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第657話

مؤلف: 北野 艾
だが、差し出された名刺を一瞥したあの一瞬で、そこに印字された名前と電話番号は確かに網膜に焼き付いていた。

持ち前の記憶力の良さに感謝しつつ、詩織は記憶にある数字をたぐり寄せ、急いで通話ボタンを押した。

コール音は長く続かなかった。

「はい」受話器の向こうから聞こえてきたのは、落ち着いた中年男性の声だった。どうやらこちらの番号があらかじめ登録されていたらしい。相手は何の驚きも含まず、事務的かつ滑らかに応対した。

「江崎様ですね。何か緊急のトラブルでも発生しましたか?」

詩織は挨拶も省き、単刀直入に切り出した。「柊也に何が起きたのか、知りたいの」

相手は一瞬言葉を詰まらせたようだったが、すぐに冷静なトーンで答えた。「……申し訳ありません、江崎様。賀来様からは『江崎様が窮地に陥った際、全力で支援せよ』と厳命を受けております。しかし、『ご自身が窮地に陥った際、私たちがどう支援すべきか』については、何ひとつご指示をいただいておりません」

まるで禅問答のような言い回しだったが、そこに込められた事実は痛いほど明確だった。

つまり、柊也は詩織のために万全のセーフティネットを用意していて
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  • 七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した   第917話

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