เข้าสู่ระบบハルカさんは、ゆっくりと話し始めた。
「あの時、泣いてしまったのは…潟梨君の絵が、あまりにも早く上手くなって、追いつけなくて…自分の努力の仕方が、間違っていたんじゃないかって…初めて気づかされて、それが悔しくて、情けなくて…」
彼女は、自分の感情を、正直に語ってくれた。
それは、俺が想像していた以上に、彼女自身の中での葛藤だった。「それに…私…潟梨君のことが…好きだったから」
ハルカさんの言葉に、俺はハッとした。
薄々、そうかもしれないと思ったこともあった。でも、認めたくなかった。
気づかないふりをしていた。 穏やかな時間を守りたかったのかもしれない。そしてそれが、彼女を傷つけた原因の一つだったのかもしれない。
「だから…潟梨君が、私より絵が上手くなるのが…怖かったの」
ハルカさんは、少し寂しそうに続けた。
「私が、絵を教えてあげることで、潟梨君との間に繋がりができたと思っていたから
後日、なぜか千明が俺の通う大学のオープンキャンパスに参加していた。 もちろん、さくらさんと羅璃も同席だ。 この企画は、羅璃が「この際、推しが普段どんなことしているのか、実体験してもらおう」と言い出したものだ。 最初は、「羅璃が千明と一緒に住んで、翔平がグータラ大学生なだけではないと知ってもらおう」とか、恐ろしいことを言い出したのだが、さすがに「犯罪だからやめてくれ」と懇願する羽目になった。 千明自身は「どうせ家には帰っていない」と開き直っていたが、さくらさんがなんとか説得して、オープンキャンパスに落ち着いた形だ。 まずは講義の見学。 法学部の講義室に足を踏み入れた千明は、学生たちの真剣な眼差しや教授の難しい専門用語に、最初から戸惑っている様子だった。「ねぇ、羅璃さん、これ、何言ってるか全然わかんないし、つまんなーい~……ウチ思うんだけど……『勉強なんか意味ない』『学歴社会は終わった』ってネットでも見るし~友達も皆言ってるんだよね~だるぅ~って」 千明が、俺の隣で小さな声で羅璃に囁く。 羅璃は、フッと笑って肩を竦めた。「しょーへー、千明に大学の意義を教えてやれよ」 俺は、羅璃に促され、千明に話しかけた。「まあ、いきなりは難しいよな。でも、千明ちゃんはさ、『勉強なんか意味ない』とか『学歴社会は終わった』とか、ネットとか友達から聞いたことそのまま言ってるだけだろ? それって……本当のことかな?」「え~どういう意味ですかぁしょーへーさん?」「今俺と会話している千明ちゃんは日本語で話が通じ合っているよね?」「え?当たり前じゃん」「でも……じゃあ、すいませんさくらさん……」 さくらさんに話を振る。 さくらさんは意を得たと頷き突然英語で話しかける「I'd like to ch
女子高校生千明がさくらさんに駆け寄っていくのを見て、羅璃がニヤニヤしながら千明に話しかけた。「で? 千明の推しは誰なんだよ? やっぱりサクラ?」 千明は頬を染めて頷いた。羅璃は、そんな千明を見て、満足げに俺の方を振り返った。「なあ、千明、羅璃の推し活のことを教えてやるよ~ 翔平?!羅璃の推しは誰だと思う?」 俺は一瞬言葉に詰まった。羅璃の推し? もしかして……さくらさんとか? 羅璃は俺の煩悩の具現化のはずだし、推しとかあるのか? 羅璃は、混乱している俺の様子を見て、フッと笑った。「そんなの、しょーへーに決まってんだろ?」 羅璃の言葉に、千明は「え?」と声を上げた。 俺と羅璃を交互に見て、目を丸くする。 羅璃は、そんな千明に向かって、わざとらしい声で言った。「こんな冴えないオッサン、千明は推せないだろ?」「オッサンは無いだろ! せめてお兄さん……!」 俺は、思わずツッコミを入れた。羅璃は、俺の反応を楽しんでいるようだ。「羅璃の推し活舐めんなヨ~ しょーへーはな……欲望含めたすべての煩悩を解脱しちゃって、正月に死ぬところだったんだぞ…… それを推し活……活力ぶっこんで羅璃がここまで復活させたんだぞ。」「え?俺死ぬところだったの?」初耳だ……「生きたいって言うのは煩悩だぞ、しょーへー……逝きたいってのも煩悩だけどな」「さっきライブで逝きかけたけどなー」回想する俺。 ニカリと笑う羅璃。「そんな冗談いえるなら、今は大丈夫ってことだ……どう、千明。これがギャル
