらく後、燃え尽きて部室の机に突っ伏す一同がいた。「ダメだったね~」「ダメだね~」「ダメダメですね~」「全滅とはな~……」 きいろ、歌留奈、るう、にこが、突っ伏したままぼやく。「この四人で、仲良くやっていこう!」 体を上げ、拳を突き出すきいろ。一同、それに拳を合わせる。「えい、えい、おー!」 皆、気力を取り戻す。「先輩、わたし、クトゥルフやってみたいです!」「いいよ~。イチからシナリオ作るの好きだけど、時間かかるから、明日遊ぼう。今日は、『HANABI』とかどう?」「なんです、それ?」「カードゲーム。ルールはね~」 実物を取り出し、ルールを説明していくきいろ。 HANABIは、その名の通り、複数の色の花火を打ち上げるのが目的のゲーム。ただし、自分の手札を自分では見ずに仲間に見せ、自分の手札を推理する作品だ。 プレイヤーは皆協力者なので、敵がいない、平和なゲームである。「あー、惜しい!」 打ち上げ完遂、一色。このゲーム、コツが少々あるのだが、初心者のるうにはまだ難しいようだ。「いや、初めてにしては、上出来、上出来! るうちゃん、センスあるよ~」「ありがとうございます!」 るうの瞳が、キラキラ輝く。「ところできーちゃん、足、閉じようよ。はしたないよ?」「えー。スパッツだし、女しかいないからいーじゃん」 開脚状態で、気楽にプレイしていたきいろに、歌留奈がお説教。しかし、聞く耳持たず。 この二人、いつもこんな調子である。「いーじゃん、いーじゃん。歌留奈はカタすぎるんだよ」「もー、にこちゃんまで~」 そんな仲良しトリオのやりとりに、ふふとなる、るうであった。 ◆ ◆ ◆「えーと。初心者にはどういうキャラがおすすめなんですか?」「精神力高くて、図書館と
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第四話 賢いバカ、本領発揮する
 初セッションから一週間。るうもだいぶ部活と卓上ゲームに慣れてきた頃。「んー、みんな! ボクたちでTRPG作らない?」 部室で、きいろが唐突にそんな事を言った。「どうした急に」 ツッコむ、にこ。「うん。ボクたち……るーこはまだだけど、来年受験勉強じゃない?」「うん」 うなずく歌留奈。「でさ、うんと遊べる今年度のうちに、TRPGを一本作りたいなって」「あー。きいろ、前からゲーム作ってみたいって言ってたしな」「だね」 顔を見合わせる、にこと歌留奈。「ゲーム作りですか。初心者のわたしにできるでしょうか?」「むしろ、初心者視点ってありがたいよ。慣れてると気づきにくい欠点って、逆にあると思うから」 心配げなるうに、きいろが返す。「ゲーム作るって、私たちは何すればいいの?」「世界観を作って欲しい。ボク、システムしか作れないからさ。あと、テストプレイ」「世界観かー。大変そうだな」 腕組みし、天井を仰ぐにこ。「で、方向性は決まってるの? ファンタジーとか」「ボク、考えたんだよね。ネクロニカの作者さんの発言の深みを。平凡な世界観じゃ、埋もれるって話思い出してさ」 永い後日談のネクロニカ。きいろの発言の通り、ゾンビ少女が戦うゲームという、特異な作品である。 きいろの発言は正確ではなく、「部位破壊ルールを思いついたが、ロボはもうあるから」という動機で作られた。「でさ、何かないか、何かないかってぐるぐる考えて、あ、探検ゲームって無いねって気づいて」「冒険とは違うんか」「んにゃ、探検。探検隊がチーム組んでさ、秘境を探検するの」 「あー」と、得心が行く、歌留奈とにこ。「探検ゲームって、ないんですか?」「私が知る限り、ないねー」 るうの質問に、歌留奈が答える。「でね、ボクらの世界とはちょっと違う世界線の、ムー大陸みたいな場所があるようにしてさ。変な生物とか、いっぱい出そうよ!」「おもしろそーだな!」「その世界を作るのか~。やりがいありそうだね」 にこと歌留奈も、乗り気だ。「わたしにも、お手伝いできるでしょうか……?」「無理しない範囲でいーよ。二人がきっと、アシストしてくれるから」「任せて」 不安げなるうに、きいろと歌留奈がフォローの言葉をかける。 こうして、部活の新方針が固まった。しばらく、遊びと並行しながら、ゲーム作
