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第606話

Auteur: 北野 艾
当初の予定では、志帆たちはあと二日、G市に滞在するはずだった。『パース・テック』の上場が決まれば、翌日に諸々の事務手続きが必要になるからだ。

だが、その目論見は脆くも崩れ去った。上場計画は完全なる失敗に終わったのだ。

何より志帆のプライドをずたずたに切り裂いたのは、詩織が二社同時に上場を果たしたという事実だった。

そのことを思い出すだけで、脳の血管が焼き切れそうになる。こんな屈辱的な結末など、到底受け入れられるわけがなかった。

取引所からホテルへ戻る車内は、葬式のような重苦しい沈黙に包まれていた。

誰も口を開こうとせず、皆一様に顔色が悪い。

沈黙の中で、志帆のスマートフォンだけが狂ったように鳴り続けていた。

出る勇気はなかった。

画面を見なくとも、誰が何の用でかけてきたのかは痛いほどわかっている。

志帆は苛立ちに任せて、電源を乱暴に切った。

ホテルに着くと、柊也が「レストランを予約してあるから、六時に出発しよう」と告げた。

志帆は生返事で頷き、逃げるように自分の部屋へ閉じこもった。

ベッドに倒れ込み、恐る恐るスマートフォンの電源を入れると、怒涛のように着信通知と
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