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第605話

Auteur: 北野 艾
失敗という現実が、まるで濡れて重くなった巨大な網のように全身に絡みつき、呼吸さえも奪っていく。

目の前が真っ暗になる。一筋の光も見えない。

万事休す。

彼女の脳裏には、ただその一言だけが、壊れたレコードのように木霊していた。

――私は、終わった。

そこへ、トイレから戻った長昭が悠長に現れた。歓喜に沸く人混みをかき分け、志帆の元へと辿り着く。「やあ、戻ったよ。結果はどうだった?」

完全に状況から取り残されたその問いかけに、佳乃が冷ややかな視線を浴びせる。「いっそ夜に来ればよかったじゃない。全部終わった後にね」

妻の刺すような声音で、長昭は瞬時に事態を察した。「……そうか、ダメだったか。まあ気にするな。一度で成功する人間なんてそうそういないんだ。また次頑張ればいい」

娘を慰めようとする長昭の横で、美穂が泣きそうな顔で声を上げた。「じゃあ、なんであの子はできるのよ!江崎詩織は一発で成功させただけじゃなくて、二社も同時に上場させたのよ!?」

「あいつ、悪魔じゃないの!?」

その言葉には、さすがの長昭も目を丸くした。

彼は思わず振り返り、歓声の中心にいる人物を探した。

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