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第五話 パジャマパーティー! ―前編―
「ねね。土曜、ボクんちに泊まりに来ない? パジャマパーティーしようよ!」「唐突だな」「だって、ボクだよ?」 にこのツッコミに、意味は分からないが、自信だけは伝わる謎ドヤで返すきいろ。「パジャマパーティーですか! 楽しそうですね! でも……」 ちょっと困る、るう。「あー、るーこはボクんち知らないか。ここまで迎えに来るよ。にこちんと、かるかんは、てきとーにウチでくつろいでて」「あいよ」「お菓子、持っていった方がいい?」「ウチである程度用意するけど、食べたい物あるなら持ってきて。当日は、カレーパーティーやるからね!」 「おお~!」と意気上がる一同。やはり、こういうときはカレーだ。 かくして皆、意気軒昂。週末に向けて盛り上がるのであった。 ◆ ◆ ◆「待った?」「今来たとこです」「なはは~。デートみたいなやり取りだね~」 当日。校門前で、弛緩した顔をする、きいろ。「もう、何言ってるんですか」 一方、るうは照れくさそう。「じゃ、みんなも待ってるだろうし、行こっか!」 るんるんと、スキップでもしそうな陽気さで、先導するきいろ。 ときどき、ついてこれているか振り返る。「そういえばさ」 歩調を落とし、不案内なるうに並ぶ。「なんでしょう?」「クトゥルフのキーパー、やってみない?」 キーパーとは、他ゲームでいうGMのこと。「わたしみたいな、初心者がですか!?」 豆鉄砲を受けた鳩のような顔になる、るう。「最初は、誰だって初心者だよ? なにごとも、ケーケンだよ、ケーケン。ボクがサブマスやるからさ、アシストは任せて」「はあ」「ま、あくまでも提案だから! 気が向いたらね!」 その後は、クトゥルフトークをしながら、佐武家へ向かう二人。濃い光景である。「たっだいま~!」 帰宅すると、台所で手を洗うきいろ。るうもそれに倣う。「おかえりなさい。歌留奈ちゃんとにこちゃんなら、客間よ」「工藤さんだね。はじめまして。お話は、かねがねきいろから伺っているよ」 きいろの父母が、気さくに話しかけてくる。それを受け、るうは少し緊張しながらも、打ち解けた気持ちになった。「お邪魔します」「あんまり待たせても悪いから、ボクら行くね」 客間に向かう二人。「おーう、いらっさーい。自分のうちだと思って、くつろいでくんな」「
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第六話 パジャマパーティー! ―後編―
「まーまー、聞きなって。まず、成功判定はD%。これはいいね?」「ああ、フツーだな」 実際、クトゥルフの呼び声を筆頭に、D%で成功判定をするゲームは多い。「でさ、ここで同時に、成功度を出しちゃうのさ!」「どういうこと?」「成功率六十%だったとするじゃん? ここで、出目が五十五なら、十分の一の切り捨てで、成功度五! そんなカンジ~」 歌留奈の質問に、にひひと答えるきいろ。「へー。出目が低けりゃいいってもんじゃないんだな。でも、さらに成功度とかいうのを求めるのはなんでだ?」「このゲームでは、成功判定に成功しただけじゃ、成功にならないんだ。成功度で目標値を超える必要がある。ふつーはゼロとかだけどね」 「ほほー」と、感心する一同。「でも、それがお前が言ってた……なんだっけ? ニンゲンコーガク? とどうつながるんだ?」「うん。