All Chapters of ラリっとボンノー!!〜鬼娘は活力煩悩まみれ、俺は無気力何もない〜: Chapter 1 - Chapter 10

21 Chapters

壱話:元旦・俺部屋に赤鬼ギャル

 朝日が差し込み始めた部屋で、俺は目を覚ました。 いつもの、何もない天井。  いつもの、何も変わらない部屋。 ダルい朝だ。二度寝しようかと思った、その時。  視界の端に、何か、違和感のある動くものが。  ……あれ? 何か、いる?  ゆっくりと視線を向けて、俺は固まった。 ベッドサイドの、何も置いていないはずの床に、誰かが立っている。  しかも、とんでもないのが。  燃えるような赤色の肌。 染めたのか地毛なのか分からない金髪と黒髪のストライプカラーで  ハーフツインテ?で緩やかなウェーブのかかった髪は肩まで伸びている。 頭からは、尖った二本の角が伸びている。 全身には、見たこともない禍々しい文様が、まるでタトゥーかアザのようにびっしりと刻まれている。  なのに、顔立ちは妙に整っていて、大きな瞳はギラギラと輝いている。 そして、身に纏っているのは、どう見ても都会で見かける派手なギャルファッションだ。  ミニスカートに派手なへそや肩が隠れないトップス、ダボ付いたソックスに厚底ブーツ。  そのアンバランスさが、目の前の存在の異常さを際立たせていた。 「……え?」  思わず声が漏れた。 状況が理解が飲み込めない。 寝ぼけているのか? 悪い夢でも見ているのか?  赤鬼ギャルは、俺の戸惑いを楽しむようにニヤリと笑った。「あー、やっと起きた。潟梨翔平だな!……つーか、アンタまーじで無気力過ぎてキモいんですけど。  ホントに生きてる意味とかあんの?」 けたたましい、だけど印象に残る声。開いた口の中には立派な犬歯が並んでいる。  聞いているだけで全否定でダルくなるような、遠慮の欠片もない物言い。 なんだこいつ。どうして俺の部屋にいる?「誰だ…あんた…」  恐怖で声が震えた。  現実じゃない
last updateLast Updated : 2026-07-10
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弐話:大晦日、除夜の鐘の音は百八の煩悩を払う

 羅璃を名乗った異形のギャルは、俺の懐に一方的に入り込んできて振り回わしてくる。 そもそも元旦からどうしてこんなことになったのか…  無気力なりに前日の大晦日の出来事を思い出してみる。 ◇ 前日の大晦日はコンビニバイトの予定ではなかったが、朝に急遽依頼された。「悪いね潟梨君……高橋さんが急に予定入って断れないって言うからさ」 電話先のコンビニ店長の佐藤さんが頭を下げているのが頭に浮かぶ。  断るのもダルかったので深夜テッペンちょうどまでシフトに入ったのだった。 そして、クッソダルい深夜のコンビニバイトがようやく終わった。 レジの清算を終え、佐藤店長の「お疲れー」という気の抜けた声を聞き流しながら、バックヤードで着替える。 ヨレヨレのスウェットとTシャツに着替えると、防寒のダウンジャケットを着て裏口から退出する。  外に出ると体から力が抜けていくのを感じた。 大晦日の晩は、都会は皆故郷に帰っていてヒッソリしている。  夜空を見上げると、いつもより少し多く星が見える気がする。  冷たい夜空の空気を少し多めに吸い込み吐くと、白い息が視界を遮るように立ち昇る。 ため息なのか、無気力の最後の残りカスが見えているのか……そんな気持ちも暗闇に消えていく。 別に特別なことでもない。バイト中は最低限の動作しかしないから、終わればいつもこんな感じだ。 日付はもうすぐ変わって、大晦日も終わり。  これから迎える新年も、どうせ何も変わらない日常が続くだけだ。 そんなことを考えながら、重たい体をずるずると引きずるようにしてアパートへ向かう。  冷たい夜の空気が肌を刺すけど、それすらもどこか他人事のように感じた。 街のあちこちから、ぼんやりと除夜の鐘の音が聞こえてくる。  ゴォォォン、と低く響く音は、耳には届いているけれど、心には全く響かない。  煩悩を払うっていうけど、俺に払うほどの煩悩があるのかすら疑問だった。  どうでもいい。早く
last updateLast Updated : 2026-07-10
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参話:クレープ甘味でクレーム回避

