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13・友人へのレシピと知らない感情

مؤلف: 揚羽渓名
last update تاريخ النشر: 2026-09-17 16:00:46

 リリアナの言葉にアルフレッドは静かに頷く。

「君には思っているよりも沢山の秘密がありそうだ」

 小さく笑うとサンドラが怪訝な顔をしてアルフレッドを伺う。

「あの、それでいいんですか?」

「それで、とは?」

「だって私はこんなにもその、胡散臭いのに……」

 自分で言っておいて情けなくなり縮こまっていると、正面からアルフレッドの微かな笑い声が聞こえてくる。

「自分で言うのか。まぁ確かに気にはなるが、問い詰めれば君はきっと出て行くだろうからな。だが、その才能は逃がすには惜しい」

 これはアルフレッドの本心だ。サンドラの調香の技術は昨日今日で培った物ではない。幼い頃から調香に触れ、なおかつセンスと才能まである稀有な存在だ。

 アルフレッドの台詞にサンドラは息を飲むと、表情を引き締めて調香レシピを指さす。

「これが私のレシピです。原材料の買付先から当時の価格、そして調香段階の変更履歴も書き出しました。その履歴を見てもらえば、一朝一夕で出来た物では無いとアルフレッ
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     いよいよ新ブランドの発表会が近づく中、リリアナは土壇場になってようやく『霧の果て』を調香するのに成功した。「どうでしょうか」 緊張した面持ちでサンプルを試すアルフレッドを見上げると、厳しい顔つきに徐々に驚きが広がっていく。「不思議な香りだな。最初はウッド系で郷愁を漂わせ、次にオリエンタルな香りで惹きつけてくる。酔うような香りを抜けるとそこに残るのはシトラスの爽やかさ……驚いた。確かにこれは『霧の果て』だ。名前だけ聞くとネガティブにも思えたが、実際に嗅ぐと霧を抜けた後の晴れやかな気持ちになる」 アルフレッドは感動していた。やはりサンドラは天才だ。自分の選択に間違いはなかったのだ。「あの、それは合格という事ですか?」 こうしてきちんと調香した物をアルフレッドに見せるのはこれが初めての事だ。 当初の予定では若い女性の為のブランドという事でフローラルな物を作っていたが、アイリーン達の挑発に乗るような形で真逆の商品になってしまった。それは全てサンプルとレシピをヴェール家に置きっぱなしにしていたリリアナの責任だ。 ドキドキしながら答えを待っていると、アルフレッドがじっとこちらを見下ろしてきた。背後ではチームの皆も彼の答えを固唾を飲んで見守っている。「これでいこう。もう一つの方も採用だ。花畑のような甘い香りが主体の香水と、この霧の果てはまるで一つの物語になっているかのようだ。これは今まで レ・パルファンでも無かった試みだが、試す価値がある」 今まで通りの事をしていても会社は決して大きくはならない。もちろん古いやり方を否定するつもりは無いが、サンドラの調香技術のように柔軟性を持つべきだ。 アルフレッドが告げると、ラボが壊れるのではないかと思うほどの歓声が湧き上がった。チームの全員がサンドラの周りに集まり、互いの健闘を称え合っている。 気がつけばサンドラは名実共に代表となっていたようだ。「やった……やったわ、皆!」 普段はどちらかと言うとあまり感情は表に出さないリリアナだが、今回ばかりは色んな意味で声を上げずにはいられなかった。 盗作という汚名

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     アルフレッドはリリアナに宣言した通り、あれから自分の時間や習慣までリリアナに合わせて調整してくれている。「……どうしてそこまでしてくれるんだろう……」 朝食にはいつも並んでいたコーヒーが並ばなくなった。その代わり、リリアナの前には温かいミルクが、アルフレッドの前には水が並ぶ。 就業時間はいつもラボの事務所の暖炉には火が入れられ、ソファは転がれるサイズの物にいつの間にか置き換わっていた。 仕事が終わると部屋まで必ず送ってくれるし、食事のメニューもリリアナが消化しやすいようにと野菜中心の煮込み料理が増えている。 それに気付く度に申し訳なくて泣きそうになるのに、心のどこかでは嬉しくて堪らなくて、甘ったるいような痺れが胸を締め付ける。「いつになったら告げる事が出来るんだろうね。……一生、言えないのかな」 リリアナは事務所のソファに寝転がって腹部にそっと手を当てて尋ねたが、まだ何の動きもない。 本当の父親がすぐ側に居るのにこの命を分かち合う事が出来ない苦しみは、きっと誰にも分からないだろう。「それに、もしかしたらアルフレッド様は自分の子どもじゃないからこそ、こんなにも良くしてくれるのかもしれないじゃない」 自分に言い聞かせるように言うと、思わず涙が溢れそうになって慌てて涙を袖で拭い、目を閉じる。 気がつけばリリアナは眠っていたようで、目覚めると手触りの良い毛布がかけられていた。  雑務をこなし遅れて新ブランドのラボに立ち寄ると、そこにサンドラの姿は無かった。「おい、彼女はどうした?」 手近に居た調香師に声をかけると、若い調香師が事務所を指さす。「休憩中か?」「はい。今日は少し酷いようです」「そうか。ありがとう」 サンドラの悪阻は最近ますます酷くなっていた。産婆は問題無いと言うらしいが、見ていると変わってやりたい気持ちで一杯になってくる。食べても戻してしまうせいで、元々華奢な手首が最近はさらに細くなったように思う。 アルフレッドは心配しつつ事務所の窓か

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