この成功度、ダメージ判定でも使うのですよ。つまり、一回ダイス振れば、ダメージ計算も楽ちん!」 「へー」と、コレまた感心する一同。「よく考えますねえ、先輩」「まーね! ボク、バカだけど賢いのがジマンだから!」 えっへんと、胸を反らすきいろ。「それ、自慢になってる?」と、歌留奈に突っ込まれる。「あれ? でも、結局ダメージ計算の手間できるんじゃ? 相手にも防御力あるでしょう?」「ないよ。秘境探検してるような時代だもん。鎧も防弾チョッキもナシ!」「なるほどなー」 一息つき、お茶菓子に手を伸ばす一同。「ダメージ計算はどうするの? 成功度が関わってくるのはわかったけど」「それは、こーあんちゅー。あとちょっとで、面白いこと、ひらめきそうなんだけどなー」 きいろが、自分の頭をぐりぐりする。「まあまあ、おせんべでも食べて。せっかく持ってきたんだし」「あんがと。カレーが入る程度にしないとね」 青ざめる、るう。この後、カレーがあるのを忘れていた顔だ! すでに、煎餅を六枚も! ◆ ◆ ◆「カレー、できたわよー」「はーい!」 母に呼ばれ、ダイニングに向かう一同。「カッレェ! カッレェ!」 スキップしながら母の先導のもと、ダイニングに向かうきいろたち。るうだけ少し、テンションが低い。「どうぞ」 ほかほかごはんに、カレーが注がれる。瞳をキラキラさせる一同。ただし、るう除く。「お母さん自慢の、キーマカレーだよ。いっただ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第七話 コンベンションに行こう! ―前編―
 月曜日。「授業、きつかった~」 部室で、だらんと垂れるきいろ。「きーちゃんの苦手な、英語と社会だったからねー」「ボク、日本史興味ないのー。高校行ったら、絶対世界史取る~」「ヨシヨシ」 にこに、撫でて慰められる。「面白いのになあ、日本史も」「勉学性の違いってやつだね~。数学とか理科は楽しいのになあ」 歌留奈の言葉に、よくわからない造語で答えるきいろ。「そいや、るーこはどの教科が好き?」「わたしですか? 国語とか好きですね」「ほー。ボク、書道も苦手なんだよねー。それはさておき、本筋に話を移して。今日は何やる?」 垂れ状態から回復。「ウィングスパンとかどーよ」「いーね! 二人は?」「賛成」「初めてなので、おまかせで」 ウィングスパンは、鳥を繁殖させて、得点を競うカードゲームだ。様々な勝ち筋がある、よくできたゲームである。「勝ったー!」 きいろの勝利宣言。「く~、ワタリガラスの大回転は、やっぱぶっ壊れだな」「だね~」「でも、すっごく面白かったです! 鳥も可愛くて」 ドベに終わったものの、るうは楽しめたようだ。「お、好感触。ボクの大回転で、萎えちゃうかと思ったけど」「いえいえ! それぐらいじゃ、へこみません!」「あ!」 突如としてきいろが素っ頓狂な大声を上げ、スマホを取り出す。「忘れるとこだった。これ、見て!」「へー、T市でコンベやるのか」「みんな、行けそう?」 ノリノリで身を乗り出すきいろたちに、「あの」と挙手する、るう。「コンベってなんですか?」「んー? 広い会場借りて、参加費払って、沢山の人でTRPGやるんだー」「あー……。例の手引きエッセイに、書いてあった気もします。でも、そんな大人数さばき切れるんですか?」 首を傾げる質問者。「いや、卓はせいぜい五、六人ってとこじゃないかな? それだけ別れてやるんだ」「へえ」「でさ、るーこもいい経験だし、みんなバラバラで参加しない? 知らない人と卓囲むのも、醍醐味だし!」 目をキラキラさせる、きいろ。「うわ~……。知らない人ととか、緊張します~」「何事も、チャレンジだよ!」 きいろの、サムズアップ。「で、コンベ参加はいいとして、それまでの方針は?」「ボクは、プレイヤーで行こっかなって。だから、それまでは、ゲーム制作に集中~」「私たちも、世