「……ほら、早く行くぞ! こんな無気力な奴、一刻も早く人間らしい感情を取り戻させないと、私がおかしくなる!」 赤鬼ギャルの羅璃は俺の腕を掴み、強引に玄関へと引きずっていった。  着替えも何もせず、スウェットとTシャツのまま外に出されるのか? ダルい以前に、ヤバいだろ。  ギリギリ防寒のダウンジャケットだけはひっ掴んで外に出た。 「さーってと! 今日はどこ行こっかなー!   美味しいもの食べたいし、可愛い服も見たいし、イケメンとかいないかなー!   あ、でもアンタが横にいたらイケメンも寄り付かないか! ウケる!」  羅璃に腕を掴まれたまま、俺は訳も分からないまま引っ張られていく。   除夜の鐘以降の頭の中が整理できない。 隣で羅璃がけたたましい声で騒いでいる。  さっきまでの不機嫌はどこへやら、もうすっかり楽しそうだ。  本当に感情の起伏が激しい奴だな。 街に出ると、当然ながら羅璃の姿は注目の的だった。  真冬にもかかわらず、露出度の高いギャルファッションに、真っ赤な肌、頭の角、そして全身の禍々しい模様。誰もが立ち止まり、二度見し、ヒソヒソと囁いている。 まるで動物園の珍獣を見るような視線が、羅璃……  そして羅璃の横にいる俺に突き刺さる。「うっわ、マジ見てる見てる! なんか私、有名人みたいじゃん?   しょーへー、どう? 私ってば目立ってる?」 羅璃は周囲の視線に全く動じることなく、むしろ楽しんでいる。  俺は恥ずかしくて、思わず俯きそうになったが、羅璃に腕を掴まれている手前、それもままならない。「当たり前だろ……こんな格好してる奴、他にいねぇんだから……」 ボソリと呟くと、羅璃は 「えー? 褒めてくれてるの? サンキュー!」と的外れな反応をする。  こいつには俺の言葉のニュアンスとか全く伝わらないらしい。 街を歩いていると、|羅璃《ラ
last updateLast Updated : 2026-07-10
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肆話:財布拾ってボンノー・財布返してカイホー

 街を練り歩きながら、ギャル赤鬼の羅璃は俺の財布からまた勝手にお金を取り出し、 「次はあれ食べるー!」と叫びながら、次の店へと俺を引っ張っていく。 俺の煩悩解放大作戦は、こうして、クレープの甘酸っぱい味覚と、赤鬼ギャルの狂喜乱舞から始まった。 街を練り歩く羅璃は、本当に楽しそうだった。 きらびやかなショーウィンドウ、道行く人々、街の喧騒……俺が今まで意識的にシャットアウトしてきた全てに、羅璃は目を輝かせ、大声で反応した。 その度に俺の横顔に突き刺さる周囲の視線が痛い。「ねーねーしょーへー! 次どこ行こっか!? なんか面白いとこないの!?」 「面白いとこって言われても……」  俺の日常に「面白い」なんて言葉は存在しない。  あるのは「ダルい」か「まあ、どうでもいい」かの二択だけだ。「はぁ? 何それ! つまんねー! そうだ! じゃあアンタのバイト先行こ!」 「は? バイト先?」 羅璃の突拍子もない提案に、俺は思わず立ち止まった。  コンビニバイトなんて、人にわざわざ見せに行くような場所じゃない。  ましてや、こんな目立つ格好の羅璃を連れて行くなんて、自殺行為だ。「そうそう! バイト! なんか、アンタが社会と関わってる貴重な場所でしょ?   私がもっと活気注入してあげる!」「活気とかいらないです! ていうか、絶対ダメです! 周りに迷惑かかるよ!」「いーじゃん! ちょっとくらい!   だって私、アンタの活力なんだよ?   アンタがバイトで無気力なの、私の存在意義に関わるし!」 羅璃は有無を言わさず俺の手を掴み、俺のバイト先のコンビニがある方向へとスタスタと歩き出した。  抵抗しても無駄だと悟り、俺は覚悟を決めるしかなかった。  最悪だ。佐藤店長と高橋先輩に、なんて説明すればいいんだ……いや、説明なんて不可能だ。 コンビニに着くと、自動ドアが開いた瞬間に
last updateLast Updated : 2026-07-11
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伍話:原宿ラリってフィーバーパフォーマー

