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第658話

作者: 北野 艾
あの総合検診の日、確かに詩織は母に付き添って病院を訪れていた。

けれど後日、結果を聞きに行ったのは初恵一人だった。その時「何の問題もなかった」と微笑んだ母の言葉を、なぜ自分は鵜呑みにしてしまったのだろう。

目を覚ました初恵は、詩織の赤く腫れたまぶたを見て、すべてを知られたと悟ったらしい。

小さくため息をつき、かすれた声で娘を慰めようとする。

「……ごめんね。あなたは今まで私のせいで散々苦労してきたでしょう?やっと自分の夢を見つけて歩き出したのに、これ以上お荷物になりたくなかったの」

「お荷物だなんて、一度だって思ったことないよ」

詩織は母の冷え切った手を両手で包み込んだ。自分の鈍感さが悔しくてたまらない。

「でもね、やっぱりお母さん、あなたの足を引っ張ってばかりだもの」

もし私がいなければ、詩織と柊也が出会うこともなかったはずだ。

そして、この子が七年もの歳月と真心を無為にすり減らすこともなかっただろう。

私の大切な娘は、もっと幸せに愛されるべきなのに。

詩織は主治医と話し合い、初恵の腎移植手術に踏み切ることを決めた。

だが、現実は厳しい。短期間で適合するドナー
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