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第八話 コンベンションに行こう! ―後編―
「ひゃ~……おっきなビルですねえ。これ全部借り切ってやるんですか?」「まさか。三階の第一会議室だけらしいぜ」 にこがるうの肩をもみ、緊張をほぐそうとする。「五百円払って、参加申込済み画面を見せるだけだね。キンチョーしなーい!」 今度は、きいろがるうの背中を軽く叩く。「もうすぐ時間だよ。行きましょう」 歌留奈が話を進め、一同会場へ。「こんにちはー。参加者です~」 参加費を払い、入室。「男の人が多いですね……」「だから、取って食われたりしないから。心配なら、女性卓探すといいよ」「はあ」 怖気づくるうを、きいろが励まし、掲示板に近づく。「えーと……? お、CD&D卓ある! ボク、これにするー!」 CD&D。クラシック・ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズの略で、最古のTRPGである。三版がCD&Dと呼ばれ、ルールブックなどが箱に入っていることから、赤箱、緑箱などの愛称で親しまれる。「あ、クトゥルフの女性卓……。わたし、ここにします」「アタシは、ベタに2.5卓行くか~」 にこの言う2.5とは、ソード・ワールドRPG2.5のこと。「私も、別の2.5卓行くかな」「よし! じゃーみんな楽しんでこよーねー」 解散。はてさて、どうなるやら。 ◆ ◆ ◆「おじゃましまーす」「どもども。若い女の子がCD&D来るとは思わなかったな」「お父さんが、昔からの卓ゲーマーなので、触ったことあるんです」 「おお~」と声が上がる。「キャラメイクですけど、注意点とかあります?」「HPは最大値で。それだけかな」「りょーかいでーす。……あ、これエルフできるな。ボク、エルフやっていいですか?」 D&Dのエルフは、いわゆる魔法戦士である。軽戦士ではなく、きちんと重武装できる、ファイターの上位互換だ。ただし、成長はとても遅い。「リアルボクっ娘キタコレ。いいよー。みなさんはー?」「異議なーし。俺、シーフやりますね」 こうして、各自の職業は決まっていき……。「げ、お金70ゴールド!?」 金運の悪い、きいろであった。「貸そうか?」「あー、これから知り合うんで、それはなしで」「オールディーな、酒場乱闘から始まるスタイルだったら、非武装はまずいなー。プレートメイルと、バトルアクスで頑張ります……」 バトルアクス。弱くはないが、強くもない両手用武器だ。
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第九話 GW合宿! ―前編―
「諸君!」 突如、きいろが部室で、腕組みしつつ仁王立ちになり、一同に呼びかけた。 ぽかんとする歌留奈たち。「どうした急に」「早いもので、もうすぐGWだな!」「せやな」 にこが、きいろの突飛な言動に、かろうじて応ずる。「そこで、うちでゲーム制作合宿、やらないかね!?」「面白そうだけど、おうちの方に、ご迷惑じゃない?」「一応、今のところ予定入ってないですけど……」 歌留奈たちも、唐突な話に戸惑う。「いや、GW全部とは言わないよ? みんなも、家族と過ごしたいだろうし。なんで、一日から二日ぐらい合宿しない?」 くりっと、小動物のような表情で、小首をかしげるきいろ。「はあ、まあそれぐらいなら……」「よっし、かるかんノッてくれた! 二人は?」「そうですね。一日、二日ぐらいなら」「んじゃー、アタシもそれで」 一同、賛成の流れに。「おっけー! じゃあ、当日までは、各自の活動を頑張りつつ、遊びまくるカンジで!」「よーするに、いつものノリやな」「そゆこと~。てなわけで、今日は何する~?」 今日も、卓ゲ部は平和である。 ◆ ◆ ◆「こんにちはー」「るーこ! ほんとに一人で大丈夫だったんだね!」「はい。道を覚えるのは、得意な方なんで」 GW初日。二泊三日の予定で、一同佐武家に集結。「上がって上がって。二人も来てるよ」「お邪魔します~」 二人で、客間に向かう。「よっす。お先に始めてるぜー」 二人がやっていたのは、ポーカー。賭けの対象は、ブロックチョコ。「あー、手がわりーなー」「またまたー。顔に出てるよ」 牽制し合う、二人。「終わったら、ボクらも混ぜて」「おう」 勝負は……にこの負け。実は、本当に手が悪かった。「もっと、ブラフ決めたほうが良かったんだろうけど」「ボクらもやる~」「お願いします」 かくして、四人戦。 るうの、圧勝であった。「驚いたなー。引きがいいし、全ツッパする度胸もすごい」「いえ、駆け引きとかわからないだけで」 きいろの称賛に、照れるるう。「でも、こんなにチョコ、食べきれないですね。みんなで食べませんか?」「何のためのポーカーか、わからんな」「楽しかったから、ヨシ!」 ほのぼのと、ティータイムを愉しむ一同。今日は、歌留奈が羊羹を、にこが、このブロックチョコ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第十話 GW合宿! ―中編―
「フォク~ふぁれはらひろひろほもひついたんら~」「こら、きいろ。喋るか食べるか、どっちかになさい!」「ふぁべる~」 朝、食卓でトーストを咀嚼するきいろ。何ごとか言いかけたが、母に怒られ、食べることに専念する。 副菜は、ハムエッグとサラダ、牛乳という、ごきげんな朝食だ。 卓ゲ部の面々も、同じものを食んでいる。「んくっ……んくっ……ぷはー。ボク、あれから色々思いついたんだ~」 トーストを牛乳で流し込み、先程の謎原語を言い直す。「システム?」「うん。クリティカルとファンブル。あと、射程についても、ちょっと」 歌留奈の問いに、少し上機嫌で答える。「へえ。きいろ、ゲーム作ってるのかい?」「うん。ボクがシステム担当で、ほかのみんなが世界観担当!」「そうかそうか。さすがだなあ、きいろは」「もー! コドモじゃないんだから、やめて~!」 頭を撫でようとする、父の手を全力回避するきいろ。父の表情に、哀愁が漂っていた。 思春期の父と娘にしては仲が良い方であるが、色々難しいお年頃。「歯、磨いたら、さっそくミーティングだよー!」「おー!」 ◆ ◆ ◆「でも、クリティカルとファンブルって、また地味なところ攻めるね」 客間で茶をいただきながら、そう言う歌留奈。 本日のお茶請けは、五家宝とハリボー。「まあ、こういうところも埋めておかないとね。ファンブルは、単純に00で、クリティカルはゾロ目成功。ファンブルは、ヒドイ事が起きるパターンにする。百分の一だからね」「クリティカルは?」「よくぞ訊いてくれました! 成功度が五、上がるんだけど、片方だけダイス振り直すのね。それで、出目が残した方以下だったら、さらにプラス五。で、今度は数字が小さい方のダイス残して、それ以下の出目が出たらさらにまたプラス五……っていうのを、失敗するまで繰り返せる」「へー。ダメージが、五刻みで一削りになるからか」 五家宝を頬張る歌留奈。「そゆことー。ダメージ以外も、面倒だからこれで統一する。あとね、ハリボータワー作っててひらめいたんだけど、能力値四つにして、割り振れるようにしようかなって」 ハリボータワーがどう関係したのかわからないが、ともかくそれでひらめいたようだ。「体力、器用度、敏捷度、知力の四つ。最低でも、それぞれ九あって、能力を一上げるとき、十の位の自乗、CP……
last updateLast Updated : 2026-07-13
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