 落とし物の財布を拾い、羅璃に言われるがまま(というより、半ば無理やり)持ち主を探して返した。 その直後、羅璃の身体の文様が大きく消えた。 そして、それが俺が「他人の面倒に前向きに突っ込んだ」こと つまり無気力だった自分を乗り越えて世界に関わろうとしたことの証だと、羅璃は言う。「やったー! やったよしょーへー! 私の肌! 見て見て! どんどん綺麗になってる!!!」 羅璃はコンビニの前で飛び跳ねて喜んでいた。 街中の人々の視線が再び俺たちに集まるが、羅璃は全く気にしていない。 その純粋な喜びようを見ていると、さっきまでのダルさや困惑が、少しだけ薄れるような気がした。 本当に、こいつは俺の煩悩と活力から生まれたんだろうか?  こんなにも感情豊かで、パワフルな奴が、俺の中から?「さてと、次はどこ行くー!?」 羅璃はもう次の行動に移ろうとしている。 俺のダルさとは裏腹に、羅璃の体力と好奇心は無限大らしい。「どこって……もういいだろ。家に帰る……」「ダメに決まってんじゃん! まだ煩悩いっぱい残ってるし……! 私の文様も全然全部消えてないし! ほらほら、次!」 羅璃は俺の腕を掴むと、グイグイと引っ張る。 次にどこへ行くのか全く分からないが、羅璃に主導権があることは明白だった。「そうだ! お正月だし、原宿とか行こ! 人いっぱいいてなんか楽しそー!」「原宿……? 人混みなんて一番ダルいんだけど……」 考えただけで吐き気がした。 人混み、騒音、他人の視線……無気力な俺が最も苦手とする場所だ。「いーじゃん! お祭りみたいでアガるし!  アンタのその閉ざされた心を開放するには、刺激が必要なんだ
last updateLast Updated : 2026-07-12
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陸話:ラリっと実家に帰ろう

 羅璃に引っ張り回されて、原宿でクレープを食べ、パフォーマーを見て驚き、他にも色々な店に立ち寄らされ、奇抜な雑貨を眺めさせられたり、うるさい音楽を聞かされたりした。  もう二度と行きたくない。ダルすぎる一日だった。  へとへとに疲れてアパートに帰り着いたのは、日付が変わる直前だった。  羅璃はまだ元気そうだったが、さすがに一日中騒ぎ続けたせいか、少しだけ静かだった。 俺はシャワーを浴びる気力もなく、服を着たままベッドに倒れ込んだ。 羅璃は、俺の部屋に適応したのか、勝手にソファに寝転がっていた。  どうでもいい。とにかく眠りたかった。 頭の中では、羅璃の身体から文様が消えていく光景や、コンビニの店長や高橋先輩、原宿の人々の視線がぐるぐると回っていた。  意識が沈んでいくのを感じながら、俺は泥のように眠りに落ちた。  翌朝。カーテンの隙間から差し込む光で、目が覚めた。 ダルい。 いつも通りのダルさだけど、昨日の疲れが上乗せされている気がする。  身体が鉛のように重い。 重たい瞼をこすりながら、体を起こそうとして……固まった。 俺の、狭いベッドの隣に、誰かが寝ている。 しかも。 全裸で。 真っ赤な肌。頭には角。そして、びっしりと刻まれた禍々しい文様…  それが、俺のすぐ隣で、無防備に寝息を立てている。「…………ぎゃあああああああああああ!!!!!」 理性よりも先に、喉から絶叫が飛び出した。  飛び起きようとして、布団が絡まってベッドから落ちそうになる。 俺の絶叫に、羅璃はのそりと身動ぎした。「んんー……なによしょーへー……朝からうるさい……眠いんだけどぉ…」 寝ぼけた声で文句を言いながら、羅璃は欠伸をした。  その拍子に、身体に刻まれた文様がさらに露わになる。「な、な、な、な、何でここにいんだよ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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漆話:公共交通機関と特急煩悩