近くの……と言っても、周囲の喫茶店はライブ参加者で埋まっていた。 結局駅前まで移動して、落ち着いた雰囲気の店に入った。 入り口前で奥さんはどこかに連絡していたが、すぐに合流し、店の奥にある席に五人が座る。 俺、羅璃、宮司、奥さん、そして女子高生。 これは一体何の集まりだろうか? 緊張する俺とは対照的に、羅璃は楽しそうに周囲を見回している。 仏頂面していた宮司さんを、奥さんが肘で軽く小突いた。 宮司さんは帽子とサングラスを外し、開口一番、深々と頭を下げた。「この度は、さくらのことで済まなかった」 その言葉に、俺は恐縮して身を縮める。 宮司さんは顔を上げ、羅璃のほうをちらりと見た。「羅璃殿の存在は、いまだに信じられないことだ。 神職に就いてから、あそこまで周囲に認識させるほどの存在を持つ事象に遭遇したのは、生まれて初めてでな……この退魔を成し遂げたなら歴史に名を残せるかと、その功名心に抗えなかった。我ながら、恥ずかしい限りだ」 宮司さんの言葉は、率直な反省の言葉だった。 だが、羅璃はそんな宮司さんを茶化すように言った。「寝食忘れて神職ついて……今日はこの前のリベンジか?」 なんかラップ?ダジャレ入れてる……怒っているというより面白がっている様だ。 宮司さんは、何とも困った顔をして沈黙する。 どうでもいいけど、パーカーのぶかぶかパンツは今回用に用意したのかもしれないが 似合ってないな……と少し前の自分を差し置いて思ってしまった。 ただ、場に合わせようと必死に宮司さんが用意したのだと思うと、ちょっと微笑ましい。 あの時の宮司としての正装を身に着けて威厳を持つイメージからは想像できない。 そんな宮司さんに代わって話し始めたのは、こ
サークルのゲーム制作も順調に進み、俺は背景画のデザインに集中していた。 羅璃の助言と、皆に必要とされているという感覚が、俺の「ダルい」という感情を薄れさせ、代わりに充実感を与えてくれていた。 そんな中、ミサト先輩から次のライブのチケットを渡された。 俺と羅璃の物語を歌った新曲が披露されると聞き、心からライブを楽しみにする自分がいた。 ◇ そして、遂にライブ当日になった。 会場は前回と同じ、三軒茶屋のライブハウスだった。 前回は初めてのライブハウスに圧倒され、ただ呆然とするばかりだったが、今回は少し違った。 慣れというのは恐ろしい。 開場時間に合わせて到着すると、すでに多くのファンが列をなしていた。 今回は先輩達「白い堕天使」がトリという事で、他のバンドも観る余裕があった。 俺は体力がないので、後ろの方でドリンクをチビチビ飲みながら、様々なバンドの演奏を聴いていた。 どのバンドも熱気がすごくて、観客もそれぞれのバンドに熱狂している。 羅璃は、最初から全力で最前列に行ってはしゃいでいた。 赤い瞳を輝かせ、頭の角を揺らしながら、全身で音楽に乗っている。 彼女こそが、このライブハウスの熱狂を体現しているようだった。 ミサト先輩達のバンドの出番が近づくと、会場の人が増え始めた。 俺は、ドリンクを片手に、人の波を眺めていた。 その中に、ふと、慣れない感じのサングラスにキャップを被った中年の男性と、場違いな気品を纏った女性がいることに気づいた。 その二人は、明らかにこのライブハウスの雰囲気に馴染んでいない。 不思議に思って見ていると、サングラスの中年男性が、不意にこちらに気付き、あっという顔をした。(あ……宮司さん……!) 俺は、一瞬でその男性が天宮司さんのお父上、宮司さんであることを悟った。 普段着でもないだろう……パー