母親からの電話で、正月くらい実家に帰ってこいと言われた。  神奈川県の横須賀。 今の俺がいる世田谷からだと、電車を乗り継いで二時間以上かかる。 世田谷~下高井戸~新宿~品川~横須賀中央……。 乗り換えがとにかく多い。  それが面倒で、俺はめったに実家に帰らなかった。  これまでも、年末年始は、適当な理由をつけて東京に残るのが常だった。 でも、今年は違った。  羅璃がいる。この赤鬼ギャルと二人きりで東京にいるのは、正直もう限界かもしれない。  騒がしいし、何を仕出かすか分からない。  コンビニでの騒動も、原宿での視線も、もうお腹いっぱいだ。 ……実家なら、この羅璃という存在を、家族にどう説明するかという新たな問題は発生するが、少なくとも、ずっと二人きりよりはマシだろう。  大体、他人の家族が揃っている状態に割り込むなんてそうそう出来るものじゃないし。  それに、遠距離移動は羅璃も少しは疲れるかもしれない。  そうすれば、少しは大人しくなるかも……なんて、甘い考えだったかもしれないが。 「分かったよ、母さん。今から帰る」 ダルさを押し殺して、電話口でそう答えた。  母親は喜んでいたが、俺の心は重かった。  ダルい。実家までの移動も、実家での滞在も、そして何より、羅璃をどうするかという問題も、全部がダルい。  電話を切ると、羅璃が不思議そうに俺を見ていた。「なーに? 誰? 彼女? マジ? 超ウケるんですけど!」 「違う! 母親だ。実家に帰れって言われた」 「実家? はぁ? なんか面白くなさそー。行きたくなーい」 羅璃は早くもゴネ始めた。予想通りだ。「よかった、じゃあお前一人で留守番な……そうだな。この際しばらく帰省するか」 「えー! なんで! 羅璃一人でも全然平
last updateLast Updated : 2026-07-14
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捌話:実家で実感疎外感

 電車を降りると、顔面の痛みがじんじんと響いた。横須賀中央駅。 横須賀は古くから軍港の街として栄えて、今も海上自衛隊と米海軍の基地が併存しているし、歴史的にはペリー来航の地でもある。 慣れ親しんだ駅のはずなのに、羅璃が隣にいるせいか、どこか違って見えた。 駅前も、正月だからかいつもより人が多い。観光客や帰省者向けに、ご当地グルメとして海軍カレーやネイビーバーガーを矢鱈宣伝している。「あーあ、つまんなかったー。電車とかマジ無理」 羅璃は文句を言いながら、俺の腕にぶら下がってくる。 さっきの電車での一件で、少しは大人しくなったかと思ったが、すぐに元の調子に戻ったらしい。 …顔の模様は確かに大きく消えていたけれど。「…お前があんなリアクション取らなければ…」「えー! お陰でたっくさんの煩悩に向き合えたじゃん…わったしのおっかげー!」「いや、あんなの周りの人も引いてただろ…普通じゃない」「普通って何?ウケるんですけど…あ、ねえねえネイビーバーガーって美味しそう!」 本当に、こいつの行動基準は自分勝手だ。 駅から実家までは歩いて十五分ほど。 少し小高い住宅街にある。 昔から見慣れた街並み、都外の再開発なんて勢いもなくなっているこの土地は何も変わっていない。 だが、羅璃という異物がいるだけで、全く別の場所のように感じられた。 周囲からの視線は、コンビニや原宿ほどではないにしても、やはり集まる。 ダルい。早く家に着いて、この状況をどうにかしないと。 実家のチャイムを鳴らすと、すぐに扉が開いた。 出てきたのは、俺の母親だった。「あら、翔平! よく帰ってきたわね! もう、遅いんだから!」 久しぶりに見る母親は、以前と変わらずの明るい笑顔で俺を迎えた。 そして、その笑顔が、俺の隣に立つ羅璃の姿を捉えた途端に
last updateLast Updated : 2026-07-15
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玖話:シスター・ビター・メモリー

 俺は、リビングで羅璃と楽しそうに話している母親と、羅璃の質問に少し照れながら答えている父の姿を眺めた。 ダルい正月のはずだった。 大学に行って家を出てから、毎回母から正月と盆に帰って来いと言われ続けていたが結局帰らなかった。 唐突に表れた羅璃避けるために……その場から逃げるために口実として使った帰省だったが、既にこの「ラリった世界」は、少なくとも、俺の人生に新しい色と、新しい繋がりをもたらしているのは、間違いないようだった。 その時、リビングの扉が開き、誰かが入ってきた。「ただいまー」 声を聞いて、俺は立ち上がった。  妹の智絵だ。俺とは五つ違いで、今は高校に通っている。「おかえり、智絵」 俺が声をかけると、智絵は俺を見て……そして、その顔から笑顔が完全に消え失せた。「げ、兄貴帰ってたのかよ」  冷たい声だった。智絵は、昔から俺のダルい態度を嫌っていたが、今回はさらに露骨だ。  俺は何も言い返せなかった。 智絵の視線が、リビングにいる見慣れない人物、羅璃の姿を捉えた途端に、その顔から完全に表情が消え失せた。  さっきの冷たい目つきはどこへやら、ただただ驚愕の目で羅璃を凝視している。 「え……!?」 羅璃はそんな智絵を見て、ニッと笑いかけた。「やっほー! しょーへーの妹ちゃん? 超可愛いんですけど! 私、羅璃!」 羅璃は智絵に手を振った。智絵は、まだ戸惑っているようだが、羅璃の明るい雰囲気に少しだけ警戒を解いたらしい。「あ、えっと……初めまして。羅璃さん?」 智絵はどもりながら挨拶した。羅璃はそんな智絵を見て、「ヤバ、妹ちゃん超シャイじゃん! あ、でも顔は超可愛い! メイクとかどこでやってるの??」と、あっという間に女子高生トークに引き込んだ。 羅璃と智絵は、メイクの話、学校の話、好きなアイドルの話……と、すぐに意気投合し、キャッキャッと楽しそうに話し始めた。母親もそれに加わり、リビングは女性陣三人の賑やかな声で満たされた。父と俺は、その賑やかさから切り離されたように、ただ見ているだけだった。 女子高生トークに花を咲かせている羅璃は、ふと俺に目を向けた。  
last updateLast Updated : 2026-07-16
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拾話:家族とラリと絆

 夜風が肌寒くなってきた。 ダルい。 でも、寒いし、お腹も空いた。 生きる上での基本的な欲求が、俺を動かした。「帰るか…」 なんだか、とても辛いことなのに…空腹一つで行動が変わるのが、自分の心の弱さと『実際封印してきた過去なんて大したことないじゃん…』ということなのか?という何とも言えない気分になった。 羅璃は「あー、お腹空いたー! 何か美味しいものあるかなー!?」と早くも食べる気満々だ。 家に戻ると、ちょうど夕食の準備が整っていた。  キッチンからはいい匂いが漂ってくる。 リビングでは、母さんがテーブルに料理を並べていた。 羅璃の姿を見ると、母さんは 「あら、翔平、羅璃さん! おかえりなさい! さあさあ、ご飯食べましょう!」  とあっけらかんと迎えてくれた。 父さんは相変わらずリビングのソファに座っているが、新聞を脇に置き、俺たちを見ていた。。 智絵は……少しだけ口をとがらせて、テレビを見ながら不機嫌そうな顔をしている。 食卓を囲む。父さん、母さん、智絵、そして俺と羅璃。  食卓に赤鬼ギャルがいるという、非日常的な光景だ。 父さんは無言で、黙々とご飯を食べている。智絵は、俺とは目を合わせようとしない。  母さんは、羅璃に「今日の晩御飯は何?ってね、カレーライスよ!羅璃さんはカレー好き?」などと話しかけている。 羅璃は、そんな微妙な空気も気にせず、遠慮なく食べ始めた。 「うっっっっっわあ! マジ美味そー!」とデカい声ではしゃいでいる。  そして、羅璃が食卓の会話をリードし始めた。「ねーねー、お母さん! しょーへーって小さい時どんな子供だったの? 超無気力だったとか?」 羅璃のストレートな質問に、母さんは苦笑いしながらも話し始めた。「翔平は昔は元気の塊みたいな子供だったのよ」 「サッカーは小さい時からのめり込んでて」
last updateLast Updated : 2026-07-17
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