春に向けて、俺は課題やレポートも、羅璃のスパルタ管理が無くとも何とかクリアできるようになった。以前の俺なら考えられないことだ。 まあ、ギャーすか言われなくても羅璃がいるだけで緊張感があるのは良いことだ…いなくなったら…は考えない様にしようと思う。 学年末の単位は修得し終わったので、しばらくは、コンビニのバイトとサークル活動に集中することにした。 大学構内では天宮司さんには会えなくなっていたが…ミサト先輩から、ライブに向けてバンド練習に集中していると聞いた。彼女も自分の夢に向かって努力しているのだ。 俺のデザイン作業は一段落していたが、寺社杜さんの勧めもあって、パソコンを使ったグラフィック作業を手伝うことになった。 授業で必要な安いラップトップPCは持っていたが、グラフィックツールなど使ったこともなく、正直困惑した。 だが、寺社杜さんが、無料で使えるCGツールを教えてくれて、その使い方まで丁寧にレクチャーしてくれた。彼女は、いつも静かでミステリアスな雰囲気だが、教えるのはとても上手だ。 と言っても、初心者すぎる俺にできることは限られていた。 球体に百目(ヒャクメ)の絵を描いて貼り付けたり、背景の羅生門の絵を切り抜いたり、色を調整したりといった、比較的機能を覚えずに済む簡単な作業がメインだ。 それでも、自分の描いた絵が、ゲームの中で動くと、とても新鮮で楽しかった。 羅璃が画面の中で跳ね回るのを見ると、自分が作ったものが、本当に「生きている」ような感覚になる。 羅璃は、出来上がるゲームをプレイしながら、文句を言う係だった。「会長、これ、もっとこうしろよ!」「あれが足りない! これ、できないの!?」 山本会長に、あーしろこーしろと好き放題言っていた。 会長は、羅璃の意見に怒りもせず、真剣に耳を傾け、取り入れられるものは取り入れたり、技術的な限界を説明したりしていた。 …その姿を見て、俺は少しだけ胸の奥がチクリとした。
サークルのゲーム制作も順調に進み始めた。 羅璃は、画面の中で走ったりジャンプしたり、謎の玉を出したりと、コントローラーで自由に操作できるようになっていた。 より完成度が上がり、画面内を動き回れるようになったキャラを操作しながら羅璃は大喜びだった。 俺は素人なので、よくわからないが、ゲームの開発はとても大変で特に3Dは時間も人手もかかると言っていたのを聞いていたので、こんな少ないメンバーで本当に大丈夫なのだろうかと思っていた。 ところが、ほんの数週間で画面にキャラが出て動くなんて、ちょっとした衝撃だった。 何せ俺の場合、羅璃のキャラクターのデザインだけで結果1週間くらいかかっていた気がするからだ…… 中村山くんの話では、既存のライブラリを組み合わせているから、そこまで大変ではないという。 寺社杜さんも、アニメーションはライブラリを使っていると言っていた。俺は、まだその「ライブラリ」というものがよく分からなかった。 羅璃が「ゲームの作り方よく知らないけど、図書館がどうしたの?」 と質問すると、中村山くんは、世界中で作られているゲームの絵や音楽、プログラムを、基礎的な部分でデータベースとして共有し、効率化しようという仕組みがあることを教えてくれた。 それは「ライブラリ」と呼ばれ、より大きな枠組みでは「ゲームエンジン」と呼ばれるらしい。 一介の大学生が数名でゲームを作れる……すごい時代になっているのだと思った。 そして、何かその共有して助け合う流れは、羅璃が言っていた「他人に必要とされたい」という承認欲求や、「社会性において役に立つ機能」という内容にも通じるように思えた。 羅璃が、サンプルを操作しながら、何気なくポロっと言った。「これ、撃てるやつはたまに転がしたり跳ねたりしたら面白くない?」 その一言に、山本中会長の目がキラリと光った。「なるほど! 確かに、箱